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経験より大切なものがある。少人数で大きな仕事を実現するチェントロが大切にしていること

チェントロ株式会社

チェントロ株式会社

2007年、クリエイティブディレクターの加藤宗大さんとアートディレクターの永井俊行さんによって設立されたクリエイティブを通して本質を創造し続けるコンサルティングカンパニー「チェントロ」。現在、メンバーは5名に、仕事のフィールドも拡大。ANAやTOPPANといった有名企業や大手デベロッパーのブランディング戦略・WEB(設計&デザイン)・グラフィックを主軸に、社会や消費者、クライアントのニーズに応え、幅広く事業を展開しています。

デザイン未経験でも人物優先で採用してイチから育成し、魅力的なチームをつくり上げてきたチェントロ。少人数ながらクオリティの高い仕事ができるのは、一人ひとりが着実に成長し、地力をつけてきた証です。

「特別なことは意識していない」(加藤さん)というチェントロで、なぜ人が育つのでしょうか? 実際に未経験から業界に入った藤岡良光さん、吉岡拓士さん、そして、彼らの成長を見守ってきた加藤さん、永井さんに聞きました。
  • 取材・文:榎並紀行(やじえろべえ)
  • 撮影:タケシタトモヒロ
  • 編集:佐伯享介

チェントロがメンバーに求める、経験や技術よりも大切なこと

―現在、チェントロのメンバーにはどのような方がいらっしゃるのでしょうか?

加藤:立ち上げメンバーで、制作のまとめ役であるアートディレクターの永井。入社6年目のグラフィックデザイナーであり、ダンサーとしても活動する藤岡。唯一のエンジニアである入社4年目の吉岡といった顔ぶれです。ほかにもメンバーがいます。

―ざっと聞くだけでも、かなり個性的な面々ですね。

加藤:長く一緒に仕事をしている仲間から「あの海賊漫画の一味みたいですね」と言われたことがありました。各々に得意分野やカラーがあってバラエティに富んでいるという意味で言ってくれたようで、それは嬉しかったですね。

かといって、何か特殊なデザイン技術を求めていたり、意識的にバラバラな個性を集めているわけではありませんが、興味の「振り幅」が大きいメンバーと同じ環境のなかで働きたいとつねに思っています。チェントロにはさまざまな案件のご依頼をいただいています、一人ひとりがいろんなことをできないといけない。そういったデザイン以外の部分にも関心を持ってチャレンジしてくれそうなメンバーと出会っていった結果、「あの海賊漫画の一味みたい」なチームになったのかもしれません。

加藤宗大さん。チェントロ株式会社 代表取締役 / クリエイティブディレクター。1977年東京生まれ。2002年北山創造研究所 入社 北山孝雄・飯島広昭に師事を経て、2006年より「Centro inc. / チェントロ」を設立。コミュニケーションデザイン、ブランディング計画、メディア戦略まで幅広い分野で活躍。

―少数精鋭という会社で未経験のデザイナーを採用するというのは勇気のある決断ですね。

加藤:即戦力という意味では経験者のほうが助かりますが、もっと大事なのは人間性。そして、お客さまやメンバー同士がしっかりコミュニケーションが取れる人材かどうかです。技術は向上心と目標があれば習得できると思います。

藤岡:僕は26歳のときにデザイン未経験でチェントロに入社しました。デザイン業界のこともそこまで詳しくはなかったので、最初はついていくので精一杯でしたね。失敗もたくさんしましたし、お叱りも受けました。ただ、加藤さんや永井さんは聞けば何でも教えてくれましたし、単に指摘を受けるだけでなく、その後のフォローも含めてコミュニケーションをとってくれるのが助かりました。とても心の支えになりましたね。

藤岡良光さん。チェントロ株式会社 / グラフィックデザイナー。1990年東京生まれ。ダンサーとして活動を続ける傍ら2017年に入社。企業のブランディングデザイン、ロゴマーク、パッケージ、販促物、WEBデザイン等、幅広く担当している。

吉岡:僕も、エンジニアではあるのですが、チェントロで働くにあたってはほかのメンバーと共通言語を使う必要があったため、デザインのことも知っておかないといけなかった。入社当初はその知識がほぼなかったので、かなり苦労しましたね。常に新しいデザインをキャッチアップすることを心がけ、足りない知識をどんどん入れていきました。

チェントロはデザイン力のある会社なので、ここにいると自然と良いデザインに触れることができ、自分自身もデザインに対するモチベーションが上がるんです。デザインを仕事として経験するには、とても恵まれた環境だと思います。

吉岡拓士さん。チェントロ株式会社 / WEBエンジニア。1983年大阪生まれ。2020年に入社。WordPress構築、コーポレートサイト、LPコーディング等、幅広く担当している。

―永井さんはデザイナーのまとめ役ということですが、メンバーを指導したりコミュニケーションをとったりする際に意識していることはありますか?

