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ライブコマースの新時代を築く。エンターテイメント空間『Live Shop!』って?

モバイル向けの動画事業を中心に展開するCandeeが、今年6月にソーシャルライブコマース『Live Shop!』を発表した。主にSNS上において影響力を持つインフルエンサーと一般の視聴者がリアルタイムでコミュニケーションを取れるライブ配信番組で、出演者がおすすめするアイテムを番組内で簡単に購入できるという画期的なサービスだ。これまでライブ動画9800本以上、モバイル動画1300本以上を企画から制作、配信までワンストップで行ってきたCandeeが考える、これからの「ライブコマース新時代」とは?
番組制作を担当するディレクターの渡部源一郎さんと、アートディレクターの長谷川直子さんに話を伺った。
  • 取材・文:羽佐田瑶子
  • 撮影:豊島望

制作過程では出演者第一主義! インフルエンサーと共につくる番組制作の裏側

『Instagram Live』や『LINE LIVE』など、スマートフォン向けのライブ配信がトレンドの今、動画サービスの新しい形として注目を集めるのがライブコマースだ。そもそもライブコマースは、インターネット上で動画を生配信し、動画中で商品を紹介・販売するというもの。中国では億単位で収入を得るインフルエンサーもいるほど市場が拡大し、話題を呼んでいる。Candeeが展開する『Live Shop!』とは、一体どのようなサービスなのだろうか。

渡部:インスタグラマーやモデルなど、インフルエンサーと呼ばれる方々と一緒にライブ配信番組を制作しています。出演者がおすすめする洋服や化粧品などを番組内で購入できるのが特徴です。動画制作のノウハウやナレッジを持つプロたちが番組をつくるので、個人のライブ配信とは大きく異なり、企画や美術セットなどの細部にまでこだわっています。

ディレクター 渡部源一郎さん

ディレクター 渡部源一郎さん

番組内で商品が購入できると言っても、テレビの通販番組とは少し違う。『Live Shop!』は「買うため」だけのサービスではないのだそうだ。

長谷川:テレビの通販番組では、出演者と視聴者による双方向のコミュニケーションはほとんどありませんよね。それに比べて『Live Shop!』はコメントすると出演者からすぐに返事をもらえたり、ハートのスタンプを送ると番組に反映されたり、出演者と視聴者が一緒に番組をつくっている感覚がある。もはや「ものを買う」場所ではなく、出演者との「コミュニケーションを楽しむ」場所なんです。たとえば、ライブの会場に行ったらテンションが上がって、物販でTシャツを買ってしまったというような経験ってありますよね。『Live Shop!』はそんなプラットフォームを目指しています。

渡部:『Live Shop!』のターゲット層は10代から20代までの感度が高い女性たち。そんな若い人たちに商品を押し売りしてもリアクションしてくれませんし、それは制作側のエゴになってしまう。そこで大切にしているのは、出演者が本当におすすめしたい商品を厳選して紹介するということです。

長谷川:私たちは「人気がある」という理由だけでインフルエンサーをキャスティングすることはありません。重要なのは本人に発信したいメッセージや意志があるかどうか。視聴者から支持される番組をつくるためには譲れないポイントですね。

出演者の熱量はエンゲージメントの増加に、そして結果として売り上げにつながっているそうだ。コンテンツづくりのプロとして、どのような番組づくりをしているのだろうか。

長谷川:テレビの場合は番組ごとに決められたセットがあり、そこに出演者が登場します。しかし『Live Shop!』の制作過程においては、インフルエンサーの世界観を一番大切にしているので、出演者の趣向に合わせてオリジナルのセットをつくり、映像デザインにも反映しています。そのため、好きなブランドや雑誌など、リサーチやヒアリングには時間をかけますね。そうすると出演者だけでなく視聴者も喜んでくれて、番組全体の雰囲気がグッと明るくなるんですよ。

渡部:僕も時間を見つけては出演者のInstagramをチェックするようにしています。彼女たちがよく訪れるカフェなどをリサーチして、実際にお店へ足を運んだり。最新のトレンドに触れていると、彼女たちの感覚やイメージを汲み取れるようになるので、信頼を得るきっかけにもなりますしね。まずは出演者の理解者になることが大事だと思います。

