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「co-lab」が提案する新しい働き方

春蒔プロジェクト株式会社

インターネットの普及により、働き方の多様性が広がっている昨今。「シェア」という言葉が流行し、複数の会社や個人で共有する「働く場所」が、相次いで開設されている。シェアオフィスと一口に言っても、その運営理念も形態も様々だ。今回登場するのは、このトレンドを予知していたかのように今から10年前、2003年からシェアード・コラボレーション・スタジオ「co-lab(コーラボ)」の企画運営を始めた、田中陽明さん率いる「春蒔プロジェクト」。彼らは、フリーランサーに拠点として利用してもらうだけのスペースではなく、コミュニケーションを促進し、入居者同士のコラボレーション事業をサポートしていくことを重視している。彼らの考える「新しい働き方」の仕組み、そして「日本におけるクリエイターの社会的地位を高めたい」と語る未来への展望を聞いた。

取材・文:宮崎智之(プレスラボ) 撮影:大槻正敏(2013/02/07)

「co-lab」ができるまで

主宰の田中陽明さんは、武蔵野美術大学建築学科を卒業後、大手ゼネコン設計部を経て、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科(SFC)を修了。その後、自身もアーティストや建築家として活動しながら、六本木に「co-lab」を立ち上げた。

―現在、シェアオフィスやコワーキングスペースが活況を見せています。2003年という早い時期から「co-lab」を運営してきた春蒔プロジェクトはその先駆けだと言えます。

春蒔プロジェクト株式会社 代表取締役 田中陽明さん

春蒔プロジェクト株式会社 代表取締役 田中陽明さん

田中:そうですね。もともとは、自分を含む周囲のフリーのクリエイターが東京の都心で、「制作環境が充実したワークスペースをつくりたい!」というモチベーションから始めたんです。都心で広い制作スペースや工房を持ったり、特殊機材を一人で所有したりするのはコストもかかるし、場所の制約もある。でも、都心だといろいろ情報も入ってくることに加え、純粋に打ち合わせがしやすいというメリットもあります。ついついアーティストやクリエイターは、郊外に制作環境を用意しがちだけど、東京の中心で最先端の情報を生で感じながらモノづくりをした方が、感度のいいものを作れると思い、友人を30人程集めてスタートしたのがきっかけでした。実際に海外ではシェアオフィスの文化がすでに根付いていましたが、当時の日本ではまだまだ認知が低い状態だった。それなら僕がやってみようと考えたんです。

―それからどのような経緯でスタートまで?

田中:ちょうどそんなことを考えていたときに、森ビルの文化事業部さんから支援を受けて2003年から六本木で「co-lab」を運営し始めたのが、そもそもの始まりです。そのときは、どちらかというとコミューンというか、周囲のクリエイターを集めて支援したいというところからスタートしました。

―なるほど。ごく身近なモチベーションから生まれた動機だったんですね。

田中:はい。ですから当初は事業化はあまり考えていませんでした。でも、入居者の公募をしてみたら反響がすごくあって。事業的な可能性も十分に感じたので、2005年に事業化することにしました。そのうち、日本におけるオフィス研究の第一人者であるコクヨさんから「将来的に日本でスタンダードになる働き方だ」と理念を評価していただき、事業主になってもらえる企業も出てきました。六本木と三番町は定期借家契約の関係等で閉鎖してしまいましたが、現在、渋谷・千駄ヶ谷・西麻布・二子玉川の4カ所で「co-lab」を企画運営しています。

ー一人のクリエイターとして田中さんが肌感覚で感じていたことが、時代の需要にフィットしたんですね。

co-lab 西麻布 外観

co-lab 西麻布 外観

田中:それはクリエイターのワークスタイルと、こういった働き方との相性が良かったからでしょうね。基本的にフリーランスで動いていると、プロジェクト単位で仕事を請けていく形が多いので、相互がコラボレーションして仕事を請けやすい。あとは自分自身も作り手として活動していたので、運営者としてクリエイターが求めているものもある程度わかっていました。だから、運営者側と入居者側という関係でなく、フラットな視点で互いの問題意識を共有していたことは大きかったと思います。

「モノ」と「コト」をつくる

「co-lab」は建築とメディアアートの融合作品?

