
今年で創業35周年を迎える広告制作会社、エフアンドエスクリエイションズ(以下、F&Sクリエイションズ)。クライアントとの直取引を原則とし、その業績アップに貢献することに徹底的にこだわったものづくりを行っている。
各プロジェクトの成否の重大な鍵を握るのが、同社のマーケティングディレクターだ。クライアントの広告・広報上の課題をクリエイティブで解決するにあたり、その過程を総合的にプロデュースする役割を担う。
本記事では、同社で長らくマーケティングディレクターを務める小山司さん、大関奈々さんを取材。二人の姿勢からは、同社の仕事が評価されクライアントに選ばれる理由、その本質が見えてきた。
- 取材・テキスト:原里実
- 撮影:丹野雄二
- 編集:吉田薫
一度離れて気づいた、F&Sクリエイションズの働き方の価値
—お二人とも、F&Sクリエイションズに勤めて長いそうですね。
大関:私は新卒で入社して、今年で12年目に入りました。小山には、入社したばかりの頃から手取り足取り教えてもらってきました。
小山:私は20年ほど前に同じく新卒で入社して、5年ほど前に一度別の会社に転職したのですが、いろいろあって一年半ほど前からまたF&Sクリエイションズで働きはじめました。
—一度退職して戻った理由は何だったのでしょうか?
小山:「受託制作に携わる人あるある」かもしれないのですが、一度事業会社で働いてみたいと思い、ある市場に特化したマーケティングシステムを開発・販売しているIT企業に転職したんです。そこでセールスを担当しました。
ただ、クライアントごとの課題に合わせてシステムの仕様を変えることは難しく。また、担当業務が細かく分かれていたため、セールスがうまくいってクライアントでの導入が決まると、今度はカスタマーサポートを担う別のチームが担当することになり、自分の手を離れていきます。
そうした仕事を経験してみてあらためて、私にはF&Sクリエイションズの、「クライアントそれぞれの課題にとことん寄り添う」そして「受注から納品、その後の改善まで長く携われる」という働き方が合っているなと感じ、戻ることにしたんです。

取締役 / マーケティングディレクターの小山司さん。新卒でF&Sに入社し、マーケティングディレクターとして約15年従事。その後、IT企業に転職し、自社サービスのマーケティングとセールスを経験した後、F&Sに復職。復職後は採用ブランディングやコーポレートブランディングなどの新規案件をメインに活動。
多彩な提案力で、クライアントとパートナーになる
—お二人は営業を担っていらっしゃるんですよね。「マーケティングディレクター」という呼称は、他社ではあまり聞かない肩書きです。
小山:単純に「営業」と呼んでいた時期も長かったんですよ。そこから、「プロデューサー」や「アカウントプランナー」など、紆余曲折あって2年ほど前から「マーケティングディレクター」に変わりました。業務範囲が営業だけではなく、プランニングやディレクションなどを含む、いわゆるゼネラリスト的な役割なので、それを反映した名前のほうがよいのではないかという考えです。
大関:職域を横断する働き方自体は、私が入社した頃から変わっていません。実態に名前がついてきたという感じかなと思います。
小山:またF&Sクリエイションズでは、マーケティングは事業や製品の販路を拡大する仕事、ディレクションはその道筋を示して誘導することだと考えています。クライアントと一緒に事業拡大のための課題を解決していく役割である、という役職が担う本質的な役割を示して、マーケティングディレクターと呼称しているという側面もあります。
—F&Sクリエイションズのマーケティングディレクター職の特長として、どのようなポイントが挙げられますか?
