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岩井俊二監督とK2 Pictures紀伊宗之による映画製作変革のビジョン。業界全体を豊かにして人材を確保するための戦略

2023年の映画の年間興行収入は2214億8200万円で、2000年以降で5番目の好成績だった。数字だけを聞くと好調な映画業界だが、制作スタッフの成り手不足や長時間労働、低賃金などの問題が山積している。

そんななか、K2 Picturesは、日本映画の「新しい生態系をつくること」を目標に映画製作ファンド「K2P Film Fund Ⅰ(ケーツーピー フィルム ファンド ファースト)」を組成することを5月10日に発表した。仕掛け人は、『孤狼の血』『初恋』などヒット作を手がけてきた紀伊宗之氏。映画プロデュースだけでなく、T・ジョイのシネコンチェーンの立ち上げや、舞台作品を劇場上映する『ゲキ×シネ』の事業化、ライブビューイング事業など、型破りな企画を実現してきた紀伊氏が描く映画業界の未来とはどういったものなのか?

すでに、是枝裕和や白石和彌、西川美和、三池崇史といった日本を代表する映画監督たちがK2 Pictuesと映画制作を進めていくことを表明している。今回はその1人である岩井俊二監督と紀伊氏の対談を通して、現在の日本映画業界の課題から目指す未来までを、お話していただいた。

  • 取材・テキスト:吉田薫
  • 写真:前田立

映画は最後まで見なくてもいい。岩井監督が考える観客との向き合い方

ー今回は「K2P Film Fund I」のお話をメインに伺う予定ですが、まずはお2人の関係からおうかがいしていければと思います。2023年に公開された『キリエのうた』で3作目のタッグとなりましたね。

紀伊:そうですね。2015年公開の『花とアリス殺人事件』が1作目で、それから10年が経ちます。たしかProduction I.Gの石井さんが「ティ・ジョイで配給をやっている変わったやつがいる」と言って、僕を岩井さんに紹介してくれたのが最初です。

ーそこからお付き合いが続いているんですね。お互いにどういった印象でしたか。

紀伊:岩井さんは私たちにとってレジェンド的存在です。しかも、「世の中はこう変わっていく」といった先見性があることに加え、非常に革新的でカメラなどの技術面もすべて理解されていた。向き合う際は、私たちも革新的なアプローチを取る必要があり、「こういうのはどうですか?」といったさまざまな提案をするようにしていました。当時、僕が所属していたティ・ジョイは既存の配給会社とは違う動きをとっていたので、杓子定規ではない柔軟さで岩井さんと向き合えたのかなと思います。

株式会社K2 Pictures 代表取締役CEO 紀伊宗之。東映映画興行入社後、劇場勤務を経て株式会社ティ・ジョイへ出向し、シネコンチェーンの立ち上げに従事。その後、新宿バルト9の開業に携わり、同社エンタテイメント事業部へ異動。『009 RE:CYBORG』、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』などを担当。また国内初のライブビューイングビジネスを立ち上げ、『ゲキシネ』の事業化にかかわる。2014年東映株式会社映画企画部へ異動。ホラー映画『犬鳴村』シリーズ、『孤狼の血』シリーズ、『初恋』、『リップヴァンウィンクルの花嫁』『キリエのうた』、『シン・仮面ライダー』などの企画・プロデュースを担当。また『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の配給担当として同作の興行収入100億円突破に貢献。2023年4月東映株式会社を退職。同年、K2Picturesを創業。

岩井:たしかに、いままでご一緒した3作品はそれぞれ新しい挑戦があったと思います。例えば、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年公開)では映画版とドラマシリーズ版をつくりましたが、これは通常とは異なるアプローチです。普通は、販売側がさまざまなバージョンをつくって、作品の本質を損なってでも売ろうとするものですが、私たちは逆に「いろいろなバリエーションがあったほうがいい」「必ずしも2時間に収める必要はない」という考え方で製作しました。

これは少し乱暴な考え方かもしれませんが、例えばテレビドラマなどでは、視聴者が5分程度見てチャンネルを変えてしまうこともあります。僕は、そこでも何かが伝わっていると考えたい。もちろん、映画館などで最初から最後まで見てもらうのが理想的ですが、作品をすべて見た人だけをターゲットにするのではなく、お客さんと映画の多様な接点のあり方をもう少し大事に考えると、作品との向き合い方、つくり方も変わってくるのではないかと。

