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新卒も中途も全員必修!? デジタル戦略のプロを育成するFICCのトレーニングプログラム

デジタルを通じて新しい価値の提供に挑戦し続けている株式会社FICC。時代とWEB業界の変化を見極めながら、数多くある制作会社との競合優位性を確立させるために選んだのは、戦略に基づいたデジタルクリエイティブだった。クライアントの多様な要望に答えるべく、社内におけるトレーニングプログラムも積極的に開催。常に自らを更新し続けるFICC、その魅力に迫るべく、クリエイティブディレクターの戸塚省太さん、福岡陽さん、デザイナーの冨田一樹さん、ディレクターの豊嶋七瀬さんに、自社の変遷と未来を語ってもらった。
  • 取材・文:加藤将太
  • 撮影:永峰拓也

見た目にかっこいいWEBサイトから、戦略を練った上でのWEBサイトへ。

デジタルの世界は変化が激しく、常に何か新しい技術やサービスが生まれている。たとえば2000年代半ば、WEBサイトのデザインは見た目のかっこよさが全てと言っても過言ではないほどビジュアルが重視されていた。ところが2008年のリーマンショック頃から、企業のWEBに対する予算の掛け方が大きく見直されるようになる。この頃、一部では「広告費が大幅に削減」と叫ばれる時代。それまでは漠然と「投資」と捉えられていたところから、明確に売り上げやブランディングを意識した必要な「コスト」と考えられるようにシフトしたのだ。ベクトルが単純にかっこいいものではなく、確実に効果の出せるツールとして期待される方に変化していった。FICCがストラテジー(戦略)重視のWEBサイト制作に大きく舵を切ったのは、このタイミングだった。

戸塚:たとえば以前は高級旅館やホテルのWEBサイトにアクセスすると、雰囲気のある音楽と映像が流れているFlashで構築されたページ、みたいなことがよくありました。世界観はすごく伝わるけど、なかなか宿泊予約に辿り着けないという状況がありがちだったんです。ブランディングという意味では正解だったと思いますが、宿泊予約という明確な数字を意識したWEBサイトではなかった。そこからWEBサイトに求められる目的自体がシフトしていったんだと思います。

クリエイティブディレクター  戸塚省太さん

クリエイティブディレクター 戸塚省太さん

あらゆる数値がデータ化されるというWEBの特性も相まって、ビジネスに直接的に繋がっているかどうかの効果が一目瞭然となり、クライアントもその成果を把握しやすくなった影響は大きい。

戸塚:ストラテジーを重視するようになった背景の一つとして、「正しく意味のあるもの」を作ろうという意識の変化があったと思います。孫請け以下のような案件の場合、向かう目標は同じでも、なかなか僕らの想いがクライアントに伝わらないことが多いんですよね。その状況が歯痒いというクリエイターの声をよく耳にします。そんな想いから、クライアントと直接コミュニケーションできる立場にこだわるようになったというのも大きいですね。

冨田:僕は単純にかっこいいデザインよりも、何のためにデザインするのかが明確な仕事をやりたくてFICCに新卒入社しました。デザイナーが直接クライアントに出向いてデザインの説明をすることもあるんですが、そうすると対面でクライアントの意見が伝わってくる。要望に応えるためのデザインや設計は何なのかがクリアになりますし、クライアントの想いを意識しながら、一緒に制作物について「こうあるべきだ」と対等に議論できるのは、やりがいの一つでもありますね。

福岡:この10年間で企業の目線で言えばWEBに対する予算の掛け方も変わりましたが、ユーザーの立場から見るとインターネットとの接点がかなり増えました。スマホの普及など、技術ベースでいえば2年単位で大きく変わるのがデジタルの業界の特徴です。もちろんFICCの元々の強みであるビジュアル面へのこだわりも引き継いではいますが、それ以上にFlashからSEO、スマートフォンへと重視すべき主軸が変化する中で、最適なことを考えてきた結果だと思います。

「自分がつくったものが誰のためにどういう結果に結びついているのか、わからないクリエイターが日本にはたくさんいる」(戸塚)

クライアントと直接取引が増えると、そのコミュニケーションの濃度は必然的に濃いものになる。ビジネスの枠組みにおいて、クライアントと制作会社という境界線は存在するものの、お互いが一つのチームとしてWEBサイトの目的を達成しようとする一体感を強く実感できるようになった。

