Special 特集・PR

将来、デザイナーはいなくなる!? アーティスト集団へ舵を取るアイデアスケッチの狙い

株式会社アイデアスケッチ

「自社プロジェクトで得た1万円は、クライアントワークで得た100万円と同じだけの価値を持つ」。そんな、多くの会社では通用しないだろう独自の評価軸を採用したデザインスタジオが株式会社アイデアスケッチだ。従来型のデザイン事務所から、多様な個性が集うクリエイター集団へと舵を取る彼らの実践とは? 経営者でありながら現代アーティストでもある代表の山口真人さん、アートディレクターの直井薫子さん、クリエイターの池田平多さんに話を聞いた。

取材・文:杉原環樹 撮影:きくちよしみ(2017/08/23)

デザイナー不要の時代へ。必要なのは「アーティスト」になること?

「将来的には、かなりの数のデザイナーが必要とされなくなると思います」。インタビューの冒頭、近年のデザインスタジオをめぐる状況について尋ねると、代表の山口さんからはそんな答えが返ってきた。その理由は、多岐にわたる。ひとつには、広告の主戦場がWEBやスマホに移るにつれて、デザインスタジオに求められる仕事のあり方が変わってきたこと。さらに、AIによるデータ収集と制作の自動化、視覚表現からテキストや音声へのシフトも進んでいる。ユーザーが何に反応したのかが数値化され、そのデータを元にコンピュータが自動でサイトを制作してくれるサービスも登場した。そうした「ビジネスの要望に応えるデザイン」が、今後は人より機械の得意技になるかもしれない。

山口:簡単に言えば、デザイナーは「アーティスト」になるべきだと考えています。表現者としての立場を貫き、その自分の価値から稼ぎを得ることに徹するしかないと。たとえばかつての広告には、ただの宣伝ではなく、新しいカルチャーをつくっている側面がありましたよね。しかし、現代ではそんな「広告が一方的に文化を啓蒙していく」つくり方はしづらくなっている。制作がルーティンワーク化し、単なる作業になってしまうことが一番危険だと思うんです。これではつくり手のモチベーションも上がらないし、何より楽しくない。突破口は、アーティストとしての創造性を引き出して、それをビジネスにつなげる視点ではないかと。

代表取締役 山口真人さん

代表取締役 山口真人さん

そもそもアイデアスケッチはWEBや映像、空間など、様々な領域のデザインやアートディレクションといったクライアントワークで実績を残してきた企業だ。しかし現在では、こうしたクライアントワークにおいても、「どれだけ自分たちの領域や価値観に引っ張ってこられるか」という視点を重視しているという。

山口:クライアントワークにしても、ビジネスのスタートからゴールまでを共有して、主体的に関わるポジションを目指しています。そこまでいけば、受託制作なのか自社プロジェクトなのかという区別はなくなる。プロジェクト全体の一部ではなく、企画から開発、ブランディング、プロモーションまで関わらなければ、本当に良いものづくりはできませんからね。

ものづくり三原則=「やりたいこと・歴史的必然性・マーケットとの一致」

アイデアスケッチが大きく関わった代表的なクライアントワークに、コーヒー器具メーカー「カリタ」のクリエイティブディレクションがある。日本発の良質なカリタの器具は世界的に大きなシェアを誇り、国外のファンも非常に多い。しかし、従来の打ち出し方は国内向けのものが多く、うまく海外にアプローチできていなかったという。

山口:カリタさんの魅力とポテンシャルを知ったとき、「日本人がつくった商品が世界のスタンダードを生み出すことができる!」と興奮し、こちらから色々な提案をしていきました。ロンドンやベルリン、上海、ドバイなどで取材した商品の使用風景を、新たに立ち上げた「&Kalita」というオウンドメディアで発信したり、私たちがアートディレクションをした日本経済新聞社主催のイベント「AG/SUM」にコーヒーのブースを出してもらったり。一般的なデザインスタジオのイメージを逸脱した活動ですが、「最高のコーヒーを飲んでもらいたい」という個人的な想いがあるからこそ、主体的に関われるのだと思うんです。

この考えは、そのまま自社プロジェクトにもつながる。「やりたいこと・歴史的必然性・マーケットとの一致」の三つは、新たな取り組みを始める際に山口さんが大切にする指針だ。

山口:「やりたいこと」は、継続できるかに関わってきます。アーティストとして価値を生み出すための基本は、積み重ねなんです。新しい挑戦は、だいたいうまくいきませんからね。継続可能なことなら、結果の良し悪しはあっても、少しずつプラスに積み重なっていくはずです。でも、それが「自分のやりたいこと」でなければ、失敗はただの失敗で終わってしまう。だからチームメンバーとは、個人的な目標や想いを共有して制作することを大切にしています。その次に、マーケットで成功するかどうかという問題がある。こればかりは、「究極的にはやってみないとわかんないな(笑)」と考えています。アイデアスケッチでは最小のリスクで開発からテストマーケティングまでできる「失敗しても許される」システムを構築し、チャレンジしやすい環境づくりをしています。

そんなアイデアスケッチの近年の代表的な自社プロジェクトに、書体をベースにした一連の取り組みがある。開発したのは、江戸時代の角字という書体を現代風に蘇らせた「真四角」と、明治期に生まれた築地書体を参照した「つきじへいた」というフォントだ。

江戸から現代へ蘇った「真四角書体」(提供:アイデアスケッチ)

江戸から現代へ蘇った「真四角書体」(提供:アイデアスケッチ)

山口:2016年に、ニューヨークで『MADE IN TOKYO』という個展を開きました。これは自分のアイデンティティを探る中で、現代アートの巨匠の作品を徹底的にリミックスしたもので、その貪欲に海外の文化を受け入れる「ある種の軽薄さ」が東京らしさだと訴える内容でした。しかし現地での反応を通して、もっと日本人としての自分のルーツに向き合っていきたいと感じたんです。自分自身にある「歴史的必然性」を模索しようと思ったのかもしれません。その後、たまたま訪れた上海の街中に漢字が溢れているのを見て、「この人たち、全然迎合してないな」と、ちょっと羨ましいとさえ思ったんです(笑)。そのとき、幸い社内に書体制作のメソッドを持つメンバーもいたんですよね。個人的な想いと、ビジネス的な可能性も考慮し、「よし、いったん江戸まで戻ってつくってみよう」と、「真四角」のコンセプトが立ち上がりました。

Next Page
クリエイターの個性が共感を呼ぶ。「つきじへいた」の挑戦

この企業で現在募集中の求人