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映画監督発、映像プロダクションの新しい可能性

株式会社エルロイ

中目黒駅からほど近いオフィスビルに拠点を置くエルロイは、映像制作を専門とする会社だ。設立してまだ1年が経ったばかりのプロダクションだが、代表取締役を務める和田篤司さん率いるメンバーには大きな野望がある。端的に言えば、それは「映像制作のカタチを変える」というもの。しかしそれは古いものを壊して、新しいシステムを打ち立てるものではない。いわば日本の映像業界における可能性に満ちたひとつの提示ともいえる。そんな彼らが目指す、新たな映像制作のあり方に迫る。

取材・文:島貫泰介 撮影:菱沼勇夫(2013/07/25)

映画への愛が出発地点

エルロイのメンバーは現在のところ全部で10名。オフィスや会議室を兼ねた制作フロアと、撮影所や編集室として機能するスタジオフロアに全ての工程を集約し、スタッフ全員を見渡せる空間で、撮影から編集までワンストップで対応する。さらに、スタッフの多くが10年以上映像業界にかかわってきた実力者であることも、同社の生み出す作品の質の高さを裏付ける。

今回インタビューに応じてくれたのは、代表であり演出/プロデューサーの和田篤司さん、演出/脚本/プロデューサーの土屋哲彦さん、撮影/照明の髙橋一己さんの3人。複数の肩書きが目を引くが(この理由は後述で)、まずは彼らが映像業界に入った理由、出会った経緯から紹介しよう。

(左)演出/脚本/プロデューサー 土屋哲彦さん、(右)代表取締役 演出/プロデューサー 和田篤司さん

(左)演出/脚本/プロデューサー 土屋哲彦さん、(右)代表取締役 演出/プロデューサー 和田篤司さん

和田:高校時代に『チャンプ』を観て、映画の魅力に取り憑かれて以来、映像一筋でやってきました。日本大学芸術学部に進んで、卒業間際も就職活動そっちのけで「映画で食っていこう」なんて意気込んでしまい就職もできず(笑)。いくつかの映像系のアルバイトを経験した後に、大手CM制作会社に就職して、プロダクションマネージャーをやりはじめたんです。そこでうぶな映画青年もさすがに目を覚ましてですね、「映画をつくるのは一筋縄ではいかないな」と学んだわけです。必要なのは映画の知識なんかじゃなくて、映像をつくり続けるための組織を持つことと、プロデューサー的な視点だと感じたんです。もちろんCM制作に忙殺されながらその土台を準備することは不可能なので、WEB系の広告代理店に入り、ほぼ幽霊社員として在籍しながら、映像業界の成り立ちに関して調べたり、映画会社に営業に行ったり、土日は自主映画を撮ったりという生活を5年間続けました。そして、立ち上げたのがエルロイなんです。

続いて、土屋さん、髙橋さんはこう続ける。二人とも「映画制作も視野に入れた、映像制作会社をつくりたいんだ」という和田さんの想いに同意したという。

土屋:僕は、漠然と映画監督になりたいと思っていた頃に、石井克人監督の『鮫肌男と桃尻女』を見て感動したんです。監督はもともとCMでバリバリ活躍していた人ですから、そういうルートで映画に関わることもできるんだと思って、大手CM制作会社に就職しました。そしたら、たまたま会社が監督の仕事を制作していたこともあって、『茶の味』に助監督として参加できたんです。

撮影/照明 髙橋一己さん

撮影/照明 髙橋一己さん

それが縁で、フリーの助監督として独立する道が開けた。石井監督のほかにも錦織良成監督の『RAILWAYS』などのチームに参加して、僕自身も何本か監督をすることができた。和田と出会ったのはちょうどそんなタイミングです。共通の知り合いの脚本家が主催するワークショップにゲストとしてお互いに招かれて、好きな映画監督、例えばジョニー・トーのことなんかを話しているうちに意気投合したんです。

髙橋:僕の場合、もともと映像専門学校出身なのですが、最初は写真の撮影スタジオに勤務していました。縁があって化粧品などコスメ系の撮影をするカメラマンのアシスタントになることができて、しばらくはスチールとムービーの現場で働いていたんです。それでやっていくうちに広告だけではなくて、映画を含めた幅広い仕事をやってみたいと思ってフリーになりました。和田と出会ったのは、独立してから3年後ですね。

