Interview 私としごと

『テラスハウス』は台本がないのになぜ面白い? 生みの親が見せたいリアリティー

株式会社イースト・エンタテインメント
松本彩夏(番組プロデューサー)

日本国内のみならず、今や世界中にファンが広がる番組『テラスハウス』。そして、各業界を牽引し活躍する女性の人生観に迫る『セブンルール』。その仕掛け人は、どんな思想を持っているのだろうか? お話をお伺いしたのは、イースト・エンタテインメントでプロデューサーとして活躍する松本彩夏さん。歯に衣着せぬ語り口で、怒られてばかりの学生時代とAD時代、そして今に至るまでのエピソードをお話しいただいた。

プロフィール

松本彩夏

株式会社イースト・エンタテインメント取締役制作部長チーフプロデューサー。1977年生まれ。東京都出身。立教女学院中学・高等学校を経て、2000年慶應義塾大学卒業、株式会社イースト・エンタテインメントに入社。プロデュース番組は『私の10のルール』(TBS)、『世界は言葉でできている』(フジテレビ)、『階段のうた』(TBS 第49回ギャラクシー賞選奨受賞)など。現在は『ボクらの時代』(フジテレビ)、『テラスハウス』(Netflix・フジテレビ)、『セブンルール』(フジテレビ系)のプロデュースを手がけている。2016年、放送ウーマン賞受賞。

「ちょ、待てよ!」なんて、リアルで言ってくれる男はいない。

ープロデューサーになってから考えられた番組の企画は全部通ってるんですか?

松本:全部通ってるというか、通るまで超しつこいんです、私。『テラスハウス』が始まるまでは、3年かかりました。それに、企画書をバンバン出しまくったりもしてなくて。「新しい企画」が次から次へと溢れてくるような天才肌ではないので。本気でやりたい企画は、一度落とされても温め続けてます。だから、通ってない企画もまだありますが、いつか通る予定です(笑)。

ーそれぞれの企画は、どんな風に考えられているのでしょうか?

松本:いつも、ちっちゃい違和感とか不快感、疑問から企画が生まれることが多いかもしれないです。もし、世の中に対して気に入らないことがなければ、新しいことも思いつかないかもしれない。たとえば、恋愛ドラマで言えば、物語の世界で起こるようなキラキラしたものと現実は違うじゃないですか。少なくとも、私が怒って部屋を出て行こうとしたときに、「ちょ、待てよ!」って、木村拓哉さんみたいに引き止めてくれる男はいなかったし(笑)。

—確かに。

松本:たとえば、お酒の席で出会って、飲みすぎて勢い余ってその日にキスして、そこから恋に発展するみたいな物語があるとして、「本当にそうなるぅ?」と思っちゃう自分がいて。「酔っ払ってキスしちゃったけど、まあいいか。」っていう感覚の方がリアルなんじゃないかなって。

『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』©2018

『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』©2018

ーまさに『テラスハウス』は台本がなく、住人たちのリアルが見られますよね。

松本:リアリティーのあるものが見たくて、そんな番組を作りたかったんです。『セブンルール』にしても、“インスタ映え”するような、女性のキラキラした一瞬だけじゃなく、活躍する人たちの血肉となっている日々の営みを知って欲しいという思いがあります。

プロデューサーは、番組の人格を育てる母親みたいなもの

ープロデューサーは人によって仕事の領域が変わってきそうですが、松本さんの場合はどうですか?

松本:手がける番組に人格を見立てると、その子がすくすく育ってくれるための環境を整えるという感じでしょうか。『テラスハウス』も『セブンルール』も、フォーマットを上手く整えられた番組だったかなとは思っていて。企画そのものが、わりとフォーマットになっていて、撮る人(スタッフ)と出る人(出演者)が決まれば、あとは化学反応を起こしながら自走していってくれる。だから私は、全体を見て、その子(番組)らしい方向性に導いていく係。

『7RULES』©2018

『7RULES』©2018

ーなるほど。

松本:そこに、私だけじゃなくスタッフの個性も活きてくるのが醍醐味です。『テラスハウス』は編集に演出家の個性がすごく出ているし、『セブンルール』も選曲に演出家の個性が出ている。『セブンルール』のナレーションにYogee New Wavesのボーカル・角舘健悟さんを起用したのも、演出家からの提案でした。もちろん、番組の人格に関わるところは口も手も出しますが、「このスタッフがいなかったら、この子はこう育ってなかったな」と思う部分は、多ければ多いほどいいなと思っています。手がけている番組は、どれも大事で、かわいくて仕方がない。自分で企画した番組は、それが形になって誰かに見ていただけるだけで興奮なので、制作作業は、ほぼ楽しいことしかないです。形にするために尽力してくれるスタッフはすごく大事で、「皆が恩人!」みたいな気分です。

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