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「伝え方を進化させたい」。カルチャーメディアQeticが若い世代を求める理由

Qetic株式会社

Qetic株式会社

音楽や映画など、国内外のエンタメ情報を独自の目線で紹介するニュースメディア「Qetic」。これを手がけるQetic株式会社(以下、ケティック)は、自社メディアで培ったノウハウを活かし、企業やブランドのコンテンツマーケティング、地方自治体の課題解決にも携わっている。創業時から大切にしているのは、「人と人とのコミュニケーション」。その核となるのは、「カルチャー」を軸に対象を深く掘り下げる確かなコンテンツ制作力だが、多くのパートナーから信頼を得ている理由はそれだけではない。ケティックの礎にあるナレッジを、代表の宍戸麻美さんと現場で制作に携わる明智沙苗さん、大谷真緒さんの話から紐解く。
  • 取材・文:笹林司
  • 撮影:豊島望

有名、無名にかかわらず、良い音楽を紹介したい。強い想いから始まったメディア「Qetic」

—自社のニュースメディア「Qetic」は、どのようなサイトですか。

宍戸:「Qetic」は、2009年に音楽を中心とした情報を扱うサイトとして始まりました。私はもともと音楽プロモーターの仕事をしていたのですが、通常の音楽メディアが、アーティストの格によって掲載するかどうかを決めていることに違和感を覚えていました。メジャー・インディーズ、有名・無名にかかわらず、良い音楽を紹介したいという気持ちから「Qetic」を始めたんです。

代表取締役の宍戸麻美さん

代表取締役の宍戸麻美さん

宍戸:1年目は音楽だけを紹介していました。2年目以降は、「音楽好きの人たちが興味のあること」を軸に、ユーザーの動向を解析しながら、映画、ファッション、テクノロジーなど、他ジャンルにも徐々に拡大していきました。セレクトショップが「ファッション」を核に「ライフスタイル」を提案するように、「Qetic」は「音楽」を核に「カルチャー」を提案しています。

—記事にすべき情報はどのように取捨選択しているのでしょうか。

宍戸:「次のアクションにつながるかどうか」を重要視しています。例えば新しい音楽の情報を知ったら、そこで終わらず、実際にそれを聴いたり、似たアーティストや関連する映画についても知りたくなったりするかどうか。

また、コンテンツを量産するのではなく、一つひとつをより芯の強いものに仕上げることを心がけています。ユーザーが何を欲しているのかを知り、彼らが興味のあるものに対して私たち自身も興味を持って、深く理解することから、企画づくりを始めています。

カルチャーニュースメディア「Qetic」(WEBサイトより)

カルチャーニュースメディア「Qetic」(WEBサイトより)

—「Qetic」は来年で10周年を迎えます。長く続く秘訣があれば教えてください。

宍戸:正直、最初の頃はマネタイズできず、諦めかけたことは何度もあります。しかし創業時に、クリエイティブジャーナル誌『QUOTATION(クォーテーション)』の編集長である、アートディレクターの蜂賀亨さんからアドバイスをいただき、その言葉を糧に乗り切ることができました。

蜂賀さんがおっしゃったのは、「続けることが大事」ということ。「たとえお金がなくなって、運営する人が宍戸さんひとりになり、見栄えの美しさを維持できなくなったとしても、個人ブログでもいいから続けたほうが良い」と言ってくれたんです。

この言葉のおかげで「自分の言葉や表現で伝える場を持ち、発信し続ければ必ず伝わる」と信じて、どんな状況でも続ける覚悟を決めることができました。

幸いにも、個人ブログになることなく順調に続けてこられた一因には、記事のネタの選定や細かいライティングの表現、デザインの方向性などすべてにおいて、常に読者の求めるものに合わせて進化し続けてきたこともあると思っています。

—なるほど。

宍戸:ほかにも、デザインの影響は大きかったと思います。「Qetic」でPR記事をつくり始めた頃、クライアントの希望で内容や表現に制約が出て、一時は読者数が減ってしまったこともあったんです。そのときも、デザインによる見せ方を工夫することで乗り切りました。やはり視覚の印象が読者に与える影響はとても大きい。

「Qetic」のWEBデザイナーはコーディングも積極的に行っていて、常に新しい表現方法を実験し、海外で話題の手法を取り入れるのも早い。そして試行錯誤を繰り返しながら、良いものだけを残していく。実験的な表現は失敗することもありますが、さらにいいサイトをつくるためのヒントに必ずなります。

