
オープンから2年弱、ソニーブランドと人々をつなぐ場所として、さまざまなプログラムを開催してきたGinza Sony Park。『Sony Park展 2025』ではYOASOBIや羊文学などのアーティストとともにユニークな体験型プログラムに挑戦し、『映画「国宝」展』では作品の世界観に没入できる展示を実施するなど、その取り組みは多岐にわたる。
こうしたGinza Sony Parkでのプログラムの企画・制作・運営を担っているのが、ソニーPCL株式会社だ。企画から制作、技術、現場運営までを一気通貫で手がけることで、ソニーというブランドを「体験」としてかたちにしている。いわば、ブランドと来場者をつなぐ「ブランドインターフェース」としての役割を担っているといえるだろう。
今回は、同社の運営スタッフの中心メンバーである小田樹里さん、神田将さん、猪狩喬さんの3人にインタビューを実施。オープンからこれまでの具体的な仕事内容や、仕事とGinza Sony Parkの魅力について話を聞いた。
「ただ運営する」だけじゃない、Ginza Sony Park運営の仕事
ーGinza Sony Parkではさまざまなプログラムが行なわれていますが、そのなかで皆さんはどのような業務を担当されているのでしょうか。
小田:プログラムの実施工程は大きく「企画」「制作・施工」「運営」という3つのフェーズに分かれているのですが、私は「運営」における、現場マネージャーを担当しています。Ginza Sony Parkを訪れる来園者の方にいかに楽しんでもらうかということを考えて、接客オペレーションを構築したり、現場スタッフのアサインを行なったりしています。
また、私のポジションは、制作を中心としているメンバーと現場スタッフの橋渡し的な役割もあります。なので、制作を担当しているメンバーの意思を引き継いで現場の運営につなげたり、逆に現場の意見を制作側に共有したりすることも、大切な仕事だと思っています。

小田樹里さん
神田:私はプログラムにおける「制作」を主に担当しています。
実際のプロジェクトでは、企画や設計、施工、技術導入などでさまざまな関係者が絡んできます。そのなかで、ハブとなってプログラムをつくりあげていくのが自分の仕事です。こういう体験にふさわしい空間はどのようなものかを議論したり、どうすればユニークな体験がつくれるのかを考えたり、体験に必要なテクノロジーや機材はどういったものを採用していくかなど、そういうことを設計者やテクニカルの専門チームと協力しながら決めていくんです。
また、つくって終わりではなくて、それを日々プログラムを運営してくれる現場スタッフにつなげるところまでが自分の役割だと考えています。技術的な情報や造作物の知識などを共有し、実際にお客さまと接するときに生かしてもらう。安全にお客さまに楽しんでもらうことが、チーム全体の目標なので。

神田将さん
ーお二人ともチーム全員でどう来園者に楽しんでもらうかを考えて働かれているんですね。猪狩さんはどのような業務をされているんですか。
猪狩:僕も小田さんと同じく、Ginza Sony Parkの運営を担当しています。現場スタッフを含めて、一人ひとりが「ブランドのインターフェース」として動けるように、何が必要で何を準備しておくべきかというのをつねに考えています。
あとは、前職でカメラマンの仕事をしていたので、そのスキルを生かして撮影を担当することもあります。SNS用の写真撮影とか、店舗で販売するアイテムの物撮りとか。もともとカメラマンとして採用されたわけではありませんが、入社前から「経験を生かせたらいいな」という気持ちはあったので嬉しいですね。
現在、運営のコアメンバーは全員で5人なんですが、その人数で幅広い業務を担当しているので、自分のスキルや知識をチームに還元するということは、僕だけじゃなく全員が意識していると思います。