理想は、リドリー・スコット・アソシエイツ

そして2012年6月にエルロイはスタートする。それぞれのバックボーンは三者三様だが、彼らに共通するのは映像、とりわけ映画への熱い想いだ。実際、エルロイを立ち上げる以前に、和田さんは橋本愛(いま大人気『あまちゃん』のユイちゃん!)主演のサスペンスホラー『アバター』を、土屋さんは携帯小説を原作とする『愛流通センター』を監督している。エルロイの最終目標、それはCMや企業VP(ビデオパッケージ)などの広告を手がけると同時に、映画やドラマなども視野に入れるような幅広い制作スタイルを持つことなのだという。

劇場用映画 『アバター』

劇場用映画 『アバター』

和田:意外に思われるかもしれませんが、日本ではCMなど広告と映画を同時に手がける制作会社ってあまりないんです。また、映画だけを専門でやっている会社が経営的にうまくいかないというのも事実としてある。でも、高性能な撮影機材が低価格化するようになって、小規模なプロダクションでも映画制作が夢ではなくなった。それは同時に、映画の世界で培われた方法をCMや企業VPなど広告の世界に、フィードバックできるようになったことも意味します。それぞれ良い部分を取り入れて、さまざまなアウトプットに対応できる集団をつくること。エルロイの目標はまさにそれなんです。

そんな和田さんたちがエルロイの理想型としてイメージするのが、『エイリアン』『ブレードランナー』を手がけた映画界の巨匠リドリー・スコットが率いる制作会社RSA(リドリー・スコット・アソシエイツ)だ。映画をはじめCMやミュージックビデオの制作を手がける同社は、イギリス、アメリカ、アジアの3地域に展開し、さまざまな国籍の若手監督を何十名も抱えながら、映画・広告と分け隔てなくクオリティーの高い作品を世界に向けて発信してきた。

和田:スピルバーグやクリストファー・ノーラン、M・ナイト・シャマランなど、映画監督が同時にプロデューサーでもあるような制作スタイルは海外では珍しくありません。また、リドリー・スコットなどのように制作会社を持っている監督もいます。日本では演出することとプロデュースすることが、完全に分業化されているケースが多く、それを兼務しても害はあってもメリットはないと思われている風潮がある。だけど僕らは、真に独創的なものを作る糸口がそこにあると思ったんです。

エルロイの名刺に複数の肩書きが載っているのも、それが理由だ。スタッフ全員が、それぞれの職能だけでなくプロデューサー的な視点を併せ持つことで、プロジェクトごとに社内でフレキシブルにチームを編成する。そうすることで、職能や制作ジャンルの幅を超越した新たな可能性が生まれていく。エルロイ設立前より和田さんは、そういったことを常々考えていたという。

映画とCMの制作メソッドを融合する

和田:会社の在り方としても、僕や土屋などのディレクターがワントップで目立つのではなく、組織内のみんなが並列して際立つイメージですね。そのなかで1人ひとりがスキルを高めていくことで、仕事のクオリティーと同時に組織の力も高めていくことができる。実際、設立してからのここ1年で、ありがたいことに仕事の予算規模は着実に大きくなっています。これは映像業界のなかで、エルロイのようなあり方が少なくても必要だと思ってもらえていることの証明だと思っています。

土屋さん

そんな会社の状況を和田さんは、映画『マネー・ボール』に例える。ブラッド・ピットが実在するメジャーリーグの監督を演じた作品で、統計学的手法にのっとって選手を集め、弱小球団を強豪チームに育て上げていく話だ。従来の常識では考えられない手法に、最初は「そんな方法で勝てるわけない!」と周りから批判されるけれど、実際に勝率が上がることで新しいメソッドとして球界から注目を集めていく。「僕らの場合は、はじめから批判されてはいないですけど(笑)、自分等のやり方が『マネー・ボール』のように、徐々に評価をいただいているのを感じます」と和田さんは語る。