新人にも、すぐに企画を任せる。ルールに縛られない感性に期待

—大谷さんは「Qetic」のディレクターとして、実際に記事を制作しています。現場で感じる大変さを聞かせてください。

大谷:「Qetic」はマスな視点だけではなく「ニッチ」な視点も大事にしているメディアです。だからこそ、読者層は多岐にわたり、特定のジャンルに関する知識も深い人たちが多い。例えばあるアーティストの魅力を伝える記事をつくるとき、どういった層に向けて、どのようなコンテンツをつくるかを考えるのが最も大変です。そこがブレると、アーティストの思いも伝わらず、読者もつまらないと感じるはずです。

ディレクターの大谷真緒さん

ディレクターの大谷真緒さん

大谷:そうならないために、リサーチに時間をかけるのはもちろん、常日頃から現場に足を運ぶようにしています。例えばライブに行き、ユーザーと近い立場で現場の反響を感じることはもちろん、彼らと実際にコミュニケーションを取ってみたり。

私自身、もともとニッチなものが好きでケティックに入社したので、広く知られていないアーティストの良さをどうやったら伝えられるか、常に考えています。

—制作の方法はノウハウ化されているのですか。

大谷:タイトルのつけ方やSEO対策、写真を入れるバランスなど、最低限のフォーマットはあります。ただ、企画の立て方やコンテンツの中身については、決めごとのようなルールはありません。

宍戸:WEBメディアはユーザーからのリアクションも早くダイレクトに伝わりますし、時代によって受け入れられるものも変わります。それに対して常にオープンでいられるように、ルールは最初からつくりませんでした。

インターンでも新入社員でも、入社したらすぐに企画を任せます。もちろん、構成や文章は荒削りの記事になるのですが、大きな反響を呼ぶこともある。これはひとえに、業界のルールを知らない純粋な感性によるものだと思うんです。ルールをつくることで、その可能性を潰したくはない。ライターやカメラマンについても、発想が柔らかい無名の人を積極的に起用しています。

大谷:「Qetic」では、自分の「伝えたいこと」がはっきりとあれば、それに対してどのようなリサーチをしたら良いか、どう掘り下げるのが良いかなど、記事に落とし込むまでの過程をしっかりサポートしてくれます。自分で企画を提案して、実際につくれる場があるというのは、新人にとっては大きなモチベーションになりますね。

宍戸:「Qetic」は、自分たちの意見を発信する場でもあり、実験の場でもある。ここで評価を得たデザインや表現は、そのままクライアントからの受託案件にも活かしています。受託案件で実験はできませんからね(笑)。

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量産型の案件は受けない。「アクションを促す」コンテンツ制作へのこだわり

量産型の案件は受けない。「アクションを促す」コンテンツ制作へのこだわり

—ケティックでは、自社メディア「Qetic」で培ったノウハウを活用して他企業の課題解決、オウンドメディアの企画・構築・運営などの受託案件にも携わっているそうですが、どのように取り組んでいるのでしょうか。

宍戸:「Qetic」が質の高いコンテンツを絞り込んでつくっているように、受託案件でも量産型、例えば「月に500本のコンテンツをつくって数で勝負する」といった依頼はお断りしています。しっかりとしたストーリーがあり、誰に何を届けたいのかが明確で、その目標をシェアして制作できるような、クライアントと長期間一緒に行うプロジェクトが得意ですね。

受託案件ではマーケティングに始まり、WEBサイトのUI・UXの設計やコーディング、コンテンツ制作まで行っていますが、根幹はやはり「Qetic」でも肝としている「コンテンツ制作」。

マーケティングは、読者のデータを分析して、より良い記事や企画制作にフィードバックするため、そしてWEBサイトの設計は、よりコンテンツに没入しやすくするためのものと捉えています。

—明智さんは受託案件の制作を主に担当されているそうですが、気をつけていることはありますか。

明智:エンドユーザーに何を届けて、どのように行動してもらいたいかを考えることです。クライアントの要望も大事ですが、最終的にどのようなユーザーに、どういったメッセージを届けたいのか、どういったアクションを起こしてほしいのかが重要。「情報を受け取ったあとに、必ず次の行動が生まれる」という意味では、根本は「Qetic」と同じですね。

ディレクターの明智沙苗さん

ディレクターの明智沙苗さん

—大谷さんも、富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」の魅力を訴求するサイト「Cheki Press(チェキプレス)」を担当しているそうですね。

大谷:はい。サイトのブランディングからデザイン、コーディング、記事の企画制作まで、すべてケティックが請け負っています。チェキが気になっている人や初めて買った人に向けたサイトで、アーティストにチェキを持ってゆかりの地を散歩してもらう企画「チェキさんぽ」など、私たちの強みである「カルチャー」を活かしたコンテンツを制作しています。

人選では、アーティスト本人やそのファンとチェキとの親和性を大事にしています。これは、音楽に強みをもつ「Qetic」を運営しているからこそできる企画。企画や人選の提案の際、クライアントに「ケティックさんが言うなら信じます」と言われると、嬉しく誇らしい反面、責任の重さも感じます。

—どういったことに気をつけて制作を行っているのですか?