戸塚:今、自分がつくったものが誰のためにどういう結果に結びついているのか、わからないクリエイターが日本にはたくさんいると思っています。でも、クライアントにとっての効果が明確であることは、クリエイターにとっても自分の仕事がどんな結果を生み出したのかを実感することにも繋がる。FICCではそれを大切にしています。

昨年の10月に中途入社したディレクターの豊嶋さんも、早速そのFICCの考え方を実感している。

ディレクター 豊嶋七瀬さん

ディレクター 豊嶋七瀬さん

豊嶋:以前は広告のデザイン会社でマークアップエンジニアだったんです。そこで作ったものがまったく無駄になってしまうという現場に、何度も居合わせることがあったんですね。人的資源も時間も割いているのに、作ったものがどういう成果を上げたのかがおざなりになっていることが多くて。ストラテジーが前提にあるFICCの制作では、最終的なアウトプットがクライアントのビジネスに貢献できたかどうか真摯に向き合えるようになりました。

戸塚:中には成果指標が曖昧なプロジェクトのご相談もあるので、僕らからクライアントに目標を提起することもあります。作っていくページの中でどんな人がどんな意識を持ってページに訪れ、ファーストビュー(スクロールする前に画面に表示されているWEBページの冒頭部分)に何が表示されると、どんな気持ちになるのか。ワイヤーフレーム(デザインの前に作成する、WEBページの情報要素を記載した画面設計書)を作る時点で、ユーザーの行動を、サイトに訪れた瞬間から最終的な目的にどう落とし込むか、ストーリー性も踏まえて想定し、かなり詳細に設定していきます。そうやってサイトの目的を丁寧に定義してWEBサイトを完成させているんです。

豊嶋:そういう定義や効果測定などは、クライアントとの共通言語にもなります。広告代理店を挟まないからこそ、自分たちがディレクターとして企業の担当者にいろんな過程を説明する必要があるのですが、彼らはクリエイティブの専門家ではないため、そういう場面ではわかりやすい効果指標は、特に役立ちますね。「なんとなく見た目にかっこいい」ではなく、ひとつひとつのデザインにも意味があり、効果を説明できるからこそ、誰に説明しても理解してもらえるという作り方は強みだと感じています。

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即戦力も未経験も、新入社員は全員必修!?
FICC流トレーニングプログラム

即戦力も未経験も、新入社員は全員必修!?
FICC流トレーニングプログラム

FICCにはもう一つの強みがある。それは社内の充実したトレーニングプログラムだ。デザイン、プログラミング、ディレクション、プロデュースなどカテゴリごとに様々な教材が用意されている。

福岡:それぞれ、内容に合わせてレクチャー、ワークショップ、コーチングなど、適した形で講座を開いています。基本的に未経験者でも即戦力の経験者でも、新入社員は全員受講を必須としていて。もちろん、先生も生徒も全てスタッフ。うちの社員はなぜか「教えたがり」な人が多いんです(笑)。たとえばデザインの一番基礎的な教材は130ページもあるんですが、それもデザイナーが通常業務を行いながら作ってくれました。

これほど充実した教育環境を整える企業は、特にこのWEB業界においてはかなり珍しい存在だ。しかしその代償として、相当な教育コストがかかっているようにも思える。売り上げに直結する日々の業務に、支障はないのだろうか?

戸塚:もちろん、人のリソースは無限ではありません。でも、そこを行使していかないことには、この業界は成長していかない。求められた仕事をこなして稼ぐだけではなく、色々なスペシャリストの知識を共有する必要があります。長期的に考え、新しい時代に進んでいくための準備として、きちんと教育に当てる時間をクライアントワークと同じ優先度で確保しているんです。

豊嶋:入社後の2〜3ヶ月は、ひたすらトレーニングプログラムだけを受講するんです。バリバリ仕事してきた中途入社の人からすると、実務に触れずトレーニングばかりやっていていいのか不安はあると思いますが(笑)、全てのプログラムが終わった時点で周りと同じレベルで意見交換できるようになるので、効果を実感できるはず。入社3ヶ月目後半くらいにはアドバイザーに付いて実際に業務を担当できるようになりました。

新入社員だけでなく、自分の職種以外の講座も受けられるのだとか。

デザイナー 冨田一樹さん

デザイナー 冨田一樹さん


冨田:たとえばデザイナーがプロデューサー、ディレクター向けのトレーニングプログラムを受けることができるんです。デザインを極めようとしても、デザイナーの視点だけでは限界があると感じていて。自分のデザインを他の立場に置き換えると、客観的に考えるきっかけになりますから。自分の専門性を考える上でも意味がありますね。

