鹿児島ってどんな街?クリエイターが「お試し移住」で現場をレポート

鹿児島県鹿児島市

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みなさんは鹿児島にどんなイメージをもっていますか? 桜島、西郷隆盛、薩摩藩などを思い浮かべる人も多いはず。そんな鹿児島の中心部・鹿児島市は現在、クリエイターのUJIターンを促進するための取り組み「かごしまクリエイティブライフ」を実施。移住者に対して、補助金制度やお試し移住体験などで積極的にサポートしています。 これまでCINRA.JOBでは、鹿児島で活躍するデザイナーや、Uターンをしたエンジニアなどに、働き方や暮らし方について取材をしてきました。今回は、「東京で働くクリエイターから見た鹿児島」をテーマにお届けします。お試し移住体験で知った、東京と鹿児島の違いや、現地を訪れて気づいた新たな一面をレポート!
  • 取材・文:小沢あや
  • 撮影:磯畑弘樹
  • 編集:青柳麗野(CINRA)

東京から鹿児島までの約2時間は、「ちょうどいい距離感」?

私が鹿児島市に初めて降り立ったときの第一印象は、「想像よりずっと都会」でした。

しかし、羽田空港から鹿児島空港までは約1時間40分。正直、近いとは言えません。空港までの移動時間も含めると、結構遠い。けれど、タブレットやノイズキャンセリングイヤホンなどのガジェットを準備していけば、移動中に仕事や読書が捗ります。集中力が続く、ちょうどいい距離ではないでしょうか。

鹿児島空港から鹿児島市内までは高速バスで40分ほど。市街の中心は、「鹿児島中央駅」から「天文館」エリアです。「アミュプラザ鹿児島」や地元のデパート「山形屋」などには、東京と変わらないショップが揃っているし、天文館の商店街には、地元のお店だけでなく、全国チェーン店もたくさん。買い物に困ることはなさそうです。

気分転換に使えるカフェも多数あります。「CAFESHOP」はいまどきっぽい内装。地元で有名なパン屋さんが経営する「danken COFFEE」もフリーWi-Fiと電源を完備。どこも都内と比べて人の出入りが少ないため、ゆったりと作業に集中できるのが魅力です。

天気のいい日はカフェのオープンスペースで作業。街全体がゆったりしているからこそ仕事も快適に捗ります

天気のいい日はカフェのオープンスペースで作業。街全体がゆったりしているからこそ仕事も快適に捗ります

フリーランスがまず確保したいのは、終日作業できるコワーキングスペース

今年オープンした「mark MEIZAN(マークメイザン)」もコワーキングスペースにおすすめ。クリエイティブ産業の創出を目的として開設され、スタートアップ支援の拠点施設にもなっています。「起業家やクリエイターのコラボレーションを生み出し、チャレンジできる場所に」という鹿児島市の理念からできた本施設。館内のオープンスペースでは、ワークショップやセミナーも活発に行われ、多くのクリエイター交流の場となっています。

コワーキングスペースとして安価で利用でき、桜島からフェリーで毎日のように通うクリエイターさんもいるんだとか。オフィスフロアは入居希望の企業が多く、開設後すぐに満室になったそうです。

mark MEIZANの1階。無料のフリースペースもある。wi-fi完備なうえに、天文館エリアも近く、好立地なのがいい(画像提供:鹿児島市)

mark MEIZANの1階。無料のフリースペースもある。wi-fi完備なうえに、天文館エリアも近く、好立地なのがいい(画像提供:鹿児島市)

「一度クライアントを掴めば、どんどん新しい案件につながっていく」

地方移住を考えているクリエイターと話すなかでよく聞こえてくるのが、「都心とは違い、かたちのないデザインなどになかなかお金を払ってもらえないのではないか?」「そもそも、地方にクリエイティブの仕事はあるのか?」という不安です。

鹿児島在住のクリエイターに実態を聞いてみると、県外の既存の仕事をリモートワークで受託しつつ、鹿児島で新規クライアントを営業や人のつながりから掴んでいくのが現実的だといいます。地域の企業にはまだまだPRやデザインに携わる人の絶対数が少ないので、営業開拓さえすればグンと可能性は広がると、みなさんお話されていました。

「東京では埋もれてしまうかもしれないけれど、鹿児島で少し変わったことをすれば目立てる。一度クライアントを掴めば、人づてにどんどん新しい案件につながっていく。仕事に困ることはないですよ」(カメラマン)

「東京よりもコミュニティーはもちろん小さいけれど、そのぶん、いろんな人たちとつながりやすいです。鹿児島市も積極的に移住クリエイターを増やそうと活動しているので、頼りになります」(デザイナー)

鹿児島市によると、昨年のクリエイター移住者は6名で、今年は10名を目標に掲げています。担当者は「まずは鹿児島を楽しんでもらいたいです。一度来ていただければ、みなさんの胃袋は掴めると思いますよ」とおっしゃっていました。

