徹底解剖! デジタル広告の雄、博報堂アイ・スタジオの素顔に迫る

株式会社博報堂アイ・スタジオ

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博報堂アイ・スタジオ、通称「アイスタ」と呼ばれる彼らは、その名が示す通り国内屈指の広告代理店・博報堂のグループ会社だ。デジタル・クリエイティブを担うチームという印象が強いが、博報堂グループのイメージが強すぎることもあり、アイスタ自身の素顔はあまり知られていないかもしれない。ぶっちゃけて、博報堂とはどんな関係性なのか?
社内だけで高い技術を持っているのか? 広告賞についてどう考えているのか? 率直な疑問を現場で活躍するスタッフに思いきって投げかけてみた。
  • 取材・文:CINRA.JOB編集部
  • 撮影:豊島望

博報堂とアイ・スタジオの関係性は?

オフィス街としてだけでなく、劇場や商業施設が立ち並ぶ文化発信地としても存在感を示している有楽町。その一画、「有楽町ビルヂング」に博報堂アイ・スタジオ(以下、アイ・スタジオ)のオフィスがある。エントランスには、3Dプリンタによるスタッフの立体フィギュア群や、巨大な黒板いっぱいに自由に描かれたドローイング。1966年から街の顔である老舗ビルの中にあって、その印象をいい意味で裏切る空間だ。それは「仕事を楽しみ、世の中を楽しませる」という彼らのモットーにもつながる。

博報堂アイ・スタジオ 会議室(写真提供:博報堂アイ・スタジオ)

博報堂アイ・スタジオ 会議室(写真提供:博報堂アイ・スタジオ)

博報堂アイ・スタジオ スタッフ立体フィギュア(写真提供:博報堂アイ・スタジオ)

博報堂アイ・スタジオ スタッフ立体フィギュア(写真提供:博報堂アイ・スタジオ)

2000年設立のアイ・スタジオは、広告業界でも有数の実績を持つ博報堂グループの一員。「パートナー企業」と呼び合い、互いをスペシャリストとして尊重し合っている。インタラクティブディレクター / アートディレクターの加賀谷淳さんは、現場での関係性をこう語る。

加賀谷:博報堂グループの中ではデジタル専門の制作部門という位置づけで、グループ各社とパートナーとして仕事をしています。デジタルを含む多メディア展開の場合は、博報堂の営業担当や各ジャンルの担当者と共に私たちもプレゼンに参加するなど、チームとして協働する形ですね。またデジタル領域単体で我々に声がかかるケースでは、企画から主導して一緒に進めていくこともあります。

入社3年目のアートディレクター、熊崎一生さんは、以前は博報堂やアイ・スタジオから仕事を受注する職場でデザイナーとして働いていた。

熊崎:退職後、今後の事を考え次はクライアントと直に接する仕事を経験したい思いがあり、これが実現できるアイ・スタジオへ入社を決めました。すでによく知っている人たちという点では安心感もあり、自分の次のステップとしてここが一番だと思ったんです。

設立以来、アイ・スタジオは従来の枠を超えたデジタル広告を生み出してきた。近年の例を挙げれば、アディダス ジャパンのシューズ性能を店頭で体験できる「boost 地球一周試し履きマシーン」。名作ゲームと佐賀県がタッグを組んだ意外性も話題となったコラボサイト「ロマンシング佐賀2」など。熊崎さんもアートディレクターとしてサイト制作を軸にしつつ、「絵作り」にとどまらない多岐にわたる仕事をこなす。常に意識しているのは、クライアントを、そして人々を「驚かせられる」広告づくりだという。

熊崎:正直、入社直後はやはり前職と仕事の仕方がかなり違い、大変さも戸惑いもありました。ただ、先ほどお話した「もっとお客さんと直接関われる上流工程に行ってみたい」という気持ちに見合う機会もすごく多いんですね。またグループ各社や外部協力者の方々との協働を通じて、表現だけでなく、現場でのコミュニケーションも以前にも増して考えるようになった気がします。

グループ間を行き来し、異領域のプロフェッショナル集団の中に身を置く経験をする者もいる。加賀谷さんは、デザインによるブランディング専門会社HAKUHODO DESIGNと兼務して働くという貴重な経験もした。

