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『ウマ娘』『グラブル』など、サイゲームスの仕事術を知る『Cygames背景美術展』レポート

ゲームの作品世界を形づくる背景美術。注目される機会はけっして多くはないが、プレイヤーの没入感に大きな影響を与える重要なファクターだ。そんな背景美術とその仕事にフォーカスを当てた展覧会『Cygames背景美術展2024-2025』が開催。

本展では『グランブルーファンタジー』『Shadowverse』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『ウマ娘 プリティーダービー』『GRANBLUE FANTASY: Relink』から厳選した背景アートを展示。ゲーム中はなかなか見ることのできないイラストの細部まで楽しめるほか、クリエイターのコメントをとおして作品制作の裏側を知ることができる。

1年で全国各地の美術大学を巡回する本展。今回は、スタート地点の会場である京都芸術大学で5月30日から6月6日まで開催された展示の様子をレポートする。

  • テキスト:吉田薫

1枚の絵の裏側にあるクリエイターの思考を紐解く

本展は各地の美術大学で開催されていることからもわかるとおり、背景クリエイターを目指している人や興味のある人がメインターゲット。筆者が展覧会を訪問した際も、授業終わりの学生の姿が多く見受けられた。

本展の見どころは、作品の制作過程やこだわりがテキストで丁寧に説明されている点だろう。クリエイターにとっては刺激になり、筆者のようなゲーム好きにとっては好きな作品を一段と深く知れる楽しみがある。

たとえば、下の写真は『グランブルーファンタジー』の展示パートのメインビジュアル「新島ユートピア」の制作工程がまとめられたもの。背景美術チームに届く「発注書」にはプランナーがまとめた概要やテーマ、ポイントが記されている。

「新島ユートピア」の発注書には、大都市 / 土地面積が広い / 建造物が乱立している都市部がある、などの設定が記されている。発注書と実際のイラストを見比べて、この文字情報だけで壮大な世界を描き出していることに改めて驚いた。

また、クリエイターのコメントが記されているイラストも多数展示されていた。

下の写真は、『Shadowverse』のメインビジュアル「学園・外観」。「画面上部のパースを崩し、見上げる構図にすることで、見る人にもこの学園の生徒になったという臨場感を味わってもらえるような画面作りを意識しました」とのコメントが。このコメントをとおしてクリエイターの思考や思いをうかがい知ることができる。

制限のなかでクオリティを保つには。「ウイニングライブ」の制作背景に迫る

手書きで描き込んだ繊細なイラストが多いなか、『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)のコーナーは少し毛色が違うと感じるかもしれない。

『ウマ娘』のコーナーで取り上げられているイラストの多くは、「ウイニングライブ」のシーンのもの。限られたメモリ容量のなかでキャラクターモーションや背景モデル、ライティングなどが複雑に絡み合う「ウイニングライブ」を制作するには、背景表現に使えるメモリ容量にも制約がある。そのなかでいかにクオリティを保てるか、さまざまな工夫がなされているという。

『ウマ娘』のレース場は実在している場所をモチーフにしているとのこと

当たり前だが、作品ごとにつくる工程も重視しているポイントもまったく異なるので、会場を行ったり来たりしながら、作品ごとの違いを比べるのも面白いかもしれない。実際、多くの方が作品間を往復しながら鑑賞をしているのが印象的だった。

光から建築まで。愛読書から知る深くて広い知識量

展覧会後半には、クリエイターたちの創造性の源が垣間見えるコーナーも。

たとえば、クリエイター10人が大切にしている本を紹介する「クリエイターの愛読書」のコーナー。

絵本作家のエロール・ル・カインの画集や『トイ・ストーリー』のアートブックなど、感性が刺激されるような本から、スピードペインティングや遠近法といった技法に関する本まで幅広いジャンルの書籍が並ぶ。

印象的だったのは、光や色、建築などに関する書籍が多くピックアップされていたこと。背景美術を描くためには、目に見えるものすべての構造を理解する必要があるのだと感じさせられると同時に、クリエイターの知識量を改めて実感するコーナーとなっていた。

美術や制作関係の書籍に混じって、『変える技術、考える技術』(実業之日本社)といったビジネス書もちらほら。選書理由に「さまざまな立場や年代の方と働く中で、一緒に働きたいと思ってもらえる人になろうと考え、この本を手に取った」とあり、チームで働く人にとって見習いたくなるような金言も並んでいる。来場された方にはぜひコメントもすべて読んでほしい。

また、本展が巡回する大学の学生から寄せられた質問に答える「クリエイターへの30の質問」コーナーも。「ポートフォリオはどういったことを意識して作成するのが良いのでしょうか?」「2D志望でも3D志望の勉強もした方が良いでしょうか?」「どのようなブラシを使用していますか?」といった実践的なQ&Aが並んでおり、ゲーム業界を志す人にとってすぐに参考になるコメントばかりだったように思う。

次は山形で開催。限定価格でのグッズ販売も

展覧会の会場ではグッズも販売されている。学生でも購入しやすいように、という思いから展覧会公式図録は通常価格より1,000円安い2,500円(税込)で販売。

全180ページものボリュームがある本展の公式図録。展示イラストはもちろん、クリエイターインタビューも収録されている

クリエイター志望やクリエイターに向けて、制作の裏側を公開している本展。残念ながら京都芸術大学での展示は終了してしまったが、今後は東北芸術工科大学、九州産業大学、名古屋芸術大学、武蔵野美術大学にて順次開催される。

近くで開催される際は、ぜひ足を運んでみてほしい。

【開催期間】
京都芸術大学:2024年5月30日(木)~2024年6月6日(木)
東北芸術工科大学:2024年7月23日(火)~2024年7月28日(日)
九州産業大学:2024年11月14日(木)~2024年11月20日(水)
名古屋芸術大学:2025年1月8日(水)~2025年1月15日(水)
武蔵野美術大学:2025年5月2日(金)~2025年5月13日(火)
※開催場所や開場時間等の詳細は公式サイトをご確認ください。

【入場料】
無料

【公式サイト】

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