「右脳事件」って何者?奇抜な社名に隠れた、チームワークと映像制作への想い

右脳事件株式会社

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東京・千駄ヶ谷に、一度目にしたら忘れられない名前の映像制作会社がある。その名は、「右脳事件」。そんなアンダーグラウンドな空気を感じさせるネーミングとは裏腹に、明るいオフィスでは、仲のよい社員たちが持ち前のチームワークによってNTTドコモ、森永乳業、花王、東芝など、業種を問わずさまざまなナショナルクライアントの映像を制作。いったい、右脳事件とはどのような会社なのだろうか? 同社でプロデューサーを務める森永さんと草部さん、ディレクターを務める村田さん、松岡さんの座談会からは、ジャンルを越境していくチャレンジ精神とそれを支える「チームワーク」が浮かび上がってきた。
  • 取材・文:萩原雄太
  • 撮影:豊島 望

「社名のインパクトが絶大でしたが、意外にまじめで興味を惹かれました(笑)」

サイバーエージェントの調査によれば、2017年に1,374億円の市場規模を誇る動画市場は、2020年には2,700億円、2023年には3,485億円にまで膨れ上がると予測されている。そんな時代の追い風を受ける動画業界において、創業から16年の長きにわたって、独自の存在感を発揮してきたのが右脳事件だ。同社の最大の強みは、映像というジャンルにとらわれることなく、常に「おもしろいこと」を探し求める貪欲な姿勢。いったい、なぜこのような社風が生まれたのだろうか?

—まず、「右脳事件」という会社名はとても強いインパクトがありますね。みなさんが入社するときは、やはり、この社名に惹かれたのでしょうか?

草部:最初はインパクトのある社名にびっくりしたんですが、実際に面接に行くと、意外にも奇抜さはなく、社員の働く環境や、ものづくりに対する考え方がしっかりとした会社だった。そのギャップに惹かれた部分は大きいですね(笑)。

松岡:ぼくの場合も、インパクトのある社名が最初に目につきましたね。やばそうな会社があるぞ、と。でも、代表のインタビュー記事などを見ると、まじめに仕事に取り組んでいるということが伝わってくるし、単に映像制作をするだけではなく、自分たちが「おもしろい」と思うものをつくっていこうというスタンスもよかった。そこで、右脳事件という会社への興味が深まったんです。

ディレクターの松岡さん(左) プロデューサーの草部さん(右)

ディレクターの松岡さん(左) プロデューサーの草部さん(右)

—社名と実際のギャップに惹かれた、と(笑)。みなさんは、もともと、映像業界から右脳事件に転職したのでしょうか?

松岡:前職は、大阪のポストプロダクションの会社で映像編集をしていました。業務内容としては、テレビ局のディレクターが出す指示に従いながら映像を編集していくというもの。もちろん、やりがいはあったのですが、その一方でだんだんと「こうすればもっとよくなるのでは……?」という、企画や撮影のやり方だけでなく、自分の描く構想も蓄積する。そんな悶々とした気持ちを振り切るため、右脳事件にディレクターとして転職したんです。

村田:ぼくの場合は、もともと映像の大学を卒業してから映画業界に入り、助監督や制作として現場を学んでいました。2年ほど映画業界に携わっていたのですが、制作予算も厳しく、生活もしんどくなって……。業界を離れたいという思いが膨らみつつも、映像制作には関わりたいと思っていた頃に、当時、一緒に現場にいた人から、「純粋な制作ができる、おもしろい会社があるよ」と、右脳事件を紹介されたんです。

映像業界はわりとブラックな会社が多いなか、ここは社員に対してちゃんと向き合ってくれている感じがしたし、代表の影山(二郎)もそういう働き方を変えたいという思いがあった。そこが入社の動機としては大きかったですね。