加賀谷:他にも、グループ会社で次世代型クリエイティブエージェンシーとして2013年に設立された「SIX」に出向する者がいるなど、グループ間での行き来も割と風通し良く行われている印象です。そうした環境も特徴かもしれません。仕事で色々な方に連れられて現場を訪れたりする中で、チームでやっている距離の近さは実感しますね。

インタラクティブディレクター / アートディレクター 加賀谷淳さん

インタラクティブディレクター / アートディレクター 加賀谷淳さん

仲間内ともちょっと違う、緊張感と親近感のある関係。良きパートナーとして、ときにはライバルとして、多様なグループ内でのつながりは相乗効果をもたらしているようだ。

社内に高い技術力はありますか?

アイ・スタジオのスタッフは、約300人。この規模になると、社内にどれだけの技術力や専門性があるのかということも気になる。仕事の数が多すぎることで、技術は外部のパートナーに任せてしまったりということもあるのではないだろうか?

加賀谷:クリエイティブ系では、デザイナーの上に、アートディレクター(AD)、クリエイティブディレクター(CD)、さらに今、僕もADと兼任しているインタラクティブディレクター(ID)という肩書きがあります。IDは少し特殊で、こうした呼び方を公式に掲げる会社はまだ少ないかもしれません。これは特にテクノロジーの観点から、広告とユーザーとの接点を考え、コミュニケーション全体をデザインする責任者なんです。

熊崎:アイ・スタジオでは今、ほぼすべてのプロジェクトにIDが参加していますね。従来のADやCDでもあることですが、特定のIDを指名して案件依頼がくることもありますし。

アートディレクター 熊崎一生さん

アートディレクター 熊崎一生さん

加賀谷:今はそれだけインタラクティブの専門性が重要視されるようになってきたのかもしれません。社内には実装や開発のスタッフも多くいます。インタラクティブ領域において、彼らも含めた全体の動きをまとめあげ最高のクリエイティブを世に出す役割が求められていると言えます。

インタラクティブディレクターのように、時代に応じた新たな役職の設定は、職種の定義だけでなく、クライアント側のニーズも含めた、仕事のしかたを深化させる役割もありそうだ。IDの活躍は、そうした動きに即したものだとも言える。

加賀谷:専門性を突き詰めるという点では、社内での有志の取り組みもあります。僕は「デザイン・ラボ」というのを同僚数名と毎週開いていて、仕事とは別に自分たちでお題を決めて、情報交換や課題制作をしています。今年はアート・デザイン表現のコンペ「Tokyo Midtown Award」でメンバーが賞を頂くようなこともありました。日々の仕事の中では「デザインとは何だろう」といった根本的な思考から離れてしまうこともありがちですが、こうした活動がまたひとつ良い場になればという気持ちで続けています。

ほか、同社では、やはり有志で構成されるクリエイティブ集団「HACKist」が、米テキサスのインタラクティブフェス「SXSW」に出展するなどの動きも。柔軟な組織づくりから生まれる動きは、公式・非公式いずれの場面でも注目される。

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カンヌライオンズに参加する意義はなんですか?

カンヌライオンズに参加する意義はなんですか?

フランスでのカンヌライオンズや、シンガポールのスパイクス・アジアなど、国際広告賞での受賞も多い彼ら。カンヌには、毎年各職種からスタッフ数人が研修として派遣もされるという。これらの広告賞について、彼ら自身はどう考えているのかを聞いてみた。

加賀谷:率直に言えば、広告賞の受賞は、国際的かつ客観的評価による「箔を付ける」面は大きいと思います。一方、参加することでしか見えてこないものもやっぱりあるんです。たとえば僕も今年カンヌに行き、近年の潮流である「ソーシャル・グッド」(企業広告であると同時に社会が持つ課題を解決することも目的としている広告)は、企業の社会貢献的な流れや必要性を初めて実感しました。実は僕、正直そこには疑問もあったんです。でも各国のクリエイティブに触れると、企業活動でも個人でも「何かを世に生み出すなら、それは社会的に良いものであるべきだ」という理想が自然と腑に落ちた気がします。

