
スマートフォンの登場以降、デジタルマーケティングの手法 / ツール / 媒体は多様化の一途をたどり、デジタルマーケターに求められるスキルも多様化している。
今回は、お笑い芸人からデジタルマーケターという異色のキャリアチェンジをしたWOWOWコミュニケーションズ、デジタルマーケティング部デジタルマーケティング課の中村翼さんに、そのキャリアについてお話をうかがった。
WOWOWコミュニケーションズでは、マーケターとしてデジタルのみならず屋外広告やオフライン領域までを扱ったプランニングを担当するという中村さん。どのようなキャリアを歩み、マーケターとして力をつけたのか。またWOWOWコミュニケーションズならでは強みとは何なのか。ロングインタビューを通して紐解いた。
- 取材・テキスト:辻本力
- 編集:吉田薫
- 撮影:kazuo yoshida
―中村さんは、元・お笑い芸人という異色の経歴をお持ちだとうかがいました。
中村:昔からお笑いが大好きで、小学校の卒業文集にも「将来の夢:お笑い芸人」と書いていたくらい。それで、大学に通いながら芸人活動を始めたのですが、なかなか芽が出ないまま、卒業後は居酒屋でバイトをしながら芸人を続けていました。
自分の中で「こうした生活は30歳まで」と決めていたこともあり、28歳の時に就職することを決めました。当時、特に関心のあった映像制作の会社に入社したのが、もう10年以上前の話ですね。

デジタルマーケティング部デジタルマーケティング課課長 中村翼さん。芸人活動、映像制作会社、広告代理店を経て2019年WOWOWコミュニケーションズに参画。デジタルの位置づけを明確にした戦略、企画立案、クオリティ管理までをトータルで対応できることが強み
中村:映像制作会社での仕事は、まさに想像通り……いや、それ以上にハードなものでした。3徹4徹も当たり前、家にも帰れなければお風呂も食事もままならないという生活で。でも、弱音は吐きませんでしたね。社会人としてはかなり遅いスタートだったこともあり、早くまわりに追いつかなきゃと必死でした。
―ガッツがありますね……! 映像制作会社ではどのようなお仕事をされていたのですか。
中村:最初は、下っ端としてADからのスタートでした。元・芸人という部分での期待も感じていたので、積極的に企画を出すようにしていたらプロデューサーたちの目に留まるようになり、徐々にプランナーやディレクターとして、撮影から編集までを担えるようになりました。
もともとものづくりが好きだったこともあって、制作の仕事はものすごく面白かったですね。でも一方で、映像を作って納品したら「終わり」というのが気になっていて。私の中では、成果物の「その先」への関心が大きくなっていたんです。
成果物の「その先」への関心が開いた、デジタルマーケティングへの道
―「その先」とは?
中村:当時、YouTube動画などを制作していたのですが、ある時、自分の担当した映像の再生数を見たら、まるで数字を稼げていないことに気が付きまして……。せっかく作っているのだから、やっぱりたくさん見てもらいたいじゃないですか。でも、そのためにはユーザーのニーズを知らなければならないし、動画をアップするプラットフォーム自体への理解も深めなければなりません。つまり、「デジタルとはなんぞや?」という基本のところから学び直さなければならないことに気付いた。なので、映像制作会社から広告代理店への転職を決めました。
その会社では営業部に配属され、プロモーション企画の立案から資料作りまで、幅広い業務を経験することができました。現場を重ねることで相当力をつけることができましたし、無知だったデジタル領域についてもしっかりと学ぶことができたのが本当によかったです。
決め手は「ゼロイチの仕事ができる」という可能性。WOWOWコミュニケーションズに参画した理由
―その後2019年、WOWOWコミュニケーションズに参画されることになるわけですが、再度転職をされた理由は何だったのでしょうか。
中村:代理店での経験や実績を生かして新しい仕事がしたい、というポジティブな理由からですね。もっと裁量を持っていろいろチャレンジしたいという思いがありました。
―なるほど。WOWOWコミュニケーションズを選んだのはなぜですか。
中村:いくつか内定をいただいていたのですが「これは!」と可能性を特に感じたのが、WOWOWコミュニケーションズだったんです。どの会社も事業内容 / 仕事内容ともに素晴らしいと感じたのですが、自分の仕事としては型にはまったことをやることになるかもという感触が大きかったのに対して、WOWOWコミュニケーションズはやりたいことを全部、なんならゼロイチからやらせてもらえそう、と思えたのが決め手となりました。
―入社されて、まずはどんなお仕事を担当されたのでしょうか。
中村:最初は、新規のクライアントの開拓が最重要ミッションでした。前職では既存クライアントに向き合うことがメインだったので、大きな違いですね。でも、ゆえにやりがいがありました。
特にクライアントへのプレゼンが大好きで。いつもA案、B案、C案、D案といくつも用意していくんですが、AからC案では真面目な、クライントが求められているものをバシッと押さえて、+αのD案はオモシロ重視と、ある種のオチみたいなものを意識したり。やっぱりどこかで笑かしてやろう、という欲が出てしまうんでしょうね(笑)。
日々新たなインプットを。「引き出し×経験」がアイデアを生む
―そうしたバリエーション豊富な企画を考えるために、普段から意識されていることはありますか?
