クリエイターの幸せって何だ? 30周年の制作会社が探す「働きやすさ」とは

株式会社エフアンドエスクリエイションズ 

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クリエイターがのびのびと活躍できる制作会社とは?
「クリエイターのしあわせ」を追求するべく変化を遂げてきたのが、設立30周年を迎えるエフアンドエスクリエイションズ(以下、F&Sクリエイションズ)だ。変化のきっかけをもたらしたのは、2017年入社のクリエイティブディレクターである栗原勲さん。「クリエイターの働きやすさ」を追求するにいたった想いを、栗原さんと、おもにWEBサイト制作を手がけるアートディレクターの井上寛教さん、安保毅彦さんに聞いた。
  • 取材・文:笹林司
  • 撮影:丹野雄二
  • 編集:立花桂子(CINRA)

「クリエイティブの責任があいまいな文化」を終わりにしたい。29年目の決断

—広告制作会社のF&Sクリエイションズは、おもにどのような案件を手がけているのですか?

栗原:グラフィック広告や販促ツール、WEBサイトの制作をメインに、企業のブランディングも手掛けています。その根底にあるのは、「クライアントの悩みをデザインで解決する」ということ。社内にはクリエイティブディレクターやデザイナーのほか、コピーライターもいるので、「これはできません」というものはほとんどありません。

F&Sクリエイションズ クリエイティブディレクター / コピーライターの栗原勲さん。2017年に入社し、同社の制作部に変化をもたらした立役者。「インプットの時間も大切にしていて、月に1回、陶芸や映画鑑賞など、やりたいことをやる自由時間をクリエイティブの全メンバーに設けています」

F&Sクリエイションズ クリエイティブディレクター / コピーライターの栗原勲さん。2017年に入社し、同社の制作部に変化をもたらした立役者。「インプットの時間も大切にしていて、月に1回、陶芸や映画鑑賞など、やりたいことをやる自由時間をクリエイティブの全メンバーに設けています」

栗原:通常、制作会社は広告代理店から依頼を受けて制作することが多いと思います。ですが、弊社は基本的にクライアントとの直取引き。直接やり取りしながら適切なアウトプットを探す制作スタイルが、大きな特徴といってもいいでしょう。

—会社はどのような体制になっているのですか?

栗原:大まかに営業(プロデューサー)と制作に分かれています。全社員30人超のうち、20名が制作部のクリエイターですね。制作部は、コピーライターなどが在籍しているプランニング中心の部署と、デザインを中心に行う部署に分かれていて、両方ともアイデア出しに参加します。

—実際の制作は、どのように進めるのですか。

栗原:営業(プロデューサー)が案件を受注したら、まずはぼくに話がきます。そしてぼくがプロジェクトのリーダーとなるクリエイティブディレクターを指名し、そのクリエイティブディレクターがアートディレクターやプランナー、コピーライター、フォトグラファーといった制作スタッフをアサインしていくのです。案件ごとにプロジェクトチームを組んで、ワイワイと仕事を進めていますね。

—安保さんと井上さんは、どのようなお仕事をされているのですか?

井上:ぼくはアートディレクターとして、デザインの部署に所属しています。おもに担当しているのは、WEBサイトのデザイン。最近でいうと、丸山珈琲さんのブランドサイトとECサイトのリニューアルを担当させていただきました。

F&Sクリエイションズ アートディレクター / グラフィックデザイナー / WEBデザイナーの井上寛教さん。知り合いの紹介をきっかけに、2018年からジョイン。「これまでも媒体をなるべく限定せずデザインに携わってきたので、アウトプットを限定しないところもこの会社の魅力でした」

F&Sクリエイションズ アートディレクター / グラフィックデザイナー / WEBデザイナーの井上寛教さん。知り合いの紹介をきっかけに、2018年からジョイン。「これまでも媒体をなるべく限定せずデザインに携わってきたので、アウトプットを限定しないところもこの会社の魅力でした」