ーそれは意外でした。作品の細部までこだわってつくられていると思うので、制作者サイドとしてはすべてを見てほしいと思うものかと思っていました。

岩井:たしかにこだわっています。すべてを見て欲しいです。でも、それ以上に、観客に何が残ったのか、が僕にとっては重要で。観客はただ黙って見ているわけではありません。映画を見はじめた瞬間から、さまざまなことを予想したり期待したりしながら見る側なりの全力で見ているんです。ある意味、野球のピッチャーとバッターの関係のようなもの。同じ球種を投げても、打者によって結果が変わるように、観客との関係も一人ひとり異なります。だから、観たい映画だったけど、結局劇場に行けなかったということすら、一つの映画体験だと思います。そう考えると、映画はそれぞれの人生の数だけ存在することになる。

岩井俊二。大学時代に自主映画を撮り始める。91年テレビドラマ『見知らぬ我が子』の演出でデビュー。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で日本映画監督協会新人賞を受賞。『Undo』でべルリン国際映画祭NETPAC賞を受賞。『Love Letter』がアジアで大ヒットを記録。その他の監督作品に『スワロウテイル』『四月物語』『花とアリス』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス殺人事件』『リップヴァンウィンクルの花嫁』『ラストレター』など。『市川崑物語』『friends after 3.11 劇場版』といったドキュメンタリー作品も手がける。監督の他、音楽家、小説家としても活躍

紀伊:そうですね。僕は、劇団☆新感線の舞台を20台ほどの映画用デジタルカメラで撮影し、そのまま映画館で上映する『ゲキ×シネ』という企画を試みました。しかし、それを新聞の文化部の方に説明すると、「そんなの映画じゃない」と言われたのです。

映画の定義とは何かということを、私はそのとき改めて調べました。すると、フィルムという記録媒体に記録し、それを投射して上映するものが映画だと書かれていた。であれば、デジタル化した映画館では映画を上映していないことになりますよね。つまり、映画は誕生以来、劇的に変化しているし、同時に映画館の役割も変容し観客も変わった。にもかかわらず、映画会社はフィルムの時代から一貫して同じことしかせず、「これが映画です」という考えに縛られているように思います。

「変わらないことを一生懸命に保全しようとする姿勢が、この30年間続いてきた」

ーファンド設立のステートメントのなかで、紀伊さんは、この30年で日本映業界の生態系は変わっていないと書かれていました。なぜ変わらないのでしょうか?

紀伊:私が感じるのは、この30年間の停滞は映画界だけの問題ではないということです。テレビ業界も同様で、みな停滞しているのです。本当にイノベーションが起きていません。

例えば、テレビの視聴率は30年前に比べて大幅に低下しているのに、テレビCMの単価はほとんど変わっていません。視聴者数が10分の1になっているのに、なぜそこに広告を出稿するのか。つまり、変わらないことを一生懸命に保全しようとする姿勢が、この30年間、国全体で続いてきたのではないでしょうか。

岩井:そうですね。デジタル技術を例にとっても、業界全体の反応が遅かったのは明らかです。僕がデジタル編集をはじめた『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』や『Love Letter』のころ、Avid Media Composerというソフトを使用していましたが、世間的にはまったく普及していませんでした。その後、大容量のストレージに対応したFinal Cut Proが登場し、Adobe Premiere Proも追いかけるように出てきて格段に便利になりました。

このような流れに乗る人たちもいましたが、業界で言うと10年ほど遅れていて、全然追いついていないという印象でした。その理由のひとつとして、大手放送局が大量にガジェットを購入すると、10年ほどの減価償却期間が必要になることがあるのかもしれません。そのため、世の中がPremiereに移行したころに、ようやくテレビ局がAvidを導入したという話もありました。現在でも機材に関して言えば、YouTuberレベルでは進化している一方で、映像制作業界がそこまで追いついていけていない。アメリカでは「ダイナソー」と呼ばれていましたが、企業が恐竜のように大きくなりすぎて身動きが取れず、進化できなくなり時代遅れになってしまう現象をそう呼んでました。

ー日本の大企業は変化が起きにくい体質であるというのはよく言われていますよね。そういった日本全体の状況がありますが、映画業界に関して言うと、一番の問題点は何でしょうか?