―そんな「co-lab」では、「モノとコトを作っていく」というコンセプトを掲げていますね。これはどういうことですか?

田中:そもそも、クリエイターのサポート云々という以前に、自分のなかの問題意識として、リアルなコミュニケーションをどう設計するかという課題があったんです。僕が慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科(SFC)に入学したのは1997年で、いわゆるインターネット創世記。日本で最も早い時期にインターネットが整備された環境に身を置いたのですが、今以上にインターネット上でのモラル設計がされておらず、ネット上でのコミュニケーションと、実際に会った時のコミュニケーションの違いに違和感を覚えていました。自分がアナログな建築畑で育ってきたことも関係しているでしょうがね(笑)。

春蒔プロジェクト株式会社—「建築」と「インターネット」では、ギャップがありそうですね。

田中:そうですね。それでいずれは、そういったネット社会のコミュニケーションが一般化し、リアルな、つまり実空間でのコミュニケーションが改めて問われる時代が来るだろうなと直感的に思ったんですよ。

ーもっと現場寄りになった、ネット上のコミュニケーションというか。

田中:そう。それで、そういった時代の働く空間を設計してみたいと思ったんです。もともと建築的な視点と、メディア・アート=コミュニケーション・アートの視点を取り入れて、実証実験しながら解決策を見つけ、空間に反映していきたいという想いがありました。ただ「箱」をつくるだけではなくて、そのなかで起きるコミュニケーションをどうデザインしていくか。それが、「モノとコトを作っていく」ということです。だから私達は、不動産管理会社ではなく、建物の中にソフトを作っていく企画運営会社だと思っています。

―なるほど。いわゆる「場所貸し」のサービスを提供する形態ではないと。

田中:そうですね。ここ数年で都内に多くのシェアオフィスやコワーキングスペースが増えましたが、これは実空間でのコミュニケーションの重要性が社会的に見直された結果でないかと思っています。そこで「場所貸し」ではなく繋がりをつくることに重きを置いている点が、私たちの大きな特徴ではないでしょうか。「co-lab」は、ただ入居者から賃料をいただくだけのシェアオフィスではなく、そのもっと進化形である「コラボレーション・オフィス」と名乗っています。たとえば、入居者同士をキャスティングして、仕事を受けることもあるんです。それが「co-lab」の特徴の1つだと思います。

キャスティングの数だけ、アイデアは生まれる

ここからは、具体的な「co-lab」の運営方法を聞くために、スタッフの佐藤千秋さんと、小田潮美さんにも加わっていただいて、話しを聞いた。

―プロジェクトのコラボレーションをするうえで気をつけている点はありますか?

田中:コラボレーションというと聞こえがいいのですが、ただ一緒に作業をするだけでは仕方がありません。やはりコラボレーションすることで、作品のクオリティを上げることを目指しています。そのためには、入居者個人の持ち味を把握しつつ、チームを組んだときにそのメンバー同士の相性はどうかということまで考えたキャスティングが大切になってきます。また、企業のなかにいるクリエイターなら強制的にチームを組まれてしまいますが、「co-lab」では自由参加。ですから、入居者それぞれがどのような仕事にモチベーションがあるかを理解しておくことも重要ですね。キャスティングが上手くいくと、8割以上のプロジェクトは成功すると経験的に感じています。

(左)コミュニティ・マネージャー 小田潮美さん、(右)クリエイティブ・マネージャー 佐藤千秋さん

(左)コミュニティ・マネージャー 小田潮美さん、(右)クリエイティブ・マネージャー 佐藤千秋さん

佐藤:現在、「co-lab」には、クリエイターが300人くらいいて、クライアントの要望に合わせてキャスティングしています。人数規模が上がれば上がるほどバリエーションが増えるということもメリットですね。アイデアもキャスティングの数だけ、比例して生まれる。なのでクリエイターのクオリティが保てるよう入居のときに面接をして意識の高い人たちを集め、競争力を高められるように、こちらも工夫して動いています。

―でも、いざキャスティングをしてコラボレーションしても上手くいかないときもありますよね? その部分で意識していることはありますか?

