Interview 私としごと

建築業界で、「女性でも楽しく働く」ために

UDS株式会社
菓子 麻奈美(企画・デザイン事業部 プランナー)

企画から、設計、運営までをトータルに手がけ、幅広い空間づくりを行うUDS株式会社で、企画とインテリアデザインを担当する菓子麻奈美さん。言葉の端々に現れる「女性と一緒に働きたい」という言葉の裏には、男性社会だった建築業界に、「ちょっと革新を起こす」という気概が見え隠れする。といっても、「アンチ男性社会」ではなく「女性がいて、多様性がある空間」を生み出したいのだという。その真意を伺った。

プロフィール

菓子 麻奈美

東京理科大学卒業後、東京藝術大学大学院にて建築を学ぶ。学生時代に、さまざまな設計会社 / 建築事務所にてアルバイトを経験し、卒業後は長谷川逸子・建築計画工房にて建築設計の仕事に携わる。主な担当物件は、中国無錫の大規模開発プロジェクトの高級ヴィラ、商業施設、ランドスケープ。同設計事務所を退社後、現在のUDS株式会社に就職。主にホテルなどのインテリアデザインと、さまざまなプロジェクトの企画業務を行う。

ラジオDJから、ヒカリエでのイベント主催まで。「良い循環」をつくるために

—菓子さんはUDSに入ってから、ずっとインテリア担当ですか?

菓子:主はインテリアですね。ただ、途中から、志願して企画もやるようになりました。普通はインテリアと企画の担当が別々なんですけれど、両方やった方が、世界観がちゃんとつくれると思っていて。UDSはそれが実際に融合できる数少ない場のような気がします。企画を担当した最初の仕事は、JALの工場内にあるミュージアム部分。実際に、どうやって何を展示するのかという企画をしました。最近はクライアントのニーズにも変化があって、自社のブランディングとしてロゴやデザインだけでなく、空間やそこにあるコンテンツも重要だという流れになってきています。

—仕事をされる上で大事にしていることはありますか?

菓子 麻奈美

菓子:どんな仕事でもエンドユーザーの目線を大切にするということですね。クライアントではなく、ホテルだったら宿泊客、オフィスだったら働く人の満足を一番に考えています。だから、オフィスで企画レビューやデザインレビューが行われるんですが、プロジェクトの担当じゃない人も参加して、「私はこれは嫌だな」とユーザー目線で言っている光景は、日常茶飯事です。しかもオフィスを、会議スペースの前を通らないと席につけない設計に意図的にしていて(笑)、通りがかりつつ口出しすることも多くて。オフィスのデザインが変わるだけでこんなにコミュニケーションが変わるんだと、最近実感しています。

—設計や企画のみならずラジオのDJもしているんだとか?

菓子:ラジオは、毎回「働き方」をテーマとして、会社が運営するコワーキングスペースLEAGUEの広報をするコンテンツなんです。建築というのは、完成したら終わりではなく、いかに使ってもらうかというのも重要なところ。たとえばコワーキングスペースだったら、こういう発信も「運営」の一つになります。クリエイティブな視点をもって、自分たちで企画してお呼びするゲストの方にインタビューするのですが、私を含めた4人の社員がDJに挑戦していて。建築の仕事ではなかなか接点のない人達に話を聞けるので、とても刺激になります。同世代の人にしっかり仕事のビジョンを聞けるのも活力になりますね。

—企画・設計だけでなく、運営までを手がけるUDSらしいですね。菓子さんは、会社外でも色々と自主企画イベントをしていると聞きました。

菓子:はい。去年は、『GOOD MONDAY ESPRESSO BAR』というイベントに参加しました。開くとエスプレッソバーになる大きなトランクを設計したんです。芸大の庭でみんなでトンカチでつくるという手作り感(笑)。でも、ずっとやってみたいと思っていたアイデアだったので、実現できて嬉しかったですね。自主企画は制約がない分、色んなことに挑戦できる貴重な機会になっています。

—建築の仕事にはない、イベントの醍醐味があるんでしょうか?

菓子:やっぱりイベントは、人に出会えるのが嬉しいんですよね。ラジオに出てもらった人にイベントに出展してもらったり、その逆もあります。気持ちのいい空間づくりをする点では建築もイベントもラジオも一緒ですから、良い循環で知り合う人が増えるというのは、設計の仕事にも活かされてきます。他にも、先日ヒカリエで『YUKATA DE MARCHE』というイベントを主催しました。若手女性クリエーターが浴衣に似合うモノ・コトを販売するというイベントなのですが、女の子が集まるイベントっていいな、と改めて思いました。

忙しくて辛い分、「うま味」は増す

—色々な人と知り合いながら設計に活かすというのは、「作品としての建築よりも、みんなが好きなものをつくりたい」という、菓子さんの転職理由のひとつがちゃんと昇華されているように思います。

菓子:はい。最近も、そうした声を活かしながら担当していた外資系のホテルのインテリアの仕事が完了しました。大体常に3つ以上のプロジェクトを並行して進めているんですが、このプロジェクトは2年半くらい、山あり谷ありだったもの。だから、できあがった時はいつも以上に嬉しくて。初めて自分がメイン担当となった大きなプロジェクトだったのですごく大変だったけど、おかげで成長もできたし、仕事に対する当事者意識が強くなりました。まさに、先生が昔言っていた「味をしめる」感覚を痛感した仕事でしたね。

—その仕事を経て、何か心境の変化はありましたか?

菓子 麻奈美

菓子:今後の目標や大事にしていることをはっきり言えるようになりました。これからやりたいことが3つあるんですが、1つめは、本当の意味でいろんな人が集える空間をつくること。その場合、一番弱い立場の人にフォーカスするのが大切なんです。例えばママと子ども、シニア世代がいっしょにいて、居心地いい場所を企画、デザインしていきたいですね。2つ目は「日本らしさ」を空間の中にどう落とし込むか、ということ。2020年の東京オリンピックに向けて、求められることも多いんです。

—最後は?

菓子:ひとりの女性として楽しく働くことを実践していきたい、ということですね。建築業界は今まで男の人たちがつくってきた業界だから、先輩や事例が少ないんです。それなら自分が先行事例になろう! と、最近思うようになりました。そのための環境づくりをして、少し下の世代の女の子にも伝えていけたらいいなって思っています。

—菓子さんは、仕事でも自主企画でも、「女性の魅力を伝えたり、引き出したりする空間づくり」を大切にしているような感じがしますね。

菓子:そうですね。空間の中にいい音楽があったり、いい香りがしたりするってすごく重要な要素だと思うんです。そのためにも空間や社会の中に女性がいることも、大事な要素のひとつです。そうした空間が、人が認め合う、多様性ある社会につながっていくはず。だから、色んな人がいてにぎやかな空間、みんなに心地いい空間を女性の視点からつくることが、私の仕事なんだと思っています。

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