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ダイバーシティ・クリエイションという挑戦

株式会社モンスター・ラボ

ダイバーシティ・マネジメントという言葉がある。それは、国籍、世代、性別、そしてワークスタイルなど、メンバーの多様性(Diversity)を組織の力として活かすこと。わかりやすくたとえるなら、スポーツや音楽の世界で、異なる力を持つ者同士が紡ぎ出すチームとしてのパフォーマンスだろうか。 技術とアイデア勝負の世界で、この「多様性の可能性」を実践中のITベンチャーがモンスター・ラボだ。音楽のつくり手と聴き手をつなぐ架け橋的な音楽サイト「monstar.fm」などの自社サービスや、個性的なWEBサイト制作、携帯・スマフォ向けアプリを多領域にわたり手がけている。東京オフィスのスタッフ40名は7ヵ国・地域の出身者からなり、経歴もさまざま。そんなチームの多様性が、彼らのものづくりにも活かされている。そこで今回は、彼らによる「ダイバーシティ・クリエイション」の現場をのぞかせてもらった。

取材・文:内田伸一 撮影:大槻正敏(2012/02/06)

日・英・中スタッフの多国籍ブレスト風景

多彩な発想や経歴を活かす有機的チームづくり

(手前左から時計回りに)ハロード・ウォーレンさん、浅野真理さん、河上裕明さん、羅 茶(ラ チャ)さん

(手前左から時計回りに)ハロード・ウォーレンさん、浅野真理さん、河上裕明さん、羅 茶(ラ チャ)さん

まずは「論より現場」で、同社のブレーンストーミングを見学させてもらえることに。この日のお題は、店舗向けインターネットBGMサービス「monstar.ch」(モンスター・チャンネル)の改善案だ。集まった4名は、同サービスの河上裕明プロデューサーと、WEBアプリやゲーム開発を行うイギリス出身のハロード・ウォーレンさん、中国出身のプログラミングエンジニアである羅 茶(ラ・チャ)さん、そして企画営業担当の浅野真理さん。実は河上さん以外は、あえてこの事業とは無関係のメンバーでのブレストだそうだ。

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「monstar.ch」

「monstar.ch」は500以上の豊富なチャンネル数を持ち、店舗など各空間のコンセプトにあったBGMを提供するサービス。一般ユーザー向けにも、2011年5月からGoogle Chromeを使った無料ネットラジオサービスを始めている。
 
羅:例えば僕みたいな人にはどのチャンネルがおすすめですか?

河上:日本を知る上でも、「Jrock/Jpop」「アニメ&ジブリカバー」とかどう?変わりどころでは、ガンダムの楽曲をアジアのDJ陣がリミックスしたアルバム「GUNDAM World Dance」からの曲なんかもよいですよ。

浅野:これ、画面に出てくるジャケット群(※商用版のみ)も可愛いですね。

河上:「60’sサーフロック」「CHILLOUT」など、ジャンルを特化してチャンネルを増やすことで、お客さんの多様な好みに合わせやすくしてます。業務用では音楽ジャンルだけでなく「オフィス」「ヘアサロン」などシーン別でも選べるし、そのお店でしか聴けない曲、なんていうのも可能ですよ。

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ウォーレン:「お風呂」ジャンルとかないの? お風呂で気持ちよく歌える曲ばっかりかかるっていう。Deep Purpleとかかなぁ(ウォーレンさんのお国、イギリスの伝説的ハードロックバンド)。

河上:検討します(笑)。ちなみに開発中の個人ユーザー向けスマフォアプリでは、ジャンルに加えてその日の気分に合った音楽を探せる形にもしようと思ってます。

羅:インタフェースとしては、曲の検索もできると世界がより広がるかも?

河上:それいいね! 現状、業務用は楽曲セットの構築&提供だけど、個人向けのサービスにはあったら嬉しい機能かも。いずれはリクエスト曲に応えたり、「monstar.ch」上での人気曲を集めたチャンネルも用意したいんです。

浅野:まずは有償オプションでの提供など、柔軟に考えれば開発・運営のコスト的にも現実性はぐっと高くなりそうですよね。

ウォーレン:じゃあそのチャンネルにぴったりの名前をみんなで考えよう!

