日本のゲームを世界へ。社交的なオタクが集うエンタクルグラフィックスの挑戦
- 2019/01/17
- FEATURE
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- 取材・文:村上広大
- 撮影:公家勇人
- 編集:吉田真也(CINRA)
シンガポール法人設立。その背景にある、事業転換と自由な働き方の施策案とは
2019年、設立15年の節目を迎えるエンタクルグラフィックス。代表の岩田さんは、これを機にひとつ上のフェーズに進みたいと話す。その足がかりになるのが、事業の転換とシンガポール法人の設立だ。
岩田:これまで弊社は、エンターテインメント領域のWEBサイトを中心に制作を行ってきました。なかでも、ゲーム系は、ロゴ制作やキャンペーン企画、ノベルティ制作などプロモーション全般に関わることが多く、もともと弊社がいちばん得意とする分野でした。
そこで、蓄積してきたゲーム系のノウハウをさらに活かしていこうと。完全転換というほどではないですが、ゲームという分野において、WEB制作だけでなくプロモーションをトータルで提案できるよう、より強化するようになりました。
その一環として、ゲームのニーズが高まっている海外に対してもフォローできる体制づくりを推進すべく、シンガポールに法人を設立したんです。
岩田:シンガポールは、いまや東南アジアのゲームビジネスのハブ。日本や海外の各ゲームメーカーが東南アジア展開の拠点としています。日本との時差は約1時間、インターネットの速さも世界随一で、治安もいい。あらゆる面で安心できるため、ゲームメーカー各社も進出しやすいのだと思います。
弊社もこのシンガポールを拠点にして、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアなどを中心に、東南アジアに向けた活動を行っています。
ゲーム系のトータルプロモーションを強化すべく実現した、今回のシンガポール法人の設立。しかし、設立の目的は、単に海外事業の拡充を目的としたわけではなく、別の狙いもあったという。それは、海外で働く環境をつくったことで得られる、会社としての働き方の変化と、それに伴う社員の成長への期待だ。
岩田:場所にとらわれない働き方の可能性を探りたかったのも、シンガポール支社設立の理由のひとつですね。気軽に海外で働けるチャンスや環境をつくり、日本では得られない経験を積むことで、少しでも社員の視野が広がればいいなと思っています。
黒瀧:いまシンガポール法人では、現地の企業とのプロジェクトが進行しています。ぼくはデザイナーなので、海外に絡む案件が制作フェーズに入ったらぜひ現地に行って仕事したいですね。平日は頑張って仕事をして、週末は観光地を巡るという(笑)。
岩田:まあ、せっかくシンガポールに行くなら遊ぶ時間もほしいですよね(笑)。今後はより東南アジア関連の仕事をすることも増えると思うので、これからは好きなタイミングで渡星して働ける環境や制度を導入しようと検討しています。冬は日本よりも暖かいから過ごしやすいと思いますし、社員のみんなには一度は行ってほしいですね。
海外であらためて感じた、日本のアニメ・ゲームの魅力とポテンシャル
同社の海外展開を岩田さんと一緒に進めているのが、安和ロベルトさん。前職の接客業で培ったコミュニケーション能力と得意の英語を活かして、海外での新規取引先やパートナー企業の開拓を進めている。本格的に始動したのは2018年9月に開催された『東京ゲームショウ』だった。海外のパブリッシャーやデベロッパーのブースをひとつずつ巡り、エンタクルグラフィックスのプロモーション事業について丁寧に説明していったという。
安和:弊社が取り扱う日本のゲームのプロモーション資料を見せながら、日本や各国でのプローションにおける可能性について説明して回りました。また、『東京ゲームショウ』のあとも、マーレシアやシンガポールで行われた大きなゲームイベントで、同様にブースを回りました。
その都度感じるのは、日本の文化に対して、海外の方の反応がものすごく良いこと。特に弊社は、世界的にも有名なゲーム企業のプロジェクトに携わっていることもあり、ポジティブなリアクションが多かったんです。
海外のゲーム関係者のなかには、日本のアニメやゲームの影響で日本語を話せる方も多くいらっしゃいます。世界における日本のアニメやゲームのコンテンツ力の高さを実感しましたね。
