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全方位を渡り、辿り着いた、これからの編集道!

株式会社ロースター

原宿の明治通りを少し中通りへ入ったところに、そのオフィスはある。場所柄と「ロースター」という社名、そしてコーヒーカップをあしらったカンパニーロゴ。思わず「カフェですか?」となりそうだが、実は雑誌・書籍・写真集からウェブサイト、モバイルコンテンツまで手がける多領域対応の制作会社だ。オフィスに入れば、タウン情報誌の特集ラフを描き込むスタッフがいるかと思えば、ファッション誌のフォトレイアウトをチェックする編集者の姿も。さらにムック本や写真集まで、出版社ではないのにあらゆる編集業務が行われているその現場は、大崎安芸路(あきじ)代表が編集のプロとして積んできたキャリアを礎に実現したものだ。若者向けカルチャー誌から、豪華ふろく付きムック本、大企業がスポンサードするフリーペーパーまで多彩な編集業を渡り歩いてきた同氏ならではのコンテンツ編集術とは?

取材・文:内田伸一 撮影:菱沼勇夫(2013/08/13)

「コレ、欲しかった!」をつかむ力

2008年設立のロースター社を率いる大崎安芸路代表は、大学卒業後に出版社に勤務、その後に複数の編集部やコンテンツ制作会社への転職を経て同社を立ち上げた。中学生のころから『POPEYE』などの雑誌に惹かれ、自然にそれを作る仕事を目指すようになった大崎さん。ただしその豊富なキャリアも、最初は小さな手がかりに必死にすがってのスタートだった。

株式会社ロースター 代表取締役 大崎安芸路さん

株式会社ロースター 代表取締役 大崎安芸路さん

大崎:就活は当然のように出版社志望で、大学在学中からエディタースクールに通ったりもしました。でも当時、特に大手は一流大学出身以外は難しいとも言われ、さらにそのころの僕はとにかく面接が苦手(笑)。筆記試験はそれなりに自信もありましたが、あまりにしゃべれないので”やる気あるの?”みたいな感じになっちゃうこともあって。苦戦に次ぐ苦戦の末、最後は「どんな形でももぐりこめれば」と徳間書店の男性誌『GoodsPress』編集部にアルバイトとして入れてもらいました。それが僕の編集人生の始まりです。

以降は契約社員になったあと「自分が若いうちに若者向け雑誌をやってみたい」と『asayan』(ぶんか社)編集部に転職、同社の女性向け雑誌の立ち上げに関わる。かつての「カリスマ店員」や「マルキューブランド」などのブームを生み出した『Ranzuki』(ぶんか社)。この時期、雑誌編集者として大切なことを数多く学んだ。

大崎:読者が望むものを知るのは、もちろん最重要課題のひとつ。だからどのメディアもアンケートに熱心で、そこから人気記事の傾向も、趣味嗜好も細かく割り出せます。でも、じゃあそのランキング上位を並べて作ったら売れるか? っていうと違うわけです。彼らの意識にはまだ現れていないけど、「そうそう、コレ欲しかった!」と言わせられる「次」を提案できるかが勝負だった。

同社が編集を手掛けるセルフスタイリング誌『Soup.』

同社が編集を手掛けるセルフスタイリング誌『Soup.』

「カッコいいか」「楽しいか」が価値判断の最上位にくる若い世代を相手に、自らのセンサーと企画力を磨いてきた大崎さん。その経験を糧に、現在ロースターでは女性向けセルフスタイリング誌『Soup.』をまるごと自社で引き受け、自身も編集長を務める。

なお、ロースターという社名の由来も、編集をコーヒー豆の焙煎にたとえ、クライアントや読者に合わせ「深煎りから浅煎りまで」こだわりの味を引き出すことから来ている。

大崎:その上で「いつも飲む好みの味とは違うけど、これもいい!」という驚きも提供できねばと思います。結果、「いや〜コレはないわ」と言われるリスクも当然ある(苦笑)。でもAppleのヒット製品だって、ユーザーが具体的に「こういうのが欲しい」と言うのを待って具現化したわけじゃない。編集の仕事も、どんな形であれ一歩「先」に挑み続けることだと学びました。

