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全員がワンフロアで働くからこそできること。クリエイターとともに歩むサン・アドの映像本部

株式会社サン・アド

株式会社サン・アド

サン・アドは、100人を超えるスタッフがワンフロアで一緒に働くことを大切にしている会社です。オフィスには、クリエイティブディレクターやアートディレクター、コピーライターといったクリエイターとともに、プロデューサー、プロダクションマネージャーといった映像制作に携わるスタッフが一堂に会し、クオリティ高い制作物をつくるという同じ目標のために、力を合わせて働いています。

映像本部は、そのなかでもクリエイターが考えた企画を映像として具現化するプロフェッショナル集団。企画から撮影、編集と映像制作のはじまりから終わりまで、すべての工程ですべてのスタッフと関わり、その要となる存在です。この記事では映像本部の遠藤萌さん、山田真代さん、鈴木貴大さんにインタビューを実施。映像本部で働くことのやりがいに迫ります。
  • 取材・文:榎並紀行(やじえろべえ)
  • 撮影:タケシタトモヒロ
  • 編集:佐伯享介

質の高いアウトプットをクリエイターとつくり上げるには?

―サン・アド映像本部の魅力を感じてもらうには、実際にクリエイターに出ていただくのが一番かと思い、映像本部の遠藤さんとクリエイティブディレクターの岩崎亜矢さんに対談していただくことにしました。まず、お二人が一緒につくり上げた映像作品について教えてください。

遠藤:はい。大正6年創業のきもの専門店「きものやまと」さんが2022年からスタートさせた「#ようこそ大人へ」プロジェクトの映像制作です。岩崎さんがクリエイティブディレクター兼コピーライターを、私がプロデューサーを務めました。

―このプロジェクトは、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?

岩崎:きものやまとさんのお仕事は、もともと私がブランドのステートメントで関わるなど、コピーライターとして長くお付き合いがありました。「#ようこそ大人へ」プロジェクトの企画が持ち上がったのは、成人式が中止になるなどコロナ禍で振り回される新成人を励まし、応援したいと社長さんから直接相談を受けました。そこで、まず私のほうで「ようこそ大人へ」のタグラインとステートメントを書いたんです。

左から岩崎亜矢さん、山田真代さん、鈴木貴大さん、遠藤萌さん。岩崎亜矢さんはコピーライター/クリエイティブディレクター。主な仕事に、GINZA SIX ネーミング、サントリー「どうぞ、ほどほどの人生を」、サントリー×コカ・コーラ「誰よりも同じ未来を見つめる存在。それが、ライバルってこと」、JINS「私は、軽い女です」、ツインバード「ぜんぶはない。だから、ある」、村田製作所「この奥さんは、介護ロボットかもしれません」など。長年行なっているハンバートハンバートのクリエイティブディレクションや、書籍『心ゆさぶる広告コピー』、『僕はウォーホル』、『僕はダリ』(すべてパイインターナショナル)なども。

岩崎:提案したところ、社長が大いに気に入ってくださり、当初、このコピーをもとにグラフィックのみで製作予定だったのですが、ぜひ、映像化もしようという流れになりました。そこで、私から映像本部に相談を持ちかけたのです。

きものやまと「ようこそ、大人へ。」特別ムービー。監督は瀬田なつき、カメラは新津保建秀、ナレーションは佐藤良成(ハンバートハンバート)が担当している。

若いPr、PMには素直に自分を表現してほしい

遠藤:当時は、私がPMからプロデューサーになったばかりのタイミング。岩崎さんには私が新人の頃からお世話になっていますが、プロデューサーという立場でご一緒するのは今回が初めてでした。正直、プロデューサーとして未熟な部分が多くて、岩崎さんはハラハラしていたと思います……。

遠藤萌さん。プロデューサー。新潟大学教育学部卒。子どもの頃から見てきた烏龍茶のCMに憧れ、教員採用試験受験中にサン・アドの採用試験を受ける。2013年サン・アド入社。村田製作所、伊藤忠商事などの仕事でプロダクションマネージャーを経て、サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」GR、きものやまと「ようこそ大人へ。」イノアック企業広告などの仕事でプロデューサーとして参加。

岩崎:遠藤は性格が素直で、不安が顔に出ちゃうんですよね(笑)。当時はコロナの影響で打ち合わせがすべてリモートだったんですけど、画面越しでも不安そうにしているのが伝わってきて、心のなかで「笑え〜」って念じていました。本心はさておき、どんなときでも笑っていたり、デンと構えていてくれるプロデューサーってクライアントにもクリエイターにも安心感を与えてくれますから。

ただ、遠藤のように若いプロデューサーやPMの場合、素直に自分を出すことはとても重要なことだと考えています。

―それはどうしてですか?