猪狩喬さん
ーメンバー一人ひとりの経験やスキルが、チームとしての武器になるんですね。小田さんや神田さんは、どのようなキャリアをお持ちなんですか。
小田:入社前はずっと接客業をしていました。カフェとかアイスクリーム屋とか。あとは、ダンスのインストラクターもしていました。基本的には、対面で人と関わるような仕事をずっとしてきましたね。一方で、クリエイティブの領域にも興味があって、グラフィックデザインを学ぶ社会人向けの学校にも通っていたんです。ただ、将来自分がデザイナーになり、クライアントワークをするうえでひたすらデザインと向き合うことができるだろうか、という不安もありました。
それが2018年ころだったのですが、そんなときにCINRA JOBでソニーPCLが出しているGinza Sony Parkの記事と求人を見たんです。当時はソニービル解体途中の段階だったので建物もなくて、業務内容が明確に決まっていたわけでもなく、「こういうことがしたい」という思いだけがある状態だったのですが、自分のやりたいことが全部詰まってる場所なんじゃないかと直感して応募しました。
実際に働いてみて、「創りたい欲」と「人と接したい欲」が両方満たされているなと感じています。制作サイドと運営がピタッと寄り添っていて、分断されていないというのは、Ginza Sony Parkならではだと思いますね。
神田:じつは僕もCINRA JOBの記事を読んでエントリーしたんです。僕は、音楽や映画などのカルチャーに触れていたいという思いがあって、これまでレコードショップや映画の配給会社などで働いていました。仕事を転々としながら、「いろんなカルチャーに幅広く関われる仕事がしたい」と考えていたんです。そんなときに、運営チームのインタビュー記事を読んで、応募を決めました。
いまの仕事は、まさに当時の希望を叶えられる特殊な環境だなと思いますね。
「技術の見本市ではない」。体験を重視してプログラムをつくること
ーグランドオープンから1年9か月が経ちましたが、これまでにGinza Sony Parkで経験したプロジェクトのなかで、印象に残っているものがあれば教えてください。
神田:一つに絞るのは難しいですが、2025年のグランドオープンと同時に始まった『Sony Park展 2025』は特に思い入れがあります。企画もそうだし、造作や技術的なものも含めて、言い出したらキリがないくらいの課題を乗り越えて開催に至りました。
このプログラムでは、前期後期に分けて計6組のアーティストと共にプログラムを実施したんですが、なかでも羊文学さんとのプログラムは、水を用いた特別な音楽体験として、音・水・光すべてを同期して一つの体験にしていくという実装のハードルが高い企画でした。
特に、水槽に発生させる波紋を振動によってどう制御するかという難問は、いろんな方に協力してもらいながら何度も検証を行ないました。それこそ、噴水の設計などを手がける「水の専門家」にも入っていただきました。

『Sony Park展 2025』展示風景 写真提供:Ginza Sony Park
ーさまざまな関係者とともに一つのものを作りあげるというのは、楽しさもある一方で大変さもありそうですね。
神田:そうですね。大変なことももちろん多いですが、企画段階で半ば妄想的に「こんなことができたら面白いんじゃないか」って考えるのは、この仕事をしていてワクワクする瞬間の一つです。そして、それを超えるくらい嬉しいのは、企画を具現化して、それを来園者に体験してもらって、喜んでいる姿を見ることですね。
小田:私も本当に一つに絞れないですね。どのプログラムもそれぞれの面白さと学びがあって、それらが積み重なっていまがあるって思うんです。だからいつも「今回のプログラム最高だ」って言いたくなりますね(笑)。
振り返ってみると、これまで開催されてきたすべてのプログラムで経験してきたことの一つひとつが少しずつ数珠つなぎになって、現場全体の運営構築力やチーム力につながっていっているように感じます。それ自体が印象的な運営経験ですね。
ー猪狩さんはいかがですか。
猪狩:『Sony Park展 2025』、あとは体験型エキシビションの『TM NETWORK 2025 IP』などが、ソニーの技術を盛り込んだプログラムとして強く印象に残っています。個人的に機械とか技術とかが好きなので、音響技術やハプティクス技術などの導入を施工の段階から自分の目で見て、それを来園者に伝えるところまでできたのは貴重な体験でした。
難しかったのは、来園者がみんな技術的な話を好きかというと、そうじゃないっていうところです。そういう人たちに対して、ソニーブランドの「インターフェース」としてどのようなコミュニケーションを取るべきなのか――。例えばある展示では、映像に合わせて振動する技術が使われていたんですが、とにかく振動が大きかったんですよね。なので、まずはそれを体感して驚いてもらう。そのタイミングで「じつはこれって〜」と話しかけると、「ソニーってすごいんだ」みたいな声をもらえたりするんです。
神田:大事なことですよね。Ginza Sony Parkではたしかに面白い技術を使っていますが、「技術の見本市」ではないので。体験ありきの技術だというのは僕も同じ考えです。軽やかにコンテンツを楽しんでもらいたい。技術の凄さというよりは、もっと情緒的な制作者の思いとかを感じ取ってもらいたいと考えています。

