
トランスジェンダー俳優・若林佑真が語る、業界の課題と自ら切り開いた道
- 2025.11.05
- REPORT
「LGBTQ+のメッセンジャーになりたい」。その一心で芸能事務所50社に履歴書を送り、俳優の道を歩み始めたトランスジェンダー男性の若林佑真さん。
配役の少なさや当事者キャスティングの困難さと向き合いながら、2022年のドラマ『チェイサーゲーム』出演を機に活躍の場を広げている。現在は俳優業に加え、ジェンダー表現監修や舞台プロデュースなど「メッセンジャー」として幅広い表現活動に挑んでいるという。
エンタメ業界で仕事をするなか、「トランスジェンダーでハッピーな物語は面白くない」という言葉を投げかけられたこともあったという。課題だらけの業界で、自ら場所を作り続ける彼に、業界の変化と希望、俳優としての目標を聞いた。
- 取材・テキスト:ISO
- 撮影:西田香織
- 編集:吉田薫
メッセンジャーになるために。芸能事務所50社に履歴書を送り俳優人生をスタートした
——まずは俳優として活動されるようになったきっかけから伺えますか?
若林:僕は生まれたときに割り当てられた性別が女性で、性自認が男性のトランスジェンダーです。幼少期から違和感はあったんですが、それが明確になって、カミングアウトをしたのは大学生になってからでした。
ホルモン注射をはじめて、見た目がだんだん変わってきたのがちょうど大学3年くらいの就活の時期。その頃やっとまわりから男性として認識されて、ありたいように生きれるようになり始めていたのに、就活は女性の格好をして女性として挑まなければいけないということにかなり不安を覚えまして。
10年以上前なので、今のようにLGBTQ+という言葉も浸透していなければ、アライであると示してくれる企業もほぼなかったんです。就活だけはなんとか我慢してクリアできたとして、採用された場合、その先も女性として働かなければいけない。そういったこともあり「これは無理かも……」と思って、みんなが就活を始めているなか僕ひとりだけノロノロしていたんですよ。

若林佑真さん。トランスジェンダー俳優 / ジェンダー表現監修。1991年生まれ、大阪府出身。生まれた時に割り当てられた性別は女性で、性自認は男性のトランスジェンダー男性。同志社大学在籍中から演技のレッスンを受け、卒業を機に上京。俳優、舞台プロデュースの他、作品監修、講演活動など多岐に渡り活動している。2022年にはドラマ『チェイサーゲーム』(テレビ東京)にトランスジェンダー当事者役として出演。2024年公開の映画『52ヘルツのクジラたち』では、ジェンダー監修及び出演を務める。
若林:そんなタイミングで、僕が取っていた授業にタレントの杉本彩さんがイベント講師としてやってこられたんです。その講演自体も素晴らしかったのですが、最後のQ&Aでの杉本さんの言葉が忘れられなくて。
質問者の方が「最近保健所から犬を引き取りましたが、私が犬を1匹引き取ったところで毎日犬や猫が200匹殺処分されているという状況が199匹になるだけ。つまり約200匹殺処分されているという現実は変わらないですよね。私が犬を1匹引き取ることに意味はあるのでしょうか?」という質問をされました。それに対して杉本さんは、「そう仰る方はよくいますが、たった1人の力でもたくさん集まれば大きな力になってやがて世界は変わります。なのでここにいらっしゃる一人ひとりがメッセンジャーになってください」と答えられたんです。その言葉にものすごく感銘を受けまして、「僕もメッセンジャーになりたい!」と思うようになったんです。
でもどうしたら……と考えた結果、芸能のことなんて何もわからないまま、その次の週には宣材写真を撮って履歴書も書いて芸能事務所50社に送っていました。そのなかで通ったのがたまたま俳優事務所だったんです。
そこから演技について学び始めたんですが、当時まだ大学生だったので、週に一度夜行バスで事務所まで通って演技のレッスンを受けて……ということをやっていました。それで俳優として活動を開始したのが大学卒業後からですね。
木村昴の言葉で、自虐で笑いをとるのをやめた
——俳優になろうと思ってなったわけではなく、メッセンジャーを目指した結果辿り着いたのが俳優だと。大学卒業後から活動を開始して、最初はどのようにキャリアを積んでいったんでしょうか?
