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チームラボの仕事術 / 猪子寿之のお悩み相談

チームラボ株式会社

ウルトラテクノロジスト集団と呼ばれ、各業界から大注目のチームラボは、一体どんな会社なのだろう。150人を超える社員を抱え、上海に支社を持つまでに成長している企業でありながら、実際働いている人たちはどんな人たちで、どういう仕事をしているのか、テレビや雑誌で紹介される情報だけではいまいち全体像が見えてこないというのが正直なところ。 今回CINRA.JOBでは、チームラボに求められる人材や社内の雰囲気に至るまで、メディアにあまり紹介されることのない幅広いお話をディレクターの坂本恭一さん、デザイナーの吉田真実さんに聞くことができた。 またTwitterで読者から寄せられたざっくばらんな質問に、猪子さんが答える「お悩み相談」コーナーも特別収録。思わぬこぼれ話も飛び出してきたので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

取材・構成:影山裕樹 撮影:菱沼勇夫(2011/10/19)

「コミュニケーション能力」よりも大事なものがある!?

チームラボ株式会社 代表取締役社長 猪子寿之さん

チームラボ株式会社 代表取締役社長 猪子寿之さん

―Twitterの猪子さんのbotで、「コミュニケーション能力はむしろないほうがいい」とつぶやかれていましたが……

猪子:いやいや、そんなこと言ってないよ! 多分(笑)。

−あ、そうなんですね(笑)。いまはどこの会社も「コミュニケーション能力必須」と謳っていますが…。

猪子:というか、コミュニケーション能力が高いとか空気が読めるとか、そういうことよりも優先度の高い項目があるというだけですよ。

−それはつまり具体的なスキルということですか?プログラミングであるとかデザインの素養であるとか。

猪子:そうですね。たとえばグラフィックのデザイナーだったら、ちゃんとしたデザインのスキルを持っていれば、空気が読めなくても、日本語が破綻していても問題ない(笑)。実際人と話したくない人なんていないでしょ? 要は環境の問題であって、うちは専門性の高い人たちがチームを組んでものをつくるから、どちらにしたって最低限のコミュニケーションはとらざるをえないんですよ。結果として出来上がるものがヤバければそれでいいんです。

−確かに専門性が高く、互いに共通言語の異なるエンジニアが一つのものをつくるときに、コミュニケーションはいやが応にも必要になってきますよね。

猪子:そうそう。もっと言ってしまえば、20世紀は情報流通コストがきわめて高かったがために、そのコストを下げることで付加価値を生んでいたけれど、いまはコストがゼロじゃないですか。ユーストリームでもなんでも、自宅で何かヤバいものをつくったらそれをタダで公開することができる。ネットショップで簡単に物が売れる。

−かんたんに誰でも流通できるようになってきた、と。

猪子:そう。昔だったら、まずつくったものを流通に乗せるまでが大変だったじゃない? マスメディアの関係者との狭い人脈づくりに腐心したり、リアル店舗に商品を並べることではじめてお客さんの目に触れるっていうふうに。それがいまではネット上でゼロ円でできる時代。だからなおさら前提としてのコミュニケーション能力は必須じゃないんですよ。

−つまり、既存の流通経路の開拓に必要なコミュニケーション能力よりも、愚直にクオリティの高いものづくりを淡々とこなしていく制作者の熱意のほうが求められると?

猪子:商品の流通の仕方に付加価値が見いだせなくなると、莫大な広告費をかけても、ものが売れなくなってくる。お客さんを騙せなくなってきたというか。むしろ「ヤバいもの」をつくることができれば、そこをケアする必要がないんです。ですから必然的に、各職種の専門的なスキルを持っている人が欲しくなる。エキスパートが集まって一つのものをつくるのが「チームラボ」のモットーですから。

では実際チームラボで「ヤバいもの」をつくっている人たちはどれほどエキセントリックなんだろう……という思いで社員の二人に話を伺ったが、実際はとても論理的でコミュニケーション能力の高い人たちだった。互いに異なる領域のエキスパートであるからこそ、有機的に「チーム」を結成してプロジェクトを遂行する。そんなチームラボ流の働き方と、ものづくりの姿勢についてうかがった。

納品のギリギリ数分前まで触っていたい。そういうものづくりが好きな人に向いている会社だと思う

ディレクター 坂本恭一さん

ディレクター 坂本恭一さん

−坂本さんがチームラボで手がけた仕事を教えていただけますか。

坂本:入社してから2、3年は「いえーい」っていう不動産サイトを手がけていて、そのあとは、au design projectの「actface」に携わりました。基本的にはシステムインテグレーション(SI)の仕事が多くて、一から立ち上げて、お客さんと折衝しながらプロジェクト全体をコントロールしていく感じです。

−ウェブ以外の仕事をすることもあるんですね。

坂本:ぼちぼちです。auのプロジェクトもそうですが、チームラボってテクノロジーだけじゃなくアート系のプロジェクトも多いんですね。そういった表現性を要求されるプロジェクトもありますが、全体で考えると期間の長いウェブのプロジェクトを担当することが多いですね。

−チームラボに入ったときの印象はどのようなものでしたか?

