
CINRA編集部が「カルチャー × ソーシャル」の視点で選ぶ、夏休みにおすすめの本
- 2025.07.31
- COLUMN
明日から8月がスタート。お盆に夏休みをとる方も多いのではないでしょうか? 今回はおやすみ中にぜひ読んで欲しい本を、CINRA編集部らしい「カルチャー×ソーシャル」の視点でチョイス。考えをまとめたり、解きほぐしたりして、クリエイティブなアイデアを生むきっかけになったりするかもしれません。コメントとともにご紹介します。
長めなお休みのおともにいかがでしょう?
- テキスト:CINRA編集部
- 編集:吉田薫
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』
今年2月に行われたウクライナのゼレンスキー大統領とアメリカのトランプ大統領の会談では、お互いの意見が対立し口論に発展したことが話題になりましたが、そこで注目を集めたのが米副大統領のJ.D.ヴァンス氏でした。
この本はヴァンス氏が31歳の時に執筆し、アメリカで大ヒットした回想録です。ラストベルト(さびれた工業地帯)出身の彼は、白人労働者階級の過酷な家庭環境で育ちながらも、弁護士、果てはアメリカ副大統領の座にまで昇りつめるわけですが、繁栄から取り残された人々が置かれた状況や、分断が広がるアメリカ社会の現在地を実感できると思います。
家族との愛憎ある関係性など、読み物としても面白く、読んだあとに誰かと話したくなるような一冊だと思います。(生田綾)
【書籍情報】
タイトル:『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』
著者:J・D・ヴァンス
価格:1,980円(税別)
出版社:光文社
『アイドル衣装のひみつ~カワイイの方程式~』
AKB48の衣装制作を初期から担当し、=LOVEなどさまざまなアイドルの衣装を計4万着以上作ってきた茅野しのぶさんの著書です。
茅野さんは衣装を「アイドルが売れるための戦略」として位置付け、それぞれの衣装を目的意識を持って制作されています。同書には茅野さんの衣装へのこだわりだけでなく、企画を考えるときの姿勢やチームの大切さについても書かれており、クリエイターを目指す人や仕事で企画を立てる機会がある人など、多くの読者に刺さる内容だと思います。(廣田一馬)
【書籍情報】
タイトル:『アイドル衣装のひみつ~カワイイの方程式~』
著者:茅野しのぶ
価格:2,200円(税別)
出版社:Gakken
『よりみちパン!セ 「美しい」ってなんだろう?―美術のすすめ』
現代アーティスト、森村泰昌さんが書いた、そもそも「美しい」とは何か? を問う本です。名画に自画像を落とし込む森村さんの作品も引用しながら、子どもたちへ向けて、やさしいながらも率直に語りかける一冊で、大人が読んでも世界への視点が変わるような楽しさがあります。
特に子どもたちからの素朴な質問に答えるコーナーが、笑えたり、感嘆したり、現代で「当たり前」とされている価値観を問うようなものがあったり……。「仕事の役に立つ」という視点で見るのに少し気が引けはするのですが、例えば「得意なことなんてありません。そんな私の『自分道』って?」「絵は商品じゃない。なのに値段があるのはなぜ?」などといった質疑応答から、何か迷いや悩みを抱えている人にとって、発見がある本かもしれません。(今川彩香)
【書籍情報】
タイトル:『よりみちパン!セ 「美しい」ってなんだろう?―美術のすすめ』
著者:森村 泰昌
出版社:イースト・プレス
『これからの男の子たちへ』
ジェンダーにまつわるさまざまな言説を男の子が育つ環境から見直した、男性学の入り口的な本。
DVや痴漢など、被害者の多くが女性である問題に対し、なぜ起こるのか、どうしたら防ぐことができるのかについて男の子の育ち方という視点で解説されています。男性が直面する「強くあるべき」「泣かない」といった男らしさの呪いについても言及されており、すべての人の生きづらさに気づくことができました。
この本を読むと、「これから」の子どもたちがどのような情報に触れるべきなのか考えさせられます。
どのような性別の人でも、男の子の親であってもなくても、すべての人に読んでいただきたい一冊です。(家中美思)
【書籍情報】
タイトル:『これからの男の子たちへ』
著者:太田啓子
価格:1,760円(税込)
出版社:大槻書店
『横井軍平ゲーム館: ーー「世界の任天堂」を築いた発想力』
「ウルトラハンド」「ゲーム&ウオッチ」「ゲームボーイ」といった数々のヒット商品を任天堂で生み出した天才開発者・横井軍平さんの仕事や哲学を紹介する本。横井さんといえば、使い古された技術をこれまでになかった使い方をして、まったく新しい商品=アウトプットを生むという、かの有名な「枯れた技術の水平思考」で知られていますが、この考え方はいまでも企画やコンテンツ作りなどいろんな場面で役立つはず。本書では「枯れた技術の水平思考」の実例が開発エピソードとともにいくつも紹介されています。読んでいると、夏休みの自由研究みたいなノスタルジックな気持ちになったりもする、不思議な一冊です。(佐伯享介)
【書籍情報】
タイトル:『横井軍平ゲーム館:ーー「世界の任天堂」を築いた発想力』
著者:横井軍平、牧野武文
価格:858円(税込)
出版社:筑摩書房
『働くことの哲学』
「仕事、したくないなぁ」という気持ちで本屋をふらついていた時に購入した本です。ノルウェーの哲学者が幸福に生きるうえで、仕事がどのような位置をしめるのかを探求しています。
いつから仕事が自己実現と結びついたのか、給料と幸福度は比例するのか……などなど働く中で気になっていたあれこれ答えはくれませんが、ヒントをくれる1冊です。
休み明けの働きはじめがしんどい方もいらっしゃるのではないでしょうか? 「働くこと」や「仕事」を俯瞰させてくれる本書を読むことで、しんどさをちょっとだけ軽減できるかもしれません。エッセイ形式でサクッと読めるので、ぜひ気軽に読んでみていただきたいです。
【書籍情報】
タイトル:『働くことの哲学』
著者:ラース・スヴェンセン
価格:1,870円(税込)
出版社:紀伊國屋書店