Interview 私としごと

ひどすぎるデザインを酷評したら、社長から直々にスカウトされました。

ピクシブ株式会社
横野 巧也(UIエンジニア)

国内最大級のイラストコミュニケーションサービス「pixiv」。そのUIデザインを手がけるのが横野巧也さん。高校卒業後すぐにアニメーション制作会社へ就職するも、すぐに帰省。そのままニートとなり、気づけばインターネットの世界へ……。以後10年間、インターネットにどっぷり浸かった日々を過ごしてきた横野さんだが、ピクシブに入社してからは、リアルな世界に面白さを感じるようになってきたのだとか。一体、何が横野さんを変えたのだろうか。

プロフィール

横野 巧也

1984年福岡県生まれ。アニメーション制作会社、ニート、ウェブ制作会社を経て2007年より面白法人カヤック。2010年からは、ピクシブでUIエンジニアとしてJavaScript全般を主に担当。サービスデザインやUI/UXについて日々考える日々を送っている。

あまりにひどすぎたpixivのサイトデザイン

—では、転職する際には大きなサービスを運営しているところに絞って探していった感じですか?

横野:はい。特に興味を持ったサービスがNAVERとpixivでした。NAVERは当時、まだ検索サービスしかなかったのですが、UIがすごいカッコよくて惹かれましたね。pixivに関しては、逆にUIがひどすぎたところに興味が湧きました(笑)。

—ひどすぎた、と言いますと?

横野 巧也

横野:ちょうどその頃、pixivはサイトのリニューアルを計画していて、ユーザーに新機能を体験してもらおうというイベントを開いていたんです。会社見学くらいの軽い気持ちでユーザーとして参加してみたら、その新機能自体もまだ開発段階で全然使えない。さすがに体験させるなら、もう少しちゃんと作っておけよ! と思いましたね(笑)。リニューアル後のサイトのデザインでも改善できそうなところがあったので、その日は今まで感じていた問題をアンケートにいっぱい書いて帰りました。

—それでよく転職しましたね(笑)。

横野:実はそのときにピクシブのデザイナーと連絡先を交換していて、後日、飲みに行くことになったんです。そこで社長の片桐さんがUI好きだという話を耳にして、「おっ!」と思って。当時はまだUIという概念すら業界に浸透しておらず、しかも経営層がちゃんと意識してるなんて聞いたこともなかったので驚きました。その後、実際に社長と会う機会があり、UIのことや転職の話をしたら、「NAVERはもうUIがちゃんとしてるから、うちに来なよ」って(笑)。

—社長直々のヘッドハンティングがあったと。

横野:確かにずっと退屈せずに仕事できるなと。それに絵が好きだったことも繫がると思いました。当時、pixivを担当するデザイナーは1人いるだけで人手が全然足りていなかった。それに入る前から既にやりたいことがたくさんあったので、とにかくひとつずつクリアしていこうと思って。入社して4年目になりますが、未だに機能面で整合性が取れていなかったり、裏側のコードがぐちゃぐちゃだったり、やりたいことは減ってない気がします。むしろ、日々増えているかもしれません(笑)。

—2014年2月に会員数が1000万人を突破し、会社としてもかなり勢いがあるように感じます。そのあたりについてはどのように考えていますか?

横野:それについてはけっこう冷静かもしれません。僕が入社した時点で会員数はどんどん伸びていましたしね。最近は海外のユーザーが増えているんですが、それも手放しに喜んでばかりいられないというか。国によって法律も変わってくるから、それに合わせて規制をかける基準を変える必要があるかもしれない。作品のレーティングの扱いは、国によってはかなり難しかったりして(笑)。使う言語が違うことも考えないといけなくて、最近では感情だけでやり取りできるようにスタンプや絵文字でコメントできる機能を追加しました。