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といった感じでブレストは続いていく。なお、ふだんもスタッフは定期的に、異なるセクション間でのグループランチを共にしている。また、月に一度は部署に関係なく席替え(!)。社長も例外ではないそう。ほかにも毎日短い朝会「Good & New」があり、ランダムに選ばれた人がいま面白いと思うことを伝え合う。スタッフの提案から生まれた社内の「モンスターアワード」では、誰もが新たなビジネスプランをプレゼンでき、優れた企画には賞金を与えたうえで具体化に動き始める。いずれも、多彩な発想や経歴を活かす有機的チームづくりの一環なのだろう。

多様性から可能性を紡ぎ出す「新しい仕組み」づくり

mon + star =「私にとってのスター」を見つける

続いて、代表の鮄川(いながわ)宏樹さんにインタビューをお願いした。

ー「monstar.ch」の他にも、自社で音楽配信サイト「monstar.fm」を手がけていますね。

代表の鮄川宏樹さん

代表の鮄川宏樹さん

鮄川:これはアーティスト側が楽曲を登録でき、リスナーはキーワードや関連付けを通して好みの音楽に巡り会えるウェブサービスです。両者の感性が多様化する中、良い曲でも、それを求める人に届きづらい現状があります。そうした環境の中で、優れたつくり手とその潜在的なファン層をうまくマッチングできれば、世界はずっと広がると考えたんです。社名にもあるmonstarはよく見ると怪獣のmonsterとスペルが違い、mon(フランス語で「私の」) + star、つまり「私にとってのスター」を見つけようというメッセージなんです。

ーなるほど! クライアントワークにおいても、ペットの口コミ情報ポータルサイト「petowa」、TV番組「ためしてガッテン」から生まれたダイエット法の支援アプリ「計るだけダイエット」など、多彩な生活シーンに関わっていますね。こうした展開において重視していることは?

鮄川:常にクライアントに提案しながら一緒に作り上げていく姿勢、でしょうか。例えば「計るだけダイエット」では、ユーザー同士が体重の増減値やコメントを共有したり、それをTwitterで投稿して一緒に楽しめる仕掛けを加えたりもしています。僕らは音楽以外の領域でも、「多様性を活かす仕組みを創る」「テクノロジーで世界を変える」ということを理念としています。その際、自社サービスでひとつの領域を掘り下げると、他にも応用できるノウハウが自然と培われます。一方で、クライアント向けの大勢の会員や特定ジャンルに秀でたサービスには、自社サービスとはまた違った挑戦ができる。そうやって、自社サービスとクライアントワークがシナジーを生むように事業を展開しています。
それによって、関わるエンジニアやディレクターも、自分のサービスを育てられる喜びと、様々なサービスや技術に触れてスキルアップできるという両方を得られるんです。

ー社長自身のミッションのひとつが「最高のチームを作ること」だそうですね。

鮄川:なぜ会社をやるのか改めて考えると、やはり好きな仲間と手がけた仕事で、社会にインパクトを与えたいんです。単に面白いサービスというのを越えて、ライフスタイル自体を変えるようなものをつくりたい。そのためにもスタッフの個性を活かしたいし、だからこそ、互いを尊重し合えるチームとしてゴールを目指せるよう取り組んでいます。フラットな組織体制やグループランチなどの社内制度も、そのための素地づくりのようなものです。

差異をチャンスに変えてゆく「思春期」の会社

ー現在は中国・四川省にも子会社を設立し、現地採用スタッフも新たな仲間に加わったと伺っています。

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鮄川:いまは日本向けサービス開発が中心ですが、今年は海外向けのサービスも開始予定です。特にアジアは近年、パソコンや携帯を使ったことのない人々がいきなりスマフォを手に入れて…という新興地域もあるほど変化が激しく、市場としての可能性が高まっています。最近では、ネット上で世界中のゲイ・コミュニティのプラットフォームを提供するサービスも開発中です。これは、少数派を対象にしたサービスに見えますが世界では300〜500万人が対象となり得るサービスです。世界を視野に入れれば様々なマーケットがターゲットになり得るのです。

ーそうした挑戦を共にするスタッフに求めるもの、また彼らに与えられるものは何だと思っていますか?

鮄川:よく話すのは、うちの会社は人間にたとえれば今「思春期」だということ(笑)。その成長の最中に身を置けるのは貴重な機会で、面白いはずですよ。一緒に働く仲間には、やはりワクワクしながら仕事ができる人、互いを尊重しながらチームで仕事ができる人を望みます。流暢に話せるとか協調性が高いとかでもなくて、偏見を持たずに、自分も相手も活かせる人ですね。

スタッフそれぞれの「モンスタースタイル」とは?

ユーザー視点を活かす文系出身「デザインテクノロジスト」

最後に、鮄川さんの言う「チーム」のメンバーから3名にそれぞれお話を伺った。若手スタッフから統括事業部長まで、それぞれのとらえる「モンスタースタイル」とは?