紀伊:一つはファイナンスの方法です。映画制作の資金調達方法として、製作委員会方式があります。「○○製作委員会」のように、多くの人々が少しずつお金を出し合い、映画村の住人たちが協力して映画をつくる。この方式は1980年代終わりころからはじまった一つの革新でした。

製作委員会方式では、みんなでお金を出し合って映画をつくるので、映画の所有者は出資者全員なのです。そうすると、新しいアイディアを提案しても、「斬新だね、でも誰もやったことがないからやめよう」となりがちです。

ー合議制だと安全をとってしまうのですね。

紀伊:そうです。しかも、製作委員会に所属するのは異なる会社の人々。「こんなチャレンジをしましょう」と提案しても、10人全員の同意を得て新しい方法で運営するのは難しいのです。結局、昨日までのやり方を、今日も明日も続けることになります。

これが長年続いてきた理由の一つだと思います。私たちK2 Picturesは、もし十分な資金があれば、自分たちのお金だけで映画をつくりたいんです、本当は。実際にそれができているのは、庵野秀明監督の『エヴァンゲリオン』シリーズか東宝の『ゴジラ』シリーズくらい。

このような状況を変えたいと思ってファンドを設立しました。岩井さんに「次の映画は上映時間4時間です」と言われたら「わかりました」と答えるし、劇場公開前にYouTubeで公開することだってできます。結局、利益が出ればいい。どのような方法でも構いません。合理性があるなら、試してみましょうというのが僕たちのスタンスです。

映画製作を魅力的な仕事にする。ファンドが描く未来図とは

ーでは続いて、具体的なファンドの活動内容もおうかがいできますか?

紀伊:私たちはいわゆるインパクトスタートアップだと思っています。取り組む問題は、映画業界の人材の枯渇。現在、助監督や制作部、照明部、撮影部などといった映画を制作する部門に人が入ってこなくなるという、成り手不足が深刻な問題となっています。このままいけば業界はゆっくりと衰退していくでしょう。そこで私たちは、映画制作をより魅力的なものにしようとしています。

そのために、投資回収後は利益を投資家とクリエイターで7対3で分けることにしました。これまでの映画業界では、クリエイターやスタッフに十分な報酬が支払われず、しかも、製作委員会には一般投資家や外国人投資家が入れないので、業界内でお金が回っていなかった。大手配給会社だけが毎年何百億円もの利益を出している状況です。これはおかしいと思います。しかも、クリエイターだけでなく映画に投資した人がほとんどが儲からなかったため、「もう二度と投資したくない」と言っている方もいました。この状況を是正したいというのが私たちの目的です。

1年に10本の作品を制作・公開して、日本国内で言うと、全作品トータルで毎年100億円の興行収入を稼げるように目指します。で、僕らは配給手数料を下げます。ゴールは投資家とクリエイターを儲けさせることで、僕らは毎日赤提灯で飲めたらいいんですよ(笑)。

紀伊:クリエイターと投資家が儲かれば、また投資してくれるでしょう。そうすると、映画産業にお金がある状況になり、作品のクオリティも上がっていく。クオリティが上がれば競争力が上がって、もっともっと世界に出ていけるタイトルが増えていくと思います。それが結果的にクリエイター、スタッフの報酬となって返ってくるはずです。カメラマンの助手が「年収1000万円です」っていうと、やってみようかなってなりそうじゃないですか? どんどん才能が集まってくると、より良いサイクルが生まれる生態系になるんです。

映画館は世界共通の最強のプラットフォーム。日本映画を世界に

ー産業として成長させることが目標なんですね。日本の状況を鑑みると、描いている成功のためには世界のマーケットでの成功が必要になると思いますが、いかがでしょうか。

紀伊:それで言うと私は映画館というプラットフォームが世界最強だと思います。みんなNetflixだと思っているでしょう。でも、映画館のほうがはるかに巨大なプラットフォームです。しかも、経済的に恵まれない人でも見られるんです。