土屋:事例の1つとして、人気男性アイドルを起用したCM撮影があります。タレント出演部分は1時間半という限られた撮影時間のなかで、10タイプのバリエーションをつくらなければいけませんでした。しかも、それぞれのパターンでアイドルの違う魅力を引き出してほしいという、ちょっと難易度の高い依頼で(笑)。でも、考えてみると映画の現場で効率的に撮ることに慣れている僕らだからこそ、広告の事例でも活かせる仕事だと思ったんです。ワンカットをたくさんのカメラで押さえつつ、バリエーションを増やす。後日、クライアントの方が「短時間で、よくあれだけの表情を引き出すことができますね」と驚いていて。映画制作で培ってきたノウハウがうまく活かされた例ですね。

4Kの時代は必ずやってくる

さらに、エルロイを支える大きな要素を紹介しておこう。「4K」という言葉に聞き覚えがあるだろうか? 現在主流になっているHDの解像度の4倍という驚異的な映像クオリティーを誇る4Kは、次世代の映像形式として注目を集めている。エルロイは、4K専用のカメラ「RED EPIC」を自社で所有しているが、同社のような規模の制作会社が4K機材を所有するというのは、業界内でもまだ珍しい。

しかし、ようやく地上デジタル放送に完全移行し、多くの人がハイビジョンの美しさに満足しているような環境のなかで、その4倍の解像度というのはにわかに想像できない。実際にどの程度の需要があるのか、撮影を担当する髙橋さんに聞いた。

(左)和田さん/(右)高橋さん

髙橋:確実に4K時代はやってきます。パブリックビューイングや映画館などの大スクリーンで効果を発揮するけれど家庭用TVでは大差ない、なんて声もありますが、実際に4Kを見てみるとクオリティーの高さに圧倒されますよ。例えば東京の街を空撮すると、ビルの窓のなかの様子まで見えるんです。

4Kの登場は単純なクオリティーの向上に留まらないだろう、と髙橋さんたちは語る。これまで見えなかったところまで映し出されることで、映像に対するユーザーの感覚や体験までも大きく変わるのだ。

髙橋:来るべき4K時代を待っていては乗り遅れてしまう。だからこの規模の制作会社としてはどこよりも早く4K機材を導入し、撮影だけではなくDaVinciでのカラコレから編集納品まで4Kのワークフローも整えました。個々のスキルや技もしかりですが、映像制作者として機材の面でも最新鋭の技術で立ち向かう。制作物のクオリティーを上げるのは、僕ら1人ひとりの大前提の務めですからね。

古きを知り、新しきを求める

スタッフ全員がプロデューサー的視点を持ち、既存の職能の垣根を取り払い、制作ジャンルを超越した体制を実現しつつあるエルロイは、現在の映像業界へ一石を投じる存在なのかもしれない。だが、それは決して既存の映像業界の職人的な気風を否定するものではない。

(左)土屋さん/(右)和田さん

土屋:弊社のメンバーの多くは、映像業界で長く戦ってきた実力者たちです。今の時代の空気は、新しいことは若い世代から生み出されるという感じがあるけれど、むしろその筋のプロフェッショナルが集まることで、安定感のあるアウトプットが提供できる。エルロイが社内での一貫制作にこだわるのも、それが理由の1つです。

和田:現在、映像制作の主流は、プロジェクトごとにフリーランスの演出、撮影、録音などが1からチームを組むという傾向があります。それにより、それぞれがプロである以上、安定した仕事を提供できるわけですが、一方でチームとして経験やノウハウが蓄積されていかないという問題もある。昔の日本映画の現場のように「組」として映画・映像をつくっていくことに、ヒントがあると思うんです。今はよっぽど売れっ子じゃない限り映画を監督できるのは数年に1本で、圧倒的に現場の数が少ない。だとすると「組」を作るためにはどうすればいいのか。その答えが、会社を作ってしまう、ということだったんです。1つの現場を終えて得たノウハウで、その次も作れるんですから、段々と質が上がっていくに決まっている。だからこそ企画も演出も撮影も編集も、自分たちでやる意味がある。僕らはスタッフに適正な報酬を還元するようなシステムをかたちづくりながらも、同時に伝統的な映像業界の良さも活かしていきたいと思っています。

長く現場に携わってきたからこそできること、見えることがあると、和田さんは話す。エルロイが切り拓きつつある仕事の領域は、まさに自身の経験の学びから反映しているものだ。そして自分たちがより活躍できる市場があることにも目をつけていた。

