Interview 私としごと

ウェブとファッションの異なる哲学、ぶつかって生まれた全方位のブランディング

SIMONE INC.
増田 慎(ART DIRECTOR)

ブランディング・エージェンシー「SIMONE INC.」に在籍する増田慎さん。19歳からウェブ業界に入り、SIMONEではウェブ部門のアートディレクターを務めています。デザインからFlash、プログラミングまで全てを手探りでこなしていたという前職を経て、現在は世界の企業を相手にやり取りをする増田さんは、日々何を思い、仕事へどのように取り組んでいるのでしょう? お話を伺うにつれ、アートディレクターの枠を越えた、本質的なデザインの考え方にたどり着きました。

プロフィール

増田 慎

1981年生まれ。神奈川県出身。デジタルハリウッドの3DCGコースを修了後、Web制作会社に入り、デザインからプログラミングまで幅広い業務を担当。2003年8月、SIMONE INC.の立ち上げと同時に移籍。現在、Web部門でアートディレクターを務める。

インタビュー・テキスト:松本香織 撮影:丸田武史(2011/11/9)

スタートは、「足りないところを埋める係」

—増田さんが、ウェブ業界に入ったきっかけはなんだったんでしょうか?

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増田:僕は元々PCが好きだったので、高校卒業後は、デジタルハリウッド大学に通って3DCGを学んでいたんです。ちょうどその頃、FICCの現代表・荻野さんがやられていたd3d2というウェブ制作会社が人材を探していて、そこに入社したのが最初です。

―その時は、どのようなことを担当されていたのですか?

増田:当時はウェブが普及するかしないかという時期で、ウェブ制作に関わっている人の絶対数が少なかったんです。だから「この機能が足りない」と周りを見渡しても、できる人が全然いない。デザインも、Flashも、プログラムも、まずは自分で調べて、見よう見真似で何でもやっていました。その時は少人数の会社だったこともあり、それこそ「足りないところを埋める係」でした(笑)。僕は現在、アートディレクターを担っていますが、案件によってはクリエイティブディレクター的な関わり方も多いんですよ。その原点は、d3d2で色々学んだところにあるように思います。

―少数だからこそ実践的な事が学べる環境だったんですね。では、どういった経緯で現在のSIMONEに転職したのですか?

増田:d3d2の荻野さんが、うちの代表のムラカミと一緒に新しい会社を立ち上げようということになって、そこにメンバーとして加わった流れで入社しました。それからもう8年です。

―同じウェブ業界での転職ですが、何か変化したことはありましたか?

増田:それまでと違ったのは、SIMONEがウェブだけでなく、グラフィックや映像制作、撮影に至るまで、総合的なクリエイティブを提供するブランディング・エージェンシーだということです。

―ブランディング・エージェンシーと聞くと、通常のウェブ制作会社とは違ったイメージを持ちます。SIMONEの立ち上げに関して苦労したことはありましたか?

増田:会社の立ち上げ自体、生まれて初めてでしたが、特に大変だったのはウェブ畑の僕と、ファッション業界出身の代表の価値観や哲学が全く違ったことです。その頃はファッションとウェブをめぐっていろいろな議論をしましたが、結果的に、それが今のSIMONEの礎を作っていったのだと思っています。

海外クライアントで知った、圧倒的なスピード感

—では、アートディレクターの具体的な仕事内容を教えてください。

増田:現在は、ウェブ部門で4人のデザイナーを統括し、デザインの方向性を決定したり、クオリティのチェックを行っています。クライアントは、LOUIS VUITTONやGAP、UNIQLOなど、ファッションやビューティ業界が中心で、常に15件くらいの案件を進行させています。

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—最近手がけた案件で、印象に残ってるものはありますか?

増田:香港に「Lane Crawford」という大きなショッピングモールがあるのですが、そこのショップのプロデュースでiPadアプリを制作したのが面白かったです。

—どういった内容だったんでしょう?

増田:香港にはショッピングモールがすごく多いんです。しかもモール同士が繋がっていて、一歩も外に出なくても用が済んでしまう。だから、例えば何かを買う時、ショップ選びの基準は家から近いかどうかくらいしかないんです。今回プロデュースした「ビューティースタイル」というショップでは、「そのお店で買う必然性」を作るため、それまでは別々の店に行かないと買えなかったシャネル、ディオール、資生堂などの商品を一か所にまとめ、比較検討できるようにしました。そこで、店頭にiPadを置いておき、商品選びのコンシェルジュとして役立ててもらおうと思ったのです。

—実際の反響はいかがでしたか?

増田:リリース後、嬉しいことに集客が上がったと聞きました。今年の9月に始めたばかりのプロジェクトで、まだはっきりとした結果は出ていませんが、今後は全体の顧客管理から売上の動きを分析しプランを策定するので、個人的に楽しみです。

—海外からの案件で、日本との違いを感じた部分はありましたか?

増田:今回特に印象深かったのは、スピードです。初めに香港へ打ち合わせに行ってから納品までを、3週間くらいで完了させたこともあり、日本でのビジネスとはスピード感が全く違いました。そこは面白さの反面、日本だけの感覚だと世界からは置いていかれる怖さも感じました。

「吸収」あってこそのアウトプット

—それでは、アートディレクターを軸として、枠にとらわれず仕事をしている中で、普段から心掛けている事はありますか?

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増田:僕は、商品や広告をパッと見た時、いち消費者として自分の心や感情がどう動くかをいつも観察するようにしています。そうしないと、つい「デザイン的な視点から見ると…」という方向に流れていってしまう。PCに向かって作業をしていると忘れがちですが、デザインを見る人は、やっぱり人間です。そのデザインを見た時、どんな感情を持ってほしいのか。そこを忘れてしまうと、コミュニケーションとして成立たないと思います。
 
—常に受け手側の視点を持つようにする、ということですね。

増田:あと、アートディレクションをするにあたっては、インプットが大事なんです。やっぱりデザインは、自分の経験や知識の中から様々な切り口で引き出すという作業ですから。基本的には有限の中から取り出して、無限に組み合わせていくという考え方なので、まっさらな状態から伝わるデザインというものは生まれないんです。

—なるほど。

増田:そういう意味では直接デザインに関係ない経験でも、そこから拾えるものはたくさんあります。例えば今、こういうふうにお話ししていることも、僕としては貴重な経験なんです。アウトプットを意識する以上に、いつでも自分の中に「引き出し」があるように、吸収することを大切にしています。

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