アフリカにも映画館があって、同じDCP(デジタルシネマパッケージ。デジタルシネマを映画館で上映する標準の形式)で、同じフォーマットで上映されます。クレジットカードがなくても見に行けるんです。Netflixは160か国で見ることができますが、会員と非会員がいて、会員には基本的にクレジットカードが必要です。一方、映画館は、入場方法や価格は場所によって違うと思いますが、とにかく劇場に行ってチケットを買ったら見られるわけです。そこで、私たちの映画をみて若者が「最高だ!」と映画館から出てきたら、これ以上幸せなことはありません。そして、回収できるお金も莫大ですよ。

紀伊:ストリーミングもDVDも大事ですが、私のメインは映画館です。世界中の映画館を相手に商売をしたいし、一緒に映画をつくる監督やスタッフたちには世界を目指して作品をつくってもらいたいですね。

ーそのビジョンを聞いたとき、岩井監督はどう感じましたか?

岩井:僕もずっとそう考えていました。日本国内のマーケットだけを考えると、自分の好きなものをつくり続けるのは難しい。僕の作品を特に好きではない人たちにも度受け入れられるものをつくらなければならなくなります。そうすると僕の作品が好きな人たちは離れて行く。こうしたジレンマを対策するには、自分から国外に出ていくのは必然ではありました。自分の映画を好きな人は、映画ファンのなかの5%くらいはいるだろうと想定して、それは多分世界中どこに行っても5%くらいはいるはずで。できるだけ多くの国に配給すれば、日本の10倍の観客を得られるかもしれません。日本、中国、韓国、インド、インドネシアだけでも、世界の総人口の半分を超えます。そこをまずは開拓すれば十分かもしれない。

僕はこれまでも、自分のできる範囲で中国や韓国に行って、一生懸命に自分の映画を見てもらおうとしてきました。結果、中国のファンが日本の約10倍になりました。これからは南米や中東、アフリカにも広げていきたいです。個人的にずっとそう思っていました。

岩井:だから紀伊さんがこういう話をしてくれると嬉しい限りで。実際、音楽ではすでに世界のマーケットで稼ぐということが可能になってきていますよね。僕の映画のサウンドトラックがインドでバズったりしています。Spotifyのようなストリーミングプラットフォームが世界中に広がっていて、ある曲を聞くと自動的にレコメンデーションが出てくる機能がありますか、そんな機能のおかげかも知れません。明細を見ると100か国以上の人が誰かしら聴いているような状況がすでにあります。昔の日本のビジネスマンのように汗をかきながら海外を飛び回らなくても、ネットワークが存在している。これはすごいことだと思います。自分の作品を海外の人に見てもらうのは、昔ほど難しくなくなってきた。今後、AIによる翻訳機能がさらに進化して、簡単に字幕を選べるようになれば、いまはリージョンで区切られていますが、やがてそれも撤廃できるはずです。そういった自由な環境になっていくと面白いですね。

紀伊:日本では全然儲からなかったけれども、どこかの国でめっちゃ儲かったら、それでもいいじゃないですか。そうすると、A国でこのタイトルがヒットしたというエビデンスが残るわけです。そのうえで、今度はA国にこういうものを提案してみようということも考えられます。でもいままでは、ライセンスアウト(自社で取得したノウハウや特許権を他社に売る、もしくは使用許諾を出すこと)しちゃってましたよね。ライセンスアウトするということは、リスクもリターンも海外に売っちゃうということ。だからそれを、いかに自分たちでコントロールするかというのは、ビジネス的に課題だと思っています。

ー海外に流通させる新しい方法を見つける必要があるんですね。

紀伊:僕らが最大に取らないといけないリスクは、そこですね。世界中に自分たちがつくったものをどう届けるのか、どうやって回収するのか。でもいま、残念ながら日本の会社は日本国内にいて水際でライセンスするわけです。

