Column 連載

あなたの知らないデザインの世界

ヴィレヴァンらしさって何だ? 店舗デザインの秘密を下北沢店で聞いてきた

私たちの世界はデザインに満ちている。たとえば、誰もが何気なく使っている日用品や店舗。高名な賞を受賞したり、専門誌に取り上げられたりすることはなくとも、確かな目的のもとで「デザイン」されているものだ。そんな日常に溶け込むデザインの秘密を紐解いていくのが、新連載「あなたの知らないデザインの世界」。第1回は、あらゆるサブカルチャーが集う「遊べる本屋」ことヴィレッジヴァンガードにフィーチャー! 秘密基地のようなフロアに隠された店舗デザインのキモを、下北沢店の長谷川朗さんに聞いてみた。これを読めばきっと、ヴィレヴァンに寄って帰りたくなるはず!

取材・文・編集:立花桂子(CINRA) 撮影:朝山啓司(2019/06/20)

ヴィレヴァンは「興味が連鎖的につながる」お店。扱うジャンルは何でもアリ

—ヴィレッジヴァンガードといえば、いい意味で雑然とした店内のレイアウトを思い浮かべる人も多いと思います。そもそも、「何をどこにどう置くか」は、どうやって決めていくのですか?

長谷川:新店舗を立ち上げるときは、本部の立ち上げ部隊を中心に、いままでのノウハウを更新しながらつくっていきます。ぼくが入社した10年くらい前は、壁のまわりは基本的に全部本棚というのがルールでした。その本棚のジャンルと関係する雑貨を近くに置いていく感じですね。たとえば料理の本棚があったら、その近くにはキッチングッズを置いて、隣の島には生活雑貨を置く、というように。

区画ごとに、そのジャンルに興味のあるお客さんが自然と隣の棚にも手を伸ばしたくなるようなつくりになっています。

ヴィレッジヴァンガード 下北沢店 次長の長谷川朗さん。次長とは副店長のような役割。店長さんはシャイゆえ取材を受けないそうで、「だいたいぼくに回ってきます(笑)」とのこと

—ジャンルの入れ替えもあるのですか?

長谷川:はい。じつは最近、本やコミック売り場のスペースは減っています。空いたスペースに何を置くかというと、ここ数年で需要が上がっているアイドルや声優、YouTuberの関連商品。そういうふうに、需要があるものを増やして、少ないものを減らしていく。時代にあわせて更新していくのが基本ですね。

長谷川:お客さんの目に触れやすいメイン導線には、その時期に売れるものや旬なものを置く。そこに食いついたお客さんが一歩入り込んだら、次に好きそうなものがある……というように、連鎖的につながる売り場づくりを心がけています。

—さまざまなジャンルの商品があるだけに、ひとつの店舗にまとめ上げるのは大変ですね。

長谷川:パズルですよね。もちろんうまくハマらず強引な部分も生まれるのですが、その強引さが「ヴィレヴァン、バカだよな〜」とお客さんに笑われてしまうような、ある種の魅力に通じているのかもしれません(笑)。

—逆に、ヴィレッジヴァンガードで取り扱わないものってあるんですか?

長谷川:……ないんじゃないかな(笑)。単価が高いものは売れづらいので、ショーケースで飾るような万単位の商品は少ないかもしれません。お客さんから求められているものや、スタッフが取り扱いたいものであれば、なんでもアリですよ。

—店員さんの趣味も反映されているんですね。

長谷川:そうですね。ぼくは主に書籍担当ですが、『ストレンジャー・シングス』というNetflixのドラマがめちゃくちゃ好きで。日本じゃあまり知られていませんが、世界的には大ブレイクしてるんですよ。夏から始まるシーズン3にあわせてコラボ商品がどんどん出ているので、いままさに商品をかき集めている最中です(笑)。

ぼくが今日着ているTシャツも、海外の在庫を180枚抑えてもらいました! 「POP!」というフィギュアシリーズとのコラボも、ぼくの『ストレンジャー・シングス』好きを知ってくれている担当者さんが、「ヴィレッジだけ独占で卸します!」と言ってくれて(笑)。発売される商品を片っぱしから仕入れているので、品揃えはほかの店舗に負けません!

長谷川さん渾身の『ストレンジャー・シングス』コーナーはコチラ。ファンの方はぜひ下北沢店へ!

仕入れにまつわる悲喜こもごも。店舗同士の争奪戦も勃発

—それでは、ジャンルごとに担当スタッフがついているのですか?

長谷川:そうですね。小さい店舗だとひとりでいくつものジャンルを担当しますが、スタッフが多い店舗は細かく担当が分かれていて、担当者が在庫管理や発注、ディスプレイまで全部やります。慣れてくると「今月はいくらで回してね」という感じで、月の予算から補充分と新しい商品をやりくりするんです。責任も大きいですが、仕事がおもしろくなる第一歩でもあるんじゃないでしょうか。

—仕入れも、本部ではなく店舗の担当者が行うのですね。

長谷川:失敗も多いですけどね(笑)。本来は売れている商品をリピートするべきなのに、業者さんと商談が盛り上がって「いい!」と思った新商品を仕入れすぎた結果、売れないものがいっぱい並んでいる、なんてこともたまにあります(笑)。

新商品は、最初は入荷数も少なめにして、売れ始めたなと感じたら増やしていくことが多いです。その見極めがけっこう重要で、躊躇しているとほかの店舗が在庫を確保しちゃったりする。「イケる!」と思った段階で踏み込まないといけないんです。

ーなるほど、系列店同士の駆け引きもあると。

長谷川:10年くらい前に、レゴがデジカメを出したときがあったんですよ。それをテレビでタレントさんが紹介したのをきっかけに、系列店同士で取り合いになった時期がありました。ぼくはその数か月前にたまたまネットで見つけて、「絶対イケる!」と思って業者さんに探してもらっていたんです。業者さんも「仕入れたきっかけは長谷川さんだから、融通利かせますよ」と言ってくれて。広まる前に仕入れていたので、おいしい思いができました(笑)。

—アンテナを張っておくことも重要なのですね。

長谷川:ヒット商品といえば、2、3年前に日本でブームになった、フェールラーベンの「カンケン」というバッグ。わからないですけど、そのブームのきっかけはぼくだと思ってます。

—……と、言いますと?

長谷川:10年ほど前、新潟店にいたときに、カバン業者から3つだけ仕入れて自分でも使っていたんです。当時は業者さんも全然オススメしてこなかったのですが、カラーバリエーションも豊富でかわいいなと思って。新潟店で売れたので、数年前に赴任した高円寺店でも大々的に展開していました。その直後くらいに『モテキ』のドラマが始まって、「N’夙川BOYSのメンバーが使っている」と雑誌に載り始めたんですよ! そこからブームが始まったので、内心「ぼくじゃないかな」って……(笑)。

—可能性はありますね……!

長谷川:誰も言ってないけど、密かに思ってます(笑)。そういう流れを感じると嬉しいですね。もしかしたらホントにぼくだったかもしれないし(笑)。どこから火がつくかわからないです。

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「サブカルのメッカ」下北沢店で売れる意外な商品とは?