「ゆうこす」こと菅本裕子に見る、個性を活かしたエンタメ空間とは

『Live Shop!』の要は、出演者とコンテンツに集約される。サービス開始から、たった3か月ほどではあるが、影響力や発信力のある出演者と密に番組づくりをしてきた。その成果もあり、いくつか頭角を表す番組も出てきたという。その一つが、「ゆうこす」こと菅本裕子さんの『ゆうこすショップチャンネル』だ。

長谷川:ゆうこすさんは世界観がもともとはっきりしていたので、本人の好きなテイストをアウトプットに反映しやすかったですね。好きな色はピンク、好きなファッションは『Usagi Online』のような可愛らしい雰囲気のものと聞いていたので、テロップのデザインなどはリボンやハートをモチーフにしました。

アートディレクター 長谷川直子さん

アートディレクター 長谷川直子さん

渡部:彼女はONとOFFの垣根がなく、常に様々なツールを使いながら情報発信している方なので、自らの「見せ方」や「見られ方」をよくわかっていると思います。シンプルに可愛い世界観を表現するだけではなく、視聴者との距離感のつくり方や盛り上げ方がとっても上手なんです。

コンテンツをつくる際も出演者のキャラクターを活かしていると渡部さんは話す。最近もっとも反響の大きかった企画は、モデル・木村ミサさんの番組内での、ちょっとした仕掛けだったとか。

渡部:木村ミサさんの番組で、アイドルグループ「むすびズム」の宮島るりかさんをゲストに迎えた回がありました。お二人にクイズに答えていただくというシンプルな企画ではあるのですが、視聴者がヒントをコメント欄へ書けるようにしたんです。視聴者の中には、わざと間違わせようと誤ったヒントを出す方もいたりして(笑)。ゲストだけが楽しむ一方的な企画ではなく、コミュニケーションを図れるような仕掛けを細部に散りばめることが大切です。デザインにどれだけこだわっても、視聴者はすぐに飽きてしまいますからね。

長谷川:ライブだと変化を一緒に味わえて、参加できる面白さがある。『Live Shop!』におけるクリエイティブも、テロップや美術セットなど「外見」のことだけではなく、リアルタイムなコミュニケーションの演出そのものも含みます。たとえば、ある番組では、視聴者が自らのSNSアイコンを出演者の写真にどんどん変えていったことがあって。『Live shop!』はライブコマースではありますが、一つのエンターテイメント空間でもあるんだと痛感しました。

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未開拓分野の新しいサービスだからこそ、チャレンジしたい人が集まっている

未開拓分野の新しいサービスだからこそ、チャレンジしたい人が集まっている

Candeeの番組づくりはチーム制。プロデューサー、ディレクター、アートディレクター、配信技術など5名ほどの少数精鋭チームで構成されている。それぞれ専門分野は異なるが、分業がほとんどないことも番組づくりに良い影響を与えているという。

渡部:番組のストーリーやコンセプトなど、核となる部分はチーム全員でアイデアを出し合います。核が決まるとそれぞれの専門に分かれては、また方向性を確認するというプロセスを繰り返し行い、アウトプットを完成させるイメージです。

長谷川:一般的な番組制作会社は、プロデューサーやディレクター、アートディレクターなどが番組のコンセプトや構成、デザインを考えます。現場スタッフが動くのは、更にその後になってしまう。そうなると、どんな小さな意見やアイデアも全員では共有できなくなるんですよね。もちろん効率的な部分もあると思いますが、すごくもったいないことだと思っていて。

渡部:バックグラウンドの異なる人たちが集まると、いろんなアイデアが生まれます。たとえば、ある人気番組では、ゲームのようにミッションを決めて、次々とクリアしていくRPG風の演出があるのですが、実はインターン生が提案した企画なんですよ。「プロデューサーだから」「経験が浅いから」という理由は一切排除して、フラットに意見を言い合えるのも、Candeeらしい企画のつくり方だと思います。

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未開拓のライブコマースは、言い換えれば伸び盛りの業界。そもそもお二人が転職を決めたきっかけは何だったのだろうか。

渡部:僕は8年ほどテレビの番組制作に携わっていました。昔に比べ生活環境もガラッと変わり、若い人の多くがテレビよりもWEBを見るようになった今、多様なデバイスを通して映像や番組を提供する側になりたいと思ったのが転職の理由です。もちろん、まだまだテレビの方がマスに向けた影響力はある。でも10年後どうなっているかわからないじゃないですか。風を切るようなスピード感を味わえるのは、この業界で働く醍醐味だと思いますね。

