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コミュニケーションをデザインする仕事とは?

株式会社コンセント

今度だれかに、「IA(アイ・エー)って何?」と聞かれたら、どこかの小説家ばりに「それは社員でカップルを装って化粧品売場にまで行ったりするようなことだよ」と答えようと思う。きっと怒られるかシカトされるので、こう言い直す。「コミュニケーションをデザインすること」もしくは「情報が『伝わる』仕組みをつくること」。でも、そんなうわっ面ではIAの魅力は伝わらない。この記事を読んでくださった方は、きっと同意してくれるはずだ。 「Web時代の設計事務所」をコンセプトにIAのパイオニアとして活躍してきたWEBデザイン会社であるコンセントと、40年間エディトリアルデザインを追求し続けるアレフ・ゼロが合併して生まれた、新生「株式会社コンセント」。その代表である長谷川敦士さんと、デザイナーの大崎優さん、ディレクターの笹原舞さんにお話しを伺った。

取材・構成:杉浦太一 撮影:寺沢美遊(2011/09/02)

IAって何だ???

「御用聞き」ではなく「ビジネスパートナー」として仕事する。

株式会社コンセントの代表、長谷川敦士さん。

株式会社コンセントの代表、長谷川敦士さん。

―コンセントさんは、数あるデザイン会社の中でも、「IA」の国内での第一人者的な存在だと思いますが、そもそも「IA」って何なのでしょう?

長谷川:「IA」というのは、インフォメーション・アーキテクチャ、直訳すれば「情報設計」です。つまり、「情報が伝わるための仕組みづくり」ということですね。たとえば、ものすごくかっこいいグラフィックデザインがあったとして、ただ人を惹きつければそれでいいわけではないと思うんです。相手に対して何を伝えたいのか、それがきちんと伝わっているのか。そこにはビジュアル的な側面だけでなく、情報の構造や、WEBであればシステムやインフラなど、様々な要素が含まれています。それらすべてのバランスをとって、「情報を丁寧に伝える」ということにこだわり続けてやってきました。

―「情報設計」とだけ聞くと、なんだか難しそうですね…。

長谷川:誤解されやすいのは、「情報設計」というと、WEBサイトであればサイトマップとかワイヤーフレームといった、WEBサイトの情報構造をつくっていくことだと思われがちなんです。たしかにそれも重要なIAの一部なのですが、IAの領域というのはもっと幅広くて、そもそもビジネスとしてどんな目的や課題があって、どんな利用者がいて、その人にどんなメッセージを伝えればいいのか、というところから考えていくんです。

―具体的にはどんな形で仕事が進んでいくんですか?

長谷川:たとえば「ブログをつくりたい」という依頼があったとしますよね。それで打ち合わせに行くわけですが、とりあえずブログの話しは置いておきます(笑)。そもそもどんなビジネスをしていて、なぜブログをしたいのか、という背景から伺っていくんです。手法ではなく、ミッションの確認を行うわけです。それで色々と考えたり分析したり、クライアントと議論を重ねた結果、ブログではなく別の方法がいいという結論が出れば、ブログをつくる提案はしないんです。

―喜ぶお客さんも、困るお客さんもいそうですね(笑)。

長谷川:そうですね。あくまでも、下請け的な「御用聞き」ではなく、どうすればミッションを達成できるのかを一緒に考えていくビジネスパートナーとして向き合っていただけるように、創業以来努力をしています。

ただ「伝える」ではなく、どうすれば「伝わる」かを考え抜く

concent2

―ミッションの確認をすると、次はどんなことを行なうのですか?

長谷川:プロジェクトの規模にもよりますが、次に行なうのは利用者(ユーザー)を正しく理解するということです。アンケートなどの定量的な調査もそうですが、より本音に迫るために、該当するユーザーに近しい人たちを集めてグループインタビューをしたり、お宅訪問をして生の声を聞くことを大事にしています。他にも、ユーザーに何も伝えない状態で現状のWEBサイトを使ってみてもらって、競合他社との比較や現在の課題を分析したりもしますね。

―徹底的ですね。そこまで深く利用者のことがわかると、説得力が違いそうです。

長谷川:仕事の内容にもよりますが、そういった調査や分析だけを依頼いただくようなケースもあるくらいです。多くの場合、利用者の調査が完了すると、次にプランニングをしていく流れになります。ビジネスの目的と利用者をつなぐために、どのように情報を構築していったらいいかを考えていくフェーズです。先ほど話したような情報構造はもちろん、グラフィックデザインの側面も含めて、どういうメッセージングをすれば、利用者に「伝わる」のかを、クライアント側と議論していくんです。

―そういったプランニングの作業は、お客さんとディレクターで行なっていくんですか?

