海外リモートもOK?bird and insectが「自由」を尊重する理由

株式会社bird and insect

気になる

Share :

広告系の写真・映像制作を主体とするクリエイティブカンパニー「bird and insect」。ビジュアルにこだわったクリエイティブを得意とし、現在は企業のブランディングにも携わっている。

同社に所属するスタッフは15名以下と少数精鋭。メンバーはいずれも合理性を重視していることから、現場でスムーズな意思決定が可能となり、穏やかな雰囲気をつくれているという。また、普段から自主性を尊重した自由な働き方ができるのも特徴的だ。

なぜbird and insectは、「自由で穏やかな働き方」ができているのだろうか? ヒントは、オープンマインドに支えられた強いチームワークに隠されていた。

※この取材は東京都の外出自粛要請が発表される前に実施しました。

  • 取材・文:宇治田エリ
  • 撮影:玉村敬太
  • 編集:服部桃子(CINRA)

「撮って終わり」ではない。企画から活用法までクライアントと一緒に考える

―bird and insectでは、おもにどのような仕事を手がけているのでしょうか?

シュンタロウ:広告関係の写真・映像制作を行っています。撮影するものは、モデルや商品などさまざま。少数のメンバーで、企画提案から撮影、編集、制作までを一貫して手がけられるのが強みです。

CEO・Image Directorのshuntaroさん

CEO・Image Directorのshuntaroさん

メガネフレームメーカー「CHARMANT」のブランド「repri prisma」のイメージビジュアル(撮影:bird and insect)

メガネフレームメーカー「CHARMANT」のブランド「repri prisma」のイメージビジュアル(撮影:bird and insect)

レザーバッグブランド「ke shi ki」のイメージビジュアル(撮影:bird and insect)

レザーバッグブランド「ke shi ki」のイメージビジュアル(撮影:bird and insect)

シュンタロウ:特にいま力を入れているのが、企業のブランディングイメージ・ブランディングムービーをつくることです。ぼくらのクライアントには、「自分たちの会社や商品のよさをもっとわかってほしいけれど、どうすればいいのか迷っている」という企業も多いんです。

会社に所属する人たちにとっても、自分たちが生み出すものやサービスの良さがわかれば、よりよいものをつくろうと考える。よいものが世の中に増えたら、世界ももっといい方向に向かうはずです。

ぼくたちはクリエイティブの力でいい循環をつくっていきたい。そのために、企業や商品が持つ価値を最大限引き出せるようなイメージづくりに注力しています。

中野製薬株式会社の60周年イベントのオープニングムービー(制作:bird and insect)

桜屋敷:ブランディングムービーも、「なんのために映像をつくるか?」をクライアントと考え、じゃあその媒体はSNSかWEBどちらが適切か、Instagramならストーリーに載せるのかフィード画面に投稿するのかなど、イメージの活用方法まで踏み込んだ提案をしています。

Movie Directorの桜屋敷知直さん

Movie Directorの桜屋敷知直さん

―撮って終わりではなく、「なぜそれが必要なのか」まで考えているんですね。普段はどのように撮影を進めているのでしょうか?

シュンタロウ:案件の規模によって撮影スタッフの人数は異なりますが、和気あいあいとした雰囲気で行っています。

―撮影現場といえば、厳しそうというか、緊張感が漂っているイメージがあったので意外です。

桜屋敷:時間が本当にないときはピリピリした雰囲気になることもありますけど、「早くやれよ!」とか、怒鳴るようなことはないです(笑)。

シュンタロウ:クライアントさんからも「仕事をしていて、こんなに楽しい感じの現場は少ないですよね」とか「リラックスしながら撮影に臨めました」とよく言われます。特に、業界歴が長い人ほど大変な現場をいくつも経験しているので、余計にそういう印象を受けるみたいです。

桜屋敷:クライアントの方にとっても、ピリついた現場より穏やかな雰囲気のほうが意見を言いやすいはずです。よい雰囲気のなかでしっかりディスカッションすると、あとから大きなフィードバックが来ることも少なくなりますね。

「こうあるべき」の決めつけは非合理的。筋が通っていれば、あとは自由

―いい現場づくりのために心がけていることはありますか?

