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二人一組でしか入社できない「新卒コンビ採用」のアソブロックってどんな会社?

企業のブランディング、採用活動支援、マーケティング支援、イベント企画、幼稚園支援など、さまざまな事業領域で、「ものづくり」と「プロデュース」を手がけるアソブロック。ダブルワーク推奨、勤務時間などの社内ルールなし、年俸は社員が自分で決める自己申告制であるなど、働き方や制度においても世間の常識や型にはまらない、ユニークな会社だ。そんな彼らが5年ぶりに新卒採用を行うという。もちろん、採用方式は“普通”ではない。なんと、二人一組でないと内定を出さないという「コンビ採用」がコンセプトだ。さっそく、アソブロック代表取締役の団遊さん、取締役・プロデューサーの南木威範さん、広報のやまさき薫さんにお話を伺った。
  • 取材・文:岩井愛佳
  • 撮影:中村ナリコ

二人一組でしか採用しない、その理由とは?

アソブロックは、代表取締役の団遊さんが2003年に設立したプロデュースや編集を主業務とする会社だ。そんなアソブロックが、2017年度の新卒採用でユニークな取り組みをしているという。その名も「コンビ採用」。応募は二人一組でしかできず、内定も二人一組でしか出さない。どちらかひとりが採用基準を満たせば、二人まとめて採用。ただし、どちらかが辞退したら、もうひとりも辞退となる。

団:コンビ採用をすることに決めた理由は3つあります。1つはライバルがいたほうが成長を加速させてくれるから。当社は一番若い社員でも新卒と6つも年が離れてしまうので、どうしてもライバルが作りにくいと感じてしまうでしょう。だから良きライバルと呼べる者同士で入社してほしいのです。2つ目の理由は、ひとりでは“新しい風”を起こしにくいから。アップルからマクドナルドを経て今はベネッセの社長をされている原田さんのような有名な経営者でも、他の会社に移るときは必ず側近を連れていくもの。二人だったら、ひとりよりも自由に動きやすいだろうと考えました。

現在、アソブロックの社員は、さまざまな関わり方のメンバーを含めて十数名。少人数の会社だからこそ新卒二人でもその存在感は大きくなる。お互いに切磋琢磨し合い、尚かつその勢いが既存の社員にも良い刺激となることを目論んでいるそうだ。

代表取締役 団遊さん

代表取締役 団遊さん

団:最後、3つ目の理由は、ひとりでも誰かに推薦される人に来てほしいから。ものづくりは自分ひとりでやる作業も多いけれど、仕事を進める上では、たくさんの人の協力を得ることが必要です。だからこそ、人に信頼される、認められるパーソナリティを持った人物を求めています。二人一組で応募するなら、少なくとも相棒に認められていますよね。それが大事なんです。

この斬新な採用方式に踏み切った理由を聞くと、確かに納得のメリットばかりが感じられる。しかし前代未聞の「コンビ採用」、一体どんな人が採用に至るのだろう。

団:例えば、「いつか一緒に事業やりたいね」といっている友達同士がいたら、それは大歓迎ですね。それぞれ社会に出るとすれ違い、バラバラになってしまうことはよくある。それなら、二人とも採用するから、アソブロックで実現したらいいと。でも、たとえばコンビ採用で相棒にフラれちゃった人同士で新たにコンビを組んで受けてもルール違反ではない(笑)。そういう機転がきく、ちょっとずる賢い人も向いているかもしれません。

しかし、斬新な制度ゆえ、もしかすると内定を出せないなんてリスクもあるのでは……?

団:コンビは運命共同体だと考えているので、当社の内定をもらっても、ひとりが他の会社に行きたいと思ったら、相棒の人生も変えることになるわけです。20代前半で非常に大きな決断を迫られる。それも人生だなと。この採用を通し、自分の生き方を真剣に考えるきっかけにしてもらえたら、とも考えています。

過去には「じゃんけん採用」「総選挙採用」も。なぜユニークな選考を続けるのか?

コンビ採用だけでも十分ユニークだが、これまでも、一般的な固定概念にとらわれない採用活動を行ってきた。例えば、2007年にはじゃんけんで3回勝ち続ければ無条件で内定が決まる「じゃんけん採用」を実施し、大きな話題となった。書類選考や面接は一切なし。スタッフ2名を経て、最後に社長の順番にじゃんけんし、すべて勝ったら採用に。広報担当のやまさきさんと、当時じゃんけんの「第一関門」として応募者に立ちはだかった南木さんにもお話を伺った。

やまさき:当時は「運も才能のうち」ということで「じゃんけん採用」という方法を打ち出したんです。実際に内定は出したんだけど、一度は辞退されたんですよね(笑)。

南木:そうでしたね。結構多くの人が「いくらじゃんけん採用とは言っても……。」と机の下から履歴書を出してきました。でも「いえ、履歴書は結構です」と、頑にじゃんけんだけにこだわって(笑)。最終的に勝ち進んだ人は唯一、本当にじゃんけんだけをしに来た人でした。最初から、こいつは勝ち抜くぞという予感がありました。予感は的中し、内定に至ったのですが、今度は向こうから逆に「他に決まっている仕事があるので結構です」って断られて(笑)。