中村:クライアントが民間企業から自治体、省庁と幅が広いこともあり、日頃からさまざまなインプットをするように心がけています。もっとも、そんなに難しいことをやっているわけではありませんが。例えば、テレビCMをよく見るとか、そういうことでいいんです。ただ、その「見方」にはこだわります。「どんなメッセージをのせているか」「なぜこのキャストなのか」等々、一つひとつ分解するように観察するんです。そうすると、その企業の抱えているであろう課題や、目指す方向性、狙いが見えてくる。もちろん、そのCMを作った代理店の意図もです。
そうした発見からヒントを得て、自分の引き出しを増やしていくようにしています。これまでの自身の経験に、ヒントを掛け算することでさまざまなアイデアが生まれてくるように感じています。
「代理店目線+事業者目線」が可能にする「次」への提案
―では、WOWOWコミュニケーションズのデジタルマーケティングの特徴はどういうところにあると感じていますか?
中村:やはり、母体であるWOWOWの知見が使えることは大きいと思います。衛星放送ビジネスや、エンタメジャンルにおける長年の経験と蓄積が活かせていることを日々実感しています。WOWOWもその歴史の中で、いろいろな失敗を経験していますので、そうした部分も開示して、正直に「こういうことをやるのは危険かもしれません」といったご提案もできる。長年の経験ベースでお話しできるのが、弊社の持ち味ではないでしょうか。
そういった特徴は、代理店目線と事業者目線の両方を持つことにつながっていて、他社にはない強みになっていると思います。
―事業者目線もあることで、クライアントの求めていることがリアルにわかりそうですね。
中村:そうですね。例えば、マーケティング支援後、クライアントにお渡しするレポートがあるのですが、マーケティング会社だと「いい結果になって良かったですね」というかたちで振り返ることが多いんです。やはり自分たちが携わったことのメリットや利益を見せたいので。でも、それって結局「自分たちのため」であって、クラインアントのためになっていないですよね。
WOWOWコミュニケーションズに入社してから、レポートも1つの「提案」なんだということに気付かされました。結果に満足してもらうことが目的ではなく、結果を深掘りして、課題を見つけ「次」を提案する。弊社がこういった姿勢でクライアントと向き合えるのは、半分事業会社としての目線や危機感を持っているからだと思います。
チームビルドの鍵は「個性」と「チャレンジできる環境」
―WOWOWコミュニケーションズ、あるいは中村さんのチームにはどのようなメンバーが多いですか? 雰囲気や特徴をお聞きしたいです。
中村:クライアントの商材にエンタメ関係のものが多いから、というのもあるかもしれませんが、やはりエンタメ好きな人が多いですね。会社全体を見ても、アニメ、漫画、アイドルといったジャンルを趣味とする人が多い印象があって、みんなでワイワイと情報交換をしています。
私のチームに関しては、20代の女性が多く、出社メインの人もいれば在宅ワークメインの人もいて、自分の働きやすい形を自由に選択しています。
―チームビルドにおいては、どんなことを意識されていますか。
中村:今年からプレーヤーと管理職を兼任するようになりいろいろと模索中なのですが、10数人ほどのチームメンバーとのコミュニケーションに偏りが出ないように心がけていますね。
毎週1時間、「月曜日会」というミーティングがあり、そこではざっくばらんにいろいろなことを話し合うのですが、例えばその週にAさんに話を振ったのなら、次週はBくんに振ろうといった具合に、その日の主役を毎回変えて満遍なく話を聞けるようにしたり。
―「個人」を大事にする、ということでしょうか。
中村:個性を活かす、ということですね。そしてそれは、常にチャレンジできる環境を整えておく、ということとワンセットだと思っています。
「クライアントの課題解決」が成長を生むサイクルを作るために