三光楼 茉澄さん

三光楼 茉澄さん

ー新卒採用・入社2年目の三光楼(さんこうろう)茉澄さんは、WEBデザインや、携帯・スマフォ向けソーシャルゲームの開発に携わっているそうですね。

三光楼:大学では文学部でしたが、もともと絵を描いたり洋服をつくるのが好きで、ものづくりの仕事がしたいと思っていました。学生のころはmixiやアメーバピグなど、SNSをよく活用していたので、そのユーザー視点をデザインや制作に活かそうと心がけていますね。今後はデザイナーとしての力に加えて、エンジニア的な面をもっと成長させたいです。私の社内でのポジションは「デザインテクノロジスト」で、まさに両者をバランス良くこなす役割を期待されていると思いますから。

ー様々なバックグラウンドの同僚と働く刺激ってありますか? ウォーレンさんが上司だそうで、あの方、面白いですね(笑)。

三光楼:はい(笑)。イギリスや中国など違う国の方と話していると、食事のような日常レベルの話題でも発見があって楽しいです。皆さん日本語が上手で助かりますが、個人的には英語をもっと学びたいので、この職場環境を活かせたらとも思っています。

異なる文化圏でのワークスタイルをつなぐ「ブリッジSE」

次に登場頂いたのは、中国・江西省出身の謝鵾(シャ・コン)さん。中国にあるモンスター・ラボの子会社との連携を円滑に進めるシステムエンジニア=ブリッジSEとして活躍中だ。

謝 鵾(シャ・コン)さん

謝 鵾(シャ・コン)さん

ー謝さんがやりがいを感じられるのはどんな部分ですか?

謝:「サービス・エンジニア」として、つまりお客様の希望を伺いながら、こちらからも提案していける仕事ができることです。6年前に来日していくつかの企業で働きましたが、自分が単なるエンジニアの枠を越えて今のような仕事を、しかも日本で任せてもらえるのは初めての経験。そのことが一番嬉しいですね。

ー日中両チームの架け橋役としては?

謝:仕事のスタイルはもちろん、生活のペースや人生観など、違いを実感しつつもそれを楽しむようにしています。日本は便利だと思うこともあるし、中国の人は比較的のんびりと暮らせていて幸せなのかも…と思うこともあるし(笑)、色々ですね。違いと言えば祝休日もそうで、日本とはお正月休みの時期が異なりますが、そんな事情も会社側が理解してくれて助かります。

「自分より上手くこの仕事ができる人」を育てる事業部長

取材のラストに登場頂いたのは、サービス開発事業部 統括事業部長の副島(そえじま)雄一さん。新規事業の立ち上げを中心に、日中両チームの事業のまとめ役でもある。

副島 雄一

副島 雄一さん

ー副島さんの仕事は企画・開発から事業バランスの管理など多岐に渡っていそうですが、ひとことで言うと?

副島:「いま自分がしている仕事を、より高いレベルで遂行できる人に置き換えていく」ことですね。この会社に来る前からそうで、ゲーム系のデザイナーとして仕事を始め、ディレクター、プロデューサーとそうやってステップアップし、自分で起業した後も、会社が軌道に乗ると部下に譲って別のことにトライしてきました。実はモンスター・ラボは以前、僕の会社の取引相手だったんですけど、いつの間にか一員になってしまいましたね(笑)。

ーこの会社のどんなところが魅力的だったのでしょうか?

副島:楽しさ大変さも一緒で「自分たちでつくれる」点です。ちょうどSNSやスマフォアプリなど、各社横並びでスタートできる時期だったのもあり、良いものができれば「これをつくった人たちとやりたい!」とクライアントから直接依頼を得るチャンスもあります。いっぽうで、面白いものづくりと、予算やスケジュールとのバランスは難しく、どちらかに偏り過ぎてもいけない。その舵を一人でとれるディレクターがいると強いので、いま僕の仕事の大部分はそこですね。でも今のポジションも、やがて自分より優れた人材を育ててその人に譲っていきたいんです。

ー人材育成のお話が出ましたが、今後どんな人と一緒に働きたいですか?

副島:常に自分のステップアップを望む人。完成形の人ばかりを望んでいるわけでもないんです。そう言えるのも最近ようやく、迎え入れる余裕がでてきたからですが(笑)。うちで働いたら、数年でその人の市場価値はかなり上がるはずです。そこまで育てる自信がありますから。

個を活かし合い、チームとして結果を出す

組織において「多様性」を活かすことは、けっして「混ざれば楽しい」という安易な発想や、「そのままの君でいい」的な癒しのキーワードではない。そこにはある種の厳しさと同時に、ひとりでは成し得ない可能性へのワクワク感がある。鮄川代表は、個を活かし合いながらチームとして結果を出す姿勢の原点のひとつに、大学でのアイスホッケー部の経験を挙げていた。

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鮄川:中高生時代の部活と大きく違ったのは、ひとり一人がプレイヤーであると同時に、チームのビジョンを描いて自分たちをディレクションしていく姿勢。この感覚はいまでも大切にしています。思い切り喜んだり悔しがったりできるのは仲間と一緒だからこそというのも、あのころから今日まで実感し続けていることですね。

アイスホッケーといえば、伝説の選手として知られたカナダのウェイン・グレツキーの言葉に「打たないシュートは100%入らない」というのがある。鮄川さん流に付け加えるなら「そして、出さないパスも100%届かない」だろうか? それは、主人公がひとりではない物語。鮄川代表がいう「シナジー」がひとり一人の個性の間にも生まれる瞬間ごとに、彼らのダイバーシティ・クリエイションが発揮されるのだろう。