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「広告音楽」の新時代が到来。2020年代にグランドファンクが目指す音楽のあり方

株式会社グランドファンク

CM、テレビ、映画、ゲームなどの音楽を手がける株式会社グランドファンクは、来期で設立30年の節目を迎える。その前年となる今年、同社は未来を見据えて大きく舵を切ることにした。27歳の剣持学人さんを取締役社長に任命したのだ。それと同時に、来たる2020年代に向けて、新たな音楽の可能性を模索していくことにしたという。そうした一連の動きには、どのような意図があるのだろうか。剣持さんに加え、同社の専属アーティストであり、菊地成孔とのユニットSPANK HAPPY(ユニット内ではa.k.a.ODとして活動)やCRCK / LCKS(クラックラックス)のメンバーとしても知られる小田朋美さんを交えて語っていただいた。

取材・文:村上広大 撮影:大畑陽子(2018/12/12)

生活に根ざした音楽にもっとアプローチしていきたい

これまで数々の映像・ゲーム作品の音楽制作に携わってきたグランドファンク。過去には、映画『BECK』や『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞音楽賞を受賞。その功績は業界内でもトップクラスといえる。

とはいえ、ここ数年は、AIによる自動作曲や、デジタル機材の進化などによって、以前よりも高品質で制作できる環境が整ってきた。さらに動画広告も多様化し、この流れは、今後さらに加速していくことが予測される。そんな過渡期ともいえる状況下で、同社の未来を託されたのが、広告代理店直下のインタラクティブエージェンシーから転職し、音楽プロデューサーになった剣持学人さんだった。

剣持:来期で設立30年目を迎えるグランドファンクは、CM音楽制作の会社としてスタートした経緯があります。これまで、CMなどのいわゆる広告・ブランディング音楽のほか、テレビや映画などの映像に関する音楽を制作してきました。

しかし、これからどんどんテクノロジーが進歩して、高速大容量のデータ通信ができる5G(第5世代通信システム)が普及する2020年代には、広告はもっと多様化すると考えています。

いまはグラフィックで表現されているような広告看板なども、5Gが普及することで、どんどんデジタルサイネージ化、もしくはIoT化されていくはず。そうしたら、映像やプロダクトにはつきものの音楽ももっと求められるようになります。

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取締役社長・プロデューサーの剣持学人さん(右)

剣持:音楽制作会社は、そのなかでどのようにアプローチしていくかが重要になってきます。ぼくが今年、取締役社長に就任した理由もここにあって。グランドファンクも、新しい発想やテクノロジーを取り入れた広告音楽にどんどん挑戦していきたい。

だから、デジタル制作経験あり、インタラクティブ案件などを手がけてきた私が、前代表から「自由にグランドファンクを変えていってほしい」と、会社を託されたんです。

また、広告だけではなく、生活に根ざした音楽にもアプローチしていきたい。海外の場合、病院などの公共施設の世界観を構築するためにオリジナルの音楽を制作して施設内に流しています。ほかにもいろいろありますが、そういった企業ブランディングに対しても音楽でアプローチすることができる。そう考えると、ぼくたちの役割はとても広いのではないでしょうか。

映像関係の場合、配信型プラットフォームはUIこそスマホファーストですが、いまの音楽はあまりそこを意識してつくられていない。ほかにも、双方向的にシナリオを選べるNETFLIXなどの映像コンテンツでも、より没入感を楽しめるように、インタラクティブに音楽が変化していくやり方もできると思っています。現代の体験に沿った映像作品には、これからも真摯にアプローチしていきたいです。

笑顔を交えながら未来について語る剣持さん。取締役社長に就任し、明確なビジョンを持っているが、音楽プロデューサーになったのは、ほんの数年前のこと。「音楽業界未経験」というバックグラウンドが、かえって型に縛られない自由な発想につながった。

剣持:私は音楽プロデュースの経験がない状態でグランドファンクに入社しました。当然ながら担当するクライアントがひとつもありませんでしたし、自分で新しい仕事を見つけてくることを期待されていたため、ひたすら営業の日々。広告業界のパーティーやオフ会に参加して映像監督を探したりもしました。そのときに活路になったのが前職での経験です。

自分の職能をいかしながら、何か音楽制作ができないかと模索していたので、インタラクティブ広告の仕事で培った経験をいかして、スマホカメラをかざすとARでアニメーションが発動するシール式の名刺とアプリを制作しました。それを持って営業に回り、今後はこういうテクノロジーをいかした仕事もグランドファンクではできることをアピールしていったんです。

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専用のアプリを開いてシールにかざすと、グランドファンクの過去の音楽作品が流れる

剣持:そもそもぼくが転職した理由は、好きな音楽で、好きな人と仕事をしたいと思ったから。やりたい仕事が来るまで口を開けて待っているような仕事の仕方は嫌だなと思うようになったんです。

そこで、昔から興味のあった音楽制作の仕事なら、自分の強みをいかして好きなことを仕事にできるかもしれないと、未経験ながらこの世界に飛び込む決意をしました。転職当時は、うまくいかないことも多かったのですが、「せっかく音楽に関わる仕事に就けたのだから、絶対に手放したくない」という気持ちで続けることができました。

「音楽プロデューサー」と聞くと、どうしても音楽の幅広い知識が求められるように感じられる。しかし、もっとも必要な能力は、ほかにあるという。

剣持:結果的に音楽の知識は必要になりますが、それは日々のなかで勉強していけばいいこと。もっとも必要とされるのは「良いものを良い」と言える判断力ですね。プロデューサーって、場面ごとに咄嗟の決断を迫られることが多いんです。そこで最善の選択を下せるかってけっこう重要なことで。

例えば、クライアントから急な変更が伝えられることだってある。そこで向こうの意見を汲むのか、こちらとしての意見を貫くのかでまったく結果が変わりますから。とはいえ、一朝一夕で身につくものでもないので、私も日々精進しています。

あと、これからの時代は「新しい発想」が求められると思います。友達と一緒に自撮りしながら音楽に合わせて踊る動画が流行るなんて、数年前は考えもしなかった。ぼくらも想像していない音楽の使い方っていっぱいあるんですよね。

それこそ、ムービーネイティブと呼ばれているような若い世代の子たちは、感性も違うはず。音楽に関わりたい人が、いろいろな業種から「新しいものをつくりたい」と、この業界に入ってくれたら嬉しいですね。

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クライアントの想いに対して、ゼロから音楽を生み出すためにプロデューサーがすべきこと

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