Interview 私としごと

「世話焼かれ体質」だった東大生が、週刊少年ジャンプ編集部で活躍するまで

株式会社集英社
村越 周(編集者)

日本一売れている漫画雑誌としておなじみの週刊少年ジャンプ。その編集部に在籍する漫画編集者として、村越周さんは人気作『暗殺教室』を担当している。その一方で、マンガ誌アプリ『ジャンプ+』ではとんかつ屋の息子がDJに目覚めてクラブシーンで活躍する奇作『とんかつDJアゲ太郎』の担当も。アニメ化や実写映画化までされた人気作と、これからの展開にすべてが掛かっている期待作。そのどちらにも携わることで見えてきたものとは? 村越さんの半生とともに綴る。

プロフィール

村越 周

埼玉県出身。1988年生まれ。開成高校から東京大学へと進学。東京大学文学部卒業後に新卒で集英社に入社。第3編集部に配属され、現在は週刊少年ジャンプで『暗殺教室』、ジャンプ+で『とんかつDJアゲ太郎』の編集を担当。

漫画編集者は、作家の代理人

—ジャンプ編集部に配属になったのは、村越さんの希望通りだったんですか?

村越:そうですね。最初からジャンプ編集部に希望を出していました。そこもやっぱりメジャー志向でしたし、編集部ってスーツ着なくていいのがいいなぁと。僕、高校生まで学ランだったんです。だからネクタイの結び方とか就職活動するまで知らなかったんですよ。あとスーツが全然似合わなくて、未だに七五三に見えるとか言われたりしますし(笑)。

—編集部に入ってからはどんな仕事を任されたんですか?

村越:研修が終わって6月頃に配属になったのですが、最初の3ヵ月くらいは巻末の予告をつくったり、プレゼントページをつくったり、とにかく雑務をこなして仕事に慣れる感じです。その後、秋から『ぬらりひょんの孫』という作品の担当を引き継いで、2年目の夏から『暗殺教室』です。

—いきなり一人で……?

村越 周

村越:はい。だから、右往左往しながら作家さんに原稿を仕上げてもらうためにどうすればいいのかを覚えていく感じでした。とはいえ、『ぬらりひょんの孫』でも『暗殺教室』でもいろんなことを勉強させてもらっています。アニメ化や実写映画化までされる作品はなかなかありませんから。

—出版業界ではない人からすると、作家さんの作品を締切に間に合わせるのが漫画編集者の仕事なのかなと思うのですが、そういうわけでもないんですね。

村越:もちろんそれも大事ですが、漫画編集者は作家さんの代理人でもあるので、基本的に作品に関わることはすべて仕事になります。なので、今度公開される実写映画にしても脚本からグッズ、宣伝の方法に至るまですべて打ち合わせに参加しています。あとは、たとえば読者層を広げたいなと思ったらファッション誌の人に企画を持って行ってモデルさんと対談させてもらったり、『リアル脱出ゲーム』のSCRAPさんと一緒に企画を立てたりとか。

—わりと自由に企画を立案してやらせてもらえる感じなんですね。

村越:そうですね。実は『暗殺教室』のコミックスの表紙とかもいわゆるジャンプっぽくないようにしたいなと思って、ジャンプとしては物凄く久しぶりに社外のデザイナーさんにお願いしているんです。そしたら、作品や松井先生のやりたいことと噛み合って、あの表紙が完成して。たまたまそういう作品に携われているというのもあるかもしれないですけど、挑戦できることの幅はとても広いと思います。

—作品の中身に関してはけっこう作家さんにおまかせという感じなんですか?

村越:人によりますね。それこそ『暗殺教室』の松井先生はやりたい展開がかなり固まっているので、毎週の打ち合わせでアイディア出ししながら、筋を具体的に肉付けしていくのを手伝っている感覚です。あとは必要な資料やネタがあれば用意したり、最近だとテスト問題を作ったり。逆に『とんかつDJアゲ太郎』の小山先生の場合は投稿作からの付き合いなので、台詞や構成まで一緒に練ってつくっています。たとえば、「身近にこういう奴がいてさ」っていうところからキャラが生まれたり、打ち合わせ後に一緒にとんかつを食べに行ったりもするんですけど、そのときのエピソードが漫画に活かされたり。なので、そのへんは作家さんの色に合わせて編集者も色を出しています。編集者は、作家さんにしてもデザイナーさんにしても、「誰かにやっていただくことを繋ぐ仕事」だったりするので、 その辺は自分に合っているかなと感じます。

ジャンプ読者なんてほんの一握り。だったら、そこを広げて行く余地はまだまだある

—村越さんは連載作家さん以外にも定期的に連絡を取り合っている新人作家も20名以上いるということですが、連載作家になれる人はどういう特徴があるんですか?