岩田:日本のアニメやゲームって世界的に愛されていて、海外のイベントでも大人気なんです。私自身は、そこまで英語が堪能ではないのですが、「ゲーム」という共通言語でさまざまな国の人とコミュニケーションが取れています。そうした実体験があるからこそ、弊社のプロモーション力で日本のゲーム・アニメコンテンツをより世界に広げるための手助けをしていきたいと、一層強く思うようになりました。
大きなゲーム会社であればあるほど、自社だけでスピード感を持って世界に向けた施策に取り組むことは難しくなります。だからこそ、弊社ように小回りが利く会社がパイプ役となり、海外に直接ネットワークを持つことで、日本と東南アジアのゲーム産業に少しでも貢献できるかたちをつくれたらいいなと思っています。
シンガポール法人設立の当初は、日本のゲームコンテンツを世界に発信することを基軸に考えていた岩田さんだが、逆に海外のゲームコンテンツを日本に広めたいという相談を受けることも増えているという。
岩田:現地で弊社の海外事業に協力してくれる企業を増やそうと取り組んだ結果、マレーシアやシンガポールを中心としたゲーム関連のパートナー企業がたくさんできました。
そのなかで、ゲームデベロッパーとの協働も増えています。実際、私自身もオーストラリアのGRTという会社のメンターになり、海外で開発された数多くのゲームを評価して、日本のパブリッシャーに結びつけることも取り組んでいます。
安和:海外拠点を設置してそれほど日は経っていませんが、ゲーム業界において海外市場はまだまだ可能性を秘めたマーケットだと、日々実感していますね。弊社の事業は日本でも海外でも、多くのゲームメーカーに必要とされるポテンシャルがあると思っています。
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- 希望次第でエンジニアが営業も兼任。独自に描けるキャリアパス
希望次第でエンジニアが営業も兼任。独自に描けるキャリアパス
事業の拡大や働き方の自由化に伴い、キャリアパスの柔軟性も同社の特徴のひとつとなりつつある。本人が希望すれば、たとえばデザイナーからディレクターの道に進むこともできるそう。安和さんももともとはエンジニアで入社したが、いまでは営業兼ディレクターとして活躍している。
岩田:安和はもともとエンジニアとして入社しましたが、コミュニケーション能力が高く人を見る目が優れていることもあり、いまではエンジニアの実務も理解している営業兼ディレクターとして、海外事業で欠かせない存在になっています。
安和:前職の飲食店で接客経験が長かったので、会話のなかで相手の人柄や興味を見極めるのが得意なんです。
接客業からエンジニアへとまったく違う職種に転職した入社当初は不安もありましたが、結果的に現在は、これまで培ってきた経験がフルに活かせるポジションを任せてもらっています。
岩田:海外の企業に営業をかける際は、安和がアポイントを取りつけて、後日、私が同行するというかたちで進めています。
私が行くときにはすでに安和が相手との関係性を温めてくれているので、海外の企業相手でも安心して事業の説明やプロジェクトの話を進められます。おかげで現在は、多くの海外企業ともつながりができて、さらなる飛躍を遂げるためのいい環境が整ってきています。
安和:職種や肩書きの業務範囲にとらわれず、自分の適正ややりたいことを尊重してくれる環境なので、仕事にやりがいや誇りを感じますね。
岩田:エンジニア経験者として営業に携わる安和の肩書きは、「テクニカルセールスエンジニア」。日本では聞き馴染みがないかもしれませんが、安和の業務内容をマレーシアのパートナー企業の方に説明したら、そう言っていたのでそのまま肩書きにしました(笑)。
今後も個人を型にはめるのではなく、それぞれに合ったポジションを柔軟に考えていきたいと思っています。自分のやりたいことを推し進めていく意欲と行動力がある社員には、できる限りそれを叶えられる環境を整えたいですね。
職種や職歴を越えて議論できる「社交的なオタク」が集まる会社へ
「社交的なオタク」が集まる会社を謳い文句にしてきたエンタクルグラフィックス。海外進出など業務拡大をしてもなお、求める人材は変わらないという。3人は、具体的にどのような人と一緒に働きたいと考えているのだろうか。