若林:駆け出しの頃に僕を拾ってくれたのが、木村昴さんが座長として2009年に結成した「天才劇団バカバッカ」という劇団なんです。木村昴さんはミックスルーツの方なんですが、劇団員や出演者も海外ルーツの方やセクシュアルマイノリティの方など多様なバックグラウンドを持つ方が多くいて。
演劇の内容も、「ある結婚式場が、国際結婚するカップルと同性同士のカップルの結婚式をダブルブッキングしてしまって大騒ぎ」というラブコメだったんですよね。『ハッピー・ウェディング!』(2015)というタイトルの舞台なんですが、僕はトランス男性の役で出させてもらいました。それで舞台に出たのをきっかけに、あとは横のつながりでいろんな舞台に出演させていただいて。
——木村昴さんは10年前から当事者キャスティングをされていたんですね……! 当時のできごとでなにか印象に残っていることはありますか?
若林:『ハッピー・ウェディング!』に参加してから、演者だけじゃなく、昴さんの演出助手としても参加させてもらうこともあったんです。そのとき、僕は劇団のなかで「怖い人、扱いにくい人じゃないよ」ってアピールするために、トランス男性であることを自虐的な笑いにしていたんですよね。本名を呼ばれたら女性っぽく返事したりとか、他でもそうやって笑ってもらってみんなの輪に溶け込んできたので、バカバッカでもそういうスタンスを取っていて。
でもあるとき昴さんに対して自虐的なことを言ったら、真面目な顔で「若ちゃんさ、そういうことじゃないんだよね」と指摘されて。自虐をしないと自分と違うアイデンティティの人と仲良くなれないと思ってたのは、僕のほうで。それって周囲に対しても自分に対してもすごく失礼だなってそこで気付かせてもらったんですよね。そこからは自虐で笑いを取ることはしなくなりました。

初の民放ドラマの喜びと、トランスジェンダー俳優として活動する難しさ
——良い話! そうやって俳優として活動してきたなかで、分岐点となった作品はなんですか?
若林:2022年に出演させていただいた『チェイサーゲーム』というドラマですね。俳優をやっている人は30歳を節目にこの仕事を辞めていくことが多くて、それは僕の周囲でも同様だったんです。みんな就職したり帰郷したりするなか、僕も「このまま続けても未来はあるのかな」と考えていた時期がありまして。そうやって悩みながらも30歳になったときに決まったのが『チェイサーゲーム』でした。
それが民放のドラマでトランス男性役を当事者が演じる初の作品だったんですが、出演後に観てくれたトランス男性の若い子からメッセージが届いたんです。「俳優になりたいとどこかで思っていたけれど、ロールモデルになる人がいないからなれないんだと決めつけていました。でも若林佑真という人を観て、自分も目指して良いんだって思えました」って。
その声が届いたときに、本当にやっていて良かったなと思えたんですよね。あまり出演している作品もないし俳優という旗を掲げてるのもどうなのかと悩んでいた頃だったから、なおさら俳優と名乗り続けてきて良かったって。そういう意味ですごく分岐点となった作品ですね。
若林佑真さんInstagramより
——杉本彩さんの言う「メッセンジャー」になれたわけですね。
若林:そうだと良いのですが……!
——若林さんはそれまでロールモデルがいなかった大変さもあったと思いますが、キャリアを積むなかでトランスジェンダー俳優として活動する難しさを感じたのはどんなときですか?
若林:まず、当事者キャスティングをしようにも、そもそもトランス男性の役というものがものすごく少ないんですよ。映像作品での役の多さで言えばゲイが一番多くて、次にトランス女性、レズビアン、そのあとがトランス男性だと思います。まず配役がないし、仮にトランス男性の役があったとしても日本はまだシスジェンダーの方が出演することが多いというのが現状。だから役を取りにいくこと自体がシスジェンダーの俳優さんに比べるとすごく難しいので、それが一番活動するうえで困難だった部分です。
シスジェンダー男性役のオーディションを受けたこともあるんですが、僕は156cmと小柄なので、たとえば恋愛モノでは女性の方が大きく見えたりとどうしてもハードルが高くなるんです。だからシスジェンダーのオーディションを受けるにしても、少し曲者の役のオーディションを受けることが多いのが正直なところですね。
少しずつ変化を見せるエンタメ業界。希望となった俳優の言葉とは
——そのうえで、現状の日本の映像・演劇業界における課題をどのように考えていますか?