岩崎:プロデューサーにもPMにもいろいろなタイプがいて、こうじゃなきゃダメというものはありません。ただ、これは私の一意見ではありますが、 個性や人間味を感じられる人のほうが関係各所から慕われる確率がかなり高い。そういう魅力的なプロデューサーは、結果的に一人いるだけでクライアントをいい意味で巻き込むことができ、プロジェクトがスムーズに動き、アウトプットも良くなる。サン・アドの映像本部メンバーにもそういう人がたくさんいますし、若い人にはとにかく自分らしさを全開に出してほしいと思っています。

―考えていることも、どんどん表に出してほしいと。

岩崎:そうですね。私は打ち合わせの場で、若いPMの人も含め、一人ひとりに「どう思う?」と必ず聞くようにしています。ただ、経験が浅い人だとクリエイティブに対してどう意見を言っていいかわからない場合もあると思うし、なるべく発言しやすい雰囲気にするようには心がけています。自分の考える範囲なんてたかが知れてるし、クリエイティブの意見が絶対に正しいなんてことがあるわけもない。だから幅広い年齢、さまざまな立場の人の声を聞けるって仕事においてとても貴重なことで、20代から70代までのすべてのスタッフが一つのフロアで働くサン・アドの、それは強みであり、面白みである、と思っています。

サン・アドだからこそ経験できること

―続いて、プロデュース本部の丸山博之さんも交え、映像本部2年目の若手APMである鈴木さんが参加したニッスイさんの企業CMの制作について伺います。

丸山博之さん。法政大学卒。就職活動時、さまざまな業界にコミュニケーションという手法で関われる広告業界を魅力に感じ、志望。2015年、サン・アド入社。担当してきた主なクライアントはサントリー、TOYOTA、ニッスイ、SEIKO、青森県、NTTドコモ、厚生労働省、コンバースジャパン、横浜DeNAベイスターズ、厚生労働省、川崎重工、東京ミッドタウン、三井不動産、朝日新聞、KONAMI、muraco等。消費されるだけでなく、物語や文化を一緒に積み上げていけるようなコミュニケーションを目指している。

丸山:まず、私が所属するプロデュース部について説明させてください。映像本部は企画の映像化という専門性を持った部署なのですが、プロデュース本部は宣伝広告の枠にとどまらず、クライアントのビジョン・ミッション設計などのコンセプトワークやロゴ・ネーミング開発、商品パッケージやプロダクト制作、イベント、ウェブの制作、さらには空間デザインなど、さまざまな領域のプロデュースを担当しています。サン・アドとしては、2年前からニッスイさんの企業広告を担当しており、私の役割はコミュニケーション全般のプロデュースです。映像本部には、その肝である企業CMの制作をお願いしました。

―丸山さんの目から見て、鈴木さんの働きぶりはいかがでしたか?

丸山:今回の企業CMでは特に若い人の視点が必要でした。私たちは一般消費者の方に向けて広告をつくっているので、彼のような新しい視点が重要なんです。同じチームで案件を続けていると、阿吽の呼吸でわかりあえるメリットはあるのですが、どうしても発想が似通って来てしまいます。そういった意味でも、社会人1年目の鈴木くんの発想や考え方は、特に新鮮に感じましたね。

鈴木:監督からは「若い人の意見をどんどん出してほしい」と言われました。「新しい食」がテーマだったこともあり、チーム最年少の僕の視点から、同世代が考えていること、求めていること、ワクワクすることを教えてほしいと。そこに対しては、自分なりの意見を出すことができたかなと思います。

鈴木貴大さん。青山学院大学法学部卒業。大学在学中に行なっていた音楽活動を通じて映像制作に興味をもち、2023年にサン・アドに新卒入社。アシスタントプロダクションマネージャーとしてニッスイ「新しい食篇」、サントリーPSB「いい焼肉っぷりだ篇」、LINEMO 「新社会人篇シリーズ」などに参加。

鈴木:たとえば、キャストを決めるオーディションに参加させてもらったとき、一人だけボソボソしゃべる人がいたんです。パーティー会場とかにいても、隅っこで少しスカしているようなタイプというか。本当にただの感覚なんですけど、僕はそれが、すごくいまの若い人っぽいなと思って。監督にそう伝えると、「俺もちょっと気になってたんだよ」と言ってくれて、最終的にその方がキャスティングされました。

―新人の意見でも、良いものであれば尊重されると。

鈴木:そうですね。キャストのことに限らず、どんなことでもわりとフラットに自分の意見を言えますし、聞いてもらえる環境だと思います。仮にその意見がズレていたとしても、どこがズレているのかちゃんと教えてもらえるので、自分としても新しい視点の獲得や学びにつながりますね。

実際に撮影が終わったときに、監督から「いい映像が撮れてよかった。ありがとう」という言葉をいただきました。その瞬間、自分がこの作品に参加していた意味を感じて、映像本部の仕事の充実感を感じることができました。

丸山:鈴木くんが経験したことは、サン・アドの映像本部ならではだと思います。クリエイターと密にコミュニケーションが取れる環境は、ある種本当のワンチームで、若いうちからチームの一員としてわりと大きな責任も伴います。社外として接するのと社内として接するのでは、全然人としての距離感が違うので、裁量は大きいですが、チャレンジしやすいカルチャーが根付いているんだと思います。

必ず、自分なりの意見を持って取り組む

―他部署の方々の言葉から映像本部の姿が見えてきたところで、ここからは少し映像本部の内部に目を向けていきたいと思います。現在、メインPMとして活躍されている山田さんは、どんな作品を担当されているのですか?

