「デザイナーの仕事」に線を引かない。株式会社デパートが実践する領域にとらわれない課題解決

株式会社デパート

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WEB制作の現場では、職種ごとに役割が明確に分かれていることが多いが、東京・青山のWEB制作やブランディングを手がける株式会社デパートには、領域や役割にとらわれない柔軟な制作姿勢を肯定する文化がある。

「良いデザイン」をつくるために必要なのは、自分の専門領域だけを見つめることではなく、時にその外側にまで踏み込んでいくこと。そんな姿勢がデザイナーの専門性や技術を深め、結果としてクリエイティブの質そのものを底上げしているのだという。

今回は、デザイナーチームの課長を務める末廣和弘さん、アートディレクターシニアデザイナーとして技術主任を務める伊藤高生さん、そして入社3年目のチーフデザイナー内村理沙さんの3人に、同社が実践する「領域を越える」ものづくりのあり方と、そこで若手デザイナーがどう成長していくのかを聞いた。

  • インタビュー ・テキスト:栄藤徹平(八ノ屋)
  • 撮影:kazuo yoshida
  • 編集:吉田薫

線引きをしないことが、「良いデザイン」をつくる

ーデパートは「Good Design, Good Experience」というミッションを掲げています。そもそも御社の考える「良いデザイン」とは何か、というところからおうかがいできますか?

伊藤:そうですね、難しい質問なので最初から話せればと思うのですが、私たちデパートはクライアントの課題解決のための一連の工程を「設計」ととらえることで、ココロをゆさぶる体験をつくることができると考えています。そういう意味で、ただ見た目がかっこいいものを目指すというよりは、機能とかロジックとかを言語化していくことを大事にしています。「良い」とは何かを突き詰めて考えることが重要だと思っていて。

その一方で、ユーザーにとって直感的に素敵だと思ってもらえるデザインにすることももちろん重要です。お客さんの要望に論理的に答えられること、ユーザーが使って心地いいデザインであること、両方の視点を持ってつくられたものが、私たちの考える「ココロをゆさぶる体験」がつくれる良いデザインだと思います。

伊藤高生さん。技術主任 アートディレクター / シニアデザイナー。アパレルメーカーに勤務した後、グラフィックデザイン事務所での経験を経て2016年に株式会社デパートに入社。自社のロゴ・オフィシャルサイトをはじめ、WEBデザイン、UIデザイン、モーショングラフィック、イラストレーションまで幅広い領域を手がける。

ーデザインのロジックと感性、どちらも重要視しているのですね。そういったデザインをかなえるために、必要なことは何だと思いますか?

伊藤:デパートでは、プロジェクトを進める際、基本的にディレクター・デザイナー・エンジニアの三者がチームを組んで、お客さまと向き合います。その際、それぞれが「自分の担当領域はここまでだ」という線引きにとらわれず、時には柔軟に踏み込むことが必要なんじゃないかなと思っているんです。

というのも、お客さんの要望に応えるための解決策として、映像をつくる必要があったり、印刷物をつくる必要があったり、あるいは撮影が必要になったり。多様なアウトプットが、同時にいくつか必要になることはよく発生します。そのときに「私はデザイナーだからこれはできません」「やったことがないのでできないです」というスタンスではなく、「課題解決のためにはどんなことでもやってみよう」という姿勢であるほうがいいなと思うんです。

野球でも仲間同士で見合ってしまってフライを落としてしまう、みたいなことがあるじゃないですか。そういうことが起こらないように、みんなが積極的に動けるような柔軟さをポジティブにとらえることが重要なんじゃないかと考えています。

末廣:デザインの話で言うと、WEBサイトの制作ではさまざまな工程がありますが、どの工程のどの部分も「デザイン」と切っても切り離せません。なので、デパートではデザイン領域外のことであってもデザイナーが積極的に提案したりすることがよくあるんです。

カルチャーとしてそういう雰囲気があるというのもありますし、会社としてもそうした積極性は高く評価するようにしています。

末廣和弘さん。課長 / アートディレクター / シニアデザイナー。2010年頃から本格的にWEB業界へ。制作会社でのデザイン・ディレクション、ECサイト運営、出版会社でのグラフィックデザイン、フリーランスでのWEBデザインなど、さまざまな立場でクリエイティブに携わる。その後、都内セレクトショップのWEB事業部にてディレクター・マネージャーを経験。現在は株式会社デパートにてデザイナーとして活動。WEBデザイン、UI/UX設計、チームマネジメントを中心に取り組んでいる。

ー内村さんは、前職もWEB制作の会社でデザイナーをされていたそうですが、そのころと比較して感じることはありますか。

内村:「新しい領域にチャレンジすること」を大事にしているのは、実際に働いていても感じます。例えば、私が入社3か月くらいのときに、フードスタイリングの撮影ディレクションを担当させてもらったことがあったんです。それまでまったく経験したことのない仕事だったのでとても刺激的でした。

