CINRA

一番大切なのは「愛」。クライアントとのフラットな関係こそ、最良のデザインを生む

クリエイティブディレクターの加藤宗大さんがチェントロを設立したのは2007年3月のこと。全日空商事(ANA)やサムソナイトなど有名企業のブランディング、WEBやパッケージデザイン、プロモーションなどを担当。また、東京・外苑前にある「ロイヤルガーデンカフェ」、横浜・桜木町の「アンデルセン・カフェ」のプロジェクトでは、プロモーションから、ロゴ、メニュー、ノベルティーなどのデザインも手がけた。これだけ幅広く案件をこなしているなら、社員もさぞ多いだろうと思いきや、メンバーは加藤さん含め3人。代表の加藤さん、永井俊行さん、吉澤麻衣さんを囲んだ取材現場は、常に笑いで溢れていた。
  • 取材・文:岩井愛佳
  • 撮影:永峰拓也

フラットな関係性こそが力を発揮するデザインコンサルティング

デザイン会社というと受託の制作会社をイメージする人も多いかもしれない。しかし、チェントロはデザインにおける「コンサルティング」に近い立ち位置でクライアントの課題をデザインで解決することに重きをおく会社だ。単発の仕事もあるが、基本的にほとんどのクライアントとの付き合いは長く、年間契約を結んでいる顧客も多い。人との繋がりを大事にしているチェントロだからこそ、クライアントの熱い想いやその人間味に触れると、多少の無理を受け入れてしまうことも。

加藤:どの企業も大なり小なり困っていて、それを聞くと助けたくなってしまう。もちろん、叶えられないこともあります。でもスケジュールや予算などが許す限りは、クライアントと、それを取り巻く社会を捉えた視点で、クリエイティブを通した貢献ができるように努めています。

チェントロ代表取締役 加藤宗大さん

チェントロ代表取締役 加藤宗大さん

永井:どのプロジェクトも、とてつもない熱意と愛を注いでいますからね。クオリティが高く、かっこいいものを作るのは当たり前。成果物が評価されることはもちろんのこと、僕らと関わった人たちに「また一緒に仕事がしたい」と思ってもらうことが大事だと思っています。

加藤:例えば、新商品って最初は使い勝手があまり良くないこともありますよね。でも、時間をかけて改良を重ねていくことで、長く愛される商品になっていく。デザインも一緒で、生み出したものを、中長期的に育てていくことで、クオリティも精度も上がります。持続的かつ継続的にクオリティコントロールをしながら、コミュニケーションの創出を補っていきたいんです。

チェントロは、クライアントや仕事のパートナーとの人間関係づくりも大切にしている。

加藤:クライアントや仕事のパートナーと一緒に食事に行くことは多いです。そうすると、腹を割って話せますし、お互いの距離感もグッと近くなる。打ち合わせの場では聞けなかった本音を聞くこともあります。僕らが目指すのはあくまでもフラットな関係。本音で話し合える関係づくりを常に心掛けています。

吉澤:たしかに、皆で食事に行く機会はよくありますね。私は人が大好きで、クライアントでも仕事だからと線引きせず、仲良くなりたいと思ってしまう(笑)。もちろん、ただ食事に行くだけで深いコミュニケーションが取れるわけではありません。大事なのは、魅力的なコミュニケーションが取れるよう意識することだと思います。家族や友人・仲間と同じように、クライアントや仕事のパートナーからも「一緒に仕事がしたい!」と思われるのが何より嬉しいですね。

「質の高いデザイン」を目指すための効率化

クライアントと長い付き合いだからといって、それが惰性に繋がることは全くない。成果物が良いのは当然であり、デザインというものは何よりも目的などにあわせて機能しなければ意味がないというのがチェントロの考え方だ。長きに渡ってクライアントと関わることによって、成果物とその効果に対する責任も重くのしかかる。

加藤:僕らは人と人との繋がり、コミュニケーションをものすごく大切にしています。クライアントが何を望んでいるのか、抱えている課題は何なのかなど、本質を見極め、解決策を提案する。その分、イメージや売り上げ等が落ちれば、それは自分たちも当事者として受け取り、改善していかなければならない。

