
【オフィス図鑑vol.1】MIDORI.so:良質なカオスを生み出す空間のつくり方
- 2025.04.03
- オフィス図鑑
ライフスタイルの多様化、コロナ禍の影響などでテレワークや時短勤務など社員全員が出社することが当たり前でなくなった昨今。それにともない、オフィスの役割も変化しているように感じる。「コミュニケーションをとるため」「社員のモチベーションを保つため」「会社のブランディングのため」……その目的や意味には企業の個性が出るところでもあるのではないだろうか。
新連載「オフィス図鑑」は、さまざまな企業にオフィスづくりの背景やこだわりについて取材を実施。企業の考えがオフィスにどう表現されているのかという視点を通して、働き方の現在地をリサーチするのが目的だ。
連載第1回目にご登場いただくのは、CINRAもメンバーとして働くシェアオフィス「MIDORI.so」。ワークスペースの中にある、リビングのように落ち着くラウンジや人々が気軽に会話を交わす空間は、どういった思いでつくり上げられてきたのか?代表・小柴さんに背景にある思いや経緯を聞いた。
Profile
MIDORI.soみどりそう
MIRAI INSTITUTEが運営するスペース且つワークコミュニティ。現在、日本全国に4拠点を持つ。 様々な仕事/国籍/趣味/考えを持つメンバーが集まり、その混沌を通して生まれる「何か」をみんなで楽しめる場を目指している。
MIDORI.so Nakameguroがオープンしたのは2011年のこと。もともと外資系の証券会社で働いていた小柴さんは、2011年の震災と共同創業者である IDÉE創業者・黒崎輝男氏から電話で言われた「辞めちゃえば?」という言葉で退職を決意。先のことは決めずに、なんとかなる精神で会社をあとにした。
小柴さんが、現在のMIDORI.so Nakameguroに出会ったのはそんな折。誘われて物件を見に行った際、「面白い物件に出会ってしまった」と思ったそうだ。
「シェアオフィス」という言葉が日本で広く知られる前の段階でMIDORI.soがスタートしたのは、黒崎氏が「海外ではシェアオフィスってのが出てきているらしい」と情報をキャッチしていたことと、また自身の高校時代のイギリスでの寮生活の経験があったから。
私の原体験としても、高校時代のイギリスでの寮生活で、多国籍の若者がコモンルーム(ラウンジ)に集まって、ご飯を一緒に食べたり、宿題をしたり、恋愛話をしたり、さらには、自分の国の政治経済や国際情勢について喧喧諤諤議論をするそのような場があって、あの時の環境が作れたら面白いなあという気持ちがありました。(小柴さん note「ようやくNOTEを始めた。自己紹介からですが、まだ書き途中。」より)
建物に青々とした緑の蔦が絡まっていることと、トキワ荘のようにたくさんの才能がここから芽吹いて欲しいという思いを込めて、「MIDORI.so」と名付けられた。

小柴美保さん。1981年生まれ。京都大学法学部卒。シティグループ証券入社。2011年に退社後、2012年にIDÉE創業者の黒崎輝男氏らとシンクタンクMIRAI-INSTITUTE 株式会社を設立。シェアオフィス「MIDORI.so」を立ち上げ。現在は5拠点のMIDORI.soを運営するほか、シェアオフィスの立ち上げや共同運営、企業の共創空間の運営支援を行なっている。
働くことは生きること。だからこそ、「余白」を残す
現在は5箇所の拠点を構えるMIDORI.so。そのどの拠点にも共通するのは、ラウンジとキッチンを必ずそなえていること。その理由について、小柴さんはこう語る。
「普通であればデスクにしたほうが売り上げ的にはいいんですけど、あえてそれはやらずに、キッチンとラウンジにしてます。『同じ釜の飯を食う』ことを大切にしているんです。今は各拠点によりますが、ケータリングの方を招いたランチ会を実施しています」

