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「編集力」はすべての仕事に役立つ。インクワイアが考える未来の編集者像

株式会社インクワイア

社会をアップデートするウェブメディア『UNLEASH』編集長、ライティングスキルの共有化を目指すコミュニティーサービス「sentence」オーガナイザーを務める編集者のモリジュンヤさん。代表取締役を務める編集デザインファーム「inquire(インクワイア)」は、フリーランスの編集者が集い、「社会が変容する媒体をつくる」という理念を掲げ、独自の編集チームのあり方を模索している。「これからは新たな編集視点が必要」と語る代表のモリジュンヤさんと、編集者の小山和之さん、向晴香さんに、編集視点を持つことで得られることや、未来の編集者像について語ってもらった。

「未経験でも、編集はできる」。これからの時代に求められる編集者像

—モリさんは、インクワイアで「編集的な考え方」を社会に浸透させていきたいと考えているそうですが、それはなぜでしょうか?

モリ:ぼくはもともと、「編集者になりたい」と考えていたわけではありませんでした。現場で課題解決に取り組む人たちの姿を可視化したい、情報の非対称性をなくしたい、価値ある情報の流通を手助けしたいという気持ちから、ウェブメディアに関わるようになったんです。

最初に関わったメディアは『greenz.jp』で、企画を立て、取材をし、原稿を調整するといった、いわゆる一般的な編集者の仕事をしていました。でも2010年当初はまだウェブメディアも少なく、「編集者」といえば紙媒体に関わっている人を指す言葉だと思っていたので「ウェブの記事をつくっている自分は編集者といえるのだろうか」という疑問が常にありました。

—モリさんにとって「編集者」のイメージが画一していたと。

モリ:認識が変わるきっかけとなったのは、『greenz.jp』前編集長の兼松佳宏さんにすすめられ、後藤繁雄さん(編集者、クリエイティブディレクター)の『ぼくたちは編集しながら生きている』という本を読んだこと。その本には、「ほとんどの人は、人生において編集作業をしていて、それを活用するといろいろなことができる」と書いてありました。

ぼくはそれまで「職業としての編集者」のイメージに囚われていたのですが、それをきっかけに編集というものを柔軟に捉えられるようになりました。それと同時に、「編集」という考え方やスキルは職業としての編集者以外にも役立つと考えられるようになったんです。暮らしやビジネスのさまざまなシーンで編集能力を発揮すること、つまり「編集の拡張」が必要だと思っています。

—「編集の拡張」について、もう少し具体的に教えてください。

モリ:たとえば、デザイナーがデザインを行う過程で用いる、特有の「デザイン思考」という概念があります。世界的なデザインコンサルティングファームのIDEOが発信していったことで、すべての問題は「共感」「創造」「実験」で解決できるというものです。一般企業でもこのデザイン思考が取り入れられるようになり、いまでは、事業開発や経営戦略のレイヤーにおいても語られるようになりつつあります。

この動きを編集でも再現できないか、と考えています。編集者が編集を行う過程で用いてきた考え方を整理していくことで、いろいろな場面で編集を応用することができるんじゃないかと。

—具体的には、どのような仕事に編集のスキルが活かされると思いますか。

モリ:たとえば、対面する人の魅力を深ぼりするようなキャリアのカウンセリングやコーチングの仕事は、インタビュースキルが必要で、とても編集的だと捉えています。

最近は副業解禁など、自分に合った働き方を選べる社会になってきていますが、自分がやりたいことや興味があることを知らない人も多い。そんなとき、インタビュースキルを持ったカウンセラーがしっかり話を聞き、潜在的なニーズや強みを言語化、構造化、さらに文脈を把握することで、やれることや、やりたいことを整理するお手伝いができる。こうした編集的な視点は、ほかにも事業開発や組織づくりに活きるのではないかと考えています。

—インクワイアで実際に「編集視点」を応用して取り組んでいる業務はありますか?

