Interview 私としごと

湘南で生まれ育った少年が、GREENROOMのフェスディレクターになるまで

株式会社グリーンルーム
杉下正樹(フェスティバルディレクター)

2005年にスタートし、2016年は2日間で約8万人を動員。既に国内で有数のフェスとして知られるGREENROOM FESTIVAL。今年はSuchmosやYogee New Waves、大橋トリオなど、今をときめくアーティストが横浜赤レンガ倉庫に会する。このフェスで、ディレクターを務めるのが杉下正樹さんだ。湘南・茅ヶ崎で生まれ育ち、サーフカルチャーに慣れ親しんだ少年が、今の仕事を選んだ背景には何があったのだろうか。フェスや地元に寄せる、杉下さんの想いを伺った。

プロフィール

杉下正樹

1985年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。日本体育大学卒業。フェスティバルディレクター。GREENROOM FESTIVALやOCEAN PEOPLESなどをはじめ、イベント事業の全体を統括する。趣味はフェス巡り、サーフィン、BBQ、飲み会など。今年は小型船舶免許を取得。

結成して間もないSuchmosをブッキング!?
フェスディレクターの醍醐味とは

―グリーンルームに転職した頃のお話を聞かせてください。

杉下:笑えるほど壮絶でした。というのも4月に入社し、その1か月後にフェスがあったんです。よりによって1年のなかでもっとも忙しい時期という(笑)。社内で飛び交う専門用語やフェスのルールなど、とにかく知識を補うことに必死でした。イベント本番直前ということでてんやわんやだったし、誰かが丁寧に教えてくれるような環境ではなかったので、そこに食らいついていくという感じで。

―そんな中でも、どうして杉下さんは踏ん張れたのでしょうか?

杉下:新卒時代に、現場で耐え抜いた経験があったからだと思います。グリーンルームで1年目のドタバタを過ぎると、忙しいというよりも「楽しい」という感情の方が自然に強くなっていきました。どれだけ大変なことがあっても、お客様の楽しんでいる表情を見ると、すべてが報われるんです。言葉にすると陳腐ですが、あの感覚を一度味わうと辞められませんよ。だからこそ「来年はもっと良いフェスにしよう」って思い続けられるんだと思います。

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―辛いことがあっても、その先に得られるものが必ずあるということですよね。話は変わりますが、フェス運営の裏側って意外と知られていないように思います。

杉下:うちの場合は、4月に代々木公園で行うOCEAN PEOPLES、5月に赤レンガ倉庫で行うGREENROOM FESTIVAL、9月に行うGREENROOM CAMP、そしてホノルルで行うGREENROOM FESTIVAL Hawaii。この4本柱を軸に1年が進み、ひとつのフェスが終わると次の日から翌年へ向けた準備がスタートします。また、フェスの半年前には告知がはじまるので、それまでに新しいロゴの制作やブッキングの調整、ライヴハウスに足を運び新しいアーティストを発掘するなど、挙げたらキリがないですね。

―特に思い入れのあるアーティストはいますか?

杉下:Suchmosはまだ結成して間もない頃から知っていて、常にアプローチしていました。去年に引き続き、今年もGREENROOM FESTIVALに出演してもらうことが決まったアーティストですし、ボーカルのYONCEさんが同じ茅ヶ崎出身でもあるので思い入れがありますね。

地鳴りのような歓声を、もう一度茅ヶ崎に。

—長年にわたり数々のイベントを手がけてきた杉下さんが、仕事をするうえで大切にしていることはありますか?

杉下:ひとつのフェスを運営するためには、音響さんや照明さん、アルバイトさんなどを含め、多くのスタッフによって支えられているんですよね。それこそ、GREENROOM FESTIVALでは、スタッフだけで2500名とか。いくら年齢を重ねても、スタッフに対する感謝の気持ちだけは忘れずにいたいと思います。もともと、現場に立っていたので余計にそう感じるんですよ。

—毎年フェスを開催し続けるにあたって、何か指標はあるんでしょうか?

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杉下:日本には約280のフェスがあると言われています。そんな群雄割拠のなか、僕たちのフェスに来てもらうためには、もちろん進化し続けることが求められます。社内で唯一課しているルールは「去年のイベントを越えること」のみ。興業としてやる以上、収益や観客数も大切ですが、それだけでは評価できないものがあるはず。フェスの価値を決めるのは、数字ではなくお客様ですからね。来てくださるお客様に「来年も参加したい」と思ってもらえることがもっとも大切だと思います。

—「お客様との関係性」を大事にしている杉下さんらしい価値観ですね。今後の野望などがあれば教えてください。

杉下:将来的には、茅ヶ崎でサーフカルチャーを伝えるフェスを開催したいと考えています。茅ヶ崎って、自然に恵まれて過ごしやすい場所なのに、観光地としてはまったく栄えていなくて。でも、サザンオールスターズの凱旋ライブが開催されると、地鳴りのような歓声が上がるんですよ。あのくらい地元が熱気に包まれるようなシーンをもっとつくりたい。サザンやSuchmosをはじめ、湘南の海を見て育ったアーティストだけを集めたフェスなんていうのも、最高じゃないですか? いつか必ず叶えたい僕の野望ですね。

—まさに、これからが正念場ですね。

杉下:はい。振り返ってみると、20代は見習いの時間だったと思います。業界を知るだけではなく、社会の構造を学んだりするための貴重な時間。それに対して30代は実践するための時間かな、と。これまで得たものを、臆することなくアウトプットするような。当然悩みは尽きませんが、今が一番楽しくて仕方がないんですよね。時間は有限。やりたいことをやらなきゃ、人生もったいないですよ。

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