面白いことはネットだけで共有されているわけではないということが、ようやくわかってきた。

—それだけ会員数が増えると「使っている人たち」にも多様性が出てきそうですね。

横野:はい。実際、ピクシブってユーザーが「描く側」の人と「見る側」の人に分かれているんです。自分で描いたイラストを投稿することに楽しさを感じる人もいる一方で、次々に投稿されてくるイラストを見るだけというスタンスで使っている人もかなりの割合を占めていて。なので、新たな会員数を増やすことだけに一生懸命になるんじゃなく、どうやったら普段から使っている人の満足度を上げられるかということも大事にしています。一方で、新しい機能を追加するとなるとサービスの流れを変えてしまう可能性もあるから、常に疑問を持ちながら進めてますね。

—新規に導入する機能の良し悪しは、どのように判断しているんですか?

横野 巧也

横野:UIを作る段階では、いつも隣の席にいるチームのデザイナーと共通認識を持てるまで話し合っています。「こんな感じだよね」で話が進むことも多いので、連携を取るのがとても楽ですね。それから、今はあまり描けていないのですが、僕自身またイラストも描きたいと思っています。以前、プロの絵描きをしている友人から「君が商売敵にならなくてよかった」と褒めてもらったことがあって、すごく嬉しかったんです(笑)。ピクシブのサービスを向上させるためにも、自分自身がユーザーの視点に立たないと見えないことも多いはずなんで、描いていきたいと思ってます。

—ユーザーとしての感覚を大事にする、と。

横野:そうですね。一方で、最近はデータを見るようにも心掛けています。Twitterなどの反応でいろいろ言われていても、実績として伸びているときには口コミを鵜呑みにしないようにしています。僕は、データにこだわるというのはあまり好きではないんですけれど、そろそろ勘だけで進める時期は終わりじゃないかという流れがある。この辺りは今起きている変化なので、どう作っていけばいいのかけっこう悩んでいるところでもあるんですが、自分たちのサービスについてもっと理解する必要性は感じています。この先必要な機能が揃ってきた時に何をするかを決めていくのはとても難しい。現時点でも自分たちがやりたいと思った新機能を実装したとしても、正直、それが本当にpixivのためになるのか自信が持てないところもあって、どうにかしたいと思ってます。

—お話を聞いていると、今までの会社に比べて、とても長期的に仕事を捉えていらっしゃいますよね。今の会社がいかに横野さんに合っているのか、伝わってきます。

横野:実は僕、会社でプライベートな話をするのがあまり好きではなかったんですね。でも、この会社だと自然体でいられるというか、けっこう話せるんです。最近では会社の1000万人記念パーティーでやったコスプレも楽しめました(笑)。なんというか、面白いことはネットだけで共有されているわけではないということが、ようやくわかるようになってきたのかもしれません。社内に限らず、この会社に入って新しい人と知り合う機会が増えたのですが、そこでの会話が本当に楽しくて。以前は知らない人に話しかけるのもけっこう緊張していたけど、最近になって普通に話しかければ意外と応えてもらえるというのがわかってきたというか。昔はネットの世界だけのコミュニケーションが多かったのですが、今は現実世界が面白いです。

—では、そんな横野さんのこれからの目標は?

横野:僕自身、仕事には本当に恵まれていると思っていて、これからもコツコツといいサービスを提供できるようにがんばるだけですね。でも、けっこう感覚で仕事をしている部分が大きいので、それをきちんと言語化したり根拠を持ってできるようにしなければ、と思っています。たぶんこれから、pixivを利用するユーザーもどんどん増えたり変わったりすると思うんです。そういう中でも、サービスのいいところをちゃんと残していけるように、面倒くさいことでもきちんとやっていきたいですね。あとは、ちゃんとした生活をしたい(笑)。部屋を片付けたり、ごはんを作ったり、食べたらちゃんと洗い物をするとか……。仕事をコツコツやるだけでなく、日々の生活のそういうところも、しっかりしないとな、と思ってます。

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横野 巧也
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