
音楽から映画、ドラマ、CMまで、多彩な映像のポストプロダクション業務を手がけるレスパスビジョン。ポスプロの会社といえば専門ジャンルを設けることも少なくないなか、あらゆるジャンルを扱っている。
本記事では、同社でMAを務める佐藤葉子さんと、テクニカルコーディネートを担う阿部誠人さんに取材を実施。クオリティを追求するためにチーム力を大切にする姿勢や実力を認め合いチャレンジを後押しする文化、そして変化の激しい業界で生き残るために必要な仕事への向き合い方など――レスパスビジョンの映像クオリティの裏にある、同社の制作哲学に迫った。
- インタビュー・テキスト:吉田薫
- 撮影:豊島望
ジャンルも作風も幅広いからこそ、「考える力」が何より大事
—それぞれどういったキャリアを経てレスパスビジョンに入社されたのでしょうか?
佐藤:もともと私は、音楽のレコーディングからキャリアをスタートしました。MAという仕事を知って興味を持ち、音楽ものを中心に手がけるポスプロに転職しましたが、もっと幅広い映像にチャレンジしたいという思いが芽生えて当社に移りました。
阿部:僕は新卒で入社して、コロナ禍に一度離れてフリーで活動していたことがあります。個人で映像編集の仕事などをしていたのですが、テクニカル面でできることに限界を感じ、1年ほど経ってから戻ったという流れです。
やはり、自分は多様な機材やシステムを駆使してクオリティを追求する「ポスプロ」という仕事が好きなんだなと再認識しました。これまで編集やマスタリングなどいろいろな職種を経験し、いまはVFXエディターを主軸に置いています。VFXの処理が必要なカットがあるとき、CG制作会社とカラリスト、オンラインエディターといった方々の間に立って、情報共有のハブになるような仕事です。

阿部誠人さん。VFX EDITOR / DCP・ IMF Mastering 2014年にレスパスビジョンに入社。オフライン編集に従事したのち納品物の作成・QCを行うI/Oグループへ転属。2020-2021年には個人で映画のデータマネジメント・オフライン編集を中心に活動したのち復職。現在はテクニカルコーディネート / VFX EditorとしてVFX工程の進行管理を行う傍ら、DCP(Digital Cinema Package)やIMF(Interoperable Master Format)、Dolby Vision / Dolby Atmosといった専門性の高いマスターのQCや作成を担う
—佐藤さんは実際に入社したあと、仕事の幅が広がったと感じますか?
佐藤:そうですね。ポスプロはジャンルごとに専門性を持つ会社が多いんですが、レスパスビジョンは多様なジャンルの映像を扱っています。入社前に期待していたとおり、ミュージックビデオやライブ映像といった音楽ものはもちろん、映画やドラマ、CMと本当に幅広い仕事が経験できています。
—阿部さんはポストプロダクションとしてのレスパスビジョンの特徴について、どうとらえていますか?
阿部:佐藤が話したような「映画が強い」といった専門分野もそうですが、ポスプロの中には、「こういうルック」といった特定の作風を持つような会社もあります。弊社の場合は、制作スタッフの本来実現したかった「トーン・ルック」を徹底的に模索し、深く、幅広く対応できるのが特徴であり強みでもあると思います。
テクニカルな面でも多様な案件に携わっています。地上波で放送されるものから、近年増加しているOTT、Dolby Vision・Dolby Atmosのような最先端のフォーマットまで。そのため、やりがい・楽しさはもちろん、自分のスキルアップにも大きくつながっていると感じています。
—多様なジャンルや作風、技術に対応するためには、表現の引き出しの多さや判断力が必要になりそうですね。
佐藤:そうですね。本当にいろいろなジャンルの依頼があって、クライアントからの要望も幅広いです。毎回、自分の経験や感覚を総動員して制作しています。
阿部:漠然と先輩の真似をしているだけだと、本来求められているクリエイティブ表現の要望とずれたミスマッチが起きてしまいます。
制作スタッフのクリエイティブ・技術視点と欲求に限界まで答えるために、自分で考える力や判断力が必要だと思います。
クライアントの意向に寄り添いつつ、その作品にとって何がベストなのか、一人ひとりが深く追求していく姿勢がこれからは求められていると思います。

佐藤葉子さん。MA / Sound Effect。レコーディングスタジオでキャリアをスタートした後、ポストプロダクションにてMA業務を中心に経験を積む。2018年よりレスパスビジョンに所属し、LIVEやMV、TV/WEB CM、VP、映画・ドラマなど多彩なジャンルを担当。MAにとどまらず、効果音制作や選曲など、音づくりをトータルで行っている
部署を超えた協力体制。専門性を活かし合うチームワーク
—ポスプロというと、個々人で黙々と仕事をしているイメージを勝手に持っていたのですが、部署間で連携することもあるのでしょうか?
阿部:そうですね。映画やドラマなどの大型案件も多いので、セクションの垣根を超えて、お互いに意見を交わすことが多いです。「映像をこうするから、こういう音をつけてほしい」とか、逆に「こういう音をつけたいから、もう少し画にフックやエフェクトがほしい」といったやり取りが日常的に行われています。
「作品のクオリティを上げる」ことを一番に考えて動いているからこそ、自然とそういった対話が生まれているのだと思います。
佐藤:いま社員数が80人程度ですが、この規模で「全員顔見知り」という会社はめずらしいかもしれないです。みんなすごく仲が良いと思います。他のセクションの専門用語がわからないときは、そのセクションの先輩が教えてくれたり、私もわからなさそうにしている人がいたら声をかけたりしています。
—チームワークが自然と醸成されているのですね。
阿部:1人で完結する仕事ってほとんどないので、協調性はもちろん、一緒に働く人に対する気遣いは大事だと思っています。
僕が入社したときには、すでに助け合ったり教え合ったりする文化が自然とあったので、上の世代の方々が作ってくれた空気なのかなと。
佐藤:おかげで、お客さんから突発的に自分の専門領域以外のことを聞かれた際、きちんと答えられる知識が身につけられていると思いますね。
細かいところですが、こういう対応力もお客さんからの信頼につながっている気がします。