あとデパートは、デザイナーが外に出ていくことが多いなと感じます。ひたすらパソコンに向かって制作作業をするだけでなく、クライアントと会ってコミュニケーションをとったり、現場に行ったりすることを重視しているんだな、と。実際、そういう経験がデザイナーとしての成長に寄与しているというのも感じます。

内村理沙さん。チーフデザイナー。美大でUIデザインやグラフィックデザインを学んだ後、WEB制作会社に新卒入社。デザイナーとして、コーポレートサイト・採用サイト・キャンペーンサイトをはじめ、ロゴやVIなど幅広いクリエイティブ制作に携わる。その後、さらなるスキルアップを目指して株式会社デパートへ入社。入社後は、コンペ提案やWEBサイトリニューアル案件を中心に、WEBデザインやビジュアル制作を担当。

コンセプト設計から、Figma講師まで。デパートで経験した「初めて」

ー実際これまでに内村さんが新しいチャレンジを経験したプロジェクトはありますか?

内村:印象に残っているのは、株式会社伊勢半様の案件で、『ヒロインメイク』20周年を記念したブランドサイトのリニューアルプロジェクトです。

「エリザベート・姫子」っていうブランドアイコンがいるんですけど、そのキャラクターを起点にサイト制作にあたってのコンセプトを考えるところから始めました。

プロジェクトメンバーとして一緒に入っていた伊藤とも話しあって、強いけど可愛い「鋼かわいい」をデザインの裏テーマに設定しました。結果的にショッキングピンクのカラーをベースにしたデザインを提案したんです。こういったプロジェクトは初めての経験だったので、すごく楽しかったです。

伊藤:この案件、そもそもクライアントから「サイトテーマから考えてほしい」とか「ピンクを使いたい」とか、そういう要望があったわけではなかったんですよね。サイトリニューアルにあたって、そもそも「ブランドのコアは何だろうか」というところから社内で考えて、アイデアを出し合いながら情報を整理していき、その提案にいき着きました。

ークライアントの要望にただ応えるだけではない、という意味でも「領域にとらわれない」のですね。

伊藤:クライアントの課題に向き合ったとき、与件にとらわれずに第三者目線で課題を深ぼりすることも大切にしています。本当の意味で要望に応えたいと思っているからこそかなと思います。

末廣:新しいチャレンジというところで言うと、最近、内村にデザイン講座のレクチャーを担当してもらいました。

ーどういった内容だったのですか?

内村:デザインツールの「Figma」の使い方をレクチャーするというプロジェクトでした。Figmaの本格導入にあたって基礎的な使い方を教えてほしいというお問い合わせをいただいたんです。

大勢の前で実際にFigmaを触りながら画面を映して説明するっていう。しかも、オンラインでの配信も行なったんです。スピーカーとしての仕事は初めてだったので、どんな内容をどんな順番でどんな話し方で伝えればいいのか、めちゃくちゃ考えたのを覚えています。あとで録画で確認したら散々な結果だったんですが……。

伊藤:いやいや、ちゃんとやれてましたし、なんなら爆笑をかっさらってましたよ。

内村:多分あわあわしてたから優しく笑ってくれてたんですよ(笑)。私としては反省もありつつなんですが、でもその経験は通常の業務にも活きていて、例えばお客さんにデザインの説明をするときにも「どういう説明をするべきか」ということを、それまで以上に気にするようになりました。

ー末廣さんとしては、まさにそういう狙いがあって内村さんをアサインしたんですか?

末廣:それはありましたね。僕は、瞬発力だったり語彙力だったり、いわゆるコミュニケーション能力というのは、デザイナーにとってどんどん重要なスキルになってくると考えています。それこそ今後、生成AIの台頭もあって制作物自体は簡単につくれてしまう時代になりますから、いかに自分の言葉でお客さまと話しあえるかというのはデザイナーとしての差別化にもなるんじゃないでしょうか。

非効率なコミュニケーションが効率化につながる

ー新しいチャレンジが多い分、壁にぶつかることも多いかと思います。そういうとき、内村さんはどのように乗り越えているんですか。

内村:私は人に相談するというのがもともと苦手なので、まずは自分で考えてなんとかしようとすることが多いですね。それでもどうにもならないこともあるので、伊藤さんとか末廣さんとかに相談しています。

でも、私がそういう性格っていうだけで、環境としてはとても相談しやすいと思います。みんな忙しそうにしていても、実際相談すると必ず時間をとってくれますし、1聞けば10返す勢いで相談にのってくれます。