お試し移住中に訪れたカフェバー。市街には食材にこだわった飲食店も多くある

お試し移住中に訪れたカフェバー。市街には食材にこだわった飲食店も多くある

「ずっと鹿児島に戻る計画をしていた」。Uターン経験者に話しを聞いてみた

上場企業も鹿児島に進出。GMOペパボ株式会社の鹿児島オフィスでは、Uターン転職を含む3人のエンジニアが開発中です。お試し移住の期間中にお話をうかがいに行きました。

お話をうかがった3人。左から早崎さん、寳來さん、池田さん

お話をうかがった3人。左から早崎さん、寳來さん、池田さん

「ぼくが新卒だった5年前は、エンジニアの就職先の選択肢が鹿児島にはほとんどありませんでした。結局、地元就職を諦めて、大学を卒業してからずっと東京。いつかは地元に戻りたいと思っていましたが、なかなかきっかけがありませんでした」(早崎さん)

「ぼくも生まれ育ったこの街が大好きで、ずっと鹿児島に戻る計画をしていました。でも、転職サイトやエージェントで探しても、なかなかエンジニア職の採用がない。そのタイミングでいまの会社を知り、即応募。ラッキーでしたね」(寳來さん)

もともと地元でエンジニアをしていたという池田さんは、「みんな、鹿児島にはエンジニアの雇用がないと思い込んで、県外に出て行ってしまうんです」と実態を語ります。

「そこでぼくらは、鹿児島のエンジニアコミュニティーを立ち上げました。30人程度で、技術勉強会などのイベントや交流会をしています。東京や福岡などの都市部は人数が多いので実績をあげるのが大変ですが、鹿児島で真面目に技術を学んで発信していけば目立てます。コミュニティー内での紹介から採用につながる例もあります」(池田さん)

エンジニア職には明るい状況があることを教えてくれました。同社は今後、現地での採用活動に力を入れ、20人規模に拡大を目指しているといいます。

GMOペパボのオフィス

GMOペパボのオフィス

物価は? 街並みは? 桜島の噴火は? 気になる「暮らし」のこと

鹿児島では、街のいたるところに銭湯があり、そのほとんどが天然温泉。それぞれ水質や温度が異なり、安価でリフレッシュできます。

「近所のいたるところに温泉がある」というのは、デスクワークの多いクリエイターにはうれしいポイント

「近所のいたるところに温泉がある」というのは、デスクワークの多いクリエイターにはうれしいポイント

自然も壮大です。市のアイコンになっているのが、活火山・桜島。桜島に向かうフェリーは、なんと24時間運行。日中は約15分間隔、運賃も片道200円なので、気軽に乗ることができます。噴火は日常茶飯事で、風向きによっては、市内に灰が降ります。洗濯物をそのまま外に干すことはできませんが、洗濯乾燥機を導入すれば大きな問題はないでしょう。

鹿児島の中心にそびえ立つ桜島。地元のクリエイターたちも声をそろえて「鹿児島といえば、桜島!」と誇る

鹿児島の中心にそびえ立つ桜島。地元のクリエイターたちも声をそろえて「鹿児島といえば、桜島!」と誇る

そして、鹿児島の魅力はやはり食。飲食店が充実しているほか、自炊派にもおすすめ。地元スーパーの「タイヨー」では、国産の良質な野菜や肉、魚が安価で購入できます。家賃相場は劇的に安いわけではないのですが、市の中心部に住む場合は市電(路面電車)や徒歩での通勤も可能になるし、生活の満足度は格段に上がるでしょう。

鹿児島市街の様子。ゆったりとした空気が流れ、道路には市電が走る

鹿児島市街の様子。ゆったりとした空気が流れ、道路には市電が走る

鹿児島には企業ブランディングやPRに必要な「クリエティブ」が足りていない!

鹿児島県は、農業産出額が全国2位(2017年)。漁業生産額でも全国上位を記録。ほかにも焼酎をはじめとした名物がたくさんあります。潤沢な素材があるものの、多くの企業がブランディングやPRの課題を抱えていて、全力アピールができず「もったいない」状況です。

鹿児島市によると、県内のデザイン業従業者数は決して多いとはいえないと言います。その背景から、クリエイターのUJIターンを推進するための「かごしまクリエイティブライフ」という取り組みを始めました。移住者のための補助金制度やお試し移住体験などにも力を入れています。

地元企業とクリエイターがタッグを組めば、鹿児島のクリエティブ産業はさらに拡大する可能性を秘めています。フリーランスのクリエイターは、鹿児島を移住先候補に加えてみるのもいいかもしれません。

雄大な桜島を背に打ち合わせ……なんていうのも悪くない

雄大な桜島を背に打ち合わせ……なんていうのも悪くない