ディレクターの村田さん

ディレクターの村田さん

草部:私も同じで、やっぱり会社がしっかりしていなければ、しっかりした仕事はできません。右脳事件なら楽しみながら働けると思い、転職を決めたんです。

森永:ぼくは、将来的に大学時代の仲間と映像系の会社を起業しようと考えています。影山は、大学時代の仲間と右脳事件を設立し、15年以上経営してきました。そこで、起業のノウハウなど、何か勉強できることがあるのではと、入社を決めたんです。面接でも、「起業をしたい」という思いを正直に伝え、「30歳までは残っていると思います」と話していましたね(笑)。

プロデューサーの森永さん

プロデューサーの森永さん

—森永さんのように起業志向が強くても、右脳事件の一員として活躍できるんですね。

森永:入社してから1年4か月ほどなのですが、実際に入社して驚くのが居心地のよさです。社員にはいい人が多いし、みんな積極的にコミュニケーションを取ってくれる。リラックスした雰囲気で仕事に臨める社内体制など、勉強すべきところがたくさんあると実感しています。いまのところ、右脳事件に勝る会社をつくる術が見当たらないですね(笑)。

「映像」にこだわるのではなく、「おもしろい」というクリエイティビティーを突き詰める

—森永さんは右脳事件で、プロデューサーとして仕事をしています。これまで手がけたなかで、印象に残っているのはどのようなお仕事でしょうか?

森永:今年3月につくったNTTドコモのサービス紹介動画「ddる ラップ」篇は、とても印象に残っている仕事です。個人的にもラップが好きなのですが、この企画を提案する際には、紙の資料だけでなく、ビデオコンテという企画イメージを伝えるための映像を作成しました。この映像のなかで、ぼく自身がラップをしてイメージを伝えたところ、クライアントからとても好評をいただき、受注に至ったんです。

村田:森永の企画提案には、必ずラップネタが一つ入っているよね(笑)。


NTTドコモ demenu検索プロモーション映像「ddる ラップ」篇(動画提供:右脳事件)

森永:映像業界におけるプロデューサーの仕事は、営業や予算管理、進行管理がメインになることが多いんですが、右脳事件はもっと自由にいろいろな仕事を手がけることができます。企画の提案から、撮影助手のような仕事まで、「やりたい」という気持ちがあれば、どんなことでも挑戦することができる職場だと思いますね。

—個々人がはっきりとした分業のもとに仕事をするのではなく、それぞれのモチベーションに基づいて役割分担が決まっていくんですね。

村田:右脳事件の場合、「こうでなければいけない」というやり方は決まっていません。クライアントの課題や目的、映像の内容、そして映像を発表する媒体によっても求められるものが変わってくるので、その過程についてはフレキシブルなんです。新しく入った人のやり方が、いままでの右脳事件とはまったく別のものだとしても、いい部分があれば、積極的に取り込んでいこうという姿勢です。

森永:だから、一様な「右脳事件」というカラーで染められるのではなく、多種多様なカラーを持つ人が協力してチームワークを生み出していく。それが、結果的に右脳事件らしさにつながっているのではないかと思います。

—松岡さんと村田さんはディレクターとして業務を行っています。印象に残るのはどのようなお仕事でしょうか?

松岡:少し前に、地域プロモーションの仕事がありました。海老名、座間、綾瀬の3市による合同キャンペーンだったのですが、企画を立案する段階で、必ずしも映像にしなくてもいいという依頼でした。そこで、地域に住む50人くらいに、インタビューと写真撮影をして「ポスターをつくる」企画を実施したんです。

通常なら綿密に構成を考えてから撮影現場に入るのですが、今回はだいたいの流れだけを決めて、次から次へと撮影していくという手法をとりました。そのアドリブ感も楽しかったし、出演してくれた地域の方々もとても楽しんでくれていた。そんなチャレンジができるのは右脳事件らしさですね。

—普通の映像制作会社なら、映像を切り口としますよね。

松岡:右脳事件は、決して「映像」というジャンルにとらわれない会社です。企画を考える際にも、映像以外のアイデアのほうが結果的にいいプロモーションに結びついたり、おもしろいプロモーションが生まれたりする可能性はありますよね。そのため、右脳事件では、映像にとどまらず、グラフィックや新聞広告などを手がけることもあります。

