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「好き」と「やりたい」が生み出すスパイラル

株式会社フルサイズイメージ

2002年に設立し、創業10年目を迎える株式会社フルサイズイメージ。WEBサイトの企画立案からデザイン、構築、コンサルティングを主に手掛けているが、海外でも人気の高いドッググッズのブランド「free stitch(フリーステッチ)」を運営するなど、多角的な経営を行っている。さらに、今年8月には新規事業として、中目黒に撮影スタジオ「FOTOM(フォトム)」をオープンする予定だ。 社員20人程度の制作会社が、なぜWEBだけに特化せず多方面に事業を展開しているのか。「やりたいことを追求していたらこうなった」と川田修代表が話すように、自分たちの信念に忠実だった結果だとも言えるが、その背景には直接的にエンドユーザーと向き合うことで得た経験をWEB制作のノウハウに反映させるという「究極の顧客主義」の価値観が深く根を張っていると言える。都心部の閑静な住宅街にあるハウススタジオ「FOTOM」を訪ね、フルサイズイメージ流の「相乗効果を生み出すクリエイティブ」について秘訣を伺った。

取材・文:宮崎智之(プレスラボ) 撮影:菱沼勇夫(2012/08/09)

起業理由は「フジロックに行きたかったから」

画廊の息子がデザイン業界へ

「従業員が優秀だから、これまでやってこられた」と笑顔で話す川田修代表と、「free stitch」担当の梅田優人さん、「FOTOM」の立ち上げに奔走する占部杏奈さんに話しを伺った。

—まずはフルサイズイメージを立ち上げた経緯を教えてください。なんでも、「フジロック」に行きたいからという理由で起業を思い立ったという噂を聞きましたが、本当ですか(笑)?

株式会社フルサイズイメージ 代表取締役 川田 修さん

株式会社フルサイズイメージ 代表取締役
川田 修さん

川田:本当です(笑)。 もともと僕は普通の会社で営業企画の仕事をしていたのですが、2000年初頭のその頃は、インターネットで宣伝をしようという気運が高まってきた時期。集客のノウハウを学ぶために参加した勉強会をきっかけに「WEB業界には未来がある」と感じるようになったんです。それでその後会社を辞めて、専門学校に入りなおして、一からWEBを学びつつ、制作会社でデザインのアシスタントをしながら実務経験を積んでいきました。

しかし、フリーとして個人的に請け負う仕事も増え、24時に帰ってきて翌5時まで作業し、9時に出社するという日々を送っていくうちに、「さすがに、これは無理だぞ」と(笑)。 だって「フジロックに行きたい!」と思ってもいけないんですよ。それで独立することにしたんです。

—明快ですね(笑)。初めからデザインの分野に興味があったんですか?

川田:僕の実家は神戸で画廊を営んでいるんです。ですから、幼い頃から「どっちの絵が高価だと思うか?」など、目利きとしてのトレーニングを施され、大学生になってからは関東に住む作家さんのアトリエに同行させてもらったりしていました。

—実家が画廊だという人に初めて会いました。

川田:世間的には珍しいですもんね(笑)。 でも、画廊って実は大変な職業で、それこそ贋作でも掴まされたら大赤字を抱えてしまいます。ただ、僕は父親と違って、アートというよりも商品を売るためにクライアントとエンドユーザーを結ぶデザインという表現に惹かれていきました。

— なるほど。そして今年で創業から10年となりますが、初めから事業は順調だったのですか?

川田:いえいえ。初めは本当に苦労しましたよ。紙の編集やデザインの経験もあるスタッフと二人で起業し、狭いアパートの一室で一日中働いていました。貯金残高が1万円しかない時期もあったくらいですから(笑)。

ヤフオクへの出品で大喜び!?

— 現在はアパレル関係のお仕事を多く手掛けていると伺いましたが、それは初めから求めていたことだったのでしょうか?

川田:戦略と言うより、もともと独立したからには自分の好きな仕事をしたいという思いが強くあったんです。ですからまず初めは、自分の気に入っているブランドに片っ端から売り込みの電話を掛けるということからスタートして。もちろん、初めはまったく相手にされず、アポイントさえ取れない日々が続きましたが……(笑)。それでも、バナー制作など細かい仕事をこなしているうちに実績が認められ、一からWEB制作に携われるようになっていったんです。

— アパレルブランドのWEB制作でしたらブランドの世界観を理解したり、シーズンごとのコンセプトをサイトに反映させたりと、普通の企業サイトにはない苦労があるかと思います。

川田:そうですね。服飾デザイナーさんと話し合いながら世界観を作っていくことも多いです。高級ラインの革製品を販売する「GANZO」のWEB制作に携わった際には、実際に工場を見学したり、職人さんに取材をしたりしながら、綿密に世界観を構築しました。

—そんな多くのブランドサイトを手掛ける一方で、自社のドッググッズブランド「free stitch」を立ち上げたのは?