若林:課題としては「トランスジェンダー役にはトランスジェンダー俳優を」という考えがここ数年で広がりつつある反面、それが実践されていないということ。日本では映像作品をつくるうえで第一に興行収入や視聴率を考える必要がありますが、そこに寄与できるトランスジェンダー俳優が今の日本にはいないというのが現状です。では「なぜいないか」というと、「そもそもの数が少ない」とか「本人の実力」という意見も耳にしますが、やはりそれまで活躍の場を与えられてこなかったことが大きいんじゃないかと思っていて。
圧倒的にトランスジェンダーの役が少ないうえに、その少ない役でさえシスジェンダーの人が演じて、それが「すごい」と評価の対象になってしまう。その結果、当事者の俳優が出る機会が減って、みなさんの目に留まらず、興行収入や視聴率が期待できる俳優になるチャンスさえもらえない。その悪循環からまだ日本は抜け出せていないと思うんです。
昨今トランスジェンダーを描く際に監修を入れる動きが広がってきていて、とても心強い変化だと感じています。ですが、それだけでは根本的な課題の解決はされないと思うんです。もちろんいきなり主演などは難しいとは思うんですが、たとえば学園ものであればクラスに1人や2人クィアがいるのは現実でもあることなので、映像作品のなかでも主人公の友人やクラスメイトに当事者の俳優を入れるなどしてくれたら良いですよね。

若林:あと、たとえばホルモン注射をしているトランス男性は髭が伸びる人も多いので、髭剃りのCMのモデルだってトランス男性でもできるのでは、と思うんです。毛の悩みとか身長の悩みとかってシスジェンダーもトランスジェンダーも共通している部分があると思うので、同じ広告に出たりできれば良いなって。
そうやって考えれば多様なジェンダーの人が活躍できる場はたくさんあると思うんです。だからぜひ視野を広げて雇用の機会をつくってくれると嬉しいですね。
——本当にその通りですよね。ただ少しずつ業界の認識もポジティブな変化を迎えつつあるとは感じているのですが、逆に今のエンタメ業界に対して感じている希望はありますか?
若林:監修を入れることが段々と広がってきているのはやはり希望だと思います。今いろんな作品に監修として入らせていただいているんですが、スタッフのみなさんも以前に増して「誠実にやりましょう」というスタンスで向き合ってくれていると感じていて。どうしても前は監修を免罪符のように扱っているように感じることもあったんですが、そうでなくなってきているのは嬉しい変化です。
さらに言えば、マイノリティについて真剣に考えてくれる俳優の方がエンタメ業界の第一線で活躍されているのは本当に希望ですね。

——たしかに、それは希望になりますよね。お仕事を共にしてきたなかで、「この人はすごい」と感じた俳優さんはいらっしゃいますか?
若林:杉咲花さんです。もちろんいろんな現場に行かせてもらうなかでLGBTQ+のことをしっかり考えている方はたくさんいるんですが、あれほど考えてくれている人に初めて出会いました。ものすごく勉強をされているし、その背景までしっかり考えられているんですよ。
変なことを言うんですが、僕はシス男性にしてもシス女性にしても「同性」という感覚はあんまりないんです。もちろん人にもよりますが、共通の体験や言語のあるトランス男性に「同性だな」という感覚を抱くことがほとんどで、自分の経験を話しても心から共感しあえたり、「傷つくかもしれない」という不安もなく一番話をして楽だなと感じるのですが、なぜか杉咲さんと話しているときはその感覚になるぐらい安心して話せるんですよね。
——以前インタビューさせていただきましたが、杉咲さんは本当にすごいですよね。
若林:いろいろ研修を受けたり、たくさん本を読まれているみたいですね。一度杉咲さんが読んでいる本を拝見したんですが、「どれだけ線を引いてるんだ……」と驚いたことを覚えてます。
杉咲さんが主演された『52ヘルツのクジラたち』では、制作チームが目指す方向と僕含む監修チームの問題意識とを毎回スムーズに擦り合わせることができたわけではないんです。どうしても噛み合わない瞬間もあったんですが、杉咲さんと志尊淳さんが間に入って調整してくれたからうまく進んだこともあったと思っていて。
そのときに杉咲さんが仰っていたのは「監修チームの人たちがこう言ってるからこうしましょう」と頭ごなしに意見を通すのではなく、「まずはお互い何に引っ掛かっているのかを明確にするために対話しましょう」ということ。それで話し合いの場を設けてくれたんですよね。「お互いが何に引っ掛かっているのか根幹の部分をわかりあえていないと、その場の問題は解消されたとしても根底の部分は解消されない。だからきちんとわかりあえたうえで話し合わないと意味がないと思ったんです」と仰っていて、本当にその通りだなって。
——そういうときは、意見の押し付け合いになりがちですもんね。対話で双方の考えを理解するのは本当に大事なことですが、実際にやるのは難しいですよね……。
若林:一度、杉咲さんに「どうしてここまで寄り添ってくれるんですか?」って聞いたことがあるんです。すると「今まで作品に傷つけられた経験のある人に、もう少しだけつくり手のことを信じてほしいと思ってるんです」と言ってくれて。
たしかに僕自身、物語のなかで自分自身を感じたことってなかったんですよ。たとえば恋愛ものの作品を観てキュンとすることはあっても芯から心を寄せることはなかったし、トランスジェンダーが登場する作品でも共感できないようなものばかりで。だからどこか自分も諦めている節があったんですが、そんななかで杉咲さんにその言葉をもらって本当に感動したんですよね。
時には宣伝まで伴走する。監修としての仕事とは
——『52ヘルツのクジラたち』をはじめ、いろいろな作品でジェンダー表現監修を担当されていますが、監修とは具体的にどのようなことをやられているんでしょうか?