左から加藤宗大さん、永井俊行さん、吉澤麻衣さん

左から加藤宗大さん、永井俊行さん、吉澤麻衣さん

「中長期的な案件が多いからこそ、急発注・短納期の仕事は少ないので、スケジュール管理は常に皆でするようにしています」と加藤さん。残業禁止や、早帰りを推奨しているわけではないが、結果的に3人とも安定した働き方ができているという。

加藤:毎日忙しいことは確かですが、できる限り業務を効率化するようにしています。例えば、クライアントにデザイン提案する前段階で、まずビジョンやゴールイメージを具体的に共有できるよう、企画設計・構築してからプレゼンをしています。そうすれば、作業段階でデザインに迷いはないし、細かい修正はあっても、方向性が違うからやり直し、なんてこともありません。

効率を上げるからこそ、時間的・コスト的にも余裕が生まれ、依頼者・制作者のどちらにとっても、より良いアイデアを検討することができるのだ。

Next Page
グラフィックもWEBも空間も。デザインのジャンルを絞らない理由

グラフィックもWEBも空間も。デザインのジャンルを絞らない理由

グラフィックやWEBなど、一つのジャンルに特化したデザイン会社はよくあるが、社員わずか3人で店舗やパッケージデザインなどグラフィック、WEB、プロダクトにとどまらず、商業施設のコミュニケーションデザインまでの業務を担う会社はそう多くない。彼らがジャンルを限定しない理由は、クライアントやお客様との立場になって物事を考えていたら自然とそうなった、といったほうがしっくりくる。

加藤:そのとき、クライアントやお客様、社会にとって何が必要なのかはケースバイケースですが、選択肢が多くあることで、あらゆるニーズを満たすことができる。だからこそ、少人数であっても何か一つのジャンルに特化しないのがチェントロのスタンスであり、強みだと思っています。

永井:そのスタンスは設立当初から変わっていないですね。エディトリアルはできるけどパッケージはできないとか、そういう考えではなくて。グラフィックデザインをやっていくなかで、クライアントの要望に応えたいと試行錯誤していたら、WEB、プロダクト、サイン計画など……と自然に業務の幅が広がっていった。これしかやりたくない、というこだわりは全然なかったです。

centro_3

加藤:たとえば、東京・代官山にあるカフェ「WGT / ウィークエンドガレージトーキョー」など、オープン時にあらゆるデザインを担当しました。ロゴなどのCIからWEBサイトのデザイン、店内のメニューやユニフォームのコーディネートなど、顧客との接点となるコミュニケーションデザインと呼ばれる部分がブランドイメージを作るもの。そこを一貫して手がけたからこそ、クライアントやお客様に長く愛され、満足いく世界観を実現できたと思っています。

永井: WEBはここ、グラフィックはここと発注先がバラバラよりも、一つの会社が統括してやってくれたほうがいいと思うんです。そのほうが良いコミュニケーションが生まれるし、成功しているブランド事例を見ても分かるように、すべて統一されたデザインこそ、社会的な機能も効果も発揮できますから。

幅広いデザインをできるようになるからこそ、効率良く、さらにより良い「ものづくり」が可能だと実践してきた。その証拠に、全日空商事(ANA)やオンワード樫山など、名だたるクライアントが長期にわたってチェントロを頼っている。

未経験スタッフも受け入れる、チェントロ流の採用基準

チェントロの中で唯一の女性である吉澤さんがチェントロに加わったのは2012年のこと。前職はシステム関連の営業職と、異業種からまったくの未経験でデザインの世界へ飛び込んだという。一般的に少人数の会社ほど即戦力を求めるものだが、なぜ加藤さんと永井さんは、デザイン未経験の吉澤さんを採用しようと思ったのだろうか。