坂本:「ゆるいな」というのが第一印象です(笑)。もちろん仕事は忙しいんだけれど、がちがちにルールにしばられているわけではないから、自分のペースで仕事ができる。スキルの高いひとは、最初からそういうポジションに割り当てられるから、実力を発揮しやすい会社だな、という印象でした。

−やはりクオリティを詰める段階でディスカッションも白熱したりするんですか?

坂本:意見が食い違っても、折れない人はいますね。でも結果しか見ないので、そこに至るまでのプロセスは、各々がやりたいペースでやってくれればいい。逆にアウトプットがよくないと、結構つっこまれますよ(笑)。

−プロセス自体は比較的自由だけれど、最終的な仕上がりに関してはみなさん妥協をゆるさないんですね。ではそんなチームラボに合うのは、客観的に見てどういう人だと思われますか。

坂本:最近ラボ自体がメディアに露出しているので、猪子が面白そうと思って入ってくる人もいるだろうし、ラボが制作したウェブサイトや作品を見て、自分もこういうサイトをつくりたいっていう人もいるだろうけど、とにかく単純にものづくりが好きな人が結果的に活躍している気がします。ものづくりが好きじゃないと、最終的な粘りが出ない。タイトなスケジュールのなかでクオリティを上げるために、納品の数分前まで触っていたいっていう気持ちがないと、なかなかいいものがつくれないと思うんです。

−ちなみに猪子さんと同じプロジェクトに関わる事もあるんですか?

坂本:ありますけど、猪子はプロジェクトのリーダーというよりは、社内の全体を見て、アイデア出しをしたりするポジションであることが多いですよ。

−一緒に仕事をしていて、猪子さんに対してなにか思う事はありますか?

坂本:「時間守れよ」ですかね(笑)。

大変な時も「おお、波きた」って楽しめるくらいの人がいいですね(笑)

デザイナー 吉田真実さん

デザイナー 吉田真実さん

−吉田さんはデザイナーということで、チームラボではどういった案件を手がけられているのでしょうか。

吉田:最近だと「Ravijour」っていう下着のサイトで、PCサイトは弊社の別のデザイナーがつくったんですけど、スマートフォンサイトとモバイルサイトのデザインを行ないました。デザインからコーディングまでトータルに。基本的には、ウェブとモバイル双方のデザインを行なうことが多いです。

−チームラボが提供するウェブとなると、クライアントからはどのような注文がくるんですか?

吉田:お客さんからは、もちろんデザインのクオリティを求められるんですけど、それ以上に「やっぱりラボだから」っていうことでアイデアも求められている気がします。いままでにないユーザーインターフェイス(UI)とか表現とか……具体的な指示じゃなくても、「チームラボさんですよね」って(笑)。やっぱり「いままでにないもの」を求められているんだろうなぁとひしひしと感じますね。

−そんなチームラボに入社した当初、どんな印象を持ちましたか?

吉田:「ウルトラテクノロジスト集団」っていうイメージがあったんですけど、みんなすごく真面目だなぁという印象でした。発想は普通の人とちがっておもしろいんですけど、論理的に考えられていて、最初はおどろきました。「あ、勢いじゃないんだ」って(笑)。仕事上の話し合いも多い会社だと思います。凝り固まらずに意見を出し合う機会が多いというのも、新鮮でしたね。以前勤めていた会社は、縦割りでそれぞれがそれぞれの仕事を黙々と行なっていて、あまりコミュニケーションをとることがなかったんですが、チームラボはトラブルから何からチームで共有する「レビュー」というディスカッションをしつこく行なうんです。

−それは立場関係なくフラットに?

吉田:そうですね、入社歴とか年齢関係なく。だからお互いの考えが食い違っても議論して詰めていくし、話しているうちに自分の考えも整理されていく。そういう経験はいままでなかったので、面白いなと思いました。

−吉田さんから見て、チームラボってどういう人に向いている会社だと思いますか?

吉田:ディスカッションしながら一緒に何かをつくりたい人に向いていると思います。結果オーライっていうクールな会社でもありながら、いい結果を出すためにプロセスも大切にする。一人で悩むこともないし、大変なときであっても、みんなで乗り越えようという雰囲気があります。「おお、波きた」みたいな(苦笑)。そういう大変さも含めて楽しめる人がいいと思いますね。
 
 

最後に、もう一度猪子さん登場。取材前にCINRA.JOBのTwitterで募集した「猪子さんへの質問」のうち、厳選して二つの質問にお答えいただいた。なんてことない「お悩み相談」に答えてもらううちに、猪子さんの独創的な思考が爆発。テクノロジーが切り拓く領域でビジネスを拡大していきたいという、チームラボが目指す方向性についても語った。

お悩み相談【1】 地方がなくなる!?

