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プロとして、関わる人達すべてに信頼される事。

株式会社ルートコミュニケーションズ

東京ミッドタウンの賑わいから少し離れた静かな一角。建物内に歩を進めると、洗練されたデザインと緑あふれる空間が広がる。ここはナイキとの仕事を筆頭に、数々のウェブプロジェクトで知られる、「ルートコミュニケーションズ」の、6月からの新拠点だ。圧倒されるほどのスマートでクールなデザインオフィス。しかし、この表層的な魅力だけでこの会社を語ることはできない。 同社を率いる寺嶋徹代表は、「技術とクリエイティブに妥協を許さない、寡黙なクリエイター」というこちらの勝手なイメージを簡単にぬぐい去ってくれた。何度となく取材陣を爆笑の渦に巻き込みながらも、仕事に対するプロとしての意識をひしひしと感じさせる言葉たち。化学研究者からデジタルプロダクションの経営者に転じたユニークな経歴には、「相手に喜んでもらいたい」という、一貫した哲学を見ることができた。

取材・文:内田伸一 撮影:菱沼勇夫(2012/07/20)

「相手に喜んでもらいたい」が原動力

自然を愛する研究生時代に得た哲学

「ルーツはエコ」。意外な言葉で始まったインタビューだが、話が進むほどにその真意は至極真っ当で、かつ肩肘を張らない寺嶋氏の人柄に沿ったものだということがわかった。

株式会社ルートコミュニケーションズ代表取締役 寺嶋 徹さん

寺嶋:僕は田舎育ちだったから、山や川が開発されていく事にとても心を痛めていました。特に河川の汚染には耐えられなかったですね。それで、水質浄化の研究者を志しました。
ただ、自分の進んだ大学には、その分野のプロと呼べる先生が居なかった(笑)。なので研究室は別の分野に行ったのですが、大学院時代の教授が実力も影響力もその世界では多大な人でした。先生は本当に化学が好きで、退官間近なのにメチャクチャ勉強している。でもこれが本当に大変で、研究生には何にも教えてくれず、自己責任に任せられる。自分で全て考えなければならないのに、それを報告する相手はプロ中のプロ。毎日毎日、猛烈なプレッシャーと闘いながらも、自力で幾つかの重要な研究結果を出せた、これが大きな自信になりましたね。

ただ、研究結果以上に、成功した結果を報告する時の、教授の嬉しそうな顔が忘れられなかった。強い意志を持って取り組んでいる人の目標を実現し、喜んでもらうことの幸せを感じたんです。これが、今も変わらぬ僕の原点です。

寺嶋さんは、化学の世界で働くことを強く勧められながら、別の道を選んだ。何事にも旺盛に湧いてくる自分の「好奇心」がアカデミックな世界に合わなかったのが、その決断の理由だという。

クライアントの「先生」になる

その後、高校時代のパンクバンドのメンバーとビジネススクール「グロービス」で学びながら、当時、投資が少なくても起業できたネットの世界に注目。四畳半の部屋で開業することになる。世の時流に乗り、市場規模と共にお互い一緒に育っていけた側面もあるという。加えて、新しい事に積極的に取り組むクライアントと一緒にチャレンジし、それを実現するために必死でやってこれた事はラッキーだったと語る寺嶋さん。ただ、それだけではここまで広がり、また続きはしないはず。その鍵となる要素は何だったのか? 答えはここでもシンプルだ。

寺嶋:「相手に喜んで貰いたい」でやってきた事が全てですかね。それにはまず「先生」であり続ける事が必要。お客さんから細かく指示されてしまうようでは、そもそもの存在意義が薄くなる。お医者さんなんかが良い例でしょう。「お腹が痛いのを治したい」という目的を伝えるだけで、どういう症状かを分析し、処方してくれる。お客さんの目的の為に、処方については堂々と立ち向かえる、患者の為に強く叱れる。そういうプロ意識じゃないとダメですね。それにはそれだけの知識と感情移入、それから考え抜く力が必要です。

ともすれば話題性や新規性ばかりに目を取られがちなこの業界。しかし彼らの活躍を支えるのは、根源的な「人対人」目線のものづくりの積み重ねだった。

寺嶋:相手の視野を超えたアプローチを提供して、目標を達成していく事。それに尽きると思います。そのプロセスの繰り返しが、一回きりではない継続的な関係性につながるんだと思います。目標を達成することが最重要。きちんと目標を達成すれば、お客さんからも次の仕事を頂ける、任せてもらえる領域も広がりますよね。