ー相談を受ける側として、何か意識していることはありますか。

末廣:デパートではメンター制度というのがあって、若手のデザイナーには直属の上司とは別にメンターをつけて、定期的な面談を通してコミュニケーションを取ってもらっています。あとは、デザイナーミーティングや勉強会なども定期的に開催しています。

意識していることは、いろんな接点をつくるということです。やっぱり僕には相談しづらいこともあると思うので、これはあの人に相談しようという窓口が複数ある状態にしておきたいなと思っています。

ーなるほど。デザインの業務であれば伊藤さんや末廣さんに相談できますが、例えば職種間の領域を越えた仕事をする場合はディレクターやエンジニアの方に相談したりするんですか。

内村:そうですね。例えば、デザインを考えているとき「こういう動きをつけたいけど、実装できるのかな」みたいなことは、すぐにエンジニアの方に連絡して時間をもらって話すようにしています。ほかの職種も含めてみんな仲良しなので、わりと気軽に相談できる雰囲気があると思います。

あと、やっぱりみんなが他領域に少し足を踏み入れているからこそ、それぞれの領域に理解があって協力的ですし、話もスムーズなんですよね。

伊藤:デザイナーは制作しながら、コンスタントにエンジニアとコミュニケーションすることで、実現性や実装の効率も考慮したデザインデータをつくることも大事にしています。エンジニアからも「こんなデザインが良い」という意見を聞きますし、制作中のものにフィードバックをもらって修正したりすることもあります。

ほかの領域に踏み込むとか、他職種とのコミュニケーションとか、一見非効率に見えるかもしれませんが、じつはそれが一番効率的だし納品物の質も良くなるんじゃないかなと思うんです。

デザイナーとして重要な「フッ軽精神」

ー内村さんは今後どういったデザイナーになりたいですか。

内村:「内村に任せておけば大丈夫だ」って思われるような、安心感とか信頼感があるデザイナーになりたいです。それこそ伊藤さんみたいな。お客さんから「こういうことできますか」って聞かれたときに、「ちょっとわからないですね」って言うことを少なくしたいんですよね。

そのためには、クリエイティブのクオリティも上げなきゃいけないですし、それを裏付ける知識も必要になりますし、お客さんの課題を深ぼって理解して自分の言葉で説明するという能力も必要になると思います。

ーでは最後に、今後どういった方と一緒に働きたいかを教えてください。

内村:なんていうか、フットワークが軽い人、ですかね。「失敗するかもしれないけど、まあとりあえずやってみよう」みたいなフッ軽精神は結構大事かなと思っています。もちろん、失敗したらそれを次に活かすというのは必要ですが、案件が終わればまた別の新しい仕事が始まるので、すぐに切り替えて前向きに取り組むことができると良いのかなと思います。

あとは、デザイナーとしてやっていきたいけど、そのうえで自分がやったことのない領域にもチャレンジしたいと思っている人。殻を破りたいと思ってる人。まさに前職にいたときの私なんですが、そういう人には是非来ていただきたいです。

ー末廣さんと伊藤さんはいかがですか。

末廣:やっぱり一番はデザインが本当に好きな人がいいなとは思っています。デザイナーの仕事ってしんどいこともあると思うので、ガッツを持って泥臭い仕事も地道にこなしていけるデザイン愛がある人と一緒に働けると嬉しいですね。あとは、やったことないことにもどんどん手を挙げて挑戦してくれる人であればなお嬉しいです。

伊藤:デザインの仕事って「こうしたらいい」という答えがないものなので大変なんですが、それがむしろ面白いところでもあるんですよね。

誰かが「良い仕事」をするときって、誰かにお願いされたからではなくて自主的に考えてくることが多いと思うんです。例えば、お客さんからこういう課題がありますって言われても、それをそのまま受け取るんじゃなくて「本当はどうなりたいんだろう」みたいなことを踏み込んで考えたり。そういうことって例えばAIに聞いても答えてくれないものですし、デザイナーとして最後に残る仕事があるとしたらそういう部分なのかなとも思うんです。

なので、そういうことを楽しんで考え尽くせる人、考え尽くしたいと思う人だといいなって思います。

Profile

株式会社デパート

株式会社デパートは、東京青山にある、設計力と表現力でブランドづくりを支援するWEB制作会社です。

徹底した分析に基づく課題抽出、効果的な企画戦略、心を惹きつけるデザイン、印象的なコピーライティング、優れたユーザビリティ、および高度なシステム構築を通じて、顧客のブランド構築を支援しています。

顧客課題に合わせて各分野のスペシャリストが連携し、最適な設計と実装を実現。

表層的なデザインだけでなく、ユーザー体験、さらにはSEOやアクセシビリティといった技術的評価も兼ね備えたWEBサイト構築において、人にも機械にも評価される設計が各企業から評価を受けています。
https://depart-inc.com/service/

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