取締役・プロデューサー 南木威範さん

取締役・プロデューサー 南木威範さん

団:でも、その彼が1年後に改めて入社してきたんです。最初はこいつ大丈夫かと思いました(笑)。人と目を合わせないし、仕事中に寝ているし。おまけに机の上はカップラーメンのゴミが散乱していましたから。でも、コピーライティングの才能はありましたね。その強みを伸ばしてあげようと考え、適した仕事をアサイン。時間はかかりましたが、その後、見違えるように実力をつけていきました。

他にも、「会社」が選ぶのではなく「応募者」同士が投票し合って選考を行う「ASB(アソブロック)総選挙採用」を実施した年も。周囲をあっという言わせる独特な採用活動は、他社の人事からも注目されている。

団:じゃんけん採用のときは、ユニークな採用をして話題になれば、という考えがあったのも事実。実際、さまざまなメディアで取り上げていただき、ラジオのDJが「ニートみんなでアソブロックに応募しよう!」と呼びかけているのを聞いたことも(笑)。でも、応募者が殺到してもそれはそれで対応しきれないので、近年は、応募者側にもきちんと自身の仕事観とのマッチを吟味してもらえるような採用活動を意識しています。今回のコンビ採用も、仮に内定に至らなくても、選考に関わるだけで成長に繋がる気付きや「働く」ということについて真剣に考えるきっかけを与えられたらいいなと。そういう意味でも、ぜひ、いろんな学生に応募してほしいなと思います。

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アソブロック流! 新卒社員の育て方

アソブロック流! 新卒社員の育て方

異例の新卒採用に挑戦し続けるアソブロックだが、彼らの事業領域は人事・教育・マーケティング・ブランド構築など、実に幅広い。ゆえに、「何をやっている会社?」と聞かれることも多いそうだが、団さんは決まって、「人を育てる会社」と答えるという。

団:設立当初は、事業規模を拡大して株式上場を目指していた時期もありました。でも、働いている人たちのモチベーションはどんどん下がっていったんですよ(笑)。ビジネスパートナーや仕事に対する不平不満を耳にすることが多くなったりして。「そうは言っても、頑張ろうよ!」というマネジメントをしてみたけれど、問題の本質は解決されなかった。仕事は我慢してなんぼ、というのは健全じゃないなと改めて思ったのです。もう一度アソブロックをどんな会社にしたいか自分に問いかけて、出てきた答えが「ここにいてよかった」と思える会社にしたいということ。仕事を通じて自分の成長を感じられることこそが、会社の存在意義だと思ったのです。だから僕は、アソブロックは「事業会社」ではなく、「人材育成機関」だと位置づけています。

ちなみに、変わった採用をするからといって、「アウトロー集まれ!」というわけではないと団さん。求める人物像は、行動力・考える力・好奇心がある人。スキルや経験は問わないという。

団:ずる賢いというか、計算高いというか。そういう人は、目的を達成するために、頭を使ってどうすればいいか考えられる人だから、成長の伸びしろがある。一方、素直で真っすぐな人ほど、とても良い子なんだけど、そのせいで生産性が下がり、伸びないケースもある。世の中、我慢する人に我慢をさせますから(笑)。たとえばアソブロックで毎日頑張ってコピー用紙を整理したり、誰よりも早く出社する新人がいたら、「君がしたいのはその仕事なの?」「それでいいの?」と問いかけますね。

やまさき:入社後は新卒だからといって、一般的な会社と同じような特別な研修をすることはなく、むしろ、自分で聞かなければ何も教えてくれない厳しい環境かもしれません。でも、かつて新卒入社した社員たちは、何事も自分で考え、わからないことは自ら聞き、行動していくうちに、大学時代の友人たちの何倍も早く成長できたと実感していたようです。

広報 やまさき薫さん

広報 やまさき薫さん

南木:アソブロックは人を成長させるために手取り足取り面倒を見てくる会社ではなく、成長するきっかけをたくさん与えてくれる会社だと思います。ただ自由な環境を求めるなら、フリーランスでやればいいだけですが、たとえば僕の場合、入社当時は長髪でした。団さんをはじめ社内から「見た目で損をするから髪を切ったほうがいい」と指摘され、なるほどと思いましたが、フリーランスではそういうこともなかなか周りから言ってもらえない。といって、そこでただ髪を切ってしまうのもおもしろくないので、髪を切る代わりに、とにかく仕事に真面目に取り組み、人には礼儀正しく接することを徹底したんです。すると、それまで以上にクライアントとの信頼関係が築きやすくなり、仕事もやりやすくなりました。仲間が集う「会社」ならではの刺激や気づきと、最終的にそれをどう活かすかは本人に委ねられる懐の深さとが、アソブロックという場の魅力だと思いますね。