モリ:ある企業の新商品やコンセプト開発のプロジェクトチームに加わり、リサーチやワークショップへの参加などをしています。そこでは、ぼくたちが日々の取材やリサーチで掴んでいるビジネスのトレンドや消費者インサイトの変化などをチームに共有していますが、これはまさに編集の領域での貢献ですよね。

また、オウンドメディア運営のインハウス化がトレンドの傾向としてあります。そのため、コーポレートブランディングのコンテンツ戦略や設計から関わるという仕事も始まっています。インハウスエディターの採用や編集力の内製化など、組織の情報発信力の向上に力を入れたい企業に対して、ぼくらが編集として培ってきたノウハウをつなげることで、組織自体の価値を高めることに貢献できるのではと考えています。

海外では、会社の文化を醸成したり、思想を浸透させたりするための役割を果たす「カルチャーエディター」という仕事も登場しています。組織づくりに編集として関わるというのは、この先、大きな可能性を秘めています。

—それはつまり、いままでのような「編集者」を経験したことがない人でもインクワイアで仕事ができるということでしょうか。

モリ:そう思います。たとえば、情報を集めて分析する社会学者やマーケターなどは、同じような考え方で仕事をしてきた人ではないでしょうか。少なくともインクワイアにおいては、経験の多様性は、これからの編集者にとって重要な財産になると考えています。向も小山も、別業界の知識や経験を、編集者の仕事に生かしながら働いていますしね。

モリさんがオーガナイザーを務める『sentence』が主催したイベントの様子。(画像提供:インクワイア)

モリさんがオーガナイザーを務める『sentence』が主催したイベントの様子。(画像提供:インクワイア)

「編集力」を身につければ、生きづらさも解消されるはず

—未経験者でも編集能力を身につけられるよう、工夫していることはありますか。

モリ:じつは、編集という仕事は、知識や経験が意外と共有されていません。たとえば、工業生産の現場やプロジェクトマネジメント、マーケティングなどは、長年の知見が蓄積され、ノウハウ化されています。

しかし、編集は個人のスキルに頼る部分や経験に基づくものが多く、体系化がされていない。暗黙知になっているものを形式知化し、伝えられるようにするのも、私たちが目指すことのひとつです。そのために、ワークショップデザインや調査研究を行う株式会社ミミクリデザインと協力して、「編集」の共同研究も始めました。

—編集の知識を、より多くの人に伝えられるようにノウハウ化しようとしているということですね。編集視点を持つ人材が増えることで、社会はどのように変わっていくのでしょうか?

モリ:現代社会の課題の一つに、「社会は豊かになっているのに、幸福度が上がっていないという状態をどう解決するか」ということがあります。問題はとても複雑で、従来の課題解決のアプローチが通用しなくなっています。しかし、そこに向き合っていけるのが、新しい編集視点だと考えています。

いま、生きづらさを感じている人も、編集の視点をもって自己を分析すれば、いずれやりたいことや興味を持てることが見つかるはずです。さらに、少しずつやりたいことを実行に移すことで、自分の進むべき道が見えてくる。

さらにその人が、自らの試行錯誤の軌跡を発信することができれば、多くの人が自分の可能性を考えるきっかけになるはず。そうやって、人が誰かの変化の媒介となっていくことで、世の中の生きづらさや漠然とした不安が徐々に解消されていくのだと思います。

—「編集力」には生き方や考え方だけでなく、世の中を変える可能性もあると。

モリ:そう思います。個人が編集の視点をもって自己分析をし、どう叶えていくかを考えることは、すなわち、会社や組織が変わっていくことなのだと思います。「編集視点」が事業化されて多くの人にアプローチできれば、社会に影響を与えることもできるかもしれない。編集にはその可能性があるのだと思います。

実際、北欧のビジネススクールでは、個人のクリエイティビティーとチームメンバーの多様性を活かして組織の変革を行い、イノベーティブなビジネスを生み出すためのアプローチを教えているそうです。

まずは人が変容すること、それが、企業や組織、さらには社会全体の変容につながります。その「変容」のきっかけを、インクワイアがつくりたい。その理念に共感してくれた仲間を育て、一緒に世の中を変えていくような仕事をしていきたいです。