村田:ぼくも、「印象に残っている仕事」と聞かれると、映像だけではない仕事が思い浮かびます。タイヤメーカーのグッドイヤーが『東京モーターショー』に出展した際の、プレゼンテーションの企画・総合演出をしたことです。

そのときは、未来の車をかたどったブースを訪れた来場者が、3Dメガネをかけて、3DCGの立体視映像を見ながらリアルと映像の掛け合いでプレゼンテーションを体験できる展示展開にしました。単に映像を制作するだけでなく、映像をどのように届けるかまでを考えながらつくることができたのは、とても大きなやりがいでしたね。

『東京モーターショー』におけるグッドイヤーのブース総合演出(画像提供:右脳事件)

『東京モーターショー』におけるグッドイヤーのブース総合演出(画像提供:右脳事件)

—近年、WEB動画が当たり前のものとして生活に浸透し、動画制作会社も増えていくなか、右脳事件では映像だけに固執するのではなく、ジャンルにとらわれないコミュニケーションをつくっているんですね。

村田:映像が広く普及した現在、その使い方は多様化しています。なかでも、グッドイヤーの仕事のように、映像だけで完結しないほうがいいものをつくれることもある。そんな環境のなかで、右脳事件ではひとつの手法に凝り固まるのではなく、「おもしろい」というクリエイティビティーを突き詰めることを大切にしているんです。

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クリエイティブ職は評価されにくい? 右脳事件が、チームワークと制度を大切にする理由

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映像というジャンルの枠にとらわれることなく、グラフィック表現やプレゼンテーションなどの演出も手がける右脳事件。その柔軟な姿勢を支えるのが、同社の「チームワーク」だ。チームとしての力を高めていくために、右脳事件ではどのような取り組みを行っているのだろうか?

—みなさんは、仕事をしていくうえでどのような「こだわり」を持っているのでしょうか?

森永:やはり、どんな案件であっても「いい作品」にすることですね。たとえば、単に社史を紹介するような映像であっても、クライアントとぼくらの双方が「いい映像」と思えるものをつくることは常に心がけています。

松岡:「いい映像」といっても、さまざまな意味合いがありますよね。ぼくの場合、たとえば「お値段以上」と感じてもらえるものが「いい映像」の定義です(笑)。ほかの会社でつくっている映像よりもさらに一段上のクオリティーを出し、費用対効果の高い映像をクライアントに提示する。それによって喜んでもらえることは、大きなやりがいにつながります。

森永:先日、松岡と一緒にクライアントの前で完成した映像の試写をしたところ、「ブラボー!!」とスタンディングオベーションで絶賛してもらえたんです。

松岡:人生で初めての「ブラボー!!」をいただきました(笑)。カンヌかと思いましたね。あれは嬉しかった。

—(笑)。そんな喜びがモチベーションになっているんですね。

村田:ただ、クライアントに喜んでいただくために、クライアントの言うことだけ従っていればいい、ということではありません。クライアントの要求が重要であることはもちろんですが、それが必ずしも正解とは限らない。クライアントが想像していないところまで考えたうえで提案をしていくことが大事ですよね。

草部:広告映像の目的は、クライアントを満足させることにとどまらず、その先にいるターゲットに響くことですよね。そこに到達するためには「クライアントと一緒に考えていく」という関係性が絶対に欠かせません。そのためには、何よりもコミュニケーションが大切になるんです。

知識や技術より必要なのは、挑戦への熱意と、おもしろいことへの貪欲さ

—では、右脳事件で働く社員を支える社内の仕組みやコミュニケーションにはどのようなものがあるのでしょうか?

松岡:たとえば、社員に対する評価制度としては、上司以外に、同僚や部下などがそれぞれを評価し合う「360°評価」を採用しています。そもそも、クリエイティブ職の評価は単純な数字だけでは図ることが難しい。いろいろな方向から仕事を評価してくれる制度は、働くうえでの安心感を与えてくれます。

村田:ぼくは在籍8年目になるのですが、入社した当初は、評価制度がありませんでした。それでも、当時は社員が5人程度だったので、代表の目が全社員に行き届いていたんです。360°評価は、会社が大きくなっても、かつてのような目の行き届く関係をつくる仕組みとして上手く機能していますね。

—そんな360°評価は、右脳事件の特色であるチームワークを向上させることにも貢献するのでしょうか?