小山:まず、提案できるソリューションの幅が広いことは大きな特長だと思います。制作予算1,000万円を超えるようなウェブサイト制作から、単価100円未満のノベルティーまで。だからこそ、制作の目的に加え、納期や価格、質などさまざまな条件を鑑みたうえで、クライアントの求めるポイントをしっかりとおさえて提案することが必要になりますし、案件の大小やアウトプットの種類を問わずにご相談いただける関係性を目指していきます。
大関:長くお付き合いするなかで、弊社をハウスエージェンシーのように扱ってくださるクライアントが多いことも特長のひとつですね。私の担当クライアントのなかにも、10年以上にわたってご依頼くださっている企業があります。

マーケティングディレクターの大関奈々さん。新卒でF&Sに入社し、マーケティングディレクターとして約11年間従事。店頭販促・企業PR・採用PRなどをはじめ、BtoC・BtoB問わず幅広く携わる。とくに入社当初からペット関連の案件に多く携わり、動物病院・ペットオーナー(ペット)・メーカーという3者の観点から「製品・サービスの良さが正しくユーザーに伝わり、使われることで関わるすべての人がしあわせになる」ことを大切にプロモーションに参画している。マーケティングビジネス実務・校正実務資格を保有。
継続クライアントが多い理由は、深い理解度と寄り添う姿勢
—継続や長期のプロジェクトが多いことは、働く人にとっても安心材料のひとつになりますね。そのようにクライアントと良好な関係を築けている理由は何でしょうか?
小山:例えば「パンフレットを制作したい」という依頼があったら、その背景にある課題を必ずヒアリングします。すると、担当者が考えていなかった「本当の課題」が見えてくることもある。
その結果、まずはパンフレットの制作からスタートしたとしても、今度はその「本当の課題」を解決するためのさまざまな打ち手を提案することができて、継続的な関係につながっていくことが多いですね。なのでつねに、いただいたご要望に応えるだけでなく、「もっとクライアントの役に立つ方法はないだろうか」という視点を持つことは大切にしていますね。
大関:加えて、私たちはクライアントのビジネスについてとにかく勉強し、深く知ることをとても大切にしています。結果、担当者と同じくらいの知識を持っている状態になると、ご依頼の度に細かいところまで説明してもらわなくても、クライアントが求めている本質をとらえたものを自然と打ち返すことができるようになる。クライアントからしたら「話が早い」のだと思います。

アース製薬様 シリカ水ボトルパッケージ:からだへのシリカの浸透を感じさせる、透明感のあるグラフィックで、店頭に陳列された際にも、照明で光り輝くような映え方を意識しています。センターに特色の銀の帯を加えることで、機能性にプレミアム感をプラスしたデザインに。またドット集合体のシンボルは、細かな粒子で浸透するナノコロイド化をイメージしました
—クライアントに深く入り込む仕事だと思いますが、F&Sクリエイションズのマーケティングディレクター職として働くにあたって、必要な能力はなんでしょうか?
小山:クライアントの「本当の課題」を見極めるにあたって、物事を俯瞰で見る力とヒアリング力は大切です。そしてその内容を、クリエイターを含む社内メンバーに正確に伝える力。いわゆるコミュニケーション能力ですね。
大関:それと近しいものとして、調整力も必要かなと思います。制作を進めるなかでクライアントの意見とクリエイターの意見が食い違うことがまれにありますが、どちらが「良い・悪い」「正しい・間違っている」ではなく、立場や見ているものが違うので当然のことだと思います。そういうとき、協力してひとつのものをつくりあげるためには、クライアントもクリエイターも、そして自分も納得できる「三方よし」の着地点を見出すことが必要になります。
そのためには、それぞれの考えを理由や背景を踏まえて伝えることが大切だと思います。衝突するのではなく、どう進むべきか本質的な議論ができるよう、ポイントをおさえて伝えることですね。とはいえ、社内のクリエイターたちは穏やかで優しい人たちばかりなので、その点ではとても助けられています。
小山:マインドとしては、「クライアントの課題を解決したい」という想いを持てることが大前提ですね。そのうえで、弊社のソリューションである「クリエイティブ」を好きでいることが大事だと思います。すぐれたデザインを見るのが好きだったり、文章を読むのが好きだったり。