長谷川:もちろんお客さんと直接やりとりをするのは営業やディレクターの場合が多いですが、コンセントの場合、検討そのものはプロジェクトメンバー全員で行います。それこそ、プロジェクトによってはマークアップエンジニアやフロントエンドテクノロジストがプロジェクトを統括することもあるんです。メンバー全員が情報を伝えるということに意識的で、「指示されたものをつくればいい」という環境ではないですね。

合併で強化された「伝わるしくみ」をつくる力

デザイナーも自分の考えを相手に説明する力が必要です

エディトリアルデザイナーの大崎さん。最近ではWEBデザインをすることも。

エディトリアルデザイナーの大崎さん。最近ではWEBデザインをすることも。

―では次に、デザイナーの大崎さんにもお話しを伺っていきたいと思います。コンセントさんは今年の4月にグループ会社であったアレフ・ゼロと合併して、いわば「新生コンセント」となったわけですが、大崎さんは、アレフ・ゼロの頃からデザイナーとして在籍しているんですよね?

大崎:そうですね。アレフ・ゼロは、40年前に創業したエディトリアルデザインの老舗で、たとえば、マガジンハウスの雑誌『an・an』や『Tarzan』を創刊当初からデザインしてきました。今長谷川がお話ししたようなことを、紙媒体というフィールドでずっとやってきた会社なんです(パンフレット「『伝わるしくみ』の仕組み」を取り出して)。

パンフレット「『伝わるしくみ』の仕組み」

パンフレット「『伝わるしくみ』の仕組み」

長谷川:「伝わるしくみ」。まさに、インフォメーション・アーキテクチャを日本語にした言葉だね。

―もともと同じ思想がある中での合併だったわけですね。150名くらいの制作会社というと、かなり規模は大きいと思いますが、大崎さんが合併後、IAの考え方や実際の仕事に触れてみて、何か感じたことはありましたか?

大崎:雑誌の仕事だと、ものによっては週刊もあるので、デザインというよりは、もうスポーツに近いような感覚なんですね(笑)。とにかくスピードがすごい。当然、どんな仕事でも「伝わる」ということを念頭にデザインしていますが、そんなスピード感で仕事をしていることもあるので、表現の仕方はデザイナーそれぞれの感性や経験によるところが大きかったんです。「言わなくてもわかるでしょ」みたいな雰囲気ですね。合併後に驚いたのは、そういった「伝わる」をきちんと言語化して、お客さんやプロジェクトメンバーと共有しながらモノをつくっていくというやり方でした。

―たしかに、週刊だと議論をしながら、というのは難しいですもんね。

大崎:ただ、最近だと雑誌だけではなく、企業の会社案内パンフレットなどの仕事も増えてきていて、そういう仕事の場合は毎回お客さんが変わるわけですよね。となると、「言わなくてもわかるでしょ」では当然まかり通らないわけです。先ほども長谷川が、プロジェクトメンバー全員が情報を伝えることに意識的だと話しましたが、デザイナーもきちんと自分の考えや意図を相手に説明する力が必要だと感じています。

編集にも関わりながらデザインする

―大崎さんが手がけられたお仕事を紹介していただけますか?

大崎:最近の事例だと、経済産業省さんのパンフレットですね。国の機関の紹介パンフレットは、地味でわかりにくくなりがちなのですが、このパンフレットを閲覧する想定読者は、「経済産業省ってそもそも何をやっているの?」という中小企業の経営者だったんです。そのため、潜在的な関心はあるけれど積極的に情報を取りに行っていない人でも見ていただけることを念頭にデザインしました。

経済産業省『省案内パンフレット』

経済産業省『省案内パンフレット』

―たしかにこれはパっと見て、読み進めたくなりますね。

大崎:キービジュアルやイラストを使ってできるだけわかりやすくしています。特に中小企業の経営者は忙しく、このパンフレットを読むために多くの時間を割いてくれないはずなので、大きく6つに分けられた政策を、1つあたり5分もあれば読んでだいたいはわかるようにつくっています。

―国の政策をここまで簡単にまとめるのって、結構大変な作業だったんじゃないですか?

大崎:当然政策ごとに多くの方が関係しているので、どの情報を載せてどの情報を載せないかというのは、密にディスカッションを重ねましたね。伝わることが最終目的なので、情報もかなり削ぎ落としていますし、デザインの提案も数を重ねてこの形になりました。

長谷川:デザイナーが編集にも関わりながら進めていくというのはコンセントの大きな特長かもしれないね。WEBサイトの場合は、どうしても情報の構造やナビゲーションにフォーカスしがちで、個別のページまで及びにくいことが多いんです。これまでアレフ・ゼロとして40年間培ってきた「1ページの中でどう表現するか」という視点は、WEBも今後重視されていくし、合併によって生まれるシナジーになっていくと思います。

「コンセントがいなければ世の中の情報は伝わらない」

『笹原さんがいなくなったら困ります』って言っていただいたときが一番嬉しかった。

今年で入社6年目になるディレクターの笹原舞さん。

今年で入社6年目になるディレクターの笹原舞さん。

―次にディレクターの笹原さんにお話しを伺いたいと思います。笹原さんは前職はどういったお仕事をしていたんですか?

