会社まるごと移住もアリ? いまクリエイティブ企業が福岡進出すべきワケ
- 2020/09/10
- FEATURE
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クリエイティブ企業から見た福岡の魅力は、どこにあるのでしょうか。今回はここ数年で福岡進出を果たした、株式会社ヤプリ福岡支社の福岡エリア室長・松尾要さんと、株式会社アカツキ福岡の代表・安納達弥さんに、企業進出のメリットや、クリエイター人材採用の可能性について、お話をうかがいました。
- 取材・文:寺尾えりか
- 編集:市場早紀子(CINRA)
Profile
松尾要
株式会社ヤプリ福岡支社 福岡エリア室長
制作会社でディレクターとしてMLB日本公式サイトを立ち上げ。その後大手広告代理店にて数々のキャンペーンサイトを手がけ、フリーランスを経て、ヤプリ創業初期から参画。大阪支社、福岡支社の立ち上げに携わり、現在は福岡エリア室長として福岡支社の統括とカスタマーサクセスを担当。
安納達弥
株式会社アカツキ福岡代表取締役CEO
1998年に芝浦工業大学大学院機械工学専攻を修了。日本オラクル株式会社に入社し、ERP製品の技術サポート業務に従事。アカツキ創業者である塩田氏、香田氏の誘いで2011年初頭からアカツキに参画。創業期メンバーの一人として、モバイルゲームの開発、インフラ運営などを担当。2015年から「顧客とプロダクトの満足度最大化」を追求するチームとしてCAPSを組織化。カスタマーサポートとゲームテスター領域でのトップランナーとしてアカツキグループ全体をリードしている。
福岡とクリエイティブ企業、じつは相性抜群?
―福岡を拠点にした理由を、まずは教えてください。
松尾:自分が福岡出身なことが一番の理由ですね。ヤプリでは、アプリ開発・運用・分析をノーコード(プログラミング不要)で提供するアプリプラットフォーム「Yappli」を提供しているのですが、ぼく自身がプロダクトを心から愛しているので、その魅力を大好きな地元にも広めたいと考えていたんです。
また代表の庵原とも、「福岡には通販企業が多いし、アプリ開発事業とも相性が良いから、いずれ進出したいね」という話をよくしていました。それから4年ほど地元企業に営業をかけ続け、順調に顧客も増えてきたので、2019年6月にまずは自分一人だけで支社を立ち上げました。それから現地で採用活動をし、現在は合計5人体制で運営しています。
―なるほど。安納さんはいかがですか?
安納:私たちは都市の特性と事業の相性で、福岡を選びました。アカツキはスマートフォン向けのモバイルゲーム事業をメインに展開している会社なのですが、福岡の拠点がオープンした2016年当時、ちょうど複数の新規ゲームタイトルのリリース準備が同時に始まったころで、運営に必要な人員を東京で積極的に採用していました。
ですが、今後の採用計画を考えると、東京で確保できる人員だけで担保していけるのか、という懸念があったんです。そこで、会社にマッチする優秀な人材を安定的に採用していくならば、東京以外にも目を向けてみる必要があるのではと考えました。
―そこでまず思い浮かんだのが、福岡だったと。
安納:そうですね。若者の地方離れが問題になるいまの時代に、福岡は逆に20、30代の若者人口が増え続けている珍しい都市。その特徴が、アカツキが制作するモバイルゲームを楽しんでいただいているターゲット層や、採用したい年齢層ともマッチしていました。
それから、「福岡は住んでいる人が温かい」というのも、選んだ理由のひとつ。私たちは現在、ゲームユーザーからのお問い合わせ対応をしていますが、届くメールに対しても、機械的な対応はしません。お客さまに一番近くで寄り添い、プロダクトが届ける最高の感動体験を創出することを大切にしています。そういう意味でも、事業内容と福岡の人間性は相性が良いと思いました。
また、支社立ち上げの際、福岡市の助成金制度を利用させていただいたのですが、市役所の方が丁寧にアドバイスや対応をしてくださるなど、すごく協力的で。そんなところからも人の温かさを感じましたね。
松尾:たしかに、みなさん優しいです。一度上京したぼくも、「やっぱり地元の人は温かいな」と感じますね。ヤプリの福岡支社は、コワーキングスペース「WeWork」を借りてオフィスにしているのですが、そこでさまざまな方に気さくに声をかけていただいたり、情報交換をしたりと、日々「人の温かさ」に触れています。
TwitterのDMから採用も。優秀な人材は地方にこそ隠れている
―ところで、ヤプリさんはなぜオフィスをコワーキングスペースに設けたのですか?
