Interview 私としごと

居場所は変わっても、毎日は「今を100%楽しむ」の繰り返し

株式会社グッドフィーリング
江上剛(ディレクター)

現在は、映像制作会社にディレクターとして務める江上さん。しかし、ここに至るまでの歴史を辿ってみると、自動車のディーラーに、派遣会社の営業、フリーのイラストレーターと、その経歴は多彩だ。数回の転職を経て、なぜ今の映像制作という仕事に行き着いたのか。仕事への姿勢や、人生観…そこには彼なりの哲学が隠されていた。

プロフィール

江上剛

1978年生まれ。大阪府出身。新潟大学人文学部行動科学課程修了後、自動車のディーラー、派遣会社の営業兼支店長、フリーのイラストレーターを経て2008年に株式会社グッドフィーリングに入社。ディレクターとして、企画営業から制作まで幅広い業務に携わっている。

インタビュー・テキスト:栗本千尋+プレスラボ 撮影:丸田武史(2011/12/8)

興味を持ったから「まず」飛び込んでみた映像業界

—現在の会社に入社する前は、どんなお仕事をされていたんですか?

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江上:転職を何度か繰り返しています。新潟大学の人文学部を卒業後、最初は新潟の自動車会社に新卒で入社し、ディーラーとして働いていました。その後は、実家がある大阪の派遣会社で営業兼支店長をしました。当時イベントやプロモーションが多く、それに関連してスタッフのユニフォームやフライヤーを自分でデザインしているうちに、お客さんに頼まれてイラストのお仕事をもらえるようになって。そこから独立して、イラストレーターを3年ほど続けましたね。

―会社の支店長からフリーのイラストレーターですか。思い切った決断ですね。

江上:もともとはまったく逆で、動き出す前に考え込んでタイミング逃すとか、マイナスに考えて一歩も動き出せないタイプだったんです。そういう経験があって「人生損しているな」と思ったので、自分から動こうと意識するようになりましたね。

―「損している」というのは、いつ頃気付いたんですか?

江上:徐々にではあるんですけどね。大学で哲学を勉強していて、自分の中で物の考え方や、プロセスの筋道をしっかりたてることができるようになって、行動にも移せるようになりました。

―なるほど。それでイラストレーターから、なぜ映像の世界に?

江上:ないものねだりかもしれませんが、イラストレーターとして静止画を作っていると、「ここに時間軸があったらどう展開させよう?」とか徐々にアイデアがわくようになってきたんですね。その流れで、映像の世界に興味があったからまず動いてみたっていう感じです。

―転職を機に、大阪から現在の会社がある東京に移られるんですね。

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江上:当てもないのに、思い立って上京してしまいました(笑)。転職活動は映像関連の会社を何社か受けましたが、他の会社は何かしっくりこなくて。今の会社は面接に来た時、1回目は社長との面談で、2回目は社員が全員並んでそれぞれから質問されたんです。状況だけ言うと圧迫面接のようですが(笑)、とてもほのぼのした雰囲気だったんですよ。仕事内容は未経験なのでやってみないとわからないし、事前にいくら調べても仕方ない。それなら居心地のいいところで働きたいと思って、今の会社に辿り着きましたね。

コミュニケーションにも作品にも「笑い」を取り入れる

—では、具体的にどのような映像を制作することが多いのですか?

江上:もともと、イベント運営会社から派生して始まった会社なので、イベントのオープニングや合間で使う映像が多いです。ただ最近は、リクルートとか、企業内の研修などで使う映像が多くなってきました。ここ最近の傾向として、企業は外に向けての広告より、社内にお金をかけることで、社員のクオリティをあげたいという方向にシフトしていっているようです。その分、僕らに今までないタイプのオファーが増えてきましたね。

—そんな中で、江上さんはどういった業務を担当されているんでしょう?

江上:入社当時は営業だけでした。はじめはスーツ着て「営業の江上です」ってお客さんのところに行ってたんですが、「営業が来た」って構えられることが多かったんです。それだと聞きたいこともなかなか聞けないことがあって、やり方を変えてみようと思い、まずスーツをやめました。

—大胆ですね。それからの変化は?

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江上:いち作り手としてお客さんと接するようにすると、「ああしたい」「もうちょっとこうできないか」といろいろ意見が聞けるようになりましたね。そうしていくうちに、自分でその意見を形にしなければという責任感から担当する業務が増えていった感じです。今は営業、ヒアリング、企画、シナリオ、絵コンテ、撮影のディレクションまで、基本的に編集以外はすべて自分でやっています。

—クライアントの要望を引き出し、形にしていくんですね。そのプロセスで気をつけていることはありますか?

江上:どんなに真面目な内容でも、僕はなにかしら「笑い」を入れたくなるんですよ。例えば名刺交換の時に、ひとネタかまして笑いがとれれば、その後の話し合いもなごやかに始められる。話せる内容も全然違ってくるし、普段だと聞けないことを引き出せたりするんです。作品に関しても同じで、見ている人が構えているのを、まず笑いで崩す。崩したところに言いたいことをズバッと入れる。そうした方が相手の心にメッセージが入っていきやすいですよね。真面目に説明するだけじゃおもしろくないので、何か折り込めるネタはないかと常に探しています。

人生の右往左往で広げた視野を強みに

—そういった工夫のために、普段から心がけていることはありますか?

江上:テレビCMに対して、「意味わからん」とか、「うまい!」とか反応するようにしてますね。自然に目に入ったものをどれだけ意識できるか、反応できるかっていうのを大事にしています。それが、お客さんから言われたキーワードに対して、いかに早く反応できるかと、ベストな返答をするための引き出しになる。いや、ベストでなくてもいい。極端な話、はったりでもいいんです。

—はったりですか(笑)。

江上:まずは入り口が大事。もちろん、はったりと言ったら聞こえが悪いですが、常に相手が想像する以上のものを提案したいんです。結局は自分の首を絞めることになりますが、言ったからにはやらなければいけないし、手持ちの材料で形にするための工夫を凝らして企画を考えます。プレッシャーを感じながら、その中でどれだけ遊びを入れられるかが、僕のテーマでもあるんです。

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あと、1番嫌なのは、仕事に飽きてしまうこと。自分自身が飽きて作ったものをお客さんに出しても、説得力がないと思うんですよ。だから自分が常に充実していて、それを1割でもいいから仕事に落とし込んでいけるといいのかなって思ってます。

—「常に充実していること」が重要なんですね。

江上:目の前のことに夢中になれない人って、一生何にも夢中になれないんじゃないかと思います。それなら「今を100%楽しむ」ということを毎日繰り返していきたい。そしたら10年後に振り返っても、「あの時こうすればよかった」って後悔することはないんじゃないでしょうか。僕はこれまで色々な職種を経験していて、周りからは、右往左往しているように見えていると思います。職人さんのように、一本筋を通して突き詰めていくスペシャリストもいますが、僕は右往左往して横幅を広げようと思う。視野を広げて、どれだけスペシャリストを知れるか。その人たちをどう組み合わせられるか。そういったコーディネートができる力をつけていきたいですね。

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キルケゴールの著作集です。人間の限界を超えようと、もがいているさまが人間らしい。本を読まないと、自分の思考や筋道のたて方が鈍っていくんですが、大学時代に読んでいた哲学書を読み返すと、感覚が戻ってくるんです。

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