MIDORI.so Bakuroyokoyamaのコミュニティランチ。メンバー同士が食事を囲んで和気藹々と話している

とある日の中目黒のコミュニティランチのメニュー。美味さだけではなく、素材や見た目にもこだわりのあるご飯
「働くことは生きること」と語る小柴さん。その考えは、キッチンやラウンジだけでなく、各拠点ごとにギャラリーやカフェスペースなど、仕事と直接は関係のないスペースがあることにも関係しているようだ。
「余白を残すことを大切にしています。全部をデスクにしない。ものづくりができるスタジオがあったり、ギャラリーがあったりする拠点もありますね。馬喰横山は1Fがカフェなんですけど、外部の方とメンバーが交わる場にもなっています」

馬喰横山の1Fにあるスタジオ。シルクスクリーンやリソグラフプリンター、インクジェットプリンターなど、制作に必要な道具が一式揃っている
コミュニティ「マネージャー」ではなく「オーガナイザー」である理由
MIDORI.soに働きにくるたびに驚くのが、「みんな昔からの友達だったのか?」と思うくらい、ラウンジの雰囲気や交わされる会話が和気藹々としていること。そんな空気感をつくり出しているのが、コミュニティーオーガナイザー(以下、CO)の存在。各拠点に数人おり、メンバー一人ひとりに丁寧に声をかけ、時にはメンバー同士を紹介することもしてくれる。しかも、ごく自然に。
「人が集まってくると紹介したくなるじゃないですか。この人がこんなことしているよ、みたいな。MIDORI.so立ち上げ当初から私が自然とやっていたことが、だんだんと体系化していきCOという役職ができました。あと、私は高校時代にイギリスで寮生活していたんですけど、必ず寮母さんとその家族が住んでいて、みんなとコミュニケーションをとってくれていました。そういう人がいることの大切さを潜在的に知っていたというのはありますね」
自然と形づくられていったCOという役職。その役割について、小柴さんは次のように語る。
「コミュニティマネージャーではなくコミュニティオーガナイザー。コミュニティはマネージしてあげるものじゃないですからね。一緒につくっていきましょうということです。
黒崎さんは『デザイン』を『思想』だって言ってるんですね。結局、思想の表れをどうやって空間に落とし込んでいるかっていうことです。その思想をうまく活かし表現し落とし込んでいけるかは人間で、その役割がCOという仕事だと考えています。
だから職業としてCOが認識されるといいなと思っているんです。受付や管理人ではないんだっていうことを知ってほしいですね」

MIDORI.so Nakameguroのデスクスペースの1室
コミュニティが目的になってはだめ。「良質なカオス」を目指す
ラウンジやキッチンなどをそなえた空間の在り方やCOの存在などをスターターにして、自然とコミュニティが育まれているMIDORI.so。しかし小柴さんは、「コミュニティづくりは目的になってはいけない」と語る。
「コミュニティの先に何を見るかということのほうが大事です。例えばご近所づきあいとかって、別にコミュニティをつくりましょうと言って出来上がったわけではないですよね。結局この場所をどうしたいか、どうなったら理想的なのか。その目標のためにコミュニティはあると思っています」
ではMIDORI.soが目指す理想の場所とは一体何なのか?
「『良質なカオス』というのが、ひとつのコンセプトです。いろんな人が集まってワイワイガヤガヤやりながら、新しい仕事だったり良いアイディアだったりが、ここで生まれていく。 皆さんにとって、家で仕事しているだけでは生まれないものがここなら生まれる、という場所になっていったらいいなと思っています」
そんなMIDORI.soは今年、日本橋や池尻大橋など複数箇所で新しい拠点がオープン予定。あらゆる場所で生み出される「良質なカオス」を、メンバーとしても楽しみにしたい。
【MIDORI.so Ikejiri】
現在、4月オープン予定の新拠点MIDORI.so Ikejiriのメンバー募集中。
詳細は以下のURLよりご確認ください。
https://www.realtokyoestate.co.jp/estate.php?n=22770
※応募状況によっては募集を締め切っていることがございます。URLからご状況をご確認ください。