山田:私はザ・プレミアム・モルツという商品のテレビCMを担当しています。年に4〜5本を制作するような大規模な案件です。

―大変な仕事量ではないですか?

山田:そうですね。いざ撮影となると全体で100人以上のスタッフが参加することが「普通」といった世界なので、正直、学生時代にはそんな大人数を仕切るような立場になるとはまったく想像していませんでした。

遠藤:山田は、こうみえてとんでもなくパワフルなんですよ。深夜までおよんだ撮影が終わったあと、パワーを持て余して、その後、1人で焼肉を食べに行き、さらに、ひとりカラオケに行って朝まで歌っちゃうような人間なんです。

山田:撮影に向けて、テンションが上がってしまっているので、なかなか収まらなかったんですよね。ただ、そのあとは泥のように眠りましたけど。(笑)

―山田さんにも、クリエイターとの距離が近いサン・アド映像本部のやりがいについてお伺いさせてください。

山田:PMという職種はお金とスケジュールの管理を担う立場なので、どうしても「とにかく進めたい」という思考になってしまいがちなんです。ただ、サン・アドの映像本部のメンバーはそれ以上に「良いものをつくろう」という思いを強く持っている人が多いように感じます。限られた時間のなかでも時には一度立ち止まって、どうすればもっとよくなるのか考えたり。クリエイターに自分の意見を言うことを咎められることはありませんし、むしろ歓迎してもらえる。みんなでつくっている、という意識が強いですね。

山田真代さん。プロダクション・マネージャー。北海道科学大学卒。高校生の頃に広告業界に興味を持ったことをきっかけに、大学時代にデザイン会社の株式会社インプバイドにてアルバイトを経験。WEBサイトの企画から取材交渉、編集まで行なった。2016年サン・アド入社。主な仕事に、サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」、ハーゲンダッツジャパン「GREEN CRAFT」、TEIJIN、ロート製薬等がある。

―クリエイティブに関しては、プロに遠慮してものが言えないなんてこともありそうですが……。

遠藤:もちろんクリエイターには最大限のリスペクトを持っていますし、意見といっても「こうしてほしい」と言うわけではありません。ただ、クリエイターのアウトプットに対し、こちらが噛み砕けていないことや疑問を感じたことは隠さず、ちゃんと口にするべきかなと思います。クリエイターに嘘をつかないっていうんですかね。互いに信頼関係があればクリエイターもしっかり答えてくれますし、ときには「そんな視点もあったんだ」と、こちらの意見を歓迎してくれるケースもあります。お互いに思ったことを気軽に話せる、そんな関係性を築くことが大事ですね。

山田:社内の打ち合わせでは、むしろ自分の意見を表明しないと「この人って何のためにいるんだろう?」と、逆に厳しい目で見られてしまうこともある気がします。私も必ず自分なりの意見を持っていくように心がけています。

チームでのものづくりを楽しむ

―では、最後に山田さん、遠藤さんにお聞きします。サン・アドのPMやプロデューサーに向いているのは、どんな人でしょうか?

山田:最初の一歩を踏み出すことに抵抗がない人ですね。PMの仕事は、基本的に2〜3か月で案件が変わります。そのたびに、調べることやインプットすることが出てくる。新しいことに対して前向きに楽しく取り組めるタイプはこの仕事に向いていると思いますし、映像本部のメンバーを見ていると、そういう人が多いように感じます。

遠藤:案件ごとに、仕事をするチームも毎回変わります。社内だけでなく外部のクリエイターと仕事をする機会もあるので、初対面の人とコミュニケーションをとるのが好きな人は向いているかもしれません。ただ、そこは経験を積めば慣れていきますし、少なくともチームで何かをつくることに興味がある人、それを楽しいと思える人なら十分にやっていけると思います。

Profile

株式会社サン・アド

サン・アドは日本最古の広告制作プロダクション。

1964年、開高健、山口瞳、柳原良平らサントリー宣伝部出身者が中心となって創業しました。

サントリーのさまざまな製品はもちろんのこと、さまざまなほかクライアントの広告を手がけ、数多くのクリエイターを輩出しています。

その「人間味のある上質な表現を通して、日本人の生活に役立つ仕事をする」という精神は、創業から変わらず、今も受け継がれています。

現在116名(2024年4月時点)の社員が在籍するオフィスでは、制作に携わるすべてのスタッフが一堂に会して、ワンフロアで働いています。

映像制作を業務とするチームが、クリエイティブディレクター、アートディレクター、コピーライター、プランナーといったクリエイティブスタッフと、こんなにも物理的に近い距離で仕事をしているのは、ほかに類を見ない環境といって差し支えありません。

そんな環境から生まれるのが、クリエイティブの力を信じ、より丁寧なものづくりを心がける私たちの信条です。

どんなに突き抜けた発想も、綿密な計画や、地道な創意工夫の積み上げがなければ、ひとの心に届くものにはなりません。

そこにあるアイデアを、どこよりも良いかたちで具現化してゆく。

そんなプロフェッショナル集団を目指しています。

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