小田:例えば「co-lab」に所属するメンバー同士を繋げ、刺激し合うプログラムとして、定期的にプレゼン会を開催しています。そこで、お互いのやっている仕事を理解し、交流が生まれるケースも多いです。また、歓送迎会やトークライブなどのイベントも開催していているほか、入居者が新聞や雑誌などのメディアで紹介された場合は掲示板に貼り出し、いい意味での競争心を持ってもらうように心がけています。「co-lab」内の部屋はガラス張りで、ブースも仕切りがありません。お互いやっていることを見聞きできるという空間を意識的につくるよう心がけています。

—なるほど。具体的にお話しいただけるプロジェクトはありますか?

TATAMO!これからの畳をつくるプロジェクト http://www.tatamo.jp/

TATAMO!これからの畳をつくるプロジェクト http://www.tatamo.jp/

田中:例をあげると、短すぎることを理由に正規品の畳に利用できないイグサを活用した案件が挙げられます。「co-lab」内のプロダクトやグラフィックのデザイナー、マーケティングの専門家などが参加し、「畳フローリング」「畳ヨガマット」「イグサポット」を制作しました。畳屋さんからの依頼だったのですが、中小企業からワンストップで発注を受けた事例として、大きな成果を上げたプロジェクトの一つです。現在、「co-lab」関係者が会社化して、工場を設立し、量産体制をつくるにまで至っています。

クリエイター自身が主体となる

―工場設立までとは、凄い事例ですね。そんな「co-lab」にいる方々って、実際にはどのような人が多いんですか?

co-lab 千駄ヶ谷

co-lab 千駄ヶ谷

田中:「co-lab」では、大企業型とフリーランス型との間をとった「中間領域」での働き方を謳っていて、そういう働き方をしている人たちの立ち位置をより確立していきたいと思っています。だから単に、プロジェクト単位で仕事をしているフリーランスの人たちばかりではないんです。大企業からスピンアウトする、個人が独立して会社をつくるなど、自分の働き方にイノベーションを起こしたい人たちも、より活躍できるようなプラットフォームづくりを目指しています。

―そういうクリエイターの「集合知」が発揮できる場所といいますか。

田中:そうですね。例えば、個人で仕事をはじめたばかりだと、どうしていいのかわからない人達もたくさんいると思うんです。そんな人達が「co-lab」に集まることによって、うまく仕事をまわすことだって出来る。もちろん個人で動くこともいいと思うけど、やわらかく集団的に動くのもいいのではないかと思っているんですね。そんな方々がそれぞれの街にある「co-lab」で、活躍してくれています。やはりクリエイターがイキイキとしていられる街って、先進的な街だと思うんです。そしてそれぞれが発言権や社会的地位を持つようになっていくと、街自体にも活力が生まれるはずです。

―なるほど。今は「co-lab」として街づくりのプロジェクトにも参加しているとお聞きしました。

田中:はい。まだ詳しいことは話せないのですが、「co-lab」チームである大規模な施設開発プロジェクトに参加し、さまざまな文化産業の情報が集まるクリエイターの制作拠点を構想しています。そこでの一つの取り組みとして、企業とクリエイターを繋ぐ仕組みをつくるというプロジェクトがあります。

―それはクリエイター同士ではなく、企業とクリエイターを、ですね。

春蒔プロジェクト株式会社

田中:そうです。ここのところ、中小企業や町工場とクリエイターを繋ぐ回路があまりないという現状に問題を感じています。日本のクリエイティブとモノづくりのスキルがコラボすれば、世界に通用する素晴らしいものがもっと生まれるはずです。そういう仕組みをつくれないかと考えて、進めています。

ー先ほどのイグサのプロジェクトもまさにそうですね。

田中:はい。今は経済的に暗いニュースが続いていますが、日本にまだまだ底力があると思っているし、それを底上げするアイディアをもっているのがクリエイターだと思っています。これからは民間や個人、そしてチームが主体となって活動しなければならない。やっぱりクリエイター自身が主体となって、世の中を動かす方が、未来があると思うし、そのようなことを生み出すことが僕たちの役割だと思っています。

日本のクリエイターの社会的地位をあげる

―そんな中、春蒔プロジェクトが求めるのは、どのような人材でしょう?