長谷川:私はライブコンサート会場での映像演出や制作をしていました。あるとき、会場でお客さんの盛り上がっている表情を見ていて、ふと疑問に思ってしまったんです。この盛り上がりがアーティストによるものだというのは明らかだけど、自分の「仕事」の影響ってどれくらいあるんだろう、と。自分のつくったものがどのような評価をされているのか、もっと具体的に知りたくて転職しようと思いました。今では、番組内でコメント数のアップを狙うための演出を施した後に、「前回の配信より、どのくらい数字が伸びたのか」「既存のSNSへの投稿率がどのくらいアップしたのか」など、具体的に数字と言葉で評価が明らかになるので、やりがいや実感を得られますね。

Candeeのクリエイティブを支える5つのルール

日本のライブコマース市場は、海外と比較するとまだまだ規模が小さい。しかし、これまでの日本の動向やトレンドを追っていると、動画文化との親和性は高いとお二人は話す。『Live Shop!』というサービスは今後どのような方向へ進んでいくのだろうか。

長谷川:これからライブ配信のハードルはどんどん低くなると思いますね。逆に言えば、個人でも企業でもある程度クオリティの高い番組がつくれるようになるということ。最終的には出演者と視聴者の関係性を重視したコンテンツが鍵になってくると思っています。私たちの番組を見て「Candeeらしい」と周囲から言ってもらえるようになりたいです。

渡部:動画業界そのものも試行錯誤の段階ですし、『Live Shop!』もスタートしたばかり。会社も個人の実力に合わせて裁量を与えてくれるので、やりたいことに対して臆することなくチャレンジできます。これからのライブコマースや動画、引いてはメディアのあり方を変えたいと考える人にとっては、申し分ない環境だと思います。

様々な分野のプロフェッショナルが対等に話し合い、クオリティの高いものづくりをするCandee。最後に彼らが独自に持つ、クリエイティブの秘訣について伺った。

長谷川:Candeeには番組をづくりをする上で意識している5つのルールがあります。

1.SNSやメディアで話題にされること
2.視聴者に最初から最後まで見てもらえること
3.出演者に依存しないこと
4.番組を回遊してもらえる見せ方をすること
5.インタラクティブな仕掛けをつくること

これらを意識して、各チームが様々な手法を駆使しながらチャレンジしています。もちろん、新しいルールが思い浮かべばどんどん追加されると思いますが、一貫して変わらないことは人に喜びや幸せを与え続けるということ。それを実現させるために、自分に何ができるのかを常に考えていきたいですね。

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渡部:チャレンジしたい人が集まり業界全体が切磋琢磨しているのは日々感じています。また、出演者やスタッフ、視聴者と共につくりあげるクリエイティブこそ、Candeeの唯一無二の魅力ではないかと。それが視聴者やコメントの数につながり、結果的に商品の売り上げにもつながっていく。出演者の世界観を表現し、彼女たちの価値も高められる番組をこれからもつくっていきたいですね。

インターネット上でテキストメディアが広がっていた時期から、SNSの登場によって双方向のコミュニケーションが盛んになったように、次は動画でのコミュニケーションが視聴者と出演者との間でインタラクティブになっていくことは、ほぼ間違いないだろう。いわば「ソーシャルビデオ革命」への過渡期となる現在、Candeeが目指すのは「新しい時代のカルチャー」をつくっていくということ。そのためには、カルチャーの火種となるコンテンツを一つひとつ世に送り出していく必要がある。まだまだ成長フェーズだというCandeeの今後の展開に、これからも目が離せない。

Profile

株式会社Candee

ライブコマースって知っていますか?

「ライブ配信」と「Eコマース」が合わさったのが「ライブコマース」。これからのライブ配信は、ただ動画を見るだけではありません。ライブ配信を見ながら買い物ができるようになる時代がやってくるのです。ソーシャルライブコマース『Live Shop!』アプリでは、インフルエンサーが主な登場人物。エンタメ性も高く、見応えのある番組ばかり! そんな本格派の番組を配信できる秘訣は、作り手にあります。もともとテレビ番組を作っていた人、ライブコンサートの制作に携わっていた人たちが、「これからはライブコマースの波が来る」と集っています。

海外では既に大きなムーブメントとなっているライブコマース事業、日本でいかに広げるかは、今このタイミングで関わる作り手たちにかかっています。新しい動画文化、新しい商流を、私たちと一緒に作りませんか?

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