「お皿」じゃなくて「料理」をつくる

さらに大崎さんは、メディアにとらわれず、むしろテーマやコンテンツに最適なメディアの形を考える編集力を鍛える場をつかむ。上述『Ranzuki』などでの実績を認められ、『週刊アスキー』でも知られるアスキー社に迎えられた。ただ、ここでも順風満帆の航路というより、悩みながら発見や学びを得たようだ。

社内風景

MTGルームには、同社が手掛けてきた作品や資料本が壁一面に並ぶ。

大崎:もともと新雑誌立ち上げに関わる予定でしたが、入社後の情勢が中々その実現を許さず、「カフェごはん」のムック本を作るなどしていました。今では珍しくありませんが、海外で見た豪華ふろく付き雑誌の『VISIONAIRE』を面白いと思って、ビームスさんらと共にそのスタイルのムック本にも挑戦しましたね。これらは、既存のフォーマットにとらわれない編集方法を探る経験になりました。

豪華ふろく付き雑誌は、今では多くのファッション誌で定番化。中には「雑誌のほうがふろくでは」と揶揄されるものもあるが、コンテンツの内容と形式とのマッチングに秀でてさえいれば、こうした批判もあたらないということだろう。さらに大崎さんは「紙媒体のみにこだわらない」とも語る。

大崎:雑誌好きだから紙が好きか問われると、実は難しい。じゃあ雑誌ってテレビと何が違うの? とも聞かれますが、僕が子どものころから雑誌に惹かれていたのは、雑誌という媒体自体が好きだったわけではなく、載っていた内容が大衆向けのテレビとは違う発想や先行くセンスだったからだと思うんです。つまり容れ物自体よりそこにある中身。だから僕も編集者としてはお皿を作るというより、常に料理人でありたい。ただし、作りたい料理に合ったお皿がまだなければ、新たにそれを考えるのも仕事だと思います。

だから、電子書籍が最初に話題になり始めたころの「それでも紙媒体はなくならない!」的な、ノスタルジックな議論は正直ピンとこなかったという。

社内風景

神宮前のキャットストリート沿いに構えるオフィス。内装を手掛けたのは、大崎さんの友人でもあるデザイナーの佐々木玲さん。

大崎:さかのぼれば、紙がここまで親しまれてきたのも、それ以前の石版とか羊皮紙とか地上絵とか(笑)、そういうものより軽くて安くて早かったから。一方で従来の紙媒体をただPDF化して「電子書籍です」じゃ全く通用しない。各々の目的に適した形が選ばれていくのはずっと続くことで、今後は電子書籍の次を担う存在だってすぐに出てくるでしょう。その変化に対応していける力は持っていたい。僕ら編集者は、メディアに左右される存在ではダメなんです。

ロースターでは前述ファッション誌『Soup.』や『Tokyo Walker』(角川マガジンズ)、『AKB48 FASHION BOOK』、松雪泰子写真集『daydream』(いずれもマガジンハウス)など多彩な紙メディアに携わる一方、キッズ向けダンスファッション誌『DANCE☆Generation』(セブン&アイ出版)ではニコニコ動画と連動したウェブ展開も行う。企画発案から初代カメラマンとしても関わった『美女暦』では、逆にウェブサイト発のコンテンツが、やがて紙媒体の写真集を生み出した。

独立前に養った、編集者にとってのビジネス感覚

アスキー社での経験は新たな糧になり、実績も積んだものの、自ら理想とする雑誌づくりの契機はつかめないままだった。大崎さんは、ここで自分のキャリアマップを想像し、ここが分岐点ではと考える。

大崎:ありがたいことに給料はキャリアや転職と共に上がっていきましたし、この延長線上で頑張り続ければ、引退する頃には立派な役職につくことができるかもしれない、とも考えた。でも自分の胸に聞いてみて、そこには大卒当時にバイトでやっと編集部に潜り込めたときの、あのワクワク感はないと思ったんです。それが30歳手前のことでした。

それは折しも、日本社会では終身雇用神話が崩れ始めたころ。腕一本で食べていけるスキルなしでは生き残れない時代に、出版社にいるメリットって何だろう? それが自分の中には見つからないと気づいたとき、大崎さんは独立を意識した。