STAR WARS Viral Movie『ダース・ベイダー Attack on Japan』

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昨今、映像に対する広告予算が下がり、業界の仕組みが変わっていくなかで、事実、大小では分けることのできない、むしろその中間的な案件が増加しはじめている。そういった案件に対して、大手映像プロダクションでは予算の関係上、軽いフットワークで立ち回ることが難しい一方で、小さすぎるプロダクションにはクライアントから求められるクオリティーに対応するノウハウが蓄積されてない。しかし、撮影から編集まで社内で一貫制作できる形であれば、クオリティーの高い仕事を、自由度も高く、納得のいく形で実現できるのではないかと考えたのだ。

和田:僕らのような業態の会社はまだ多くありませんが、新しい映像制作会社のモデルの1つでありたいとも思います。もちろん競合他社が現れれば、それはライバルですけどね(笑)。でも、このメンバーだったら、規模感を通り越して、それこそ世界レベルで勝負が出来ると思います。

より大きな会社ではなく、より強い会社へ

1人ひとりの「個の強さ」を活かし、「チームの強さ」に還元する。これは、ここ10年近く世界の舞台で充分に実力を伴い、活躍するようになってきた現在のサッカー日本代表の姿になぞらえても、容易に通ずるものともいえる。

和田さん

和田:今の映像業界には、専門スタッフにも職人的な感覚とプロデューサー的な感覚を合わせ持つ、新しい在り方が求められていると思うんです。エルロイは、社員全員がその姿勢を共有してくれていて、「自分の領域以外はやらない」というのがないので非常に風通しがいいんです。ただ僕らは、仲はいいけど、いわゆる「仲良し」ではないんですよ。僕自身、モノをつくる上では緊張感を大切にしたいと思うし、プロとしてやっていくことの意識は強いですね。

「この前、『社員旅行いこうか』という話が出たときも、誰も反応しませんでしたからね(笑)」といった、和田さんから痛快な(?)エピソードも伺えたが、それには、皆、目先の息抜きより、もっと先の目指すべき場所があるからだということも存分に感じられた。会社に依存する訳ではなく、それぞれの「個」の力で会社を強くしていくということ。

土屋:やっぱり僕らって、映像をやらないと生きてく意味がない、っていうくらいの集団だと思うんです。だから、それぞれの力を高めることに躊躇しないし、常に好きなことに対してはストイックにやっていきたい。僕自身は映像を見るのも大好きですけど、やっぱりつくっているときが一番好きですからね。

髙橋:好きなことを仕事に出来ている、っていう感覚はあるかもしれませんね。それぞれがそれぞれの追求をしている。そこだけが僕らの共通点かもしれません(笑)。

仲良し集団が手を取り合って成長していくのではなく、お互いがお互いを尊敬し合い、時にはライバル視し、プロ意識を持ち、そして強くなっていくこと。取材前に見せていただいた、会社の事業計画表の一行目にはこのような言葉があった。

「より“大きな会社”にするのではなく、より“強い会社”に。」

(前)土屋さん/(真ん中)和田さん/(奥)高橋さん

和田:もともと映画への想いで結びついた会社ですが、目標はもっと高いところにあるし、広い。日本は特に、CMはVPより上等だとかTVより映画のほうが偉いとか、映像制作のヒエラルキー意識が強いと思いますが、エルロイはその構造すらフラットにしていきたいと思っているんです。最高の映画を撮れたから満足ではなくて、そこで得た経験を、他の仕事にも活かすし、その逆もしかりです。世界をアッと言わせられるならRED EPICで度肝を抜くウェディングムービーを撮ってもいいわけですし。今はまだ設立2年目の会社ですが、今後もこのチームのポテンシャルはまだまだあると思うし、このようなプロダクションの可能性を世に提示していきたいですね。

まとめ

職人的気質と、時代に対応した新しい組織体制を両立させながら活動を続けるエルロイ。その名前は、もちろん『ブラック・ダリア』『L.A.コンフィデンシャル』など、映画化もされたノワール小説の大家ジェイムズ・エルロイにちなんで名付けられたものだろう。「アメリカ文学界の狂犬」とも呼ばれ、現代アメリカの姿を職人的なストイックな文体で著してきた彼は、中目黒で映像業界の常識に挑もうとする10人のエルロイの姿に重なって見えてくる。誰よりも速く、誰にも追いつけないスピードで進化していく彼らの飛躍に今後も注目してきたい。

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