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「結果を出すクリエイティブ」の追求で仕事はどこまでも広がる。ザッツ・オールライトの信念

株式会社ザッツ・オールライト

株式会社ザッツ・オールライト

クライアントの課題に対し、クリエイティブの力でアプローチするザッツ・オールライト。手がける領域は、企業や商品のブランディング、商品・サービス開発、事業開発、広告制作、グラフィックデザイン、イベントプロデュース、オリジナルプロダクトまで幅広い。ときには、旅館のプロデュースや、大学アメリカンフットボールチームの強化サポートまで担うことも。

「クライアントの課題と向き合うと、結果的にやることが増えていく」。そう語るのは、アートディレクターの河西達也さん。その根底には、デザインを装飾のためのツールではなく、本質的な価値を届けるためのコミュニケーションと捉える考え方がある。

同社のクリエイティブについて、また、個々の能力を最大化するユニークな働き方について、河西さんと、同じくアートディレクターを務める湯本メイさんに聞いた。
  • 取材・文:榎並紀行(やじろべえ)
  • 編集:四位拓郎(CINRA編集部)

デザインは「本質」を届けるコミュニケーション

―商品デザインやブランディングはもちろん、商品そのものの開発や店舗のディレクションなど、仕事の内容がとても幅広いですね。

河西:なんでもやる会社というよりは、結果的にそうなったというほうが正しいと思います。うちにご相談いただくクライアントで多いのは、「現状のビジネスに問題意識は持っているものの、具体的に何をどうすればいいのかわからない」というケースです。その場合、まずは具体的な課題を洗い出すところから始めることになる。その課題に一つひとつ向き合っていくうちに、気づけば商品開発からクリエイティブ全般まで幅広く伴走している、という感じですね。

株式会社ザッツ・オールライトでアートディレクターを務める河西達也さん
1980年生まれ、鎌倉市出身。桑沢デザイン研究所プロダクトデザイン学科中退。DRAFT(D-BROS)を経て、2010年にザッツ・オールライトの立ち上げに参加。手で触れられる領域を得意とする。近年では菓子のブランド開発に注力。洋菓子のフランセ、GENDYなど、商品開発からロゴ・パッケージ・店舗デザインまで広く携わる

湯本:愛知県犬山市にある老舗旅館「灯屋 迎帆楼」さんのリブランディングプロジェクトは、象徴的な事例と言えます。もともとは、「旅館の全面建替工事に伴い、新しいロゴマークをつくってほしい」というご依頼だったのですが、先方とコミュニケーションを取るうちに仕事の領域がどんどん広がっていきました。

ご相談をいただいた当時、すでに工事は始まっていたのですが、再スタートを切るにあたってのコンセプトが固まっていない状態だったんです。そこで、ロゴマークのデザインだけでなくコンセプトから提案させていただき、そのコンセプトに沿って内装やサービスまでディレクションしましょうと。最終的に、1年以上の月日を重ねて、コンセプトワークからアートワークまで全般をプロデュースすることになりました。

株式会社ザッツ・オールライトでアートディレクターを務める湯本メイさん
1986年生まれ、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。株式会社マッキャンエリクソンを経て、ザッツ・オールライトに入社し、現在8年目。

―最終的には内装や館内の音楽、スーベニアの選定にまで携わったそうですね。

湯本:そうですね。クライアントの企業や商品、サービスが本来あるべき姿、あってほしい姿を追い求めた結果、手がける領域が広がっていきました。

「灯屋 迎帆楼」はお客さまにはもちろん、地元の方にも愛される宿になってほしいという想いもあったので、ツールや食器などを地元の作家さんにお願いをしたり、スーベニアも、自分たちで地域を回りながら良いものを探したりして、地元の方たちを巻き込んでプロジェクトを進めていきました。

