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障害のある表現者の国際アワード『HERALBONY Art Prize 2025』展覧会最速レポ

昨年第1回を開催し話題となった国際アートアワード『HERALBONY Art Prize』。じつに前年比34%増となる2,650作品もの応募が集まった本アワードの、最終審査進出作品を集めた展覧会が、5月31日から行われる。

本記事では、本日5月29日に展覧会会場である三井住友銀行東館で開催された内覧記者発表の様子をレポート。アワードを主催する株式会社ヘラルボニー(以下、ヘラルボニー)の松田社長たちの思いや、審査員のコメント、見どころについてお届けする。

  • 取材・撮影・テキスト:吉田薫

応募総数、応募地域ともに昨年より大幅に増加

本アワードは、ヘラルボニーが世界中の障害のある表現者を対象に、その創作の力を発表する場を提供し、キャリアを後押しすることを目的に昨年設立したもの。今年の応募作品総数は2,650で、65地域、1,320人から応募があり、2024年の応募作品総数1,973、28地域、924人から大幅増加となった。

審査員を務めたのは、21世紀美術館の展覧会を数多く企画してきたキュレーター・黒澤浩美氏(2025年4月よりヘラルボニーのCAOに就任)、サンフランシスコを拠点とする非営利団体「Creativity Explored」のアート・パートナーシップを担当するハリエット・サーモン氏、ドイツの美術史家 / 展覧会キュレーターのクラウス・メッヘライン氏の3名。グランプリはフランス人作家のエヴリン・ポリスティックが受賞した。

左からグランプリを受賞したエヴリン・ポリスティック氏、ヘラルボニー代表取締役・松田崇弥氏、同じく代表取締役・松田文登氏

「出口のあるアワード」を大切にしている

記者発表では、最初に代表取締役・松田崇弥氏、松田文登氏から主催者挨拶が行われた。

挨拶の中で本アワードのユニークネスについて、「出口のあるアワードであること」を挙げた。実際、昨年「トヨタ自動車賞」を受賞した澁田大輔氏の作品がトヨタ自動車のラリーカーに起用された他、「JAL賞」を受賞した水上詩楽氏の作品がJALの機内ドリンクサービスの紙コップやアメニティに起用されるなど、展示にとどまらない作品発表の機会を創出している。本年もゴールドスポンサーによる賞を設置しているとのこと。

また、グランプリを受賞したフランス人のエヴリン・ポリスティック氏も挨拶し、「本当に嬉しい、信じられないこと」「とても勇気をもらった」と受賞の感想を述べた。

左2番目から審査員のクラウス・メッヘライン氏、ハリエット・サーモン氏、黒澤浩美氏

日常と美術の境界をなくすこと

記者発表では審査員3人によるクロストークも実施。「『HERALBONY Art Prize』の見どころは?」という質問に対して、サーモン氏は「いま、現代美術は転換期を迎えている」「現代人が見る価値があるものを見つめ直そうという分岐点になっている。いま私たちに訴えかける美術とはなんなのかを考えるようになっている」と述べたうえで、この転換点に本アワードの作品に触れる面白さについて語った。

またメッヘライン氏は本アワードについて「美術は美術、社会は社会と切り離して体験していたが、私たちの日常の中に作品が溶け込んでいって出会えるような状況をつくり出していることが素晴らしい」と述べた。

2人のコメントを受けて黒澤氏は次のように話す。

「いままで近代化に邁進してきた人間が、気づいたら『いま、地球どうなっているの?』というようないろいろな課題に直面している。それらと切り離して美術館で美術作品を見るのではなく、その延長上に表現があるということに気づいてほしい。ヘラルボニーの場合は、街中など至る所に作家の作品がスニークインしていることが素晴らしい。そういう評価をいただきたい」

展覧会も開催

グランプリをはじめとする各賞受賞作家と最終審査進出作家、総勢61名の作品を一堂に展示するアート展『HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition Presented by 東洋建物 | Brilia』は5月31日から6月14日まで三井住友銀行東館1Fアース・ガーデンにて開催。
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