東京におけるワーケーションの可能性を探る。~式根島編~

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コロナ禍で耳にする機会が増えた「ワーケーション」という言葉。仕事(Work)と余暇(Vacation)を組み合わせた造語で、テレワークを活用し、普段の職場から離れ、リゾート地等の地域で、普段の仕事を継続しつつ、その地域の特徴を活かした活動(観光や自然体験など)を行うこととされています。リゾート先で仕事もしつつ休暇も楽しむ、そう聞くと、なんとなく遠方への旅行を思い浮かべる人も多いのでは? しかし「東京都」にも、離島や奥多摩など自然を感じながらワークできる場所が、実は多く存在します。東京都在住・在勤の方が東京でワーケーションを行う一番のメリットは、移動時間も短く、交通費も比較的安価であること。そこで今回は、式根島でのワーケーションの様子をお届けします。
  • 取材・文・撮影:山本梨央(CINRA)
  • 編集:青柳麗野(CINRA)

式根島ってどこにある? 気になるアクセスは?

「そもそも式根島って一体どこ?」と思う人も少なくないでしょう。式根島は伊豆大島や新島のさらに先にある小さな島。船・フェリー・飛行機の3つの方法で行くことができます。

その中でも、ワーケーションで行くのにオススメなのが、竹芝フェリーターミナルから出発する大型船。竹芝フェリーターミナルを夜22時に出発する便で、約9時間の航路を楽しみます。

式根島へ向かう大型船、さるびあ丸

「さるびあ丸」は2020年夏にリニューアルしたばかりで、船内は清潔感あふれるホテルのよう。今回ご紹介する特2等の席(料金8,850円)は、カーテンつきの2段ベッドで、プライベート空間が確保され、コンセントやコインロッカーも各ベッドに備えつけられていて便利に利用することができます。

出港してしばらくのあいだは、東京の夜景を満喫できます。レインボーブリッジの下をくぐり、海を挟んで東京タワーを眺める機会はそうそうないのでは?

さるびあ丸は横浜、大島、利島を経由して式根島に向かいます。東京だけでなく、横浜のライトアップされた観覧車や赤レンガ倉庫などを眺められるのもポイントのひとつ。これから向かう離島での静かな夜との対比を楽しむのも良いかもしれません。

途中で寄港する横浜港の夜景(横浜寄港は、金・土・日の夜のみ)

横浜を過ぎれば徐々に暗闇に向かっていきます。周りに都市が見えなくなると、天気が良ければ満天の星空が頭上に広がります。船上の天体観測で体が冷えてしまったら、コインシャワーで温まってから眠るのもおすすめ。2段ベッドのカーテンを閉めて、横になればプライベート空間が広がり、朝までぐっすり眠れます。日の出時間に起きれば、朝日を浴びた富士山が見えることも。

日の出の時間になると太平洋側には朝日が、伊豆半島側には富士山が見えます

大島、利島を経由して、朝9時過ぎには式根島に到着。9時間の航路もあっという間に感じられるほど見どころ満載の船旅で、日常からワーケーションに少しずつ自分の気持ちをチューニングしていくのも良さそうです。

帰りは式根島の隣にある新島(連絡船で10分)から飛行機で調布飛行場へいくのもオススメです。新島から調布までの飛行時間は、なんとたったの40分! 都心での電車移動くらいの感覚で島と行き来できるのも魅力のひとつです。

新島空港から調布飛行場へ向かう飛行機

ちなみに、式根島にはジェット船で行くという方法も。竹芝から2時間20分で式根島に到着できます。(冬季は天候の影響で欠航する日も多いので注意が必要です。)

時間をかけてゆっくり行くもよし、効率的に飛行機やジェット船でサッと向かうもよし。移動手段を気分に合わせて選べるのも式根島の良さと言えるでしょう。

高速Wi-Fi完備。海を眺めながらテレワーク

今回、ワーケーション先として式根島をおすすめしたい理由のひとつが、島としてワーケーションの受け入れの準備をはじめており、島内の至るところにある高速Wi-Fiを無料で使えること。どれくらい速いかというと、300Mbps出るところもあるほど。屋外でパソコンを開き、オンライン会議をしても全く支障ありません。

宿の部屋から仕事をするのも良いけれど、海を眺めながらテレワークできるのも式根島ならでは。無料で入れる足湯にもWi-Fi完備なので、足湯にのんびり浸かりながらパソコンを開いて作業というのも実現できます。

Wi-Fi完備の石白川海水浴場でテレワーク

松が下雅湯の足湯もWi-Fi完備

島内には「式根島コワーキングスペース」というサテライトオフィスがあります。もともとカフェだった場所をコワーキングスペースに改装。長時間のテレワーク作業にも疲れないオフィス家具の椅子を積極的に取り入れるなど、環境づくりにもこだわっているのだとか。

サテライトオフィス「式根島コワーキングスペース」のオープンスペース

予約すれば個室の会議室も使えます。メリハリをつけて仕事も休暇も楽しみたいという方におすすめです。

サテライトオフィス「式根島コワーキングスペース」の会議スペース

式根島といえば、やっぱり温泉!