そして、そういうやり方を繰り返していると、「ザッツさんならこういうこともお願いできるのでは?」と、ご相談いただく内容の幅がどんどん広がっていきました。

事例:灯屋 迎帆楼
大正8年から旅館業を営む「灯屋 迎帆楼」。全面建替工事に伴い、コンセプトワークを含めたアートワーク全般をザッツ・オールライトがプロデュース。当初はロゴデザインのみのオーダーだったが、コミュニケーションを重ねるなかでブランディングの全権を任されることに。コンセプトの立案からネーミング、ロゴ、サイン、照明、番傘、浴衣、ユニフォーム、ロビーラウンジ、お着き菓子、音楽・書籍・アメニティ・食器・スーベニアの選定、内装、ステーショナリー、メニュー、オリジナル手土産、広報ツールなど、ハード面・ソフト面の多岐にわたる領域に携わった。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

(画像提供:ザッツ・オールライト)

―そういう経験を重ねていくと、アートディレクターとしての幅も広がりそうです。

湯本:そうですね。もともと、自分の経歴としても、企画を考えるのが好きで、前職で広告代理店で働いていたというのもあり、表面的なデザインだけではなく一気通貫できる骨太なアイデアや企画のある、ものづくりをしたいと考えています。

アートディレクターというと、どうしても「ビジュアル面の責任者」というイメージが強いですし、実際にそういうケースが多いと思いますが、ザッツ・オールライトではビジュアル面に留まらない幅広い仕事をしてきました。

―代理店のときの仕事と、具体的にはどういう違いがありますか?

湯本:代理店では商品がすでに決まっていて、それを世の中の人にどう伝えるか、というコミュニケーション部分の役割を担うことが多いので、「より良く見せる」ことにフォーカスしたクリエイティブが求められます。でもそれって、場合によっては商品とアウトプットのあいだに乖離が生まれたりしますよね。

ですが、ザッツ・オールライトでは、新しいスイーツブランド開発の場合、ロゴマークやパッケージのデザインだけでなく、パティシエの試作を食べてコンセプトどおりの味かどうかを確かめたり、要望を伝えたりすることもあるんです。もちろん、最終的に商品が置かれる店舗のデザインも担いますし、店頭で販売するスタッフの人選や育成を行なうことも。代理店ではできなかった、一貫したクリエイティブコミュニケーションデザインが、ここではできている感覚があります。

できる限り良質なプロダクトをつくり、メッセージが伝わる最適な表現方法を考える。やろうとしていることは難しいことではなく、とてもシンプルです。

河西:ぼくらは、企画やデザインは装飾的なツールではなく、お客さまの等身大の価値、つまり本質を届けるためのコミュニケーションだと考えています。そのため、企画やデザインが先行するような仕事のやり方を良しとしていません。「なんとなくカッコいい」とか「なんとなくオシャレ」みたいなボンヤリしたイメージではなく、わかりやすい価値として届けられるリアリティのある仕事をしたい。なので、「結果を出すクリエイティブ」をつくるということも、強く意識していますね。

根底にそうした考え方があるから、結果的に商品開発なども含めた具体的なサービスにまで踏み込んでいくのだと思います。

湯本:また、クライアントの決裁者の方と直接会話をしながら進められる案件が多いことも、うちの特徴ですね。クライアントにこちらの意図や想いを伝えやすいので、結果として、より良いクリエイティブにつながっているのだと思います。

ペルソナや効果測定など、いわゆる「マーケティング」のかたちに囚われていたら答えは見つけられないと考えているので、自分の肌感覚での提案を信じて受け入れてもらえるような関係をクライアントと築けていることも大きいです。

事例:丸福樓
京都・鍵屋町にある任天堂の旧本社社屋。1889年より歴史を刻んできたこの建物をホテル『丸福樓』として生まれ変わらせるプロジェクト。Plan・Do・See Inc.がプロデュースを行ない、建築の設計監修は安藤忠雄が務めた。ザッツ・オールライトは「歴史を受け継ぐ」という考えのもと、ロゴマークを含むグラフィック全般のアートディレクションおよびデザインを担当した。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