大崎:でも、まだ独立資金もなかったし、友人に「お前はまだ営業センスがないから、まずそれを学んだほうがいい」と言われて。そこで『asayan』編集部時代の上司からの誘いを受けて、フリーペーパー『FILT』の編集長をやらせてもらうことになりました。

以前編集長をつとめていたフリーペーパー『FILT』

以前編集長をつとめていたフリーペーパー『FILT』

『FILT』は20〜30代の高感度な読者を対象にした無料のライフスタイルマガジン。コンテンツ作りのみならず、広告主との付き合いも含めての編集長業務をこなすことになった。時は2000年初頭、フリーペーパーは急増しつつあったが独自の存在を目指したため、手探りの状態だったという。

大崎:それまで僕は広告やPR記事を、どこか軽視していたところもありました。でも、その考えを覆させられる体験になったと思います。『FILT』では色々な企画をやらせてもらいましたが、実は特集は毎回、スポンサーの意向を踏まえ、社会への想いとリンクさせていたんです。それをいかに有用で魅力的なコンテンツに落とし込んでいくか。ここでの5年間は営業の修行になっただけでなく、企業や社会というレベルでの編集視点を僕にくれました。ただいいものをつくるだけでなく、編集者としてビジネスをする上で社会とどう関わっていくか。そんなことを学べた大切な経験でしたね。

チームワークで生む、高いクオリティ

その後、大崎さんはいよいよ独立の目処をつけ、『FILT』を離れてロースターを設立する。冒頭で紹介したオフィスの光景の通り、様々なジャンルの編集仕事を手がける。従来あった専門特化型の編集プロダクションとも違うスタイルは、自らの経験から自然と生まれた。

Roaster ロゴ

同社のロゴデザインは、ラフォーレ原宿などの広告を手掛け、数々の広告賞を受賞しているアートディレクターの長嶋りかこさん。

出版社でなくても、優れた編集チームは雑誌や書籍に丸ごと関われることを実証しているのもロースターの特徴。厳しいビジネス状況下でアウトソーシングを進める大企業の増加などの事情もある中、引き受ける側に開けたチャンスや可能性を的確につかみ取ったとも言える。大崎さんはそこで、「優れた傭兵部隊ではなく、チームワークを大切にしたい」という。

大崎:『GIANT KILLING』(週刊モーニング連載中)っていうサッカーマンガが大好きで、スター集団ではないけれどポテンシャルはある選手たちが、監督の采配や集団の力で成長していく姿に惹かれます。編集にたとえれば、人気のページを作れるけど締切が苦手とか(苦笑)、逆に突出した個性はないけれど交渉ごとが上手いとか、色んなメンバーの力がチーム全体にハマったとき、すごいパフォーマンスが生まれる。僕も正直、自分より面白い、素晴らしいコンテンツをつくれる人は外の世界に大勢いると思っていて。だけど今僕らがこのチームで生み出せるクオリティはどこにも負けない! という気概は持っていますね。常に1試合1試合、自分たちにしかできないサッカーをやっているつもりです。

時代に流されない編集者になるために

新入社員もすぐに自分の担当ページやコンテンツを持ち、つくりながら実力をつけていく。協働する多数の出版社とは、単純な発注・請負の関係に留まらず、大手出版社を相手に毎月新規の書籍企画を提案する業務も行う。設立5年目、社員が20名近くになった今でも、経営者と現場の制作者を兼ねる大崎さんは、いわばプレイングマネージャー的存在だ。

大崎さんは「編集とは、集めて編む仕事」と語る。どの情報を信じていいのか、そして何が最適な情報なのかを、整理して伝えるのが自分達、編集者の仕事。情報過多な今の時代だからこそ、今後はよりその存在が求められるといって違いはない。

株式会社ロースター 代表取締役 大崎安芸路さん

大崎:今はウェブというメディアが強いけど、3年後にはまた変わってくるかも知れないし、10年後にはそれに変わる大きなメディアが台頭してくるかもしれない。だって、SNSだけでもこれだけ変わっているし、3年後にみんながFacebookやっているかなんてわからないはず。だからこそ、これからはメディアに振り回されるような編集者ではなく、消費者に求められる最適なものをカタチにできる存在でないといけない。月並みにだけど、メディアミックスという考えとか、そういう多角的な視点が持てる編集者の存在がより必要とされると思いますし、僕はそんな編集者を育てていきたいと思います。