熊崎:「社会課題の解決」を広告のテーマにできることには共感します。トレンドに乗るというより、自分がずっと持っていた気持ちにもつながるように思うからです。そして、それを実践して世界で評価される事例に触れるのは、刺激になると思う。受賞については、仕事相手に与える安心感や、それに値する水準を目指そうという指標にもなるでしょう。ときには受賞がクライアント側の求める「成果」のひとつであるケースもあり、そういう際にこそできる挑戦もあるはず。そうした機会は、自分たちも活かしたいですね。

入社2年目のデザイナー、馬瀬戸薫さんにとってもやはりカンヌは憧れの地のようだ。

デザイナー 馬瀬戸薫さん

デザイナー 馬瀬戸薫さん

馬瀬戸:現地に行かなくてもメディアを通じてカンヌの情報はかなり得られますが、やっぱり実際に体験したい気持ちはあります。さっきの「ソーシャル・グッド」に対する加賀谷の見方が変わったように、自分の中にある価値観もガラッと変わるかもしれない。そうしたきっかけを得る意味でも、これからチャンスがあればぜひ行ってみたいです。

実践から見えてきた「デジタル広告の未来」

長年「広告」に取り組んできた博報堂グループの一員として、他メディアのスペシャリスト集団と協同しつつ、新たな広告表現の追求は続く。最後に、彼らが見据える今後のデジタル・クリエイティブと広告の可能性を聞いた。

加賀谷:デジタル広告というと、ひと昔前はネット広告やWEBサイトづくりという印象にとどまりがちでしたが、最近ではあらゆるコミュニケーションにデジタルが介入していると感じます。紙媒体やテレビなどの従来メディアとも違い、より良い意味で何でもあり、いかようにも形を変えていける。そこには新しい可能性も無限にあると思います。

熊崎:たとえば今WEBサイトを作るとき、一番上にグローバルメニューがあるのが常識かつ王道ですよね。でも「本当にそれって唯一解なの?」「パンくずリストってもっと別の表現にできないの?」といったことをスタッフと話すことがあります。UIだけでなく、SEO対策などもそうです。もちろん、ただなくしてしまおうという事ではなく、当たり前になったものも新しい発想で変えていけるかどうか。そこも重要ではないかと、最近よく考えています。

加賀谷さんが参加した、リアルタイム検索のキーワードを組み合わせた世界初の広告配信モデル「Crossword Targeting」(メルセデス・ベンツ日本)なども、まさに新しい発想を取り入れた事例である。

加賀谷:このプロジェクトは、従来とは違うかたちでデータを広告に活かす挑戦でした。僕自身はもともとビジュアルデザインからこの世界に入ったのですが、今は案件ごとにベストなコミュニケーションの形を総合的に考える仕事をしています。結果、視覚的なデザインも、インタラクティブな要素も含めた多様なアプローチに広がってきました。

馬瀬戸:最近、熊崎が担当した案件で、地域、気象、時間などのデータと店舗のPOSデータ(レジの購買データ)をリアルタイムで広告に活かす仕事がありましたね。そうした形で、これから一層広い領域が、デジタル化し得ると思っています。これまで広告に使える要素としては思いつかなかったものも、アイデア次第で画期的な表現になるかもしれませんね。それはつくる側だけでなく、世の中自体もデジタル化してきたからこそ開けてくる未来なのかなと感じます。

常にこれまでの方法を疑い、たしかな実績を積み上げてきた彼らだからこそ見えているデジタル広告の未来がある。それはきっと、私たちがこれまでに体験してきた「インターネット」よりももっと広々としていて、モニター画面を飛び出して生活全般に行き渡ったものなのだろう。その変化の最先端を切り開くアイ・スタジオのこれからを注視していきたい。

  • Profile

    株式会社博報堂アイ・スタジオ

    私たちの担当クライアントは多岐にわたり、
    伝え方や伝えるメディアは、日々広がり複雑化しています。

    しかし、変わらぬシンプルな目的は、
    「仕事を楽しみ、世の中を楽しませる」こと。

    300名を超えるプロフェッショナル、
    30を超える職種の中で
    自分を磨くことを楽しめる人。

    私たちを
    新しい知見で楽しませてくれる人。

    どんな仕事でも
    楽しくする方法を知っている人。

    私たちは、
    「仕事を楽しみ、世の中を楽しませる」
    プロフェッショナルを募集します。

    株式会社博報堂アイ・スタジオ