トレーニングプログラムから発展して、最先端の技術や遊びの要素を盛り込んだ勉強会も開催するようになった。

冨田:最近、制作チーム全体でハッカソンを文字った「エフソン」という取り組みを始めたんです。普段WEB制作をしているとロゴやグラフィックを表現することに慣れていなくて、第1回目は参加者全員でエフソンのロゴを作ったんです。合計20人くらい、京都オフィスのスタッフもオンライン参加してくれましたね。その他にも動画編集ソフトを使ってシネマグラフを作るなど、新しい技術にチャレンジもしていて。こういった取り組みからアイデアの幅を広げ、実際の業務にも反映しています。

WEBサイト制作は、僕らにとってクリエイティブの一部でしかない

トレーニングプログラムを受講するにつれて、その人の専門性に受講プログラムから学んだ新たなスキルや知識が備わる。FICCのメンバー一人ひとりはそれぞれの分野のスペシャリストであり、広い範囲の知識や能力を持つゼネラリストでもある。福岡さんはその状況を見て、「いよいよそういう時代になってきた」と話す。

福岡:僕らはいろいろなチームを組んでものづくりと向き合っていますけど、今は一人でも何かを作ったりアクションを起こせたりする時代だと思うんですね。マーク・ザッカーバーグのように、プログラマーが一人いれば商売できるかもしれないという発想もあるわけです。プログラマーは優れたデザインのWEBサイトを作れないのかといえば、決してそんなことはなくて。スキルは習得したい意識や環境があれば備わるものですし、FICCはそういった人が新しい価値を見つけられる場所になっていると思います。

クリエイティブディレクター 福岡陽さん

クリエイティブディレクター 福岡陽さん

豊嶋:FICCの特徴だと思うのは、最新技術を使いこなすノウハウが社内にあっても、「新しいから」という理由で安直に提案に盛り込むことはしない、という点です。たとえ新しくても、それを最適な選択肢ではないと判断したら、さらっと言えるんですよね。極論を言えば、WEBサイトを作るよりも駅前でティッシュを配ったほうが効率の良いこともあるんです。肝心なのは、クライアントが何を目的としているか、というところ。トレーニングプログラムで視野を広げるからこそ、そこにデジタルを絡めて何ができるかということを考えたり、場合によってはデジタルサイネージや動画を提案できるんだと思います。

戸塚:デジタル領域と呼ばれる幅そのものが広がったと同時に、お付き合いさせていただいているクライアントの規模も大きくなっている。だから、どこにどんな施策を打つのかという総合的な提案に変化してきています。もはやクライアントがFICCをWEB制作会社として認識していないと思います。ご相談いただくレベルとレイヤーが完全に変わってきているから、WEBサイトを作ることは僕らにとって、クリエイティブの一部でしかないんです。

時代に合った課題解決策を提案するために、クリエイティブのバリエーションを増やしてきたFICC。今後加わる新たな仲間に何を期待しているのだろうか。

戸塚:変化をポジティブに受け入れている方がFICCの門を叩いてくれているという印象はありますね。たとえば「デザイナーだからデザイナーしかやらない」という環境から視野を広げたいというように。主体性を持って仕事に取り組みたい、変わりたい、成長したいという人は吸収できるものも多いと思います。

福岡:今は、もはやインターネットは特別なものではなくなってきて、現実世界とある意味で同じというか。そういう意味で、すごく可能性があると思っています。技術はあるに越したことはないですけど、それ以前にFICCは自分の中で正解を考えて更新できる人、時代に沿った新たな正解を探す人に合っている会社だと思います。

Profile

株式会社エフアイシーシー

「メンバーのポテンシャルを最大限発揮して、価値ある人材になって欲しい。」
そんな社長の想いのもと、独自の教育制度を構築しました。

豊富なトレーニングプログラムから自由に選択・受講が可能なだけでなく、個々のメンバーの成長を積極的にサポートしています。

FICCのメンバーは、スキルやクオリティの追求はもちろん、演出を考えたり、企画のアイデア出しなども行います。クライアントから求められるのは、施策の目的や効果を踏まえた「価値のある」WEBサイト。だからこそ、より深く課題解決に入り込んでいくことができ、自分の価値を存分に実感することができる環境です。

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