事例:御菓子司 白樺「たらふくもなか」
東京・錦糸町にある街の菓子処「白樺」。厳しい経営状況のなか「会社を盛り上げるような商品をつくってほしい」とザッツ・オールライトに依頼があった。予算規模の関係で継続的に関わることが難しくなる可能性も考慮し、「なるべく一人歩きできる商品をつくろう」と開発したのが「たらくふくもなか」だ。ぽっちゃりした招き猫がのんびり寝そべる、愛らしいフォルムが話題を呼び大ヒット。テレビドラマにも登場するなど、現在では同社の看板商品になっている。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

関係性は仕事を通して強くなる。形式的なマネジメントをしない理由

―ザッツ・オールライトは「プロジェクトファースト」の発想から、出社時間や働く場所も自由、会議もめったに行なわないと伺いました。これといったマネジメントもなく、一人ひとりの裁量で仕事ができる、ある意味フリーランス的な働き方が認められているのも大きな特徴の一つですよね。

河西:ぼくの経験上、会社の会議って半分以上は無意味なんじゃないかと思うんです。意味なく集まり話し合ったところで問題は解決しないし、時間の無駄ですよね。それなら、プロジェクトに関わる一人ひとりが責任を持って、自分で解決できることは解決したほうがいいと思っています。

湯本:正しい、間違っているなんていうのはなくて、プロジェクトに向き合った結果「私はこう考えています」という意見をそれぞれがしっかり持っていれば、短いミーティングでも、クライアントの前に立つときも、ディスカッションが活発になるので、スムーズですよね。とにかく、プロジェクトのために最適な動き方をしましょう、という考え方が根底にあります。

―定例の会議がないぶん、必要なときに必要なコミュニケーションをとっているということなのでしょうか?

河西:そうですね。コミュニケーション自体はかなり密にとっています。マネジメントなしでも組織やプロジェクトが成立するのは、一人ひとりのメンバーのことを深く理解できているからこそだと思うんです。互いの苦手なこと、得意なことを把握し、フォローし合う。苦手なことを克服させるのは時間がもったいないから、各々が得意な部分を思いっきり伸ばし、チームとしての総合力を高める。自然なかたちで、それができているように思います。

―メンバーのことを深く理解するために、心がけていることはありますか?

河西:心がけていること、とは少し違うのかもしれませんが、組織においてその人のことをもっとも理解できるのは、やはり仕事だと思います。それぞれ何が得意なのか、何に興味があるのか、そして、どんな思いを持っているのか。いっしょに仕事をすることで理解が進み、関係性が強くなる。正直、マネジメントをシステマチックにやるより、よほど本質的だと思っています。

湯本:そういう意味では、「これがやりたい」と、何かしら強い意思を持っている人にとっては、とても働きがいのある環境だと思います。ザッツ・オールライトという会社は可能な限り、そうした思いを尊重して、実現する方法をいっしょに考えてくれますから。育児や出産などでフルタイムで働くのが難しいメンバーのために、リモートでもできるSNS事業を開発したこともあります。

事例:寿スピリッツグループ
東証一部上場の製菓メーカー「寿スピリッツグループ」。ザッツ・オールライトでは10年以上にわたり、新規ブランドの商品開発からSNSプロモーションの運用まで、幅広い領域で同社のブランド戦略を一手に担っている。最初のきっかけは経営者からの「新しい東京土産をつくりたい」というオーダーだったが、商品開発だけでなくネーミングや店舗デザイン、従業員の制服に至るまでトータルブランディングを実施。そこから長い時間をかけて信頼を積み上げ、現在ではインハウスの広報戦略室のような関係性を構築した。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

1957年創業の洋菓子ブランド「フランセ」。長年愛されてきた歴史を未来につなげるために、創業60年を迎えた2017年にリブランディングを行なった。「原点回帰」をテーマに、ブランドを代表するお菓子「ミルフィユ」の原点を考察し、「果実をたのしむ洋菓子」というコンセプトにたどり着く。ロゴ、パッケージデザインにおいて「果実の瑞々しさ」を表す設計となっている。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