若林:脚本だけ読んでお話させてもらうこともあれば、脚本の修正をしたうえで俳優さんと面談で演技についての話し合いをして、現場にも同行、最終的に宣伝まで関わるということもあります。
そのときのオファー次第で具体的な内容は変わりますが、基本的にやることは「当事者のリアリティから大きくズレていないか」とか「マイノリティの存在やアイデンティティを感動の道具のように消費していないか」といったことの確認ですね。アイデンティティをネタに使っていたり、映画として効果的でない否定的な台詞などがあれば軌道修正するようにしています。
——「嘘でしょ……」というような宣伝で炎上している映画を定期的に見かけるので、監修が宣伝に入るのはすごくいいことですね。
若林:仕事や日常生活で「良かれと思ってくれてるんだけど、全然違うんだよな」と思うことがあるんですよ。
たとえば、仕事柄初対面の人に「トランスジェンダーで俳優をしている若林佑真です」と自己紹介する機会があるんですが、二言目には「自分はゲイの友達もいるし偏見はないので」って寄り添う感じで言ってくれる人がいるんです。悪気があるわけではないのでその場は流すんですが、「あなたは偏見を持たれるアイデンティティである」と言われるような違和感があるんですよね。そもそもゲイとトランスジェンダーは違うし、友達がいるからといって偏見がない理由にはならないですよね。そういうものが宣伝においても出ているなと思うことは結構あります。
発信側はポジティブな心持ちで言ってくれているけれど、こちらは違和感がある……というような。なのでそういうことがあると修正してもらうようにしています。あとは作品の中身や宣伝を頑張っても、取材のときにライターさんの知識がなくておかしな方向の記事が上がってきたり…(笑)。
——監修の際には自分だけの意見にならないようにする、というのもすごく大切だと思いますが、その点はどのように気をつけているのでしょうか?
若林:仰る通り、それはすごく大事なポイントですね。最近はありがたいことに、一作品に対して監修が複数入ることがあるんです。たとえば『52ヘルツのクジラたち』では僕がトランスジェンダーの表現に関する監修として、ミヤタ廉さんがLGBTQ+インクルーシブディレクターとして入るという2人体制で参加しまして。
僕が台本を読んで「ここは違和感があるな」と思う部分があっても、それは当事者の一個人として感じているのか監修者として感じているのか曖昧なときがあったんです。そのときにミヤタさんに相談すると、一歩引いた目で「監修者の立場から問題性を感じていると思う。僕も同じく疑問を持つし」と助言をくれるんですよね。
そうやってミヤタさんと二人三脚でやらせていただけたから、そのときは全力を出せたんだと思います。ただいつもミヤタさんのような人がいるわけではないので、そのときは役と同じ状況になったことのある人にお話を聞くなどして幅広い視点から監修ができるよう気を付けています。

業界が変わらないなら自分で場所をつくる。活躍の場をさらに広げて
——俳優と監修の他に、舞台のプロデュースや講演会など多様なお仕事をされていますが、そこはどのように幅を広げていったんですか?