安保:ぼくもアートディレクターとWEBデザイナーを兼任していて、会社がWEBサイトの制作を始めたタイミングで入社しました。UI・UXデザインやフロントエンド開発を受け持つこともあります。

ぼくが入社した2013年当時の会社は、いまと少し違う雰囲気だったんですよ。

株式会社エフアンドエスクリエイションズ アートディレクター / WEBデザイナーの安保毅彦さん。今回の参加者のなかではもっとも年次が長く、WEB事業の立ち上げにも携わる

株式会社エフアンドエスクリエイションズ アートディレクター / WEBデザイナーの安保毅彦さん。今回の参加者のなかではもっとも年次が長く、WEB事業の立ち上げにも携わる

—どのような雰囲気だったのですか?

安保:じつはこれまでは、クリエイティブの責任を誰が持つのか、あいまいな文化がありました。デザインやコピーライターの原稿もまずは営業がチェックし、修正を入れる。クリエイターがクライアントと直接会うことはなく、ヒアリングや確認もすべて営業に任せきり。柱となるコンセプトを立案したり、クオリティーコントロールをしたりする人間がいなかったのです。

栗原:もちろん営業(プロデューサー)も優秀なのですが、コミュニケーションのすれ違いが起きて、クライアントの意向の伝達に誤解があったり、担当者の好みだけで判断したりするケースも生まれていました。そういうつくりかたをしていると、クリエイターのモチベーションは上がらないし、なによりスキルが身につきません。

井上さんが手がけた、丸山珈琲のブランドサイト(画像提供:F&Sクリエションズ)

井上さんが手がけた、丸山珈琲のブランドサイト(画像提供:F&Sクリエションズ)

—世の中に数多ある制作会社のなかでは、珍しくない話かもしれませんね。

栗原:30年近くそのやり方で実績を出してきているだけに、変えるべきかどうかは悩ましかったですね。

ただ、これからは単純にデザインをつくるだけの仕事は、機械でもできる時代になるでしょう。そのときに価値のある会社として生き残るためには、企画でもデザインでもコピーでも、高いレベルのアイデアや表現が必要になると思います。それによって、世の中を動かし、社会をよりよくしていくのがクリエイティブの使命。「クライアントが満足するものをつくるだけ」のところで留まっていては、そこまでたどりつけません。

代表もそこを危惧して、会社やクリエイティブをもっと良くするためにはどうしたらいいのかをずっと考えていたそうです。そういった背景もあり、ぼくが2017年に入社したのをきっかけに、制作部のやり方や組織づくりを全面的に委ねてもらいました。

まずは会社自体をリブランド。社名の「F&S」に込めた意味とは?

—具体的には、会社をどのように変えていったのですか?

栗原:制作会社としては当たり前のことですが、クリエイティブディレクターを立て、クリエイティブの責任を制作部が取るようにしました。

それから、社員の意識を変えるために、会社自体のリブランドにも取り組みました。社名はそのままですが、CI(コーポレートアイデンティティー)を変更し、名刺などのデザインも一新。あとは、スローガンの作成ですね。

社名の「F&Sクリエイションズ」の「F&S」とは、じつは代表の思い入れがあった土地である福岡と札幌の頭文字だったんですよ(笑)。出発点が思い入れだったとしても、もっと会社のマインドを深掘りして、社名を通じて社外の方々に思いを伝えたい。そこで、FとSから始まる単語を片っ端から調べたんです(笑)。

安保:代表は「FLEXIBLE(フレキシブル)&SPEED(スピード)はどうだ」と言っていましたね。しかし、ぼくたちが選んだのは「FELICITY & STANDARD(フェリシティ&スタンダード)」です。

—どのような意味が込められているのですか?