森永:特に入社したての頃は、同僚から評価をしてもらうことによって、会社の一員になれたような気がして嬉しかったですね(笑)。あらためて同僚の仕事ぶりを文章にまとめたり、まとめられたものを読んだりすることで、お互いをよく理解しようという気持ちになる。それによってチームワークが高まるだけでなく、映像のクオリティーや制作進行にもよい影響を与えていると思います。

村田:今年から社内施策として取り入れられた「自主制作作品のプロジェクト」も、チームワークづくりに貢献していますね。そもそものきっかけは、昨年、ある社員が『48映画祭』という48時間で映画を完成させるというイベントを見つけてきて、「おもしろそうだからやってみよう」と盛り上がったこと。全員で取り組んだこの映画づくりがとても楽しく、モチベーションも奮い立てられたので、今年からは映画祭とは関係なく、社員全員で取り組むプロジェクトとして取り入れています。

森永:撮影では、プロデューサーである草部がカメラアシスタントを経験するなど、業務ではやらない役割を経験します。それによって、チームワークだけでなく、普段は学ばない技術を習得できるのもポイントですね。今年の作品は、WEBサイトで公開を予定しています。

自主制作作品のプロジェクト「unojikenn_studio」の現場(画像提供:右脳事件)

自主制作作品のプロジェクト「unojikenn_studio」の現場(画像提供:右脳事件)

—では、今後、右脳事件はどのような会社になっていくと思いますか?

森永:会社的には、2015年に「5か年計画」を立て、あと2年間で現在の16人から30人規模にまで成長させていこうとしているところです。会社が大きくなっていく時期に、それを肌で感じとれることに、とてもわくわくします。今後起業を考えているぼくにとっては、いい勉強になりそうです。

—では、みなさんはどのような仲間とともに仕事をしていきたいでしょうか?

草部:いま、女性社員が3人だけなので、女性が入ったらより右脳事件の多様性が広がると思います。特に、女性をターゲットにした化粧品やヘアケア製品などの案件も増えているので、クライアントとのミーティングでも女性ならではの経験や知識を活かせるはずです。


花王「春のしあわせ咲く咲くフェア」時短編(動画提供:右脳事件)

松岡:右脳事件では、熱意があればどんなことにも挑戦することができます。いろいろなことにチャレンジできる場所を求めている人に来てほしいですね。ぼくの場合も、ポストプロダクションしか経験がなかったのに、「挑戦したい」という気持ちを汲んで、さまざまな仕事に携わらせてくれました。

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—挑戦への熱意とおもしろいことへの貪欲さを持った社員が、右脳事件を成長させていく、と。

村田:ディレクターでも、プロデューサーでも、映像の知識や技術は後からついてくるものなので、そこまで重要視していません。それよりも、コミュニケーションスキルや人柄が大切だと思っています。モチベーションの高い社員が積極的にコミュニケーションを取っていくことで、右脳事件のチームワークがより高まっていくことを期待しています。

Profile

右脳事件株式会社

他人のアイデアを形にするために、眠れない日々を過ごしたり。他人の指示に合わせて、機械のようにパターンを制作したり。苦労して作ったものが、誰のためになっているのかわからなかったり。そんな環境で働くことが、あなたの希望? あなたが志した「映像を作る仕事」って、そういうこと? 私たちは、違う。

他人のものではなく、自分のアイデアを活かしたい人。他の誰でもない、自分の手で、モノを作る喜びを得たい人。自らが作ったモノで、目の前の人に喜んでもらいたい人。そんな方に来てほしい。必ずしも、理想通りということばかりではないけれど、私たちが志した「映像を作る仕事」が、確かにここにある。

旧態依然とした映像制作業界に、風穴を開けてやろう。

「右脳」は「創造性を司る」もの。「事件」は「人々の記憶に残る」もの。これが、私たちのチーム名。さあ、あなたも。

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