『TM NETWORK 2025 IP』展示風景 写真提供:Ginza Sony Park
ブランドインターフェースとしての矜持
ー先ほど「ブランドインターフェース」という言葉が出ましたが、Ginza Sony Parkというソニーグループのブランド価値を拡張する場で働くにあたり、意識していることはありますか。
神田:来園者がGinza Sony Parkで過ごす時間をより良いものにするための「体験満足度」はつねに意識しています。それは、現場で来園者と接するスタッフだけではなくて、企画 / 制作チームもそうですし、現場にはいないテクニカルチームも同じです。一人でも多くの人に「Ginza Sony Parkってなんかいいよね」と思ってもらうことで、それがソニーグループとしての価値向上につながってくるんじゃないかなと思っています。
猪狩:ここに来る方って本当にさまざまで、ソニービル時代から通ってくださっている方や、ソニーのことを知らない海外の方、通りを歩いていてふらっと入ってくださる方もいます。そういう方々にとって、「ソニー」として最初に接するのが僕たちであることって少なくないんですよね。まさにソニーのブランドを発信する立場として、どう振る舞うべきなのか、どうコミュニケーションを取るべきなのかを考え続けています。
小田:私も同じ思いです。来園者の心を動かすような体験や瞬間が、できるだけ多くこのGinza Sony Parkで起きてほしい。そして私たちがそのきっかけをつくれたらいいなと思っています。
そのためにはきっと、私たちだけではなく、現場スタッフ一人ひとりが、やりがいを持って、楽しみながら働いていたほうがいいはずです。スタッフが楽しそうに能動的に「ブランドインターフェース」として動けば、きっと来園者の心も動くし、「ソニーって、人も良いな」って思ってもらえるんじゃないかなって。そういうことを考えて、働く環境づくりに取り組んでいます。

3人が眺めているのは、2026年7月に発売された『Document of Ginza Sony Park Project』。約12年間におよぶソニービル建て替えプロジェクトの軌跡を400ページにわたってまとめたドキュメントブック。同年9月にはGinza Sony Park地下2Fで出版展示も行なわれた。
ー場所やプログラムや技術だけじゃなく「人」としてのソニーらしさまで考えているんですね。では最後に、このGinza Sony Parkで共に働くメンバーとして、どんな方に入ってもらいたいかを教えてください。
小田:いまお話ししたような「ブランドインターフェース」になることに前向きで、メンバーとしてそれを牽引していきたいと思っている方は是非、という感じです。あとは、人と関わることが好きとか、クリエイティブな領域に興味がある方はすごくフィットすると思います。
猪狩:僕たちの仕事は「運営」と言いつつも、運営だけじゃなく、幅広い業務を行ないます。僕自身は「興味があったら何でもやっちゃおう」っていうタイプだったのもあって、入社してからこれまでいろんなことを経験させてもらいました。それが自分の成長につながっていると感じていますし、ここで働く面白さでもあります。なので、新しい仕事にも前向きに取り組めるような方だと楽しめると思います。
神田:入社理由とも重複するんですけど、Ginza Sony Parkって本当に多種多様なプログラムに触れるきっかけがあるんです。テクノロジー系に限らず、映画だったり音楽だったりアートだったり。なので、そういうことに興味関心があって、広く関わりたいと思っている方にとってはとても魅力的な仕事だと思います。
業務範囲が広いからこそ、自分の興味範囲を拡張していくこともできますし、自身の専門分野を活かすこともできるはずです。「これだけ」って限定することなく幅広くチャレンジしたい方にとっては、絶好の場所ではないでしょうか。
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