川田:それは犬が好きだからですね(笑)。もともと僕が犬を飼い始めたときに、着させようと思った服が量産品ばかりで、納得できる商品に出会えなかったということが、ブランドの出発点となっています。

—「フジロックに行きたい」の次は、「犬が好きだから」だと(笑)。

川田:ええ(笑)。WEBのデザインは画面上のものなので、いつか形に残るプロダクトを作りたいという思いもあったんです。初めは収益化に苦労しましたが、現在では完全な独立採算で黒字を達成しています。余談ですが、ある時、「Yahoo!オークション」を何気なく見ていたら、我々のブランド商品に20もの入札があったのを発見したんです(笑)。 本当に、感動しましたね。古着で人気が出るということは、ある意味、ブランドとして広く認知されたということですから。

消費者からの反応を制作に生かす「究極の顧客主義」

ドッグブランドの担当者は元販売員

— 現在、「free stitch」を担当している梅田さんは、フルサイズイメージの社員としてではなく、はじめからブランドを運営するために入社されたのですか?

梅田 優人さん

梅田 優人さん

梅田:そうですね。僕はもともとドッグトレーナーの学校に通っていて、その後、ペットショップに就職したんです。富裕層が集まるミッドタウンに店舗があったということもあり、そこで求められるのはとにかく品質の良さ。洋服の生地を裏返しにして、縫製の具合をチェックするお客様もいるくらいでした。そんななか、日本国内に生産拠点を置き、手作りで制作されているこのブランドは、自信を持ってお勧めできるものだったんです。

—なるほど。そうすると、入社する前から「free stitch」の商品に触れていたんですね。

川田:本当に嬉しい話ですよ。実際に販売していた人に気に入られて、社員になってくれるとは思いもしませんでしたし。

梅田:シンプルで、かつ可愛く、質もいいのが「free stitch」の特徴で、「日本製で手作り」というこだわりは海外でもウケていて、韓国や台湾でも好評だったり。

—そう、「free stitch」のfacebookページをみたら、6000人以上の「いいね!」を集めていることに驚きました。

梅田:今facebookはお客様とコミュニケーションを取る上でとても重要なツールになっています。例えば犬のモデルを募集する際も、facebookで飼い主さんからたくさんレスポンスをいただいたりします。その他にも里親として引き取った方と、そのワンちゃんに、弊社がデザインした首輪をチャリティとしてで配布する企画があるのですが、その方から届いた写真をfacebook上で紹介すると、世界各国の方々からいろいろなコメントをいただいたりと、多くの反響がありますね。

提案しているなら、自分たちでも売れて当然

 梅田 優人さん/川田 修さん

川田:「free stitch」を立ち上げたもう一つの理由には、いま梅田が話したようなエンドユーザーとのコミュニケーションを大切にしたいという思いがあったからなんです。ともすれば、我々デザイン会社は、「こうした方が絶対にカッコ良くなる」と、自分の美意識をクライアントに押しつけてしまいがち。しかし、クライアント側としては、予算以上の利益を生まなければ意味がありません。売るべき商品をどう魅力的に見せるか、そしてそれをどうエンドユーザーに届けるかというところまで考えていくのが、本当のデザインだと思うんですね。

ですから、自分たちの提案するデザインやWEBの構築によって、本当に利益が上がるのかどうかというシビアな視点を持つことが大切。そういう意味では、自分たちでブランドを立ち上げて、クライアントの立場に立って、実際に利益をあげていくことに挑戦しようと思ったんです。「こうすれば売れる」と普段から提案しているんだから、自分たちでブランドを立ち上げれば、儲かるのは当たり前でしょう? と(笑)。

— なるほど。確かに自分たちでブランドを運営して収益を上げていれば、それは説得力がでますよね。

梅田:実際に、普通のアパレルブランドと同じように、シーズンごとに犬のスタイルを提案したりもしています。例えば、今年の梅雨時は、小型犬のレインコートを作り、雨の中でも散歩するスタイルを打ち出したりとか。

川田:そう。自分たちがクライアントの立場に立つことで、色々と提案の幅も広がってきたと思います。それこそfacebookの運用法もそうですし、更新作業の負担軽減など、自分たちが同じ立場に立ってみないと分からないことはたくさんあります。

— そして、別の事業としては、今夏にオープンする撮影スタジオ「FOTOM」があります。もともと、クリエイティブの部分では、「free stitch」もそうですが、他社ブランドのWEBサイトを作る際にも、自社で撮影した素材を使うことが多いと伺いました。

川田:そうですね。例えば、WEBサイトの制作では、クライアントから提供された画像を使用して、レイアウトしていくことが多いんです。でも、それらの素材はパンフレットなど紙媒体を念願において撮影されたものであり、WEBに無理矢理転用しようとすると、どうしてもデザイン上の制約が出てきてしまうんですね。本来ならばWEBに使用する画像は、WEBでレイアウトする前提で撮影するべきなんです。そんな思いがあり、なるべく提供画像を使わずに、スタジオを借りて撮影した画像を使用してデザインすることにしています。

でも、結局は貸しスタジオを使わざるを得ないんですよね……。

—なるほど。だんだんと川田さんの言いたいことが分かってきました(笑)。

「相乗効果」を生む新しい挑戦とは?