事例:GENDY
女性向けの商品が多いスイーツ市場で、男性にも贈答しやすいようなブランドをつくろう、というアイデアのもと「紳士の一級品」をコンセプトにスタートした贈答用高級菓子のGENDY。青山店の「ザ・プレミアム ビターキャラメルバー」に次ぐ第二弾として、銀座店の「ザ・プレミアムキャラメルブランデーケーキ」を開発。使用するブランデーを探すところからスタートし、試作を繰り返しながら、約1年をかけて商品を形にした。また、店舗の内装もディレクションを行ない、小物一つひとつにこだわりを詰め、ディスプレイをコーディネートした。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

GENDYの「ザ・プレミアムキャラメルブランデーケーキ」
手づくりゆえの限定台数販売、一台ごとに刻印される日付とロットナンバーなど、送り手の気持ちまでも届けるこだわりが随所に散りばめられている。
(画像提供:ザッツ・オールライト)

求めるのは「1年後にどんな仕事をしているのかわからない状況を楽しめる人」

―今回、ディレクターとデザイナーを募集するということですが、それぞれに求めることを教えてください。

湯本:ディレクターに求めたいのは、状況を正確にとらえる力と、丁寧なクライアント対応ですね。大体のプロジェクトは3名ほどの少数で動くことが多いので、それぞれの役割を理解しながらクライアントとアートディレクター、外部クリエイターとのあいだに立ってほしいです。

また、「これでいいか」の妥協を積み重ねるのではなく、それぞれのクリエイターが自分の力を最大化でき、クオリティーを上げられる環境づくりを目指してほしいです。新しい領域の仕事が多く、進め方も自分で開拓していくことが多いので、どんな状況でも楽しめる方が向いているかもしれません。案件の予算管理や意思決定も個人に委ねられているので、フリーでも食べていけるスキルは自然と身につく環境だと思います。

河西:デザイナーは、ぼくの担当しているプロジェクトを中心に活躍してほしいと思います。スイーツブランド開発を含め、さまざまな領域のブランディング案件があります。いまの自分に足りないものは何か、数年後にどうなっていたいか。意思があれば活躍の幅はどんどん広がるので、自分らしさを積極的にアピールしながら、自分の思いを仕事で実現してほしいですね。

湯本:繰り返しになりますが、ザッツ・オールライトは個々の思いや武器に合わせて、新しく仕事をつくっていくようなところがあります。ですから、最初はデザイナーやディレクターとして入社した人も、1年後には全く違う仕事をしているかもしれません。それはそれで全然アリだと思いますし、むしろ自分の役割を限定せずに「やりたいことを実現させるパワー」を持った人のほうが、活躍できる会社ではないかと思います。

Profile

株式会社ザッツ・オールライト

2010年の設立以来、どんな依頼にもザッツ・オールライトの心意気で応え、「結果」を出してきました。

・老舗旅館やホテルのリブランディング
・スイーツ、食品メーカーの商品、店舗、事業開発
・信州奥地の村おこし、京都駅前の町おこし
・コンサルティングファームの企業価値の再定義
・経営破綻した飲食店の再建
・歌舞伎役者のファンクラブやサロンの開設、運営

北海道から沖縄まで(ときに海外も)、多種多様な案件を担います。業種、ジャンル、予算、スケジュール……。ひとつとして同じプロジェクトはありません。

現場を訪ね、一次情報を立体的に収集し、ときに飲み明かし、意見を交わしながら腹落ちするまで課題を咀嚼します。

前例のない解決策が必要なため、プランはゼロから着想。社内外のメンバーを巻き込み、協議を重ね、機能するクリエイティブをカタチに。

着実に、果敢に、プロジェクトを成功へと導きます。

DRAFT、リクルート、McCann、サイバーエージェント、楽天野球団、産経新聞社、キヤノンなど前職さまざまな仲間が活躍しています。

難解なプロジェクトが山ほどあります。紆余曲折を一緒に楽しみましょう。

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