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大分県の離島・姫島で朝型リモートワーク。日の出や夕日を堪能できる働き方ってどんな感じ?

離島でもリモートワークは可能なのか。実際に確かめるために、2泊3日のお試しリモートワークに行ってきました。今回訪れたのは、大分県の離島・瀬戸内海に位置する姫島村です。
  • 取材:山下陽子
  • 撮影:飯本貴子
  • 編集:山本梨央(CINRA)

姫島村ってどんなところ?

姫島村は、大分県の国東半島から北5kmに位置する一島一村の離島です。大分空港から車で約40分の伊美港から、さらにフェリーに乗ること20分。デッキから海を眺めていると、あっという間に到着します。

向かう先に見えるのが姫島

向かう先に見えるのが姫島

姫島の人口は2,032人(2019年1月時点)。主要な施設や店舗がフェリー乗り場徒歩圏内にまとまっていて、アクセスしやすいのが特徴です。

姫島の名産は、なんといっても海の幸!車えびの養殖が盛んです。また、姫島近海では多くの魚介類が水揚げされていて、カレイやタコは絶品。名物料理は車えびのしゃぶしゃぶと、うどんに鯛の姿煮が乗っている鯛めんです。どの店も魚介類がとてもおいしくて感激しました。

U・Iターン奨励金、就業奨励金、結婚祝い金などの奨励金があり、島内の循環バスはなんと無料で誰でも使えます。待機児童数が0名、2019年4月1日より保育所や幼稚園が無料で利用でき、中学生までの医療費も無料など、移住や子育てがしやすい制度が整っています。

姫島村が進める「ITアイランド構想」

姫島では『ITアイランド構想』を推進中。この取り組みは、「離島を舞台にした新しい雇用の形を創り、地元の活力を高めたい」という大分県と姫島村の想いから生まれました。IT企業を誘致したり、コワーキングスペースをオープンしたりと、リモートワークに適した環境が揃いはじめています。また、大分県では企業進出や開発合宿等開催の補助制度があり、姫島への進出を支援しています。

コワーキングスペースを利用するには、すぐそばの役場で手続きが必要。

コワーキングスペースを利用するには、すぐそばの役場で手続きが必要。

小学校の旧校舎を活用した『姫島ITアイランドセンター』に現在入居しているのは、「株式会社ブレーンネット」と「株式会社Ruby開発」の2社。続々とUIターンで移住してくる方々の採用も進んでいるのだとか。

地元企業の方々とのワークショップ。

地元企業の方々とのワークショップ。

姫島に移住した社員の方は、「島の暮らしは慣れれば不便は感じない。通勤時間が大幅に短縮されて時間が有効に使えるようになった」と語っていました。島内勤務者の平均通勤時間は、約5分とのこと! 通勤時間が短い分、好きなことに使える時間が増えます。

株式会社Ruby開発のオフィスには3Dプリンターやドローンなども揃っていて、興味のあることにチャレンジしやすい環境とのこと。

株式会社Ruby開発のオフィスには3Dプリンターやドローンなども揃っていて、興味のあることにチャレンジしやすい環境とのこと。

『姫島ITアイランドセンターコワーキングスペース』は、2019年1月にオープンしたばかり。姫島への進出を検討しているIT企業やフリーランスのお試し利用に向けて整備されました。

電源や高速Wi-Fiが使えて、給湯室にはポットや冷蔵庫があります。大きなテーブル席、個人席、カウンター席などのさまざまなタイプの席があり、用途や気分によって使い分けられます。姫島ITアイランドセンターの横に位置しているので、入居IT企業の社員の方と気軽な交流も。コワーキングスペースを実際に3日間使ってみて、作業環境としてはとても快適だと感じました。

コワーキングスペースから見た夕焼け

コワーキングスペースから見た夕焼け

朝日が差し込む窓側の席

朝日が差し込む窓側の席

コンビニがなくても意外と平気!? 朝の時間を豊かに過ごせる島での暮らし

姫島で働く人たちは17時に退勤することが多く、コワーキングスペースも17時に閉まります。遅くまで働くことに慣れていたため、正直はじめは戸惑いました。しかし、島時間に合わせて働くと、退勤後に夕日を見に行くことができるし、夕食後にのんびり過ごしたり、スナックに遊びに行くこともできます。

海岸沿いを走る道路「ブルーライン」から眺める夕日。

海岸沿いを走る道路「ブルーライン」から眺める夕日。

夜に立ち寄ったスナックには楽しいマスターと住民の方が集まっていました。旅館への帰り道の星空がとてもきれいで、心が豊かになっていくのを感じました。

島内にはたくさん猫がいました。

島内にはたくさん猫がいました。

2泊3日だったので飲食店だけで大満足できましたが、もし移住するとなると飽きがきてしまうかもしれません。住民の方は、昼休みには帰宅して昼食をとる方が多いとか。自炊をしない方のために、コワーキングスペースの近くにカフェや弁当屋さんが欲しいと感じました。