それで作っちゃった撮影スタジオ

—それで、作っちゃったんですね?(笑)

川田:はい。作っちゃいました(笑)。自分たちでスタジオを持っていた方が、いいに決まっていると思いまして。

アシスタントディレクター/スタジオ担当 占部 杏奈さん

アシスタントディレクター/スタジオ担当
占部 杏奈さん

—今まさに立ち上げに奔走している占部さんは、もともとWEB部門のアシスタントディレクターをされていたと伺いました。

占部:そうです。今はこのスタジオの担当という感じです。

川田:彼女は、いわば新規事業部長。切り込み隊長です(笑)。

— WEB制作会社というと、デザインやサイト構築など、どちらかというと社員に専門性を求めるケースが多いと思いますが、まるで総合職のような扱いですね。

占部:はい。次はなにを振られるのかというドキドキ感はありますけど……(笑)。

川田:彼女はクライアントを相手にしていたディレクター時代は、冷や汗をかいていたと思いますが、いまはスタジオづくりに駆け回るという、本当の意味での汗をかいてもらっています(笑)。

—「FOTOM」はどのようなコンセプトで運営するのですか?

占部:内装は白と木目を基調にしてあまり主張しすぎず、いろいろな世界観を持ったブランドに使用してもらえるスタジオを目指したいと思っています。また、スタジオ内でイベントを開いたりと、まずは認知度を上げていきたいですね。

川田:これからはWEBでモノを売ることがますます多くなってきます。ブランドから提供された写真を掲載してカタログ的に売ることも一つの手だとは思いますが、さらにこだわりたい人達が自分たちで商品を撮影して、セレクトしたアイテムを売りたいという需要も増えてくると思うんです。「FOTOM」は、そうした方々が比較的安価で撮影のできるスタジオにしていきたいなって思っています。

ーなるほど。具体的には?

占部:まずは自社の制作案件や「free stitch」での撮影をベースにやっていきます。それから他社の人にも使っていただき、ゆくゆくは「FOTOM」を経由して新たな仕事が生み出せたらいいな、って思っています。

「好きだと思うことを追求しよう」という純粋な姿勢

—これまでお話を聞いて思ったのが、さまざまな分野の事業に挑戦することで、もともとの事業であるWEB制作と新規事業とに相乗的な効果を発生させて、成長してきた会社なのだと思いました。その部分は、川田さんも意識されてきたのですか?

 川田 修さん

川田:そうですね。でも、もちろん何度もトライ&エラーは繰り返しています。僕の場合、2年に一度くらいなにか新しい事をしたくなっちゃうタチなんですよ(笑)。そんな多くの挑戦の中、成功しているのが「free stitch」というブランドだと言うことです。これまでを振り返ってみると、大きなヴィジョンを掲げてやってきたというよりは、「自分たちにやりたいことを追求していたらこうなった」というのが実情だと思います。もちろん、今は創業10年になり、従業員の生活を守らなければ行けないので、偉い経営者さんの本を読んだり、必死にそろばんを弾いたりしていますが(笑)。

でも、創業当初から変わらないのは、「自分たちが好きだと思うことを追求しよう」という純粋な姿勢です。そしてうちの会社の場合は僕が優秀ではないぶん、とにかく社員が優秀なんですよ。彼らがいなければ、会社はとっくに倒産していたと思っているくらいです。

—もちろん、ご謙遜だとは思いますが(笑)、それだけ優秀な社員が自由に働きつつ、会社として成長していけるということは、代表の経営手腕が卓越している証拠ですよね。

梅田占部:(川田さんを眺める)

川田:あんまり持ち上げられるのは慣れていないのですが……(笑) 。でも、彼らが満足して気持ち良く働ける環境をつくることが、僕にとって一番大切な仕事だと思っています。
たとえば最近、「free stitch」の事業で海外とやり取りしているので、WEB部門でも海外に進出したいと思ってて。そのために、週1回、社員に英会話の授業を受けてもらってて、海外から発注がきてもスムーズに対応が出来る体制を整えたりとか。

—新たな展開をしているんですね。では今後の展望はございますか?

川田:そうですね……。僕が会社を作ってからこの業界は凄まじい勢いで変化してきているんです。だから10年後は業界がどのように変化しているか、現時点では誰も分からないんですが、僕が思うに形やテクノロジーがどんなに変化しても「デザインする」という仕事だけは永遠になくならないと思っているんですよ。だから、好きなことを追求しつつも、「デザインをする」というその軸をブレずに、これからもやっていきたいですね。

まとめ

一般的な社長といったら、強いリーダーシップを発揮して社員を牽引していくタイプが多いというイメージがあるが、川田代表は謙虚で、なごやか。自然と人が集まり、それぞれがやりがいを持って働ける組織をつくる、「環境調整型」の経営者と言えるのかもしれない。これからも、フルサイズイメージ流の「相乗効果を生み出すクリエイティブ」に魅せられて集まった優秀な社員たちとともに、誰もが驚くような新たな事業に挑戦していくのは間違いないだろう。10年後の“未来”が楽しみである。