若林:2014年から2017年の時期は俳優としていつか日の目を見られるようにひたすら頑張っていたんですが、あるときテレビ業界の偉い方とお話する機会があったんです。
僕はバラエティに出たかったということもあり「ゲイやトランス女性の方はメディアで活躍されていますが、トランス男性はどうしてなかなか出られないんでしょうか?」と尋ねたんですよ。そしたら一言目に「女が男に成り上がるのは面白くないんだよね」と言われて呆然としてしまって。
——酷すぎますね……。
若林:で、また別の方にも「もっとハッピーなトランスの物語があっても良いんじゃないか」という話をしたことがあって。というのも僕はありがたいことにカミングアウトしても周囲から差別されず、幸せに生きてきたほうなんです。だからそういう人も描かれていいはずなのに、トランスジェンダーの映画やドキュメンタリーを見ると「つらい・苦しい・死にたい」の三拍子で。これを観て「当事者の子みんなが親や友人に言ってみよう」とはならないんじゃないかと感じたんですよ。
だから当事者の嬉しい経験やハッピーな物語があるといいと思ったんですが、「トランスジェンダーでハッピーな物語は面白くないし、自分だったらあなたを使わない」と言われたんですよね。それで求められているのは「つらい人の物語」なんだと改めて突きつけられて、こういう考えの人たちがテレビをつくっているなら、僕が活動できる場所がないかもしれない……と思ったんです。

若林:それなら、舞台の企画やプロデュースというかたちで、自分で面白い作品づくりをしていこうと決めて、仕事の幅を増やしていきました。すると次第に母校などから「講演してみませんか」と声をかけていただくようになりました。
メッセンジャーになりたくてタレントを目指し始めたというのもあるし、学生時代の自分をハグしてあげたいという気持ちもあり、講演で話してみたらそれもすごく楽しかったんですよね。それでどんどんいろんな場所に呼んでもらえるようになりました。
いつか、コメディでトランス男性を演じたい
——あとエンタメ業界とはまったく別にタイ古式マッサージもやられているんですよね。それはまたどうして?
若林:それはいろんな複合的な理由がありまして……。先ほどお話した通り、俳優の仕事以外にも幅を広げてはいるんですが、プロデュースは年単位の仕事になるし、監修も増えてきてはいますがトランス男性を描く作品がそもそも少ない。そうなると生活もやはり厳しくてどうしようかと思っていた時期に、親友のKILAというトランス男性のネイリストがマッサージも始めるためにタイに勉強に行ったんですよ。で、KILAがタイ修行から帰ってきて、いざマッサージの仕事を始めようとしたタイミングで、彼の手に手術が必要な腫瘤ができてマッサージができなくなったんです。
そんなとき、普通だったら「悔しい」とか「腹立つ」と言うと思うんですが、KILAは「人生ってマジおもれえな。生きてるわ、俺」って言ってて、すごいなって思ったんですよね。横浜の海を背景にそんなことを言われたこともあって、すぐに「じゃあ僕がやるよ」って(笑)。それで勉強して、今は四谷三丁目でKILAがオーナーを務める「GaaoGaao」ってマッサージ店で働いています。
——二足の草鞋があると気持ちも安心しますし、良いですね。そんな若林さんが俳優として今後チャレンジしたいのはどんな役でしょうか?
若林:俳優と言ってもまだそれほど経験がないのが実情なので、「若林にやってもらいたい」と言っていただけた役は全部やりたいのが大前提です。トランス男性の役はやりたいし、できればコメディでそれが叶うと良いなと思っています。トランス男性の役は圧倒的に悲劇的に描かれることが多く、日常生活を明るく描く作品って本当に少ないんです。なので日常生活を描いたコメディでトランス男性の役があれば、ぜひ演じたいですね。
——すでにいろいろなお仕事をされていますが、今後俳優以外にやってみたいことはなんでしょうか?
若林:ずっと言ってるんですが、『Tarzan』の表紙を飾るのが夢でして。筋肉バキバキってやっぱり格好良いよな、と思って筋トレをめっちゃ頑張っているんですよ。僕の周りのトランス男性って筋肉バキバキの人が多いので、トランス男性が集まって表紙を飾るのもやってみたいと思ったり(笑)。
——それ見たいですね! では最後に、お仕事の宣伝があればお願いします。
若林:いろいろと参加はしているんですが、まだ情報解禁していなくって。また都度告知していくので、ぜひInstagramをチェックしてもらえれば嬉しいです!