野口:bird and insectのスタッフはみんなオープンマインドですよね。それぞれの個性を受け入れているからこそ、現場で素直な意見が言えて盛り上がる。人数が少ないからこそ、素早い意思決定もできますね。

Retoucherの野口章子さん

Retoucherの野口章子さん

シュンタロウ:業界内のつながりを活かしているのも理由の一つですね。必要に応じてデザイナーやスタイリストなどを招くこともありますが、みんな旧知の仲。優秀なクリエイターとの強いつながりや信頼関係があるから、安心感のある現場づくりができているのだと思います。

桜屋敷:よい現場づくりのために、撮影前の準備も徹底しています。ぼくはディレクターなのですが、企画書を書いてイメージをすり合わせて、コンテを描くだけではなく、さらに香盤表をつくって、準備したとおりに撮影を進められるスタッフをアサインして……と、やることは多岐に渡ります。

これはムービーだけでなく、スチールも同様です。具体的なイメージをコンテなどに起こしてしっかり準備しておけば、事故も少ないし、クライアントからも信頼されます。結果、次の仕事にもつながっていますね。

シュンタロウ:制作陣のチームワークでいえば、「現場はこうじゃなきゃいけない」「ディレクターはこうあるべき」という非合理的な決めつけをしないようにしています。「筋が通っていれば、あとは自由でいいんじゃない?」という。

変なルールをつくると、それに縛られすぎて最適解が出せないこともある。それよりは、フラットかつ合理的な目線で考えて、答えを出してもらったほうがいい。それぞれの自主性に任せているから、結果として場が和やかになっているんだと思います。

―ちなみに、撮影現場と事務所とで皆さんの雰囲気は変わらないですか?

シュンタロウ:そうですね。

野口:事務所でもよく爆笑していますよね。

桜屋敷:シュンタロウさんがツッコミ役なんですよ。

シュンタロウ:突っ込まれ役が桜屋敷(笑)。この前も桜屋敷が「明日から本気でスケボーを始める」って話をして、いつまで続くか社内で予想して盛り上がったのに、次の日手ぶらで来たから「あれ、スケボーは?」「初日でつまずいたの?」って。突っ込まざるを得ないですよね。

桜屋敷:お店には行きましたが、スケボーに詳しい店員がいなくて不安になったので、買わなかったんです(笑)。

海外でのリモートワークも、映画撮影も。個人の「やりたい」を推奨する理由は?

―自然体で仕事をしているんですね。

シュンタロウ:そうですね。プライベートな話もするし、自分たちが何をやりたいかも日頃から話すようにしています。制作会社のなかには、忙しかったり、個人プレーになってしまったりして、社内の人同士が仲良くないケースも多いんです。そういう環境だと、自分の本心と会社を切り離して考えるようになるから、本当につくりたいものと仕事がつながりにくいんですよね。

―野口さんはカメラマン志望からレタッチャーに転向したそうですね。

野口:はい。以前はカメラマンのアシスタントをしていたんですが、レタッチャーのほうが自分の性格に合っていることに気づいたんです。そこで、技術を学ぶために、当時レタッチを教える活動をしていたシュンタロウさんに出会い、いろいろとレクチャーしてもらったのち、bird and insectに入社しました。いまは、かなり自由度の高い働き方をさせてもらっています。

―どのような働き方でしょうか?

野口:もともと海外に住んでみたかったので、入社前からその希望を伝えていて、2019年は1年間、パリに住みながら遠隔でレタッチの仕事をしていました。

日本とは7、8時間の時差なのでちょっと難しいこともありましたけど、やりたい生活をしつつ仕事ができるというのはありがたかったですね。

シュンタロウ:彼女は学ぶ意欲が強くて、ポテンシャルも感じていたので、不安に思うことなく快く送り出しました。それに、自分の仕事をしっかりこなしてさえいれば、場所や時間軸が異なっていても関係ないし、行動が理にかなっていればいいと思っているので。一方で作業量がブラックボックスにならないよう、スタッフには作業時間や内容を時間管理アプリで記録してもらっています。

―桜屋敷さんはいかがでしょう?