笹原:前職はデザイナーだったんです。ディレクターになったのは、コンセントに入社してからですね。と言っても、そこまで前職が長かったわけではないので、デザイナーからステップアップしてディレクターになった、という感じでもなかったです。でも、早々にディレクターになっておいてよかったな、とは思っています。コンセントに来て、私よりもできるデザイナーをたくさん見てきているので(笑)。

―ちなみに入社して、何か違いはありましたか?

笹原:前の会社は、キャンペーン系のWEBサイトをはじめ、広告賞をとるような派手なものをつくっていたのですが、どちらかと言うと「つくるところに全力を尽くす」というところがあったんですね。コンセントは「つくるプロセス」を大事にしますが、同時に「つくった後」も大事にするんです。つくった後に、サイトの運用の部分でお客さんと密な関係をつくっていきます。それが一番印象的でしたね。実際、私が入社したのはもう6年前になりますが、私の入社前からコンセントがお取り引きさせていただいているカネボウ化粧品さんは、入社後は私が担当になり、今もお付き合いをさせていただいています。毎日電話しない日はないくらい、近い距離でお仕事させていただいていますね。

―毎日! 何年も毎日やりとりをしていると、信頼関係もかなり強くなっていくんでしょうね。

笹原:そうですね。あるときお客さんに「笹原さんがいなくなったら困ります」って言っていただいたことがあって、それが一番嬉しかったですね。「やっていて良かったぁ」としみじみした瞬間でした。

社員でカップルを装って化粧品売場に!?

『カネボウ化粧品 WEBサイト』

『カネボウ化粧品 WEBサイト』
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/

―ちなみにどういうプロセスでこのサイトはできたんですか?

笹原:現在のサイトのリニューアル時は入社前だったので私自身は関わっていないのですが、カネボウさんはご存知の通りブランドの数がとても多く、ターゲットもブランドコミュニケーション方法もそれぞれ異なります。これらのサイト群をどのように横断的に見せながら、ブランドごとの独自性を表現できる器にしていくべきかを考えて設計していきました。各ブランドの担当者全員にヒアリングをしてまわったり、長谷川を含めた社員がカップルを装って百貨店に行ったり…

―カップルを装って!?

長谷川:はい(笑)。社員でカップルを装って百貨店の売場に行きました。ドラッグストアで売っている商品もありますが、百貨店の化粧品売場で売られている高級な製品ラインもあるので、そこも調査しに行ったんです。

―そこまでやるとは…。

長谷川:百貨店の化粧品売場は、お客様とFace to Faceのコミュニケーションをしている重要な場なわけですよね。そこを知らずして設計などできるものか、と(笑)。実際、百貨店の1階って、特に男性にとっては未知の世界じゃないですか?

―未知ですね、完全に。

長谷川:化粧品会社の仕事をする上で、まず男性はその現場を知らないと、サイト上でのおもてなしの話なんて、何もできないと思うんです。同行した女性社員には「1万円まで買っていいよ」と言っておいたんですが、ものすごく真剣に店員さんと話しをしているんですよ。「そこで盛り上がるのか!」みたいなやりとりがあったりとか(笑)。どんなサイトにしていくかを考える上で、つくる側の私たちがお客様の立場を体験するというのも、とても重要なことなんです。

株式会社コンセント

―そこまでやってもらえると、クライアントも嬉しいでしょうね。

長谷川:そうですね。でも、我々のお客様である担当者の方は年中そのことを考えているわけですよね。だから、「お客さんの『御用聞き』ではなくて『ビジネスパートナー』でありたい」と思ってやっている以上は、やれることはすべてやらないと、失礼だと思うんです。

―なるほど、たしかにそうかもしれないですね。では最後に、CINRA.JOBの読者の方へ、メッセージをお願いします。

長谷川:いつも、「我々がいなかったら世の中の情報は伝わらない」というぐらいの意識で仕事をしています。これからは、コミュニケーションをデザインするということが、大きく変わっていく時代です。職種を問わず、とにかく新しいコミュニケーションをつくっていきたいという意欲や、デザインの課題に取り組んでいきたいという意気込みがあることが大事。正直なところ、何をやるかはコンセントに来てから考えればいいとさえ思っています。課題意識の高い人と一緒に仕事をしていきたいですね。