松尾:じつは、独立のオフィスも探してはいたんです。ただ、東京本社は社内にカフェがあったり、ビールが飲めたりと、オフィス環境が充実していて……。地域によって差が生まれないように探した結果、ドリンクサービスやキッチンなどが充実しているWeWorkにたどり着いたんです。
また、WeWorkは1か月単位で借りられるので、人員が増えてもフレキシブルに動けるのがメリット。それに先ほどお話したように、さまざまな企業の人と仲良くなれるので、気軽に話しながらビジネスに発展することもあると思いますよ。
アカツキ福岡さんはビル1棟をオフィスにされていますよね。じつはぼくの家がアカツキ福岡さんの近所なので、いつも「すごいなぁ!」と思いながら通っています(笑)。
安納:そうなんですよ。ビル1棟を借りてオフィスにしています。東京本社も、内装はこだわって特徴のあるレイアウトになっていますが、福岡オフィスも私たちならではのカラフルさや、雰囲気を大事にしています。
ただ、借りた当時は物件を探すのに苦労しました。もともと天神ビッグバン(福岡市の都市再開発プロジェクト。2024年までに天神エリアの民間ビル30棟を建て替えるなど、アジアの拠点都市としての活性化を目指している)の影響もあり、現地のオフィス事情は逼迫していると聞いていましたし。あと数年して開発が落ち着いてきたら、状況も変わるかもしれませんが。
―事業展開を考えている企業にとっては、採用面も気になるところ。実際はどうでしたか?
松尾:採用面は、かなりメリットがありますね。東京のビジネスをそのまま福岡で展開する予定だったので、もちろん最初は心配もありました。IT業界ではよく、東京を起点にビジネスを発展させてから地方に持っていくスタイルが多いため、情報や技術において、福岡は首都圏の3、5年遅れているとも言われていましたし。
ですが実際には、スキルセット的に優秀だけど、家庭の事情などでやむを得ず地元にとどまっているという人がたくさんいた。そういう逸材を採用できる可能性はとても高い。東京本社でも採用はしていますが、とにかく売り手市場で獲得が難しい状況なんですよ。
安納:クリエイティブ企業はどこも同じですよね。とくに技術者の分野はニーズが重複するので、良い人は取り合いになっているように感じます(苦笑)。
―しかし、そんな逸材を見つけ出すのは大変じゃないですか?
松尾:求人掲載も積極的に利用していますが、面白い例でいうと、1人目はTwitterで採用しました。ヤプリのアカウントをずっとフォローしてくれていた人で、あるとき「そろそろ福岡での採用はないんですか?」とダイレクトメールを送ってきたので、「ただものじゃないな」と思い(笑)。そこから面接をして採用に至りました。
安納:たしかに、家庭の事情で地元に残る方もいらっしゃいますが、福岡出身のみなさんは、地元愛が強く、こだわりを持って残りたいと考えている方が多いイメージはあります。
松尾:そうなんです。とにかく福岡ってご飯はおいしいし、街がコンパクトで住み心地が良いですからね。ぼくも地元に戻ってからは毎朝の通勤も徒歩になり、東京で満員電車に乗っていたころと比べ、驚くほどストレスフリーです。また家賃も安く固定費がグッと下がるので、自然と生活レベルも上がりますよ。
―一方で安納さんは東京にお住まいなんですよね?
安納:そうなんです。ぼくはアカツキ福岡の代表と兼務で、本社でも別の役割を担っているため、現在は東京に住んでいます。新型コロナウイルスの流行以前は、週に数日は飛行機で福岡まで通っていました。都心だと空港まで行くのに一苦労ですが、福岡は街の中心地から空港が近いので、飛行機で頻繁に出張するビジネススタイルの人には本当に便利だと思います。
支社があれば「まずやってみよう」ができる。地方展開の醍醐味とは?