中村:実際、私自身が、WOWOWコミュニケーションズで「個性」と「チャレンジ」の大事さを身をもって知った人間の1人なんです。例えば、私はSNS運用の経験がなかったのですが、入社後に興味を持って勉強し「チャレンジしてみたい」と声にだしたことで、実際にSNS関係の案件にアサインいただけたんです。いまでは、ウェビナーでSNSマーケティングについて語れるくらいまでになっていますが、私のチャレンジしたい気持ちを尊重していただいたおかげですね。
中途で入った人間であっても、興味を持った案件や商材があればチャンスをくれる。そして、 その人の努力次第では大きく成長することができる――こうした環境は、弊社の特徴だと思いますし、すごく感謝しています。
―手を挙げやすい社風なんですね。
中村:弊社は、マーケティング事業会社として、クライントに必要となることであるならば何でもやりなさい、という方針がまずある。それが、こうした社風につながっているのではないでしょうか。
だからこそ、弊社の仕事は広告の運用に限らず、全方位的にクライアントの課題を解決していくという、多岐にわたるものになります。さまざまな経験ができるという意味ではやりがいは非常に大きいですが、同時に大変な仕事でもあります。
だからこそ私は、チームメンバーとコミュニケーションをしっかり取って、その都度彼らのやりたいことをキャッチアップし、それぞれに適した案件を振るように心がけています。もちろんその中で、さまざまなことにチャレンジできる環境や機会を用意することも忘れずに。私自身がこれまで会社や上司からいただいてきたものを、今度はチームメンバーへと手渡していく番なのだと思っています。
Profile

WOWOWコミュニケーションズは、横浜・みなとみらいにある「コミュニケーションサービス」の会社です。
音楽やスポーツなど世界中のエンターテインメントを届けるWOWOWのグループ会社として、カスタマーセンター運用と、WOWOW顧客のデータをもとにした分析を行ってきました。
約25年という歴史のなかで築いたお客様との接点や知見を活かし、デジタルマーケティング領域をはじめとしたトータルなマーケティング事業を展開しています。
◾️第一にお客様視点。本質的なマーケティング支援
私たちが提供するのは、総合型のマーケティング支援です。デジタルソリューションを軸に、オフライン施策を含む多岐にわたる領域をカバーしています。
オンライン / オフラインを横断した提案が可能であるのは、長年にわたりWOWOWグループ会社として培ってきた知見があるからです。番組のWEBサイト運営から、SNS発信、メルマガ配信、広告と、WOWOWのマーケティング支援を一手に担ってきたノウハウをもとに、高品質なマーケティング支援を実現しています。
お客様に真に満足いただくには、広い視野が不可欠です。私たちは課題にフラットな視点で向き合い、最適な手法を選択します。既存のサービスにとらわれず、時代に合った新たな価値を創造していきます。
丁寧で高品質なソリューションにより課題を解決する。そんな「本当の」マーケティングができる会社だと自負しています。
◾️エンタメの魅力に触れながら、柔軟に働ける環境です
WOWOWコミュニケーションズには、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まっていて、互いに理解し尊重し合いながら働いています。
穏やかで真面目な性格のメンバーが多く集まるこの会社には、自然と温かな雰囲気が広がっています。
「漫画やアニメのキャラクターに関わる仕事がしたい」という情熱を抱いて入社した社員もおり、それぞれが自分の好きなことを大切にしながら働いているのも特徴のひとつです。
WOWOWをはじめ、多くのエンターテインメント業界のクライアントと取引がある当社では、誰もが知る有名な映画スタジオのキャラクターや、社会現象を巻き起こした国民的漫画などのビッグコンテンツを扱うことも珍しくありません。昔から夢中になっていた大好きなコンテンツに、仕事として携われる楽しさ。そんな心弾む特別な瞬間がきっとあなたを待っています。
フルフレックスタイム制やテレワークを導入。残業も月平均15時間と少ないため、私生活とバランスをとりながら働くことが可能です。
私たちとともに、ご自身の経験や強みを活かしながら、企業の成長を支えてくださる仲間をお待ちしています!