桜屋敷:ぼくはbird and insectに入る前はフリーターをしていて、20種類くらいの仕事を転々としていました。ずっと自分で映画を撮りたいと思っていて、映像と写真を独学で勉強していたんです。ここに入社するときも、「映画を撮りたい」という希望を伝え、仕事と並行してプライベートで撮影を続けていました。今年中には映画が完成する予定です。

桜屋敷さんが監督・脚本を務めた映画『雨とひかり』。スチールはシュンタロウさんと同社のスタッフが手がけた

桜屋敷さんが監督・脚本を務めた映画『雨とひかり』。スチールはシュンタロウさんと同社のスタッフが手がけた

―まさに個人の意思を尊重していますね。

桜屋敷:逆に、不満も話しやすいし、ちゃんと聞いてくれますよね。会社的にはやらなければいけない仕事でも、個人的に納得できない仕事の場合もある。それを周りに言えるか言えないかで、心理的な負担はだいぶ違うんじゃないかなと。

野口:そうですね。本当の気持ちを人に話せれば、自分の気持ちが整理できるし、建設的な意見ももらえるから前向きに取り組める。

シュンタロウ:もともとフリーの人たちが集まって始まった会社なので、自分の意見を持っている人が多いんです。必ず希望に添えるわけではないけれど、できるだけストレスなく働いてほしいから、やりたいことはなるべく聞き入れるし、不平不満は改善するようにしています。

「地味で細かい仕事」が、信頼度を左右する

―bird and insectでは、どのような人が活躍できると考えていますか?

シュンタロウ:オープンな性格であることは大事ですね。やったことがないことにもチャレンジし、吸収してほしいと思っています。一方で、やったことがないからと、やるべきことに取り組めない人は厳しいと思います。

野口:「何でもやります」って言う人はよくいますが、それをどれだけの本気度で実行できるかが重要じゃないかな。自分の仕事をこなすのはもちろん、手が空いたときはほかの人の仕事も率先して手伝う。なんでも面白がれる人は楽しく働けると思います。

桜屋敷:プロフェッショナルとしての自覚を持って、合理的な考え方で仕事に取り組める人ですね。一見地味でつまらない仕事でも、ちゃんと取り組むかそうでないかで信頼度は大きく左右されます。それに、細かい仕事を丁寧にやることで、結果的にあとが楽になる。「最短でゴールに向かうために、小さな仕事が大切」と思えるかどうかが重要です。

やりたいことは尊重される環境ですが、そのためには普段の仕事を確実にこなす必要がある。ルールを守ったうえで、ルールを壊せる人がいいんじゃないでしょうか。

シュンタロウ:業界経験がある人は、いままで仕事をしてきて理不尽なこともあったと思うけれど、その経験をうまくbird and insectで消化してほしいですね。

やらなくていいことをせざるを得なくて、それがネックで力を出し切れなかった人もいると思うんです。うちでは縛りがないので、自分がどう動けば能力を発揮できるかを模索してほしい。ただ、全員がプロフェッショナルゆえに最初はフェードバックも多いかもしれませんが、逆にぼくらにもいろいろ教えてほしいと思っています。

足し算ではなく、掛け算でクリエイティブの可能性を広げる

―最後に、皆さんの今後の展望を教えてください。

桜屋敷:クリエイターって突出した能力があるように思われがちですけど、ぼく自身に突出した能力はないんですよ。でも周りの人と自分がどう連携して盛り上げていくか、かけ算的な考え方ができているから、こうしてディレクターとして活躍できている。これからもチームとしての可能性を拡張できるよう、自分の仕事をこなしていきたいです。

野口:私も自分のできることを増やしてチームに貢献していきたいです。たとえば、撮影の現場でクライアントさんと私がコミュニケーションを取ることで、撮ったものから仕上げるまでの流れをスムーズにすることもできる。このチームは、自分から動けばみんなもフォローしてくれるから、小さなことでも挑戦してみようと思えますね。

シュンタロウ:クリエイターの力って、いろんな課題解決に役立つと思うんです。だからこそクリエイティブの垣根を低くして、いろいろな人にクリエイティブに親しんでもらう。そして関わった人たちが互いに影響し合って、いい循環を生み出せるような提案を今後もしていきたい。

そのために、スタッフや協力してくれるクリエイターたちの力をかけ合わせて、bird and insectがつくるクリエイティブの可能性を広げていきたいです。

  • Profile

    株式会社bird and insect

    bird and insectは、写真・映像の制作を主体とするクリエイティブカンパニーです。

    既存の枠組みにとらわれることなく、写真や映像が持つ本質的な意味をとらえ、より面白く、新しい取り組みを行うことを信条としています。

    具体的には、広告関係の写真・映像制作業務が主で、両方を一貫して行うことができるのが強みです。特に、小さいチームでどちらもクオリティを保てるという部分を評価していただけることが多いです。

    また、最近では撮影や制作だけでなく、企画やイメージの提案、デザイナーなどをアサインしてのチームづくり、ブランディング映像を軸にしたブランドづくりのお手伝いなども行っています。