岩田:まずはものづくりが好きなこと。あとは、エンターテインメントが好きでリスペクトがあること。それがいちばん大事だと思っています。好きなことを生業にするのは、一番強いモチベーションになりますし、いい仕事を生むと思っています。
黒瀧:好きなものに対してだと、いろいろな意見も自然と出てきますからね。先輩社員にも遠慮せず、「もっとこうしたほうがいいのでは?」と問いを投げかけてくれるような人がいいですね。そうやってお互いに考えを出し合うことで、より素晴らしいものができあがると思うので。
安和:ぼくも同意です。こうしたほうがいい、ああしたほうがいいと職種や職歴の壁を越えて議論できる人がいいですね。あと弊社はアニメやゲームはもちろん、映画や音楽などのエンターテインメントが好きなスタッフが多いので、仕事以外でもそういう話で盛り上がれるといいなと思います。
岩田:今後海外展開にコミットしたいという意欲を持った社員には、その希望をどんどん実現してもらいたいと思っています。弊社は、日本では設立15年でも、海外ではスタートアップ。まずは、全力でこの東南アジア展開のプロジェクトを盛り上げて、成功したら、そのビジネススキームをほかの地域にも拡大していくつもりです。
「オタク」というのは「好きな気持ちが強い」という証。アニメやゲーム、そしてデザインやプロモーションの仕事が大好きなスタッフと一緒に、このプロジェクトを成功させていきたいと思っています。
Profile
■業務
ゲーム系WEBサイトを中心にアニメ・音楽・イベントなどエンターテインメント系BtoCコンテンツの制作がメインとなります。WEBサイト、コンソールゲーム・アプリUI、プロモーション映像制作などを数多く手がけています。その他、グッズや印刷物(DTP)・ロゴ・イラスト・音楽制作など、幅の広いクリエイティブワークを行っております。
■クライアント
お取引しているクライアントは大手ゲーム会社をはじめ、アパレル・音楽・テレビ番組関連などのエンターテイメント系クライアントで6〜7割を占めます。その他は、学校・教育関連、通信関連、広告代理店などになります。
■姿勢
有難いことに現在ENTACL GRAPHICXXXでいただいている業務のほとんどが業務評価いただいたクライアントからのリピートやご紹介による受注が大半を占めています。これは非常に有難くも大切な事と考えています。依頼があった内容やテーマに対して真剣に考える・調べるをきちんと実行し、そのうえで最適な形を作る・提案する。制作の現場として当たり前の事なのですが、これらを丁寧に行うことが私たちの姿勢の一つです。シーズン1からアニメをこんこんと見たり、課金をしまくってゲームをしたり(※もちろん経費は会社で負担します)、インプット作業はもちろんですが、ユーザー視点からの感覚を常に意識し、そのうえで自分のこだわりを持ってデザインに、企画に、仕様に、さまざまな形でクライアントに提案していく。そのような姿勢を全職種に求めています。
■充実したベネフィット
ENTACLは入社後3か月間の新人研修制度や月に一度の1on1ヒアリングMTGなど、スムーズにキャリアパスを進めていくための施策があります。また、福利厚生制度としては家賃補助手当制度、無料の社食ランチ、社員同士の会食に利用できるコミニュケーション費の支給なども充実しています。さらに、海外事業も行なっているため、海外スタジオ勤務制度や、帰国ワーク制度、語学サポート制度などグローバル人材を育てる制度もあります。
■豊富なイベント
ENTACLではコミュニケーションやクリエイティブをより楽しむためにさまざまなイベントに力を入れており、年間MVPや社内コンペティションなどクリエイティブな社内コンペティションも定期的に開催されています。過去には友人や関係者を招いて100名規模の映画祭や音楽フェスなどもおこなわれました。年に一度の社員旅行では沖縄やセブ島、ベトナムやシンガポールなどの海外旅行でスィートルームや大型のヴィラを借りて英気を養います。また、年に3回会社全体の大きなイベントでは、ゲームイベントやクイズなどさまざまな趣向をこらしたパーティが行なわれています。
■東南アジアへの展開
2019年秋にはマレーシアにクリエイティブスタジオを立ち上げ、日本と東南アジアのゲーム開発やプロモーションの橋渡しにも力を注いでいます。また、WEBを主としたプロモショーンのクリエティブに加え、モバイルゲームやコンソールゲームのデザインやイラストレーション制作や運用なども行なっています。