製作に5億かかっても、例えば韓国の会社が来て「いくらで買ってくれる?」「300万でどうですかね」みたいな。世界中、安い金額を提示してくるわけです。でもそれは別に、安いお金で買っている人だけが悪いわけじゃなくて、販売する側もリスクのことを考えて安く売ってしまうんですよね。だったら自分の手で持っていったらいいじゃないですか。自分の手で映画館を開けて自分でやればいいじゃないですか。宣伝費のリスクも、相手に押し付けるのではなく、僕らがそのリスクを取ればいい。

製作スキームが変わることで作品も変わる。映画をシリーズでブランディングする

ー紀伊さんたちの取り組みが成功することで、それが業界のスタンダードになりそうだと思ったのですが、いかがでしょう。

紀伊:どうでしょう。周りのことは置いておいて、自分たちが目指す「投資家とクリエイターを儲けさせる」という循環ができれば、人が何と言おうと、たぶん僕らは進めると思います。

ーなるほど。いま企画も結構進んでいるんですか?

紀伊:絶賛進行中です。もちろんファンドからお金を出しつつ、いろんなアジアの人たちがお金を出してくれて、アジアスケールのものができるといいなと目論んでいます。ちょっと僕はこのぐらいで、あとは監督、お願いします。

岩井:大手映画会社と向き合っていると、毎回、単品勝負でプレゼンしていかなきゃいけないのに対して、紀伊さんと組むとラインアップでプレゼンできる。この10年で、こういうものを出して行きたいんだ、みたいなところから話ができるのがすごく楽しい。

例えば、角川映画なんかは、角川春樹さんが発明した角川文庫シリーズというIPのラインアップと、それを角川映画というショーケースにどう並べていくのかというシステムがありましたよね。そこのコーディネートがもうあまりにもうまくて。観客が角川文庫シリーズを1冊読んで、そこから映画『犬神家の一族』を見て、続けて『人間の証明』も見たくなって……その品揃えのうまさというか。スタジオジブリもそうですが、品揃えで流れをつくって行く成功事例は多々あるのに、なんでみんな後先のことを考えずに単品売りしてるんだろうみたいな。それってすごく無駄というか。

紀伊:たぶんそれは製作委員会制度もあると思うんですよ。例えば、4月公開の映画はこれ、5月はこれ、といったかたちで作品をラインアップしても全部お金を出している人が違う。そうするとブランディングができないんですよ。60年代70年代の東映は1社でお金を出して映画をつくれていたので、岩井さんがおっしゃったようなシリーズでのブランディングということができた。それこそ1作当たったら、その年の間にあと3本、同シリーズの作品をつくるみたいな異常なスピードで。

僕が東映にいたときは、『犬鳴村』シリーズをつくったり、力技でシリーズものをやっていたんだけれども、製作委員会だと基本的にはすぐ意思決定ができない。「皆さん1作目にお金を出してくれたし、次回作も出してくれますか?」というのを各々に確認するわけです。しかも、 この次回作にもお金を出す出さないの判断は、作品が当たったかというより各社の判断。「もう(出資した額の)8割回収できそうだ」というところもあれば、「リクープできないので会社の稟議が通らないですね」みたいなことを言うところもある。

今回のファンドで製作する映画は、基本的にすべて「©︎K2 Pictures」なので、そういった部分や、宣伝費の効率化なんかもできると思っています。もちろん、このかたちはハイリスクですが、そのリスクを取ることのメリットもちゃんとあるんですよ。ただのリスクヘッジとリスクテイクの話ではなく、このリスクを取ることでこれだけ素晴らしいことが起きるか、ということをわかったうえでやっていきたいと思っています。

ーファンド設立によって、映画製作が根本から変わりそうですね。本当はもっと協業する監督たちのお話や、製作中の映画についてもお話をおうかがいしたかったのですが、時間切れになってしまいました。1作品目の公開を楽しみいしております! 公開はいつ頃になりそうですか?

紀伊:ありがとうございます。来年から再来年を目指しています。お話ししたようなかたちになるよう頑張ります。

『路上のルカ』
映画「キリエのうた」を、岩井俊二監督自ら再編集し、新たな視点と時系列で描いた全10話 5時間半超えのドラマ版。
日本映画専門チャンネル(BS255)にて今冬独占放送

日本映画専門チャンネル公式ホームページ

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