村越:何が何でも続けていく根性とやる気がある人じゃないでしょうか。やっぱり編集者もいろいろ言うので、そこで諦めずに食らいついて、いい作品をつくれるかだと思います。ヒット作を出して長く続けている連載作家さんは、やっぱりハングリー精神がすごいですし。あとは人に見てもらうということを意識できているかとかですかね。自分のやりたいことと、人に喜んでもらうことのバランスが取れているというか。頑固だけど柔軟みたいな。

—すると、持ち込みで持ってきた作品だけでは判断しないんですね。

村越:そうですね。数をこなすことで伸びていく人もいますし、ひとつの作品だけで判断できないこともあると思います。なので、最初で切り捨てるということはあまりありません。もちろんこの人すごい! っていう状態でそのまま連載まで行ってしまう人もいるんでしょうけど。

—なるほど。「売れる」「売れない」の違いもそうなのでしょうか?

村越 周

村越:それは最初に読者からどうやって認識されるかというのが重要な気がします。よく読めば面白くても、覚えてもらえなければ売れないですし。たとえば『暗殺教室』でやっていることは王道なことなんですが、世界観とキャラは他の漫画にはない魅力や異物感があった。だからすぐに覚えられたと思うんです。まぁこれは松井先生の力なので、僕がこんなことを言うのもおこがましいんですけど。

—最近はテレビも、また盛り返している印象がありますよね。

村越:やっぱテレビはすごいですよ! 僕はテレビ大好きです。この世界にいると「コミックスが100万部売れてすごい!」とかいう話になって、実際にすごいことなんですけど、テレビや映画ってもっと大きな規模を相手にしているわけですよね。それを考えるとジャンプ読者なんてほんの一握り。だからといって簡単に100万部が出るわけではまったくないんですが、そこを広げて行く余地はまだまだあるんだろうなぁと。『暗殺教室』もお茶の間には「暗殺」という言葉だけで敬遠している人がたくさんいると思うんです。そういう人たちにも作品を知ってもらうためのきっかけをもっとつくっていかないといけないと思っています。そのためのひとつがアニメ化だったり、実写映画化なわけですから。僕らはカルチャーではなく娯楽を作っているので、色んな人を受け手として想像しないといけないんですよね。

—『トンカツDJアゲ太郎』でもそういうことは考えたりしているんですか?

村越:そっちはまだその前段階というか、まだ地道に作品を応援してくれる方々を増やさないといけないのかなと。そもそもジャンプ+自体が新しいメディアですし。ただ、それをするときに、果たしてどんな人がこの作品を好きになってくれるんだろう、ということは考えます。たとえば、今月第1巻が発売されたのですが、ありがたいことに帯のコメントをスチャダラパーのANIさんにお願いできたんです。スチャダラパーさんを好きな人達ならアゲ太郎も好きになってくれるんじゃないかなと思って。もちろん作家も僕もスチャダラパーさんが好きというのが一番大きいんですが(笑)。ともかくどういう人に届けるのかというのは大切にしたいと思っています。そして、地盤が固まったらもっと多くの人に知ってもらうための何かをまた考えたいです。

—漫画編集者になったことで、漫画との接し方は変わりましたか?

村越:間違いなく変わりました。売れている漫画は、自分の興味があるものでなくても読むようになりましたし、なんで売れるのかをきちんと言葉にできるよう考えたりするようになりました。それで昔だったら絶対読まないような漫画をきちんと読んでみたら面白かったりもするので、楽しみ方が増えた感じはしますね。

—では最後に、漫画編集者としてこれから先の具体的なビジョンはありますか?

村越:『ぬらりひょんの孫』も『暗殺教室』も先輩から引き継いだ作家さんなので、これまで勉強させていただいたことを糧に自分が持ち込みや投稿から見ている新人作家さんと一緒に、ヒット作を世に送り出したいです。ありがたいことに色々経験させていただいてますが、それがない限り、僕は編集者として成功したとは口が裂けても言えないので、仕事の目標はそれしかないです。あとはやっぱりドラマ化ですね。こっちは単純な興味本位で、自分がドラマ好きなので、仕事で携われたら楽しいだろうなって。だから、1時間でも30分でも15分でもいいので『とんかつDJアゲ太郎』がドラマ化されて、それで結果的に漫画がもっと読まれたらいいなって思います。

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村越 周
杵と臼
正月に友だちと飲んだときに、正月感をもっと味わいたいねっていう話になったんです。それで餅つきか凧揚げをやろうってなったんですけど、凧揚げは寒そうということで、餅つきをすることに(笑)。酔っ払った勢いでAmazonで安めの小さな杵と臼をポチって、1月中旬に友だちを集めて挑戦しました。結局外でやるので寒いですけどね……。でも思いのほかうまくいったので、また機会があればやろうかなと思っています。桜が咲いたら花見に持っていけないかな……とか。ちなみに、そのときに使った杵と臼は自宅の物置にしまってあります。

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