実力と信頼の先で、新しいチャレンジができる
—入社後の皆さんの働き方についても教えてください。中途入社の方も多いと聞きましたが、即戦力としてすぐに案件を担当するようになるのでしょうか?
佐藤:前の会社と同ジャンルの仕事はすぐに1人で担当することもありました。経験がなかったドラマや映画についてはアシスタントからスタートして、徐々に1人で任せてもらえるようになりましたね。
しっかりサポートいただけたなと感じています。
—中途入社の方であっても安心感がありますね。阿部さんは特殊なキャリアですが、どのような経緯でいまの役職につかれたのですか?
阿部:僕がこの業界に入った頃は、テープなど物理的なメディアが主流で、それに特化した専門技術が求められていました。でも、時代の流れとともに配信メディアも納品形式も多様化し、これまでと同じことをやっていても先細りになるという危機感がずっとありました。
再入社後、OTTなど大規模な配信系の作品を担当することになり、当時は事例が少なかったHDR制作のシステムを使う機会があったんです。そのとき、「自分も新しい領域に携わってみたい」と思い、手を挙げて会社とも相談しながら参入した感じですね。
—個人の意思や自主的な挑戦を後押しするような風土があるんですね。
阿部:そうかもしれないですね。もちろんセクションごとの役割分担がありますし、「なんでもできる」というわけではありませんが、「やりたい」という前向きな姿勢に関してネガティブにとらえられたことはありません。
佐藤:たしかにそういう空気感はありますね。
私は早く1人でいろいろなジャンルを担当できるようになりたかったので、まずは音楽系の案件を担当して、クライアントからも社内からも信頼を得ていき、ドラマにチャレンジさせてもらう、という感じでした。
やりたい気持ちはもちろん後押ししてもらえますが、まず周囲が実力を認めていることが前提にあると思います。
現場に勝るものはなし。学び続けることでキャリアが広がる
—レスパスビジョンで働くうえで、皆さんそれぞれのキャリアはどのように積み上げていくのでしょうか?
佐藤:本当に人それぞれです。クライアントから指名をどんどんいただけるプレーヤーとして活躍するのか、プレイングマネージャーとして人も育てるのか。
—なるほど。お二人はご自身のキャリアをどう描いていますか?
阿部:日本のポスプロだと、同じような動きをしている人はいても、テクニカルコーディネート / VFXエディターという役職を専属で設けている会社は少ないと思います。ですから、このキャリアのモデルケースは未知数でもあります。
その意味では、マネジメント的な方向にいくのか、バリバリ技術力をあげてVFXのスーパーバイザーのような肩書きになっていくのか。制作環境の変化や関わる作品によっても変わってくると思うので模索中です。

—佐藤さんはいかがですか?
佐藤:じつは、あんまり考えてなくて。技術力を伸ばすこと、案件数をたくさん経験することかなと。やっぱり信頼を得ていくことで「この人には任せられる」という領域がどんどん広がり、やりたい仕事や大きな仕事も任せてもらえるようになると思うので。
現場で学びつつ、実力をつけることが何より大事だと思っています。
阿部:現場に勝るものはないですよね。
変化の激しい業界ということもあって、学び続ける姿勢はとにかく大事だと思います。この業界では数年に1度くらいのペースで大きな変化があって、その都度新しい知識やスキルを身につけないと立ち行かなくなる。仕事に対してのこだわりも必要ですし、本当に好きじゃないとできないなと思います。
佐藤:みんな案件以外でも、スキルアップのために練習していたりしますよね。
阿部:そうですね。案件で使われていない部屋を見ると、誰かが自主的に練習している姿を見かけます。
レスパスビジョンにフィットする人とは
—最後に、レスパスビジョンにはどういった方が合うと思うか、聞かせてください。
阿部:僕は「視野が広い人」が向いているのかなと思います。これまで編集やマスタリングでやってきたことが、いまのVFXエディターに活きてくることがあるように、「これができるんだから、これもできるかも」みたいな考え方や視野があるといいのかなと。先ほども言ったように、変化の激しい業界なので、自分の経験を幅広く転用できる視点はあるといいですよね。
そして、チームで働くという点でも、「周りがどういう仕事をしているのか」とか、「こういう動きをする人がいるとみんなが助かるかな」といった現場を見通す力を持っている人がいいと思います。僕の職種は特にですが、トラブルや困りごとがあったとき、こちらから駆けつけられるのが理想なので。
佐藤:私は何に対しても興味を持てる人、好奇心がある人がいいなと思いました。
在籍スタッフ同士の積極的なサポートはもちろんありますが、企業としての「成長マニュアル」があるわけではありません。実力をどう伸ばしていくかは個人の頑張り次第なところがある。だからこそ自分の興味を幅広く持って、前向きに作品のクオリティを追求できる人だといいと思いますね。
Profile

レスパスビジョンは東京代々木駅近くにある「ポストプロダクション」です。
CM、MV、企業プロモーション映像、映画、ドラマなどの「映像の完成品」を仕上げる会社です。
最新鋭の編集機材と映像と音にとことんこだわる技術スタッフが日々新しいクリエイティブにチャレンジしています!
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