永井:メンバーの「表現したい気持ち」を無碍にしないことですかね。藤岡たちが出してくるデザイン案に対しても「こう変えろ」ではなく「ここを変えるともっと良くなるよ」という言い方を心がけています。個々の「こんなふうにデザインしたい」という思いを受け止め、それを僕がサポートしながらブラッシュアップしていくようなイメージですね。そうしたコミュニケーションの方法は、僕自身が加藤から教わったことでもあるので。

永井俊行さん。チェントロ株式会社 / アートディレクター。野田凪主宰の宇宙カントリーを経て、2007年より「Centro inc. / チェントロ」に参画。アートディレクターとして企業のブランディングデザインからCI、VI、パッケージ、エディトリアル、WEBデザイン等、幅広い案件を担当している。

自然と生まれる良質なコミュニケーションが、いい仕事の源

―藤岡さん、吉岡さんはチェントロに入社されて驚いたことって何かありますか?

藤岡:とにかくコミュニケーション好きな会社だなと(笑)。ランチも会社内でみんなで食べて、そのまま1時間、2時間、日常の出来事や、興味のあるコンテンツなどを皆でしゃべっていたり。

加藤:それを強要しているわけではなく、あくまで自然にですけどね。吉岡はエンジニアなのでリモート作業も多いですし。

―それは、意識的に会話するように努めているのでしょうか?

加藤:そうですね、つねに連携していることが大切なので、社内にいてもリモートワーク中でも仕事のプロセスやチェック機能など会話しながら進めるように心がけています。プロの代表チームって、いきなり集まっても良い連携がとれるじゃないですか。そのようなイメージですかね。

コミュニケーションを大切にしていることは確かです。というよりも、この仕事はそれがほぼすべてだと思っていて。社会や消費者のニーズ、クライアントに喜んでもらえる仕事の本質は、コミュニケーションも満足にとれないような環境では絶対に生まれませんから。

藤岡:チェントロって社内のメンバー間だけでなく、クライアントともかなり密にコミュニケーションをとる会社なんです。正直、入社1年目はデザインの仕事を覚えるのに精一杯で、そこまでの余裕はなかったんですけど、加藤さんや永井さんがその重要性を繰り返し説いてくれて、自分なりにお客さんと対話を重ねていくうちに、コミュニケーションの大切さがわかってきました。

チェントロはメンバー全員がそれをわかっているから、仕事内で何かあればすぐに連絡するし、すぐにレスポンスする。パッと集まったときにでもいきなり連携できるのは、何かを発信すれば必ず何かを返してくれるという信頼関係があるからだと思います。

―吉岡さんはどうですか? チェントロに入って驚いたことは?

吉岡:驚いたというか良いなと思ったのは、思った以上に伸び伸びとやらせてもらえる環境だったことですね。自分の裁量で仕事ができる部分が大きくて。ただ、それって裏を返せば、自ら能動的に動かないと仕事ができないということでもある。最初はどうしていいかわからず苦労しましたが、そこは業界歴の長い先輩たちが学ばせてくれるので、少しずつできるようになっていったと思います。

永井:当初、吉岡が苦労しているのもわかっていましたが、そこで僕らがすべて手取り足取りサポートしていたら成長はありません。必要なコミュニケーションはとりつつも、基本的には自分で課題を乗り越えてもらうよう、ある程度の距離は置くようにしていました。そうした「本人の成長とサポートのバランス」みたいなところは、かなり意識していますね。

5年目にしてやり遂げた「代表作」といえる仕事

―先ほど、加藤さんが「一人がいろんなことをできないといけない」とおっしゃっていました。具体的に、チェントロのデザイナーはどこまでの役割を担っているのでしょうか?

加藤:たとえば、グラフィックデザイナーというと、かつては「ロゴデザインや紙媒体の仕事がメイン」みたいなイメージもありましたが、今ではWEBデザインもグラフィックも両方やるのが主体になっています。チェントロでもそこはあえてカテゴライズせず、デザインを主軸にし、それ以外の幅広い事業領域にも対応できるメンバーがそろっていると思います。ここ近年では、SNS運用のお手伝いも行なっています。

藤岡:僕も肩書きは「グラフィックデザイナー」ですが、グラフィックデザインだけでなく、案件によっては動画などの撮影ディレクションを任されることもあります。撮影に立ち会って指示を出したりと、デスクワークだけでは終わらないのが大変な部分でもありますし、楽しさでもありますね。デザイン以外のことを経験することで、デザイナーとしての引き出しも増えると思いますし。

―さまざまな仕事を経験してきた藤岡さんにとって、特に印象深い案件を一つ挙げるとしたら何ですか?

