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インハウスデザイナーは、もっと面白い仕事になる! お菓子のスタートアップBAKEの挑戦

株式会社BAKE

あるスタートアップが、洋菓子業界に革新的なインパクトを与えている。焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESETART」、クロッカンシュー専門店「CROQUANTCHOU ZAKUZAKU」(ザクザク)などを展開する株式会社BAKEである。自らを「お菓子のスタートアップ」と名乗り、北海道をバックグラウンドとした高品質な美味しいお菓子を提供して、連日行列ができる店舗を多数抱えている。

しかし、BAKEがこだわっているのは、お菓子の味だけではない。これまでの洋菓子業界では見られなかったような斬新な店舗やパッケージデザインを打ち出し、保守的だと言われている業界に風穴をあけているのだ。設立わずか約3年で急成長を遂げているBAKEだが、躍進の原動力としてデザインの力は欠かせないものになっている。なぜ、BAKEはデザインにこだわるのか。そして、どのようにして自由にデザインできる環境をインハウスで実現しているのか。アートディレクターの長沼有紀さん(通称:ユキさん)と、クリエイティブプランナーの貞清誠治さん、マーケティング部の阿座上陽平さんに話を伺った。

WEBを活用したPRも徹底。「セルフィー」するお客さんに寄り添って、デザインの変更も?

BAKEのもう一つの強みとして、「PR」の力が挙げられる。自社事業を自らの目線で紹介する「THE BAKE MAGAZINE」、人生で一番おいしいお菓子をテーマにした「cake.tokyo」などのWEBメディアを運営して情報発信しているほか、お菓子業界としては珍しく、SNSの活用にも積極的だ。マーケティング部プロデューサー・阿座上陽平さんは、WEBメディアについてこう話す。

阿座上:これからの企業は、どんどんメディア化していくべきだと思っています。僕たち自身のワクワクが伝わって共感を呼べば、BAKEのファンや一緒に働く仲間が増えていきます。だからこそ、サイトのデザインは相当こだわっています。

マーケティング部 阿座上陽平さん

マーケティング部 阿座上陽平さん

お菓子、デザイン、PR、それらすべてが組み合わさって、BAKEのスタイルが生まれている。

阿座上:店舗もパッケージもサービスもメディアもWEBサイトも、すべてがBAKEのお菓子にまつわるもの。お菓子は自分で食べるだけではなくて、友達や取引先にお土産として持って行く人もいる。その場合、パッケージが素敵だと、持って行くほうも、受け取るほうもワクワクします。メディアやSNSでBAKEを知って、店舗に足を運んでくれる人もいるでしょう。そうしたすべてのワクワクした体験をデザインしたいと思っています。

「お菓子のスタートアップ」と自らを呼ぶように、BAKEはテクノロジーの考え方を、商品開発やマーケティングでも柔軟に活用している。

阿座上:シュークリームは鉄板が違うだけで熱伝導率が変化し、膨らみ方が違ってきます。どの鉄板を使えば、どのような味になるのか。そういった「A / Bテスト」のようなことを何度も試し、味をアップデートしているのです。コンピューターやスマートフォンのOSのように、バージョン2.0、バージョン3.0と、どんどん改良していくイメージです。

当然、この考え方はデザインにも生かされていて、パッケージなどのデザインにもアップデートは常に起こり得る。

阿座上:今の時代は、お菓子を買った後に「セルフィー(自分撮り)」する人が多い。しかし、「ザクザク」の袋は、ロゴが下の方にありました。それを食べながら写真を撮ってもロゴは映らないし、いい感じの写真が撮れないから、無理矢理その袋を折って撮影している人がいた。そこで、そもそもロゴの位置を上に変更したら、セルフィーしてSNSに投稿してくれる人が増えたんです。そういったアップデートは、デザイン面でもこまめにやっています。

インハウスデザイナーだからこそできること

スタートアップ企業であるBAKEには、さまざまな仕事を経験して合流したスタッフがたくさん所属している。フリーランスで働いた経験もある貞清さんは、インハウスでBAKEのデザインに関わることについて、どのように感じているのだろうか。

貞清:フリーランスとの違いは、仲間と一緒にいつも仕事をしているので、デザインへの反応がすぐに得られることですね。また、フリーランスは受託が基本ですが、インハウスは企画段階から入っていけるのも魅力。なにがイケているのか、なにがイケていないのかという認識が仲間と共有できているため、とにかくスピードが早いです。BAKEはデザインに理解がある会社ですし、感度の良いスタッフが集まってきている。「イケてないことはやりたくない」と思っているメンバーと一緒に仕事できるのは楽しいですよ。やっぱりキーワードは「ワクワク」ですね。BAKEで働いているとワクワクするんです。

BAKEは現在、アップルパイの新ブランド「RINGO」の立ち上げ準備を行っている。「RINGO」のアップルパイは、もともと「きのとや」の商品。30年間、改良に改良を重ねた人気商品である。今回、さらにBAKEの新ブランドとして立ち上げるにあたり、パイやカスカードクリームを改良した。BAKEでの商品開発では、バージョン7.0なのだそうだ。「RINGO」を立ち上げるにあたって、どのようにデザインを作っていったのだろうか。

パッケージ

RINGOのパッケージ(左)では、バージョン7.0というテック感をデザイン面でも演出。

貞清:なぜ、アップルパイが美味しいのか。素材が、焼き具合が、カスカードが、ふくらみが……といった商品の情報を集めていくと、だんだんデザインが見えてきます。実は商品開発と並行して、あらかじめ「こんな感じだろう」というデザインを作っていたのですが、情報が追加されるたびに「アップルパイを美味しく見せるには、やっぱりこっちの色の方がいいかもしれない」といった変更点が出てくる。いろいろな部署が連携して、最後までデザインにこだわることができるのが、インハウスの利点だと思っています。

最後に、ユキさんにBAKEで働くことの楽しさ、そして将来の展望について語ってもらった。

ユキ:BAKEは始まったばかりのスタートアップなので、自分たちの手でいろいろと作っていける会社です。チームもデザインも新たに作れることが魅力だと思っています。ですから、スタイルの確立は、まだまだこれから。「このデザインはBAKEっぽいな」と思われるようなデザインを確立していきたいですし、デザインの観点からも商品を提案していきたい。そういったことに魅力を感じてくれる方と一緒に、たくさんのワクワクを作っていきたいです。

まとめ

洋菓子屋の既存の枠にとらわれないBAKE。デザインやPRなどすべてに「今まで見たことがないもの」を作ろうという気概がある会社だと感じた。今回はインハウスで働くスタッフに話を聞いたが、もちろん、外部のクリエイティブチームと一緒に仕事をすることもある。コーポレートサイトのリニューアルひとつを取っても、PARTYやLetters、映像制作チームのmaxillaといった一流のチームと組んでいるという。これは、BAKEに対して彼らがワクワクを感じているからだろう。取材で訪れた自由が丘のオフィスにもワクワク感が充満していて、次にどんな新しいものを見せてくれるのか期待が膨らむばかりだった。