だからその辺の考えが無い人には、社員だろうとお客さんだろうと、よく怒ってましたね。昔は「ウェブ業界の大島渚」と呼ばれたりね(笑)。

取締役 松浦 寿悟さん

取締役 松浦 寿悟さん

しかし、ここで「今はウェブ業界の高田純次ですかね(笑)」と突っ込みを入れるのが、同社の制作部門を束ねる取締役の松浦寿悟さん。穏やかな語り口は寺嶋さんと好対照だが、その仕事哲学には多くを学んでいるという。

松浦:僕の場合は別のデザイン会社勤務時代に付き合いが始まり、やがて声をかけてもらって6年前からここで働くようになりました。寺嶋は…もうおわかりかもしれませんが(笑)、やはり「義理人情」の人ですね。仕事の考えかたや行動力において、僕も自分が成長する上で多くのものを学んでいると思います。

「相手に一回一回『ありがとう』と言われる仕事ができれば、絶対にお付き合いは続いていく」「仕事が評価されてクライアントの担当者さんが昇進していくのも嬉しい(笑)」。そうした言葉が、建前ではない情熱としてすんなり届いてくるのも寺嶋さんの不思議な魅力だ。

寺嶋:この仕事の面白さは、仕事を通じて情熱的な人たちと出会う事ですね。ここまで話した、喜んでもらうということ以外に、仕事に情熱的で、ある意味「変人」な人達が多い。僕自身、若いころは「何をやりたい」という思いが強かったですけど、今は「この人の為に」「この人と一緒に」という出会いがある事にも幸せを感じています。そしてもちろん、相手にも同じことを感じてもらいたい。僕らと一緒に仕事をしたいと思ってもらえないと。やっぱり人間一人じゃ何もできないですから。

未来に向けて、力を注ぎ切る

利益度外視でやりたい仕事がある幸せ

大手クライアントとの充実した仕事の中で、そこに安住しない挑戦もあった。そのひとつが、白血病患者支援NPO「LIVE FOR LIFE」のサイト。急性白血病で他界した歌手・本田美奈子さんの遺志を継ぐ彼らのサイトのリニューアルを無償で提案し、実現した。

白血病患者支援NPO「LIVE FOR LIFE」

白血病患者支援NPO「LIVE FOR LIFE」
http://live-for-life.jp/

寺嶋:YouTubeの一本の映像で心を打たれて、そこからミュージカル女優や歌手としての活動、亡くなるまでの経緯や、NPOを立ち上げた事などを知りました。結果ごく自然に、あれだけ強い意志をもった人の「思い」のために何かせずには居られないと思いましたね。もちろん募金という手もありますけど、募金はお金を持っていれば誰でもできるんですよ。
やっぱり、まずは自分達にしか出来ない事で貢献すべきですから、得意な分野を通じて彼女の遺志を多くの人に伝えられるサイトづくりをやらせてもらえないかと、事務所に電話しました。

創業以来、飛び込み的な営業はほとんどしてこなかったという寺嶋さんにとって、これは人生初のテレアポでもあったという。

寺嶋:素直にチャリティのつもりで申し出ました。だから仕事というわけでもないのですが、社員の力を借りて何かをやるというのは、やはり仕事ですよね。採算度外視でもいいからやりたいと思える仕事があるのは幸せなこと。僕らの仕事はそういう案件が多い。もちろん利益が出るのはありがたいのですが、予算に余裕が無い時でも、限られた予算で「ここまで」と決めてしまうのじゃなく「やりたいところまでやり遂げる」のは、社員のモチベーションにとっても大切な事ですからね。

誰かの「思い」を実現するという事は、その持ち主がお客さんであれ、社員であれ、小さな未来を向いて進んでいくこと。そこでドアが開くと、再び次の未来の「課題」へ向けて進んでいく、その繰り返しが彼らの仕事史でもある。特にこのプロジェクトでは、「思い」の共有にこだわったと寺嶋さんは語る。「既に亡くなった方の未来への思いを実現するという意味で、徹底的な感情移入で、本人になりきる事が必要だと思いました。だって本人はダメだし出来ないんですから」。

新オフィスに込めた再生と革新の想い

「自分たちのブランドを愛している人々と仕事をして、彼らに喜んでもらえると本当に嬉しい」とも語る寺嶋さん。単に大きなブランドとの仕事だからという話ではなく、求めるものは「熱い情熱を注いでいる人の、その情熱を支える」ことだという。

オフィス
寺嶋:人間、基本は1on1の関係性だと思うから。それがやがて企業活動にも、そして「社会」にもつながると思っているんです。

新オフィスにもそうした想いは反映されている。あちこちに配された温かみのある木彫家具は、東日本大震災で被災した宮城県石巻市で、地域のものづくりのための場として生まれた「石巻工房」によるものだ。