―先ほどもお話が出ましたが、福岡はやはり人が温かいので、企業も同業種同士でつながりやすいとよく聞きます。
安納:そうですね。アカツキで支社を出そうとなったときは、手続きや採用など、現地の状況や手順に馴染みがなく、わからないことも多かったので、先に福岡に進出していた企業にアポイントを取って、いろいろと教えていただきました。
―競合他社でも親切に教えてくれるんですね!? 進出を考えている企業にとっては心強い話です。
松尾:ぼくも支社を構える前に、LINE Fukuokaさんとメルカリさんの福岡支社へご挨拶に行って、採用のことなどを教えてもらいました。普通に教えてくれますよね。
安納:そうですね。やはりみなさん親切なので、そういう意味で横のつながりが起こりやすいのだと思います。とはいえ採用に関してはバッティングする可能性があるので、私たちならではの工夫が必要だと感じ、未経験者も積極採用するなどの対応をしました。
―みなさん本社や親会社を東京に構えていらっしゃいますが、福岡にいるからこそ還元できることはありますか?
安納:親会社のアカツキも設立10周年を迎え、社員数も数百人規模にまで成長しました。それくらいの規模感だとなかなか試せないことを、まずは50人ほどの規模のアカツキ福岡で実験的にやってみる。そこで得た価値を親会社に還元できるのは、ひとつのメリットだと感じます。
例えば、企業全体でやりたい施策があった場合、いきなり数百人もいる全社で対応するのは、運用コスト的にも大変です。そこで、小さい組織だからこその動きやすさを活かし、さまざまな座組みでの運用を積極的に試してみる。そんな取り組みを活かして、グループ会社のなかで存在感を高め、価値創出することを目指しています。
松尾:まさに、安納さんがおっしゃる通りですね。東京だと組織がすでに大きくなっていることも多いので、新しいことをやるにしても、承認が多くなったり、どうしても動きにくくなったりする場合があると思うんです。ミニマムでやっている支社や子会社の場合、「まずやってみよう」がすぐにできる。「スモールスタートがしやすい」、これこそ地方展開の醍醐味だと思います。
地方進出で大事なのは「その土地でやる価値」を見出すこと
―これから福岡の支社・子会社として、どんな役割を果たしていきたいですか?
松尾:まずは売り上げを取り、本社に還元したいと思っています。さらに中期的なことだと、本社から羨ましがられる支社でいたいですね。「生活レベルがこんなに上がるんだよ」と、どんどんアピールしていきたいです(笑)。
―良いですね(笑)。安納さんはいかがですか?
安納:新型コロナウイルスの流行以降、リモートワークが浸透し、場所に依存しない働き方に移行しています。そのなかで、私たちは企業価値についてあらためて見直すフェーズに入っていると感じます。チームの良さを理解してもらい、一緒に働く人たちに、どうしたら「福岡で良い」じゃなく「福岡が良い」と思ってもらえるか。まずは、自分たちだからこその良さで価値貢献できるようになりたいです。
―最後に、これから福岡進出を検討している企業やクリエイターの方へアドバイスをお願いします。
松尾:地方では予期せぬこともたくさん起こると思うので、強いハートが必要です(笑)。トラブルも楽しめるような精神を持ち合わせていれば、問題ないと思います。
ぼくはヤプリの創業当時から、会社が大きくなっていく過程を経験し、そして福岡支社でまた少人数からのスタートを切り、いまはとてもワクワクしています。地方に支社展開することは、一から企業をつくり上げる醍醐味をまた味わえるという楽しさもあるんじゃないでしょうか。
安納:ビジネスにおいて「価値をつくっていく」というのは、どこにいても考えないといけないテーマだと思います。なので、「福岡の良さ」をどう自分たちのビジネスに還元していくか、という視点で取り組むことが大事だと考えています。
福岡は同業他社ともつながりやすい環境ですし、助成金など福岡市自体の心強い取り組みもたくさんあります。それをうまく活用しながら、それぞれのビジネスや、立ち位置を築き上げていけると良いと思います。これから多くの企業が増えて、みんなで福岡のクリエイティブ業界を盛り上げていけたら嬉しいですね。
これまでCINRA.JOBでは、「住みやすさ・働きやすさ」といった暮らしの視点から、福岡の魅力を深掘りしてきました。今回、企業視点で話をうかがってみると、「天神ビッグバン」など市をあげての施策や、クリエイター人材の採用のしやすさなど、ビジネスの可能性も大いに秘めていることがわかりました。
コロナ禍で、テレワークの導入が増え、「働き方」の価値観が多様に変化しつつあるいまだからこそ、注目都市の福岡へ企業展開を検討してみるのもアリかもしれません。
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