Interview 私としごと

検索を制するネット界のコピーライター

株式会社カヤック
長谷川 哲士(コピーライター)

ユニークな社風や企画でネットを賑わせている面白法人カヤックで、コピーライターとして働いている長谷川哲士さん。教室でクラスメイトを笑わせることが好きだった子供時代、たった一言で空気を変えられる「言葉」の面白さに気づいた。「大御所コピーライターや大手広告代理店のコピーライターと同じやり方では、自分は生き残っていけない」という長谷川さんは、ネットを主戦場に従来のコピーライターとは違う視点でコピーライティングの仕事に取り組んでいる。「検索を制する」という信念を持つ長谷川さんの、ネット時代を生き残るコピーライティング術とは?

プロフィール

長谷川 哲士

1984年4月8日生まれ。島根県出身で東大哲学科卒業後、リクルートに入社。その後フリーを経て面白法人カヤックコピー部にジョイン。フォロワー数11万人越えの人気Twitterアカウント「コピーライッター」の中の人。最近書いたコピー: 4月1日限定のウソ売ります。(カヤック) / 島耕作のスマホが見放題!!! / 絶対に手が離せないRPG(MEG)他多数

「コトバが、ネットを制する」

—フリー時代を経て、再就職先としてカヤックを選んだのは何故ですか?

長谷川:フリーのコピーライターを2年ほど続けていたんですが、毎月固定で仕事をくれる会社の代表が病気になり、そこの仕事がなくなってしまい……。そのタイミングでちょうど、以前から気になっていたカヤックが「コピー部発足!」っていう求人広告を出しているのを見つけたんです。「会社はもっと面白くてもいいんだ」という考えは、リクルートにいた頃からかっこいいと思っていたので応募しました。

—もともと気になっていた会社が、まさにコピーライターを募集していた、と。

長谷川:その求人広告に「コトバが、ネットを制する」って書いてあったんですけど、それって「検索を制する」ってことだと思ったんです。カヤックは「経営理念」で検索した時に、他の大企業を抑えて面白法人カヤックのページが一番トップに表示されるのを一つの売りにしているんですが、そういうところにも惹かれていましたね。

—コピーそれ自体だけでなく、検索で上位に表示されることも重要だと。

長谷川 哲士

長谷川:糸井重里さんみたいな大御所や大手広告代理店から独立したような優秀な方はそれだけで仕事がもらえますけど、僕はそうじゃない。だから、ただコピーを書き続けるだけではなく「コピーライター」として生き残る術を考えなければならないんです。ネットの影響力はまだまだ大きくなっていきますし、その中心にあるのは「検索」です。だから、「コピーライター」で検索して「長谷川哲士」が上位にくるというのは大きなメリットになると思うんですね。

—具体的に自分の名前を検索上位にするためにやっていることはあるんですか?

長谷川:たとえばNAVERまとめって検索で上位に来やすいんですけど、NAVERまとめでポートフォリオを作っているコピーライターは誰もいなかったので、僕が最初にやりました。タイトルの頭を「コピーライター長谷川哲士」にしてるのがポイントで、NAVERまとめでは検索ワードが頭にあるタイトルのまとめを優先して表示するんです。「長谷川哲士(コピーライター)」とかだと、「コピーライター」って検索した時に頭にコピーライターがあるものより、上位になりにくいんです。

—そんなルールがあったんですね。自分の仕事を自分でアーカイブするっていいですね(笑)。

長谷川:誰もが見れるアーカイブって、ネットならではですよね。ネットやGoogleなどの検索エンジンは僕よりも長生きすると思っているので、自分が書いたコピーは、ネット上で遺作としてずっと残るような感覚を持ってます。自分が死んだ後も自分が書いたコピーはネット上に残っていて、誰かが見つけた時に「これ考えたやつ面白いな」と思ってくれるのが理想です。いつもインターネットっていう膨大な空間に、言葉を吐き出すイメージでコピーを書いています。