−今回、事前にTwitterで猪子さんへの質問を募集したんですよ。いくつかピックアップしてきたので、答えてもらってもいいですか?

猪子:出た! Twitterマーケティング、ずるいよね(笑)質問の内容とかどうでもいいんでしょ? そこからホームページに飛んでくれればいいっていう……ひどい(笑)。

−そんなことないですよ(笑)。では一つ目の質問いきます。

「東京が大好きだという猪子さんに質問です。私は地方に住むものですが、人口が減り続け、経済の状況もよくありません。今後、地方はどのようになっていくと思いますか。いっそ生活のことも踏まえ、都会にいった方がいいのではないかと考えています。アドバイスをお願いします」

質問シート

猪子:情報化社会になると、社会のシステムが複雑化しているから、一次産業は別として、基本的に都市にしか仕事がなくなる。極端に言えば、農地と都市しかなくなると思う。だから都会に行ったほうがいいと思うよ。

−なんだか極端な気もしますが……。

猪子:いやいや、たとえばうちの会社だったら、非常に専門色の強いスタッフ、データベース(DB)のエンジニアやユーザーインターフェイス(UI)のエンジニアが集まって一個のものをつくるじゃないですか。でもDBやUIだけでは商品としては成り立たないですよね。現代社会は高度に複雑化した社会だから、一個のものをつくるのに一人の能力では完結しないんです。それは個人もそうだし、企業もそう。シリコンバレーみたいにある分野の企業が異常に集積している場合はそういう地域も成立するかもしれないけれど、もしなんらかの分野に特化していない場合、企業も都市に集積せざるを得なくなっていく。

−では地方都市という考え方も、本来は成立しないということですか?

猪子:うん。たとえばとある地方なんかは、地元の税金で行政が成り立っている割合が3%のところだってある。残りの97%は中央から、税金やらなにやらでまかなっているんですよ。そういうところは本来存在しないはずなんだよね。だから地方都市っていう考え方も、さっき言ったように、ある分野に異常に集積していない限りありえないと思いますね。

お悩み相談【2】 テクノロジーがアイデアを進化させる

−なるほど、深いですね…。もう一つ、こんな質問を頂きました。
チームラボは既成の価値観をくつがえす非常にアイデア溢れる企業というイメージがありますが、

 
「アイデアを出す際、毎回決まったパターンや内容になってしまい面白みがありません。前例の無い面白いアイデアを生み出す発想のヒントなどはありますでしょうか?」

猪子:いや、アイデアが先にあるのではなく、むしろ僕はテクノロジーの状況がアイデアを生んでいると思うんです。テクノロジーは日々進化していて、それに合わせてやれることが増えている。その進化に寄り添って何かをつくれば、それは結果として前例のないものになると思うんですよ。とくにいまデジタル領域でのテクノロジーの進化ははげしくて、僕らはその領域で仕事をしているから、結果として新しいアイデアを提案していると映るのかもしれない。

−アイデアだけじゃだめなんですかね。テクノロジーとセットになって初めて生まれるものなのでしょうか。

猪子:人間は潜在的にはやりたいことがいっぱいあって、それに気づいている人もいるし、気づいていない人もいるけれど、それはあまり重要なことではない。むしろテクノロジーの状況が新しい考え方であったり、アイデアを生むっていうことですね。特に面白いものっていうのは、基本的に言語で説明できないものだと思うんですよ。言葉で説明できちゃうと、それはすぐに人と共有できるので、それほど感動は大きくない。

−常識的な範囲にとどまっているという意味で?

チームラボ株式会社 代表取締役社長 猪子寿之さん

猪子:うん。でも言葉で説明できないけれど、写真で説明できるものは、ちょっと感動が大きい。写真で説明できないけれど、動画であれば説明できるものは、より感動を与える可能性がある。さらに言えば動画でも共有できない価値、つまりリアルな空間で「体験」してはじめて理解してもらえるものは、いまの時代一番付加価値を生むんです。なぜかというと共有しづらいから。他人に共有できないアイデアであればあるほど、実は前例のないものに結実する可能性があると思うんです。そういう意味では、この質問した人もすごいアイデアを持っているかもしれないよ(笑)。

−面白い見解ですね(笑) では、チームラボが目指す方向性もまた、より共有の難しい、テクノロジーが切りひらく領域に向かっているということですか。

猪子:そうですね。デジタルのテクノロジーによって、インタラクションが生まれる。そのインタラクションが従来の「体験」のありようを変えていくわけですから。より共有の難しい、前例のない価値を生み出せる領域に、今後も足を踏み入れていきたいですね。