Interview 私としごと

アートと鑑賞者の架け橋を目指して

株式会社ワコールアートセンター
髙橋 牧子(複合文化施設「スパイラル」 ギャラリー担当)

「生活とアートの融合」をテーマに掲げる複合文化施設「スパイラル」で働く高橋牧子さんは、「仕事でもプライベートでもアートのことばかり考えている」と話すが、もともとは慶應義塾大学総合政策学部という畑違いの大学に入学。その後、アートを学べる文学部への編入、イギリス留学、オークション会社への就職など紆余曲折を経ながら自身の見識を広めてきた。さまざまな角度からアートに接してきた高橋さんだからこそ行き着いた、意識の先とは?

プロフィール

髙橋 牧子

1981年生まれ。2000年に慶應義塾大学総合政策学部入学。その後、美術に興味を持つようになり、同大学の文学部美学美術史学専攻に編入し、卒業後はユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンに留学した。オークション会社を退社し、ワコールアートセンターに入社。現在は、ギャラリー担当としてスパイラルガーデン(スパイラル1階)で自主企画展覧会の企画・制作やスペースレンタル対応などを手掛けている。

生の作家とかかわりたくなる

—オークション会社って、端から見るとどういう仕事をしているかまったく分かりません。かなり特殊なお仕事ですよね?

髙橋:それでも、美術系の求人では、オークション会社はメジャーな存在なんですよ。確かにこんな高価な作品を買う人がいるんだと、初めは驚きましたが(笑)、 徐々に「アート」と「市場」について興味を持ち始めるようになり、プライベートで美術館に行っても、「この作品の価値はどれくらいなんだろう?」と考えるようになったりと。

—そこでもアートに対する見方が一つ加わったわけですね。具体的には、どのような仕事をしていたんでしょうか?

髙橋 牧子

髙橋:主に海外の購入者への対応やカタログ制作、翻訳業務などに従事していました。当時は日本の現代作家の作品はまだ十分に評価が定まっていなかったため比較的安く、海外のコレクターから問い合わせがくることが多かったですね。今まで作品として見てきたアートに対して、市場での価値を意識するようになって、色々と自分自身も興味深かったです。

—ではなぜ、転職を考えたのですか?

髙橋:一通り仕事を覚えた後に、少し仕事がシステマチックになっているような気がして。オークション会社では、基本的にコレクターと業者を相手にする仕事が多かったんです。そんななか、自分はやっぱり作家さんと直に接することができる仕事がしたいな、って思うようになったんですね。あとは、やはり前々から思っていた「アートと鑑賞者の架け橋になる」という理想には、作家と触れ合う方が自分には合っているのかな、という思いもありました。

—そしてスパイラルに入社する訳ですね。

髙橋:はい。はじめは外部でのアートプロデュース業務を行うチームに配属されました。新しく開発されるまちづくりの一環として、アートが媒介となって住民やそこで働く人の交流が活発化するようなパブリックアートの設置や、ワークショップ等様々なプログラムの実施、また商業施設と美術大学による年間を通じての共同地域連携プロジェクトの運営に携わりました。そういった外部でのプロデュース業務を経た後で、スパイラル本体のギャラリー業務に携わるようになったんです。

ルーティンワークではない、つくりあげる楽しみ

—そのギャラリー業務とは、具体的にはどのようなお仕事なのでしょうか?

髙橋:スパイラルの1階にはスパイラルガーデンというカフェ併設のギャラリースペースがあるのですが、そこで自主企画の制作や、スペースレンタルの対応などに当たっています。それこそガーデンを散策しながら鑑賞できるような展覧会づくりを心掛けています。

—それはもしかしたら、南條さんが仰っていた「アートと鑑賞者の架け橋」としての役割というか。

髙橋:もちろん、そうありたいと思ってはいますが、まだまだこれからです(笑)。先ほどの話ですと大英博物館では、さまざまな興味や知識の度合いの違いを持った鑑賞者に対して展示する難しさを学びましたが、スパイラルガーデンはカフェが併設されていることもあり、美術館よりも生活に近い意識で作品を鑑賞する方がほとんどです。吹き抜けから自然光が降り注ぐ特殊な環境の中でどのように作品を見せていくか、どのような作品を展示するかなど、これからも模索していきたいです。

—まさに肩肘張らずにアートを楽しめる環境だと。

髙橋 牧子

髙橋:そう思っていただけるように頑張りたいですね。もちろん、特別な気持ちで鑑賞することもアートの醍醐味ですが、生活に近いところでアートと繋がれるようになると、もっともっと生活が豊かになるんだということを発信していきたいです。それこそ、映画館に行くくらいに気楽な存在になるといいですね。

—では最後に、ご自身の仕事としてアートと関わり方についてお聞かせください。

髙橋:そうですね……。やはり日本の現状としては、アートを仕事にして生活を営んでいくのは、難しいことですし、それなりの運もあると思います。仕事としての関わりを目指すのであれば、まずはなんでも経験してみて、ものごとに対する視野を広げていくことが大切だと思います。

—それは、ご自身の経験からもいえると。

髙橋:今の仕事をしていて思うのは、やっぱり常に新しいものを提供するというか、いわゆるルーティンワークではないんですよ。それが私には合っていると思いますし、だからこそ仕事と趣味を分け隔てることなく、自分自身が楽しんでやっていけるのかなって思っています。

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髙橋 牧子
ドイツ・ワイマールのバウハウス大学で買ったエコバック
大きめの資料を持ち歩くことが多い私は、カバンは基本2個持ち。1つには財布や手帳など身の回りのものを入れ、エコバックには資料や雑誌などを入れて行動しています。このエコバックは8月中旬に1000円くらいで購入したものです。ドイツはエコバックが流行っているので、いろいろなデザインがあるのも嬉しいですね。

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