栗原:直訳すると「幸福と標準」ですが、スローガンとしては「幸福をスタンダードに。」という意味を込めました。2017年に新たに策定した経営理念「お客さまの期待を超える品質を常に提供し、世の中を豊かにする製品・サービスを正確にとらえ、確実に広めることで、関わるすべての人をしあわせにします」をひと言で置き換えたものでもありますし、「私たちがつくるものこそスタンダードだ」という意気込みでもあります。

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クリエイターが制作に集中するためには、安定した生活も必要

クリエイターが制作に集中するためには、安定した生活も必要

—「関わるすべての人をしあわせにする」というのは、クライアント、エンドユーザーはもちろん、社員のみなさんも含まれますね。

栗原:もちろんです。クリエイターのしあわせのひとつは、自分の能力が発揮できて、成長できること。弊社も、クリエイターにとって働きやすい環境を整えることで、その実現につながると考えました。

井上:ぼくは入社前からF&Sクリエイションズとつき合いがあったのですが、以前はもっと実直な印象でした。「お堅い」と言ってしまってもいいかもしれません。

会社が外からどう見られるかをあまり意識していないのかなと思っていたのですが、リブランディングのなかで目に見えて変わっていった。それが入社を決めた理由のひとつでもあります。入社してからも、前例のない取り組みを「いままではこうしていたから」と否定されることはほぼなかったですね。

—社歴の長い安保さんは、どういったところが変わったと感じますか?

安保:これまでは営業が窓口に立っていたので、修正の指示が来ても、それがクライアントの意見なのか営業の意見なのかがわからず、正直やりづらさがあったんです。ですがいまは、クリエイターもクライアントとの打ち合わせやオリエンテーションに同席するようになりました。直接やりとりすることで、仕事のクオリティーも上がっています。

栗原:クライアントと必ず顔を合わせるのは大切ですね。言葉のトーンや表情から「本当に必要なもの」を見極められます。

それから、職種や年次に関係なく、チームみんなで楽しみながらアイデアを出し合うことも弊社の特徴。打ち合わせが盛り上がりすぎて、代表に「笑い声がうるさい」と怒られることもあるほどです(笑)。仲がいいチームのほうが、絶対にいいものができますから。

—さまざまな視点の意見を取り入れて、アイデアを膨らませるのですね。

栗原:極論ですが、役割や肩書きは自分で決めていいと思っているんですよ。たとえば、コピーライターだけがコピーを書かなければいけないわけじゃない。WEBディレクターやデザイナーがびっくりするようなコピー案を出してくれたら、嬉しいじゃないですか。

井上:デザイナーとしては、コピーライターの存在が大きいですね。「どうしたらもっと伝わるか」を、コピーとビジュアルの両軸から考えられますから。企画やアイデアの軸となる「言葉」をつくれるメンバーが近くにいることは、素直にうれしいです。打ち合わせでも実際の制作でも、みんなが立ち返るべき「言葉」があると、仕事を進めやすいですし。

安保:同じ職種からは出てこない別視点の意見を聞けるのは、楽しいですし勉強にもなりますね。

—「クリエイターの働きやすさ」という意味では、待遇面も重要です。

栗原:待遇のよさは、F&Sクリエイションズが古くから持つ大きな魅力です。代表は以前から、「社員みんなが、東京に一軒の家と一台の車を持てる生活水準の実現」を約束してくれています。生活に心配がないからこそ、制作に集中できるんですよね。

採用で重視するのは、スキルよりも「いいヤツ」かどうか

—今回はおもにWEBサイト制作のクリエイターを募集されています。F&Sクリエイションズで働くうえでの魅力はどこにあるのでしょうか。

栗原:「WEBサイトをつくるだけ」では終わらないところでしょうか。WEBのみの制作会社であれば、サイトをつくり終えたらそこで仕事は終了です。ですが、大切なのはクライアントのメッセージを発信し続けていくこと。そのために必要だと感じたら、パンフレットなどの紙媒体で表現することもできる。WEBサイトだけにとらわれず、「コミュニケーションのすべてを設計できる」というのが魅力ですね。