ボリューム満点のえびたこ丼

ボリューム満点のえびたこ丼

また、早起きして日の出を見に行ったり、6時半に始まるお寺のラジオ体操に参加して、住民の方とモーニングコーヒーを楽しむメンバーも。リモートワークの会社員でも、オンラインミーティングの時間を島時間に合わせたり、前倒しで作業すれば、17時に退勤する生活が送れそうです。

矢筈岳の山頂に日の出が見えます。

矢筈岳の山頂に日の出が見えます。

姫島にはコンビニが無く、一番大きなスーパーマーケットは18時半に閉まります。はじめは不安でしたが、島時間に慣れてからは不便は感じませんでした。夜中にアイスが食べたくなってコンビニに向かうのが好きなので、それが出来なくなるのは寂しいと思いましたが、買いだめしておけば問題ありません。姫島での生活は、夜中よりも、朝の時間を豊かに過ごすのが合っていると感じました。

海水浴やマリンスポーツ、釣りも楽しめます。

海水浴やマリンスポーツ、釣りも楽しめます。

釣った魚は翌日の朝食に。

釣った魚は翌日の朝食に。

とにかく柔軟で、何事もスピーディーな島の人たち

姫島の人たちは、とにかく温かくてフレンドリー。お年寄りから小さい子どもまで、たとえ相手が知らない人でもすれ違うときに挨拶をしてくれたり、立ち寄った店で話が弾んだりと、住民の方の歓迎ムードを感じて嬉しくなりました。

島の東端にある姫島灯台にも行きました。白くてかわいい建造物で、海の色によく映えます。

島の東端にある姫島灯台にも行きました。白くてかわいい建造物で、海の色によく映えます。

実はコワーキングスペースを使った初日、村長の藤本昭夫さんとご挨拶をする機会があったのですが、そこで「コワーキングスペースの終了時間がちょっと早いです……」ということをお伝えすると、「何時まででも使っていいですよ!」と仰ってくださり、その場で営業時間が延長されることに! 外から来た私たちの意見もすぐさま聞き入れていただける姿勢に、ITアイランドとして今まさに島が変わろうとしている意気込みが感じられました。

村長の藤本昭夫さんとご挨拶。

村長の藤本昭夫さんとご挨拶。

コワーキングスペースを3日間使ってみて、とても便利だったけれど、窓から海が見えないため、せっかくなので海が見える場所で作業したいという欲も。海沿いにも作業場所があれば、写真を撮ってSNSで自慢したくなると思います。

……ということを地元の方とお話していた翌日。フェリー乗り場前のレンタカー屋兼カフェに赴くと、「昨日言っていた海が見えるコワーキングスペース、作ってみました!」と言われました。そんなまさかと思いながら案内されるがままに2階へ上がると、即席ではありますが目の前に一面の海とその向こうに国東半島の山々が見えるデスクが。これからさらにちゃんと内装を考えていくとのことでしたが、そのスピード感と実行力にはただただ驚くばかりでした。

レンタカーは、姫島港フェリー乗り場から徒歩1分の『姫島エコツーリズム』で借りられます。特徴は、すべて環境にやさしいエコカーということ。見た目もかわいい超小型モビリティやランドカーで島を周遊できます。

レンタカーは、姫島港フェリー乗り場から徒歩1分の『姫島エコツーリズム』で借りられます。特徴は、すべて環境にやさしいエコカーということ。見た目もかわいい超小型モビリティやランドカーで島を周遊できます。

おわりに

今回のお試しリモートワークで、早起きの習慣がつきました。一緒に滞在していた人の中には、姫島での滞在期間中だけでなく、東京に戻っても早起きの生活サイクルが続いているという感想もちらほら。また、スギ花粉の量が少ないのか、3月という花粉症まっさかりな季節にもかかわらず、滞在中は花粉症の症状が軽くなったメンバーも。仕事のパフォーマンスが上がると喜びの声もあがりました。

国指定の天然記念物『姫島の黒曜石産地』がある観音崎。とても見晴らしがよく、眼前に広がる青い海に感動しました。黒曜石の大きな岩も迫力がありました。

国指定の天然記念物『姫島の黒曜石産地』がある観音崎。とても見晴らしがよく、眼前に広がる青い海に感動しました。黒曜石の大きな岩も迫力がありました。

海や自然や温泉をたっぷり満喫して、リモートワークしながら非常にリフレッシュできました。年間を通してたくさんの楽しみがある島です。初夏の海や盆踊り、渡り蝶アサギマダラの飛来時期にまた訪ねたいとワクワクしています。お試しリモートワークや開発合宿の場所を探している方、ぜひ姫島を訪れてみてはいかがでしょうか。

最終日、帰りのフェリー内にて。

最終日、帰りのフェリー内にて。

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