藤岡:TOPPANさんが海外で展示会を開催する際に、そのグランドデザインコンセプトを伝える冊子のデザイン一冊丸ごと担当させてもらいました。

藤岡さんがデザインを担当した、C-lab.(Toppan Creative Laboratory)のグランドデザインコンセプトを伝える冊子

藤岡:自分の仕事が海外に出るのは初めての経験でしたし、クライアントのご意向をふまえつつ自分がやりたいこともしっかり表現できたという点で、とても印象深い仕事です。先方がこちらを信頼してくれて見せ方の部分に関しては大部分を僕に預けてくださったので、これまでデザインしてきたもののなかでも、もっとも自分の色を出せたんじゃないかと思います。当時はデザイナーになって5年目でしたが、自分のなかでひとつ「これだ」と言える一冊ができたという達成感もありましたね。

加藤:僕の目から見ても、素晴らしい仕事でした。ブックだけでなく展示会で流すムービーも藤岡が担当しましたが、あらためて、彼のセンスはすごいなと。

―未経験だった藤岡さんがそこまで成長したという意味でも、感慨深いものがあったのでは?

加藤:おっしゃる通りです。ですから、そのブックは僕にとっても思い入れが強くて、チェントロの大事な仕事として大切に保管しています。

―吉岡さんは、印象深い仕事を一つ挙げるとしたら何でしょうか?

吉岡:たくさんありますが、一つ挙げるなら入社後、最初に担当した不動産会社のWEBサイトの案件ですね。かなり苦労しながら先方の要望をクリアすることはできましたが、いまならもっと違うアプローチもできたのではないかと思うところもあって。

―たとえば、どんなアプローチですか?

吉岡:クライアントの要望をそのまま形にするのではなく、ご意向をふまえた上で期待を上回るものを提案するということですね。それは、チェントロのものづくりの根幹でもあります。もちろん、お客様の要求には最大限応えるべきですが、ただの御用聞きになってしまうと期待値は越えられませんし、自分自身も成長しませんから。

入社当初は自分の意見があってもそれをなかなか表に出すことができなかったのですが、いまは気になることがあれば「こうしたらもっとよくなると思います」と必ず言うようにしています。たとえば、デザイナーから受け取ったデザインもそのまま反映するのではなく、自分のフィルターを通して形にしたものを提案するようになりました。

フィールドをどんどん広げていくチェントロ。変わったことと変わらないこと

―チェントロは今年で創業18年目。当初から変わらず大切にしていること、逆に変わってきたことがあれば教えてください。

加藤:変わらず大切にしてきたのは「コミュニケーション」「仲間を尊重し合う」「仕事に対して当事者意識を持つ」「プロジェクトに愛と情熱を注ぐ」など、ある意味当たり前のことですね。

変わったのは、いろんなことができるメンバーが増えてきて、チェントロが関わる仕事の領域がどんどん拡大していることだと思います。永井と2人で始めたころは「手漕ぎボート」で行ける範囲のことしかやれなかったけど、いまでは攻められるフィールドがかなり広がっていることを実感しています。海外の仕事や、SNS運用のお仕事も増えていますし。

―では、最後にお伺いします。いま加藤さんがチェントロにとって大事だと思っているのは、どんなことでしょうか?

加藤:これから一緒に仕事をできるメンバーを増やすことが大事です。新しくリクルートで加入していただける方の個性や考え方で、会社としてもいまいるメンバーもアップデートでき、またフィールドが広がることができたらとても良いことだと思います!

チェントロとしての本質を大切にしながら、大切なメンバーとともに、素晴らしい仕事をより多く続けていきたい。それがいまのチェントロにとって一番の理想です。

Profile

チェントロ株式会社

チェントロは今年で18年目を迎えました。

設立当初より、ロゴデザインやサインなどグラフィックを中心に多くの飲食店やホテル、商業施設の立ち上げに携わってきました。また、WEB事業を新たな軸に加え、デジタルマーケティングサポートやSNS運用を含む総合的なコンサルティングやプロデュース案件が増えてきています。

クライアントとフラットな関係を築くことで、長いビジョンを共有しあいながら、クリエイティブ領域の垣根を超えた仕事に取り組んでまいりました。

社名の「Centro」は中心ということ。多くの人たちが集まる場所をつくり、その核に私たちがいて、仕事を通して人と人をつなげていきたいという思いで仕事をしています。少人数で職場の風通しは良く、メンバー皆でプロジェクトごとに担当しています。クリエイティブだと仕事が忙しくてプライベートが疎かになりがち……と思われることが多いですが、プライベートと仕事のバランスこそ良いクリエイティブを生みだすと考え、環境面でのサポートを充実させています!  

ライフとワークが両立する。ともに働く仲間と良い関係を築き、チェントロにつながる皆がHAPPYとなれる、そんな会社づくりを目指しています。

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