課題も可能性も抱えながら、時代と共に変化してきた編集の仕事。もちろん、見た目の華やかさと裏腹に、多忙な現場の実情や、ビジネスモデルの再考を迫られるなど、厳しさもそこにはある。現在、東京スクールオブビジネスで教鞭も執る大崎さんだが、そこで教えたいのは技術だけではないという。

大崎:必ず生徒には、「10年後に紙だけの編集者を目指すのは無理だから、覚悟しておけ」とは言っています。中には雑誌や本が好きで編集の世界を志したものの、実情をかじったゆえに、現場へ入る前に夢をなくしている生徒もいました。ただそうさせてしまう状況は変えたいし、先生としては新米ですが、現場としては、第一線でやっている自負もある。だからこそ、彼らにこの仕事の醍醐味や可能性を伝えることが僕の任務だと思っています。

「これからの時代の編集」に夢を

大崎さんがロースターに新規スタッフを迎える際、重視するのは「やる気と覚悟」という。失礼を承知で言えば、ごくありきたりな言葉だった。しかしそれは「センスというのは後から簡単に身に付くものではない。でもそれを補う技術や努力はやる気次第で伸ばせる」という、厳しくも理にかなった信念からきている。

株式会社ロースター 代表取締役 大崎安芸路さん

大崎:よく「今の若い人はハートが弱い」とも言われますよね。でも、その代わりに柔軟性があったりする。長所短所は誰にでもあります。だからどんな道を選んでも、必ず何かにぶつかる。挫折したとき他の道を探す人もいるし、それも悪くない。実際そうやって異業種からうちに加わった人もいますから。ただ、どこかで覚悟を決め「自分はこの道を行く」となった人は、目の前の壁をどうやって乗り越えるかしか考えなくなる。横に逃げるのではなく真正面から壁を克服したとき、人は一番成長する。その成長に一番必要な能力が「やる気と覚悟」だと思います。

今後は、今まで培ってきたことをベースに、より多角的なビジネス展開を考えているという。雑誌、ウェブ、テレビ、CM、イベント……そして教育までと、これからを見据えながら、冷静に把握し、考え、筋道を立てている。もちろん、その考えの根底を支えるのは、社員=チームの存在である。大崎さんは、幾度となく「より誇りが持てる仕事環境をつくっていきたい」と話していた。

大崎:僕自身、社員とは50:50(フィフティ・フィフティ)だと思っているし、働かせているとか、雇っている、とかいうものではない。それぞれが自分の成長のために、ベストを尽くして欲しいと思うし、僕もみんながベストを尽くせる環境を常に考えてつくっていきたい。だからこそ、自分たちの仕事に対して誇りを感じてもらいたいし、周りからもより評価されるようにしていきたい。そんなチームをつくっていきたいんです。

そう真剣に語りつつ「何だかんだ言って、編集の原動力はやっぱり『自分の手がけたものでワーキャー言われたい』、って気持ちだと思いますけどね(笑)」と相好を崩し、さらにその直後に「プロである以上、喜んでもらえたときにそれがお金になる世界ですし」とシビアに付け加える。このバランス感覚がロースターの快進撃を支えるのかもしれない。取材の締めくくりに、編集業の醍醐味をひとつ教えてくれた。

Roaster ロゴ

大崎:結局、ものづくりは人の心を動かしたときにはじめてビジネスになる。その意味ではひとつ数百万円の時計や車を売るのも確かに大変な仕事ですが、ワンコインで手軽に買える雑誌で食べていくには、そのぶん大勢の心を動かす必要があります。その厳しさはそのまま、やりがいにもつながる。また、雑誌は売上+広告料というビジネススキーム自体が成立しなくなってきたと言われて久しいけれど、となれば複数のメディア形態を組み合わせての展開など、新しいやり方を考えることになる。「編み集める」という仕事の中で、そうした工夫も自ら楽しめるかどうか。そこに魅力を感じる人たちが、この世界に加わってぜひ活躍していってほしいですね。

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