式根島の見どころはなんといっても温泉。与謝野晶子も夫婦で通ったという湯治の場としても有名です。島には24時間無料で入れる、海に面した天然の温泉が3つあり、どれも混浴で水着必須です。

24時間無料で入浴できる松が下雅湯は温度管理もされており、いつ入っても快適

そうした温泉の1つである「松が下雅湯」は、天然温泉でありながら更衣室もあり、海水浴の感覚で温泉に入ることができます。また、夜には、ほんのりと明かりが灯り、とても良い雰囲気に。この温泉を楽しみに年に何回も式根島を訪れる常連さんが多いのも特徴です。

今回「松が下雅湯」を訪れた際、利用者は通い慣れた地元の方が多く、初めて入るときには「おねえさん、そこ熱いから危ないよ!」など気さくに声をかけてくれました。温泉に浸かっていると、漁師さんが月を見上げながら「あと1週間くらいで満月だから、大潮だな。そうすると魚がいっぱい採れるんだよ」と、ぽつり。カレンダーの予定や会議に追われている日々とは全く違う、自然のリズムのなかで生きる人々との交流に心がやすらぎます。

混浴は苦手……という方もご安心を。島内には200円で入れる「憩の家」という温泉施設があるので、一般的な銭湯のような感覚で気軽に温泉を楽しむことができます。

きり傷やすり傷などに効能があり、別名「外科の湯」とも呼ばれる足付温泉は無色透明の炭酸泉

天然温泉の入り方のコツは、どの「湯壺」に入るかを見極めること。岩で区切られた「湯壺」と呼ばれるところに手を入れて、自分の肌感覚でどの温度の湯船が心地良いか選んでいきます。足付温泉、地鉈温泉は温度管理も自然のまま。満潮と引き潮の具合で、源泉にどれくらい冷たい海水が混ざるかで温度が全く変わります。足付温泉は透明の炭酸泉ですが、地鉈温泉と松が下雅湯は鉄分が多く濃い赤色。コンパクトな島ながら、違った泉質のお湯を堪能できます。

真っ赤な湯色が目立つ地鉈温泉

刻一刻と変わる海の表情を堪能

もうひとつの見どころは、やっぱり海。夏には海水浴客で賑わいますが、冬は静かに海の青さを堪能できます。島の北部にある泊海水浴場は貝殻のような形をしたエメラルドグリーンの浅瀬。水の透明感と、真っ白な砂浜に風がつくる「砂紋」と呼ばれる模様と、自然が生み出す絶景に目を奪われます。

泊海水浴場の景観は上から眺めるのもおすすめ

島全体を360度見渡せる神引(かんびき)展望台に登れば、いかに式根島が緑に覆われているかが一目瞭然。また、新島や利島、御蔵島など、周辺の島の輪郭もくっきりと臨むことができます。

式根島や周りの海を360度見渡せる神引展望台

また、夕暮れ時に野伏港に行けば、夕日に照らされた新島がピンク色に染まります。日没の15分前くらいに見えるこの景色も、おさえておきたいワンシーンです。

夕暮れ時に野伏港から眺める新島

松が下雅湯から近い式根港から眺めた冬至の朝日

夜になれば、都心では絶対に味わえないほど漆黒の暗闇に。小の口公園では、満天の星空を眺められます。オリオン座がどこにあるかわからないくらい、明るい星から小さな星まで数え切れないほどの夜空が広がります。本格的な一眼レフカメラを持っていなくても、スマホのアプリで十分に星空が撮影できるほど。テレワークで一仕事終えた食後の散歩に、温泉の帰りに、ぜひ空を見上げてみてください。

スマホアプリのみで撮影した星空

幻の焼酎にプリプリの海鮮、島グルメ

基本的に朝食や夕食は宿で提供されます。島内にある宿泊施設は民宿がほとんどですが、想像以上に豪勢な食事がテーブルいっぱいに並び驚いたという声もよく聞きます。島ならではの新鮮な海の幸を、これでもかと味わえます。

民宿「源兵衛」の夕食

商店「みやとら」で販売されている、魚のたたきでおにぎりを包んで揚げた「たたき丸」は、テレワーク時のお昼のテイクアウトにぴったり。ハムチーズや地元名産の野菜、明日葉(あしたば)の佃煮が、おにぎりの具として入っています。島らしさをさらに感じられるもう一品は「くさや」のたたき丸。一口分の「くさや」がご飯のなかに入っています。「くさや」未体験の方でも、食べやすいと評判の島の名物です。