「コロコロ」でおなじみのニトムズの新卒採用サイトも制作。主力商品の特徴と新卒採用への想いを掛けた「あなたと、くっつきたい。」というキャッチコピーが印象的だ(画像提供:F&Sクリエションズ)

『コロコロ』でおなじみのニトムズの新卒採用サイトも制作。主力商品の特徴と新卒採用への想いを掛けた「あなたと、くっつきたい。」というキャッチコピーが印象的だ(画像提供:F&Sクリエションズ)

—案件によっては、WEB以外のクリエイティブに携わることもありそうですね。

栗原:もちろんです。そういった意味では、用意された仕事を黙々とこなすタイプよりは、自分の考えを発信し、周りと協力しながら行動できる人といっしょに働きたいですね。

チームの雰囲気に乗れるというのもひとつの能力ですし、そういうクリエイターは自発的に仕事もできるはず。社員もそういうタイプの人が多いですし、採用でいちばん重視しているのは、実際のスキルよりも「いいヤツ」かどうかです(笑)。

井上:社員同士は、本当に仲がいいですよね。馴れ合いではなく、お互いを尊重し合える環境ができています。

栗原:余計な人間関係で悩むことはないと思いますよ。個人的には、池尻大橋という場所も気に入っています。渋谷や中目黒、三軒茶屋が徒歩圏で、人混みもひどすぎず。散歩するだけで気分転換になります(笑)。

まだまだ変化の途中。理想は「クリエイターの野心を満たす制作会社でありたい」

—最後に、F&Sクリエイションズの目指す姿を教えてください。

安保:WEB制作の歴史はまだ浅いので、まずは最前線で戦えるような技術力や知識を蓄えていきたいですね。それがあるからこそ、世の中をあっと言わせられるし、おもしろいことも実現できるはず。そのためにも、いまは社員一人ひとりがマインドとスキルを高めていく時期だと思っています。

栗原:クライアントの想いや、企業、商品の魅力をしっかりと社会に届けることはもちろん、働いている社員の「クリエイターとしての野心」を満たす制作会社でありたいです。

その野心とは、「世の中を変えたい」という気持ちかもしれないし、「自分が生きている意味」かもしれない。会社のあり方が変わったことで、クリエイターの内側で燃えている野心を後押ししやすくなったと思います。

井上:クリエイターの仕事は、世の中に信念や志を問い続けていくことだと思います。自分の感情が動くものは何かを、ぼくも社会に問い続けていきたい。いままさに模索している最中ではありますが、F&Sクリエイションズには支え合える仲間がいるので、まずは自分の大義みたいなものを探していきたいです。

  • Profile

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    池尻大橋のデザイン制作会社。広告、販促、ブランディング。

    私たちの大切にしていることは、関わるすべての人をしあわせにすること。きちんと社会に届くものを制作し、クライアントも、受け取る人も、つくる人も、その家族たちもしあわせにする。そのために、代理店を介さず直取引を基本としています。対面で話をすることで、言葉にならない想いや覚悟を受け取ることができる。それが上辺を撫でるだけのデザインを超えて、心を動かすデザインをつくりだす。そうして、すべての人をしあわせにする。この想いは「FELICITY & STANDARD 幸福をスタンダードに。」というスローガンに込められ、働く私たちに深く刻まれています。

    ■私たちの試み
    良いアウトプットを生み出すためには、良いインプットが必要です。しかし、ひとりで得られる情報や体験には限りがありますよね。F&Sでは良いインプットが得られるよう、いくつかの試みをしています。業界動向のチェックはさることながら、クリエイティブの全メンバーがいま個人的に気になっていることを共有する会「気になるなう」(名前ダサい)。数人で構成されたチームのメンバーと芸術文化を体験する「文化の日」(1回3〜4時間)を毎月開催。こうした試みがメンバーみんなの脳を刺激し、確実に制作物の向上に貢献しています。

    私たちはまだ変化の途中にいます。たくさんの試みをし、たくさんの失敗を重ねて、大きく飛躍していくことを目指しています。

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