寺嶋:被災地にただ募金や寄付をするより、現地で仕事が生まれる動きに寄与するのが大切だと思うから。やっぱりみんな、働けてなんぼの人生でしょう。僕は本当の復興もそこからだと思う。取り付け作業に来てくれた工房の方々と直接対面して、うちの社員の意識も変わったと思う。

これらの家具は、廃材を有効活用しているため、以前使われていた名残の穴が意外な場所に空いていたりする。だが、その穴もポジティブにとらえるのが寺嶋流だ。

ガジュマルの木

寺嶋:僕らのような仕事の世界では、こういう無骨なつくりはむしろ都合がいい。穴があれば、なにを刺そうかとなるでしょう?(笑)。仕切り壁の役目も果たしている書棚はオープンで有機的になったから、みんなの使い方もバラバラ。いままで本棚は収納のためのものだったけど、表現の場にもなっています。小さな植木も日々動かしていて、オフィス自体も成長していく感じを楽しみたい。

エントランスで目を引いたのは、小さなガジュマルの木。社名にシンクロするように、地上にせりだす大きな「根=ROOT」を張る姿は、寺嶋さんのお気に入りだ。やがて枝葉は広がり花が咲き、そして新しい実をつけるだろうか――。

寺嶋:実際、このオフィスに来てから、今までにはありえなかった社員の行動が出てきましたね。社員が変われば会社も変わる、会社が変われば提供できるサービスも進化していく。引越しの際に、もちろん狙っていた事ではありますが、予想以上に良い方向に進んでいっています。

一人ひとりに喜んでもらいたいというのは、お客さんに限った話じゃないんです。社員にも喜んでもらいたいですし、そういう姿をみて自分自身も喜ばせてあげたいんですよね。

実は「デジタルだから」という話ではない?

現在、ルートコミュニケーションズでは、新オフィスで働くスタッフを募集している。今後の挑戦を共にする同志として、彼らはどんな人材を求めているのか? ここで再び松浦さんにも加わって頂き、その答えを伺った。

代表取締役 寺嶋 徹さん

寺嶋:人間的な資質としては「見て見ぬ振りはしない人」です。自分はもう帰宅できるんだけど、同じような仕事してる人が大変なとき、言葉だけでもいいから「手伝えることある?」と声をかけられる人。それから、少なくとも最初は、新しく入る人より今の社員のほうが大切なわけです。現スタッフは即戦力だし、これまでの感謝の念もある。だから僕の判断もそうですが、今の社員と溶け込めるかというのは大きなポイントです。

さらに、仕事で出会う多様な「思い」と、柔軟かつ徹底的に付き合える人材を歓迎したいとも語る。

寺嶋:繰り返しになりますが、誰かの思いを実現したいという気持ちで、自分以上に相手に感情移入できる人ですね。例えばゴルフの好きな人でゴルフメーカーの仕事をやるときに、自分のゴルフ観で仕事をやったらダメなんです。時には自分を捨てて、そのメーカーの立場から客観的に見られないと。

だから○○社の仕事をやりたい、こういうデザインをしたい、自社でサービスを作りたいというアウトプット型の人は、他社のほうがやりやすいんじゃないでしょうかね。Uターン型というか、まずは徹底的に相手を理解して、そのうえで自分なりのアプローチを考えられる人は、どの職種でも歓迎ですよ。

松浦:スキル面では、最初からそこまで高い能力は求めません。ひとつだけ必ずお願いしたいのは、常に責任をもって仕事をしてほしいということ。チームでの仕事では、自分がつくったものを見た上司が「ここは芳しくない」と修正指示を出すこともあるでしょう。でもそこで、上に言われたから、最後は上が見てくれるからという意識になるのではなく、最後まで「自分の仕事」として取り組んでほしいんです。あとは好奇心さえあれば、スキルは上がって行くと思いますよ。

まとめ

取材中に寺嶋さんは、「僕個人の意見として、デジタルとかベンチャーとか関係なく、いま自分ができる“喜んでもらえること”がたまたまデジタルの手法というだけの事なんです。デジタルの業界であることが目的ではないんですよ」とも語った。 ウェブクリエイティブの黎明期にチャンスを掴んだ点、また寺嶋代表のユーモアに溢れつつも時代の核心をつく思想・発想力など、彼らの歩んできた道は、そう簡単には後発がなぞれるものでないのも確かだ。しかし、ここに力強い教訓はある。彼らの根っこにある想いはひとつ、「一人ひとりの相手に喜んでもらいたい」ということ。デザイナー、ディレクター、エンジニアという違いを超えてその「ルーツ」を共有できるからこそ、想いをひとつの「結果」に実らせることができるのだろう。間仕切りがなく見通しのよい新オフィスを眺めながら、改めてそのことに思いが及んだ。