田中:繰り返しになりますが、私達は「モノ」だけではなく「コト」を作っていく企画会社です。クリエイターと社会を繋ぐ仕組みをつくっていくことや、新しい働き方を定着させていくために「どうするか?」を考えながら、仕事をしていくモチベーションがある人を求めています。それぞれが大きな目標を達成するために、やっていく意識を持っていてほしいと思っています。

春蒔プロジェクト株式会社

佐藤:具体的には、「コミュニティ・ファシリテーター」と「運営管理マネージャー」「編集・PRマネージャー」の3職種を募集しています。「コミュニティ・ファシリテーター」は、入居者のやっていることを把握してサポートしたり、イベントを仕切ったりするなど、入居者に一番近いところでコンシェルジュ的に場作りにかかわる職種です。クリエイターの活動を支援したいという想いが強い人に向いていると思います。例えば、自身が作り手としての活動をやめた人でも、この業界に関わる仕事がしたいと思っている人などは、向いていると思いますよ。

ーなるほど。つくる側ではなく、支える側、ということですね?

佐藤:はい。そのほか、「運営管理マネージャー」は、「コミュニティ・ファシリテーター」を束ねることに加え、不動産の管理全般を任せられる人を求めています。「日本のクリエイティブ産業のインフラを活性化していきたい!」という意識のある人が向いていると思います。「編集・PRマネージャー」は、「co-lab」のブランディング戦略に関わる仕事です。ウェブサイトを中心に編集しながら「co-lab」を魅力的に見せていきたい人を求めます。メディア露出をチェックするほか、デザイン面でのサポートを主導してほしいと思っています。

春蒔プロジェクト株式会社

田中:付け加えるなら、そういった自分の仕事をこなしたうえで、「一人一芸制」で自分の特技を伸ばしていってほしいと思います。もともと持っている特技を生かし、「co-lab」を活用して自分を伸ばしていって欲しいと思っています。

―では最後に、今後の目標をお聞かせください。

田中:「コト」をつくるということは、人が主体的に居続けられるということが大切なので、そこに集まった人たちがそれぞれ「co-labを育てていきたい」という感覚を持てる場所を、今後も作っていきたいと思っています。あとはやっぱり僕の原点として、クリエイターの社会的地位をもっともっとあげていきたい。それが今後の日本を支えることだと思いますから。これからは、大企業でもなく個人でもない中間領域で働くワークスタイルはより増えていくと思います。そんな人達を応援していきたいし、そういうポジションで働いている人たちを今以上にバックアップできるよう、意識を共有できる人たちと共につくっていきたいですね。

まとめ

「クリエイターの社会的地位をあげたい」と語る田中さんは、自身の活動から生まれた想いが反映しているのか、その言葉にも重みがあった。もちろん、「仕組み=プラットホーム」をつくることは、簡単なことではない。そこに人が存在して、活用されてこそ、その真価が問われる。しかしそれが受け入れられれば、これまでの常識は消え去り、「新しい働き方」と「新しい場所」が生まれる。これまでもそうやって、未来の常識は過去の常識を塗り替えてきた。 始動から10年。「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」という言葉が出てくるずっと前から、春蒔プロジェクトは時代の変化を察知し、着実にその仕組みをつくり上げてきた。その芽は、すでにいくつもの花を咲かせ始めている。そしてこれからの10年、日本の状況がさらに変化していくことが確実と言われる中で、彼らの理念は、より現実のものとなって立ち現れ、広がりを見せていくのだろう。