僕自身がクリエイティブを創造することはできませんが、最初は何もないところから、社内外のクリエイターを巻き込んで思い描くものを形にしていくことに日々楽しみを感じています。
利益につながるクリエイティブをつくるための、三原則とは
—F&Sクリエイションズとして、クリエイティブを制作するうえで大切にしていることを教えてください。
小山:最近はありがたいことにクリエイティブに対する評価からお問い合わせにつながるケースもありますが、「ただ突飛で目立つもの」とか「なんとなくかっこいいだけのもの」をつくることは絶対にありません。弊社が考える「質の良さ」とは、「目的に適ったクリエイティブである」という考えが基本にあります。
大関:代表・濱橋も、「クライアントの売上を伸ばすことができないと意味がない」とつねづね言っていますね。クリエイティブがクライアントの利益につながるからこそ、私たちが対価をいただけるわけですから。
そのため、「期待を超えること」を企業理念の一つとして大切にしています。お客さまから言われたとおりのことだけを実行するのではなくて、「こうしたらより効果の出る販促になるんじゃないか」「世の中のためになるんじゃないか」「目の前の担当者さまのためになるんじゃないか」……さまざまなステークホルダーや社会への影響も含めて、「本当にいま尽くせるベストは何なのか?」をつねに考えるようにしています。
小山:弊社には、「品質の原則」「精度の原則」「速さの原則」という三つの行動指針があります。「品質の原則」が、いまお話ししたような、課題解決や目的に適う品質を守るということ。「精度の原則」は、もともと会社としてセールスツールなどの印刷物を数多く手がけていたというルーツもあり、「商品やサービスの魅力を正確に伝えること」を重視する姿勢を表しています。
大関:「速さの原則」に関連して、私が小山の営業に同行させてもらったときにとても印象に残った出来事があります。お客さまから課題やつくりたい制作物のヒアリングをするなかで、その場で「これってこういう形状だとダメなんですか?」とか「こうしたらいけそうじゃないですか」とかいろんなアイデアを出しながら、クライアント自身も気づいていなかった潜在的なニーズまで掘り起こして話をまとめていたんです。
一般的には、課題や要望だけをその場でヒアリングして、「解決策については持ち帰って検討し、後日あらためて提案」というケースも多いなか、解決策の方向性についての合意もその場でとっていたのが衝撃的で。「速さの原則」を目の当たりにしたと感じた出来事でした。
代理店を挟まない。だから、感謝や成果を肌で感じることができる
—マーケティングディレクターとして働くなかで、どのようなときにやりがいを感じていますか?
大関:クライアントとのお付き合いが長くなるにつれて、担当者との関係値がどんどん良くなり、信頼を寄せていただいていることを感じられる瞬間がとても増えてきます。例えば、依頼が繰り返しあることもそうですし、「絶対に担当をやめないでほしい」とか「大関さんがいなかったらこのプロジェクトは成功してなかったと思う」といった言葉をかけてくださる優しい方も多いんです。こうしたことは大きなモチベーションにつながっていますね。
弊社は代理店を挟まないクライアントとの直取引を原則にしているので、こういった信頼関係が構築できることはもちろん、施策が売上に与えた効果や、お店で販促物を展開して得られた反響なども直接聞くことができるんです。社内のなかでも、私たちマーケティングディレクターは一番そういった声をダイレクトに聞けるポジションなので、面白いです。
小山:僕自身は、最近はコンペなどの新規の仕事を担当することが多いのですが、やっぱり受注をいただけたときは率直にうれしいですよね。また、最初は新規として始まった仕事が評価されて、グループ企業などの制作物も任せていただいたり。
決まった商品を売るわけではないので、こちらの姿勢やアイデア次第で受注が決まります。それが会社の売上になって、クライアントに満足・信頼してもらい、次の発注につながる……そんなループを回していければ最高ですね。
いつでも独立できるくらいの気持ちで。F&Sクリエイションズで働くマインド
—F&Sクリエイションズでは、独立するくらいのマインドを持った人を歓迎しているそうですね。どういった理由からなのでしょうか?