加藤:素敵な人間性を持っていて、しかもコミュニケーションが好きなのに、それを仕事に活かしきれていないのがもったいないと思いました。そして、うちの会社なら彼女の魅力を最大限発揮できる場を提供してあげられるのではないかと。最終的には永井とも相談をし、技術的なものは教えられる。そして、彼女が入れば、いろんなマインドが交わり様々なチャレンジも可能だと考え、吉澤を迎えようという話になったんです。

吉澤:前職では制作希望で入社しましたが、他のことをやっていて。年齢的にも転職を考えるタイミングがあったので何がやりたいか真剣に考え、出てきた答えが「デザイナー」。当時はイラストレーターしか使えませんでしたが、一度きりの人生だし、後悔したくなかったんです。

centro_4

永井さんは、仕事を教える側に立つのは初めてのことだったという。

永井:吉澤は根性があるし、壁にぶつかっても絶対何とかしてやるという気概がありましたね。技術を教えれば自分でどんどんブラッシュアップしていくし。

吉澤:好きなことができる喜びでいっぱいでしたから(笑)。また、2人ともいつでも相談に乗ってくれるのが有り難かったです。夜中にデザイン案をメールで送っても、すぐに返信をくれて、LINEなどでやりとりすることもよくありました。

永井:デザインを料理で例えるなら、まず美味しい料理を作る、さらにはそこに盛りつけや、テーブルコーディネートまでして雰囲気を演出し、彼女が作る料理以上のものを見せてあげる。ここまで可能性はあるんだと、まずは見せることで経験値を分けてあげる。そこでもっと上手くなりたいと思って努力するかどうかは、彼女次第ですから。1年半くらいで一人立ちしたのかな。

吉澤:はい。それまでは歯を食いしばりながら頑張っていましたね。悔し涙もたくさん流しましたけど、褒められたときも嬉しくてよく泣いていました(笑)。

最後に、どんな人と働きたいかと加藤さんに伺うと、「人数が少ないので即戦力を求めてはいるけれど、スキルの高さよりも人物重視」という答えが。

加藤:繰り返しになりますが、僕らはクライアントや仕事のパートナーとコミュニケーションを取り連携しながら、当事者意識をもって、関わった人たちはもちろんのこと、お客様や利用する方々、皆がハッピーになる仕事がしたいと常に思っています。そして、そのためにはデザインジャンルも絞らず、これからの将来を担っていける「クリエイティブカンパニー」を目指しています。だから、人と関わるのがあまり好きではないとか、WEBだけ、グラフィックだけに特化し、成果物で評価を得たいとか、そういう志向の人は、チェントロ以外に良い会社はあると思う。チェントロの考え方に共感してくれる人と一緒に仕事がしたいですね。

Profile

チェントロ株式会社

チェントロは今年で13年目を迎えました。

設立当初より、ロゴデザインやサインなどグラフィックを中心に多くの飲食店やホテル、商業施設の立ち上げに携わってきました。また、WEB事業を新たな軸に加え、ここ3〜4年ほどで、企画・開発・ブランディングといったデザイン提案という枠を超え、総合的なコンサルティングやプロデュース案件が増えてきています。クライアントとフラットな関係を築くことで、長いビジョンを共有し合いながら、クリエイティブ領域の垣根を超えた仕事に取り組んでまいりました。

社名の「Centro」は中心ということ。多くの人たちが集まる場所をつくり、その核に私たちがいて、仕事を通して人と人を繋げていきたいという思いで仕事をしています。少人数で職場の風通しは良く、メンバー皆でプロジェクトごとに担当しています。クリエイティブだと仕事が忙しくてプライベートが疎かになりがち……と思われることが多いですが、プライベートと仕事のバランスこそ良いクリエイティブを生みだすと考え、環境面でのサポートを充実させています! ライフとワークが両立する。共に働く仲間と良い関係を築き、チェントロに繋がる皆がHAPPYとなれる、そんな会社づくりを目指しています。

これまでクライアント業務に集中するあまり、自社ブランディングに手が届かなかったのですが、今後は一緒に会社をつくり、盛り上げていくメンバーを募集しています。ぜひご応募お待ちしています!

チェントロ株式会社

気になる

Pick up
Company

PR