—お話を聞いていると、長谷川さんはアーティストに近い感覚でお仕事をされているような気がします。

長谷川:「広告はアートじゃない」とよく言われますが、コピーは営業と同じように売り上げを上げるための仕事なので、実際に世の中を動かしたという結果が大切です。だから僕が今考えてヒットしなかったコピーと同じコピーが、10年後にヒットしたとしても、それは僕に先見の明があったということにはなりません。その時代の空気やトレンドを読み取って広告として機能しないと意味がないので、コピーライターは、死後に評価されることを期待する必要はないんですよね。

—シビアな考え方ですね。

長谷川:でもそういう想いとは別に、広告コピーには「作品」としての側面も少なからずあると思うんです。それを僕の文化的な遺伝子じゃないですけど、インターネットの中に残していきたいという気持ちもあります。

自分がやる仕事は、全てが「コピー」

—カヤックで印象に残っている仕事には、どんなものがありますか?

長谷川:直近ですと、アイドルグループのBiSにコシノジュンコさんが正式加入するっていう企画ですね。ただのキャンペーンではなく本当にコシノさんがBiSに加入したんだと思ってもらうことが重要でした。だから本格的なアーティスト写真を撮影したり、プロの作曲家に新曲を作ってもらったりと色々工夫しました。僕も作詞も担当して、メンバー全員の名前をさりげなく歌詞に入れたり、縦読みできたり、普通の作詞家さんが考えないところで工夫したら反応ももらえたので、印象に残っています。

—作詞も手がけるコピーライター! かなり幅広く活動してるんですね。

長谷川 哲士

長谷川:CMの曲ってアーティストが作った曲を後から使用するって形が普通だと思います。でも最近は、中田ヤスタカさんが企業のために曲を作ったりして、きゃりーぱみゅぱみゅが企業の商品名が入った曲を歌ったりするじゃないですか。しかも、ライブではそれをみんなが口ずさんだりする。きゃりーのライブがあるたびに、宣伝してくれるのは、新しい試みですよね。

—既に音楽という分野に踏み出した長谷川さんですが、他に挑戦してみたい活動はありますか?

長谷川:あ、実は「R-1ぐらんぷり」に出ようと思ってるんですよ(笑)。芸人として生きていくのはもちろん無理ですが、「コピーライター長谷川哲士」って名前でもしテレビに出れたら、みんな検索してくれるじゃないですか。テレビと検索の連動って、リアルタイムで大きく関係し合っていますし。そうすれば「コピーライター」で検索した時に長谷川哲士が上位にくるようになって、知名度を上げられるんじゃないかと(笑)。実は前にも一度予選に出たことはあるんですが、その時は途中で噛んでしまい苦い思い出になったので、またリベンジしたいですね。

—検索サイトで上位になりたいから「R-1」に出るって発想はなかったです(笑)。長谷川さんは、時代に合わせて変わっていくようなコピーライターの道を常に探しているんですね。

長谷川:カヤックには半期前の自分とどれだけ変わったかを評価する「変態診断」というのがあって、会社自体が変わることに対して評価するという考え方なんですね。僕も他の人がやらない戦略で戦っていかないと勝てないと思っていて、コピーライターの仕事とはコレ、というような定義は持っていません。コピーといったら、ポスターや新聞広告で書くものというイメージを持つ人は今でも多い気がしますが、僕は自分がやることは全部がコピーの仕事だと思っていて。物事を色んな視点で見つめることが、コピーライターの職能だと思っていますし、コピーライターの仕事自体も色んな角度で見つめていたいです。そうして、他のコピーライターが目をつけてない土俵で、戦っていけたらなと思います。せこい考えですが(笑)、それが自分の戦い方なのかな、って思っています。

いまこれがオススメ

長谷川 哲士
松本大洋
映画としてアニメ化もされた「鉄コン筋クリート」を高校で出会った友達が教えてくれて知りました。今日着ているのはその「鉄コン筋クリート」のTシャツで、同じ柄のものを5枚持っています。カヤックには好きな漫画家さんに自分の名刺を描いてもらえる制度があるんですが、それを何とかして松本大洋さんに描いてもらうのが僕の夢です。紹介してくださる方はご連絡よろしくお願いします!

この業界で人材を募集中の企業