小山:代表は「つねに自分が一つの会社を経営しているつもりになって考えなさい」とよく言っているんです。いまの時代、親鳥が餌を持ってきてくれるのを巣で待っている雛鳥のような姿勢でいては、社会人としての市場価値も上がらないと。
—どこでもやっていける姿勢やスキルを身につけられることは、働く人にとってもメリットですね。
小山:そうですね。マーケティングディレクターはクライアントの悩みを解決するために総合プロデュースする仕事なので、ビジネスを推進する力が身に付く職種かと思います。
実際に独立したメンバーと一緒に仕事をするケースもよくあるのですが、制作において大切にしていることやアウトプットのクオリティーなどの前提が共有できているので、安心してプロジェクトを進めることができます。ゆるやかにつながった「F&Sクリエイションズファミリー」のようなものが広がっていくと考えれば、会社にとってもメリットがあるのかなと思います。
—お二人としては、今後どのように働いていきたいと考えていますか?
大関:私はこれからも長く働いて、会社に貢献していきたいと思っています。ただ、仮に独立したいと考えたとしてもちょっとは自信があるかなと思えるくらい、いろいろなことを学ばせてもらっています。長く続けたぶんだけ、自分のなかに学びや経験が蓄積されて、成長できている実感はすごくありますね。
小山:私はいまは取締役という立場でもありますので、一人のマーケティングディレクターとしてだけではなく、採用や組織づくり、会社の方向性の検討などの多様な側面から会社をよりよくしていけたらと考えています。いい仲間を増やし、働きやすい環境をつくって、クライアントによりよいソリューションを提供して、関わるすべての人に「いい会社だ」と思ってもらう。そんな仕事をしていきたいと思っています。
—最後に、どんな人と働きたいか教えてください。
大関:私たちが長年大切にしてきたことはもちろん理解してもらいつつ、新しい風を吹かせてくれる人、新しいスキルを持ち込んでくれる人に出会えたらうれしいですね。業界未経験の方でも、それぞれ積んできた経験は唯一無二のものですから、既存の社員たちも一緒に成長できる、お互いに高め合っていける関係性を築いていけたらと思います。
小山:やっぱり一つひとつの案件、ご相談に対して、親身になって寄り添って解決したいなと思える人がいいですね。クライアントに合わせてテーラーメイドで解決策をつくっていく、それを面白いと思える人なら、きっと楽しめる仕事だと思います。
Profile

■存在意義
ブランディングの価値は少しずつ世の中に浸透し始めているものの、未だにその力を利用できていないクライアントが多く存在しています。
ブランディング活動を通じて、その効果をより多くのクライアントに伝え、活用してもらうことで事業成長を後押しする。それが私たちのいちばんの願いであり、目標です。
◆仕事
1990年の創業から、製品を拡販していくための販売促進(セールスプロモーション)活動に長く取り組んできました。そこで培ったパッケージや冊子をはじめとするグラフィック技術は、今もなお会社を支える基盤であり、WEB領域でもその力は活かされています。
グラフィックとWEB。
どちらの分野にも深く精通していることが当社の強みです。
■想い
見やすく、わかりやすく、正しく情報を伝えること。時代が変わっても、私たちはこの基本の姿勢を大切にしています。しかし、手を抜かず精度の高い制作物をつくり続けることは想像よりも大変です。
「好きだからやる。」という採用スローガンでは、広告が好きという気持ちを持って、まっすぐに仕事と向き合う社員の姿を表現しました。この採用スローガンのように広告好きな人に入社して欲しいと願っています。
(今回の採用サイトは、採用だけでなくインナーブランディングも兼ねて制作しました)
■おわりに
当社には独立後も仕事のパートナーとして付き合いのあるOB・OGが数多くいます。将来は自分で会社を経営をしたい。独立後にフリーランスとして活躍したい。そのくらいの気持ちでキャリアを積み重ねていっていただきたいと考えています。
まずは一度顔を合わせて話をしましょう。
会社見学もお気軽にお越しください。
みなさんに会える日を心待ちにしています。
キャリア採用サイト▼
https://career.fands-c.com/
コーポレートサイト▼
https://www.fands-c.com/