ファミリーストアみやとらで購入できる「たたき丸」

式根島には、島内でしか買うことができない幻の焼酎があります。島名物の「あめりか芋」と呼ばれる甘いさつまいもを使った香り高い芋焼酎「しきね」「地鉈」と、麦焼酎「神引」の3種類。通販でも買えなければ、隣の新島などでも買うことはできません。お酒好きな方は必見です。

池村商店など島内でのみ購入が可能な幻の焼酎

帰りは新島へ。アイランドホッピング

式根島を思う存分楽しんだら、飛行場のある新島へ渡ります。飛行機の時間まで少し余裕があれば、新島のポイントも抑えておきたいところ。羽伏浦(はぶしうら)海岸には、式根島とは違った景色が広がります。真っ白な断崖が延々と続く海岸線は、迫力満点です。

羽伏浦海岸に沿って続く白ママ断崖

新島にも無料で入れる露天の温泉、湯の浜露天温泉があります。新島の特産品・コーガ石でつくられた古代ギリシャ風のお風呂に、水着でいつでも入れます。隣に併設された足湯からも海が眺められ、日本にいることを忘れてしまいそうな気分に。

無料で入れる湯の浜温泉

島内でランチやお茶をしたくなったら、POOLというカフェへ。ワーケーションで仕事が少し残っている……という方は、ちょっとした作業をするのにも良いスペースかもしれません。

深煎りのコーヒーなどが楽しめるカフェ「POOL」

POOLのある道を更に奥へ進むと、新島村博物館があります。その名前からは想像もつかないほど、存在感のある外観に息を呑みました。やはり特産品のコーガ石の迫力を存分に感じることができます。このコーガ石、渋谷駅でおなじみ「モヤイ像」の原料になっています。ここからはるばる渋谷へ運んでいったものだと思うと、感慨深いものがありました。

エントランスでコーガ石が出迎える新島村博物館

島だけじゃない、東京が持つ大自然の魅力

今回は式根島・新島をご紹介しましたが、都内でワーケーションを楽しめるのは離島だけではありません。西多摩にある奥多摩や檜原村などで、山や湖に囲まれて楽しむワーケーションもおすすめ。

東京の大自然に溢れるサテライトオフィスにて、さまざまなタイプのワーケーションを楽しむことができます。

東京のワーケーションの魅力をもっと知りたいという方ににぜひご参加いただきたいのが「東京におけるワーケーションの可能性を探る」をテーマとしたオンラインイベント。セミナーとワークショップの2部構成となっています。これから会社でテレワーク(リモートワーク)やワーケーションを導入したいと考えている経営者の方、人事部の方やワーケーションという働き方に興味・関心のある方は、ぜひご参加ください。

※東京都ワーケーション普及促進等モデル実証事業

<オンラインイベントのご紹介>

■オンラインセミナー

・開催日
 2021年3月23日(火)19:00〜21:00

・テーマ
 東京におけるワーケーションの可能性を探る

・ゲスト
 日本テレワーク協会 大沢彰様
 Huuuu inc.『ジモコロ』編集長 徳谷柿次郎様
 ※多摩・檜原村・式根島のサテライトオフィスのご紹介

・参加方法
 下記URLよりお申し込みいただき、Zoomウェビナーでのご参加となります。
 https://forms.gle/KkbmnGyyonVVLw237

■オンラインワークショップ

・開催日
 2021年3月18日(木)19:00〜20:00
 2021年3月22日(月)19:00〜20:00
 ※上記いずれかにご参加いただきます。
 ※各回の定員は先着10名となります。

・テーマ
 ワーケーションという新しい働き方について考える

・参加方法
 下記URLよりお申し込みいただき、Zoomでのご参加となります。
 https://forms.gle/RD2hn4xiB2m1R9XTA

<サテライトオフィスのご紹介>

■地域回遊型
地域の観光・体験等と組み合わせたワーケーション

・Mt.TAKAO BASE CAMP(高尾)
 八王子市高尾町1799-3

・深澤渓 自然人村(秋川渓谷)
 あきる野市深沢198

・A-flow(御岳)
 青梅市御岳本町338-2

・OKUTAMA+(奥多摩)
 西多摩郡奥多摩町川井594 旧古里中学校内

■拠点滞在型
拠点での生活体験や地域活動と組み合わせたワーケーション

・檜原おいねハウス(檜原村)
 西多摩郡檜原村字三都郷2762-1

■島しょ振興型
島しょ地域におけるワーケーション

・式根島コワーキングスペース(式根島)
 新島村式根島344‐5島Cafe963内