社内ルールは無し。自分のやりたいことは、会社を「使って」やればいい。

人が育つには、「自分で権限を持ち、自分の判断で仕事をやってみることが大切」と団さん。そのため、事業範囲はとくに定めておらず、社内ルールもほぼなし。自分のやりたいことを、会社を使ってやればいい、というスタンスなのだとか。現在は年俸も自己申告して決定する「年俸宣言制度」を導入。社員が自分の年収を自分で決めるなんて、無謀な制度のようにも感じるが、その裏にはやはり、人を育てたいという団さんの熱い想いがある。

団:自分の収入を自分で決めるのって、すごく難しいことです。たとえば1000万円給料が欲しければ、1000万円以上の利益が出る仕事をしないと、会社が赤字になるし、会社が潰れたら給料はもらえません。だからこそ、利益を上げるにはどれだけ仕事をとってこなくてはいけないのか、どんな働き方をしたいのか、自分のスキルはどうかなど、「仕事」ととことん向き合うことが必要です。それが達成できれば、ダブルワークも歓迎。そうして、「働く」を自分事として捉えることこそ、人を成長させると考えています。

南木さんとやまさきさんも、もちろんダブルワーカーだ。南木さんは「You’ll Records(ゆるレコ)」というレーベルを立ち上げ、「ゆるめるモ!」というアイドルをプロデュース。やまさきさんは絵とデザインのアトリエ「ヤマコヤ」を運営する。二人ともアソブロックを離れて自分の名前で仕事をすることが多いため、周囲から「いつ辞めるの?」「独立しないの?」と聞かれることも。それでも二人がアソブロックで働き続ける理由はどんなところにあるのだろう?

南木:アソブロックには、受け身の仕事は一つもありません。自分の可能性の広がりを感じられますし、何より「働く」と「生きる」がリンクして、自分の興味・関心・想いがすべて仕事に活きてくる。それに、うちの会社って、リアルな「ウィキペディア」みたいなんですよ。さまざまなバックグラウンドを持った社員がいろんな仕事をしているから、自分だけでは考えつかない材料やヒントがたくさんあるし、成功事例もたくさん見られます。だからこそ、アソブロックに席があることに、お金以上の価値があると思いますね。それは幸せだなと思います。

やまさき:働き方を自分で決められるのも、結果的に自分の成長に繋がっていると思います。私はワーキングママで、ダブルワークもしている。半分くらいフリーランスでグラフィックデザインやイラストレーターをしていますが、ひとりで仕事をしていると、自分の想定範囲内の考え方しかできないし、自分の行動範囲内でしか人に出会えない。でも、アソブロックにくると、ミーティングで自分が想像すらしなかった意見をもらえるなど、気づきが多いです。

団:もしアソブロックを飛び出してやりたいことが見つかったなら、それは心から応援したいと思っています。実際に、アソブロックを辞めた人達を「卒業生」と呼んでいますが、皆、各方面で活躍しているし、いまだに仕事で繋がりがある人ばかり。卒業生は僕の自慢です。もちろん、辞めないほうがメリットがある、という組織作りには気を遣っていますけどね(笑)。今度入ってくる新卒も、いつか独立したいならそれでいいと思う。長くいるんだったら、アソブロックの後継者になってほしいと期待しています。

仕事内容、年収、働き方をすべて自分で決められる。拠点となるオフィスもある。個人でできないことも、会社を通せば、やれることは格段に広がる。さらに、周りには刺激をくれる仲間がいる。誰かからの指示を待つのではなく、自ら自分を成長させたいと考える人にとって、アソブロックはぴったりの会社かもしれない。

団:新卒は何色にも染まっていけます。最初の会社で、働くことに対する考え方や価値観は植え付けられるもの。誰よりも早く成長したい、自分の名前で仕事ができるようになりたい。そんな想いを持った人たちを待っています。

Profile

アソブロック株式会社

アソブロックは、人の成長を支援する「人材育成企業」です。

社員に対してだけでなく、社会に対しても、人の成長を支援することを価値として、事業を展開しています。モノをつくることで、環境に変化を起こし、刺激を創り、気づきを生み出す。相手が己の力で変わるためのキッカケをつくり、課題が解決された新しい未来のために、全力で新しいことに挑み続けています。

そんなアソブロックが、5年ぶりに新卒採用を行います。しかも、おそらく日本で初めての「コンビ採用」です。コンビで応募、コンビで面接、コンビで入社。必ず、二人一組で採用します。もしコンビのどちらかが辞退したら、もう一人も自動的に不採用です。なぜアソブロックは「コンビ採用」をすることにしたのか?

詳細は弊社の採用専用ページもご覧ください。
http://www.asoblock.net/recruit/2017newgraduate/

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