大谷:チェキを使ってもらって終わりではなく、そのあとのことまで考えて情報を届けることですね。撮ったあと、誰かにあげたり飾ったり、楽しみ方はたくさんあります。「チェキのある生活は楽しい」というイメージが湧く提案ができるように心がけています。

大谷さんが手がけた「Cheki Press(チェキプレス)」。自社メディア「Qetic」の強みを活かし、カルチャー界隈の著名人をアサイン

大谷さんが手がけた「Cheki Press(チェキプレス)」。自社メディア「Qetic」の強みを活かし、カルチャー界隈の著名人をアサイン

日本の地方は魅力の宝庫。コンテンツ制作力で、それを「伝える」手助けを

—最近は民間企業だけでなく、地方自治体からも依頼を受けるそうですね。

宍戸:クライアントの「伝えたい」という想いを具現化するという意味では、相手が企業でも自治体でもまったく同じですね。自治体の場合は、企画を立てる際「この地域を元気にできるのか?」という視点を外さないようにしています。

—最近は「奈良の木のこと(NARA no KINOKOTO)」というサイトが話題ですね。

明智:昨年の夏にリニューアルしたサイトで、私が担当させてもらいました。奈良県庁の農林部「奈良の木ブランド課」という、奈良県産の杉や檜のブランド化、流通に取り組んでいる部署のお仕事です。

受注が決まって、すぐに奈良県まで足を運びました。吉野杉や吉野檜などが名産の吉野という地域には、樹齢100年を超える木が密集しています。地元の方々から500年に渡る吉野林業の歴史や、ユーザーに届くまでの道のり、携わる人たちの想いを直にお伺いしました。

—林業というと、「カルチャー」を強みとするケティックとは少し縁遠いようにも感じます。

明智:最終的には木を使った箱やランチョンマット、スピーカーといったプロダクトに落とし込まれるので、じつはとても近いんですよ。ただユーザーにとっても、「吉野杉」「吉野檜」が自分たちの身近にある製品と結びつきにくいというのは課題だと思いました。

そこで、現地の方々からお伺いしたこだわりや想いと、ユーザーの身近にある木製品の魅力、離れてしまっているふたつをつなげられるようなコンテンツをつくろうと考えました。

さらに「吉野杉」「吉野檜」について「吉野スギ」「吉野ヒノキ」という表記を採用したのもこだわりのひとつです。一般的な漢字の表記にしてしまうと、検索結果が多いので、ほかのWEBサイトに埋もれてしまう。カタカナ表記にすることで、検索時に「奈良の木のこと(NARA no KINOKOTO)」が上位に表示されるようにしました。

宍戸:地方自治体とのお仕事によって、ケティックのポリシーである「コミュニケーション」、すなわち「伝えること」が次のフェーズに入ったと思っています。たくさんの魅力を持ちながら、それを上手く外に向けて伝えられていないという課題を抱えている地域はとても多い。今後、訪日外国人の増加を考えると、WEBサイトを通じて日本の良さを伝える重要性はさらに高まるはず。その一助になれればと思っています。

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WEBに止まらず、フェスやライブ企画まで。ケティックがイベントに取り組む理由

Profile

Qetic株式会社

Qetic(けてぃっく)株式会社は、2010年に創業。エンタメ・カルチャー情報を発信する『NEWS MEDIA QETIC』として始まりました。

現在はクリエイティブブティックとして、最先端のメディア・WEBサイトのデザイン構築、コンテンツマーケティング、ブランデッドコンテンツ、イベント企画制作などの事業を展開しています。お取引先は、ナショナルクライアントから地方自治体までと幅広く、コンセプトの策定から参画し、中長期でクライアントの事業成長にコミットするスタイルを特徴としています。時代に応じた表現手法の提案と、「つくって終わり」でなく、ユーザーが「情報を受け取ったあとに、次の行動が生まれる」デジタル体験の実装にこだわっています。

案件のジャンルはエンタメ・カルチャーだけでなくクルマ、カメラ、楽器、飲料、地方創生など多種多様。サイトデザイン・構築の際は初期段階からデザイナーも同席し、ともに構想を練り上げます。年齢役職問わず活発に意見を交換し合う、誰しもに発信のチャンスがある環境です。

スタッフそれぞれが、自らの表現を高めるためにインプットも欠かせません。美術館やイベントに足を運ぶなど、アイデアの引き出しを増やそうと日々努力しています。DJやデザイナーなど個人で活動をしている人も多く、プライベートで得た知見を本業に活かすケースもたくさんあります。これまで「好き」で終わっていたことも、Qeticならきっと新しいチャレンジに変えることができるはず。新領域へ挑戦したい方、自身の強みをさらに伸ばしていきたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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